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特集!あの人の本棚
153.

大倉 愛子   (ライター、ファイナンシャルプランナー)


「最強」の投資商品をあなたは知っていますか?

大倉 愛子
今、日本で一番有利と目される投資は何か、ご存知だろうか。

それは確定拠出年金である。私的年金のひとつだが、この上ない税優遇を受けられることから、“お金の専門家”であるファイナンシャル・プランナー(FP)はこぞって限度額いっぱいまで積み立てているという。

今年5月に年金法の大改正があり、2017年1月から公務員と専業主婦も個人型確定拠出年金に加入できるようになる。また、過去に払った企業年金の積立金を転職時に持ち運びできる仕組みも拡充し、離・転職で老後資金が不利にならない工夫も盛り込まれた。

利用者を優遇する今回の年金法大改正は、“老後資金の準備は自助努力を”という国からのメッセージだろう。私たちもこのメッセージを真摯に受け止め、税制面で有利な確定拠出年金制度を活用したいものだ。そこで、これ1冊で“確定拠出年金が丸わかり”の『確定拠出年金の教科書(山崎元著、日本実業出版社)』を紹介しながら、確定拠出年金のメリット・デメリットを説明しようと思う。
「最強」の投資商品をあなたは知っていますか?

お金のプロFPが限度額いっぱいまで掛ける、確定拠出年金のメリットとは

FPといえば、有利な投資先や節税、生涯キャッシュフローのアドバイスなどをクライアントにする職業人だ。つまり最新の“有利な金融商品”にいつも触れている人である。その彼らが、それぞれの立場の限度額いっぱいまで使っている商品というと、確定拠出年金は「投資の王道」的な秘密の香りがするだろう。

著作やテレビ出演も多数ある経済評論家の山崎元が「やらないともったいない!」とまで書いた確定拠出年金。そのメリットとデメリットを、『確定拠出年金の教科書』を通じて読み取ってみる。

確定拠出年金の教科書

『確定拠出年金の教科書』 山崎 元

確定拠出年金は、年金制度3階建ての「企業年金」部分を、個人が拠出・運用するための私的年金制度だ。離・転職時にも持ち運びでき、企業が倒産しても保全される。そのメリットは、3つある。

  • ① 掛け金が全額「非課税」になり、所得税や住民税が減る
  • ② 運用中の利益が「非課税」になる
  • ③ 老後に受け取る時も、税金の控除がある

このトリプル「非課税」というメリット。どのくらい凄いインパクトなのか、具体例で見てみよう。

まず掛け金が「非課税」になると、所得税や住民税が減る。給与所得から掛け金分が控除されるため、納める税金が減るのだ。

例えば、課税所得が年間400万円の会社員がいるとしよう。この場合、税額は(20%限度のため)所得税と住民税合わせて約78万5300円だ。ところが、拠出額5万5000円(月額)の確定拠出年金に加入していると、課税所得が66万円圧縮され、納税額は58万4500円となる。つまり、20万800円おトクになる。

山崎氏も言及しているが、投資の世界に“絶対儲かる”はない。ところが、この節税効果たるや、400万円を1年間5.2%固定金利で運用した結果と同じだ。マイナス金利の昨今、いかに“稀有な投資チャンス”であるか分かるだろうか。FPが必ず顧客に勧めるのも納得だろう。

「非課税」2つ目のメリットは、運用利益も全額非課税になることだ。すなわち、通常利益の20%かかる税金が“0”になるのである。この恩恵は大きい。株式投資で100万円儲かったら、通常は20万円を税金で持っていかれてしまう。ところが、確定拠出年金なら、まるまる積み立てることができる。

正確には、将来年金を受け取る時に課税されるので、メリットは「運用期間中に課税されず、複利運用ができる」ことだ。複利運用の効果は大きなものがある。

そして最後のメリットは、老後に受け取る時に得られる。年金受け取りなら「私的年金等控除」を、一時金受け取りなら「退職所得控除」を適用できるため、民間の個人年金や独自の積み立てで同額を積み立てるよりも、実際に受け取れる金額には大きな差がつく。複雑な計算式は『確定拠出年金の教科書』本書を見ていただければ分かるが、“ほとんど非課税”とも言われる退職所得控除と同程度、税優遇の恩恵が用意されている。

確定拠出年金のデメリットは、60歳まで受け取れないこと

一方、当然、投資商品なのでメリットばかりではない。まず、税制優遇の目的が「老後資金」作りであるため、10年以上の積み立てで満60歳からしか受け取ることができない(積立期間によって受け取り開始年齢は違う)。60歳まで受け取れないため、まさかの時の備えを考えると、資産の全額を確定拠出年金に積み立てるのは得策とは言えない。すぐに売却可能なNISAや、預貯金とバランスを考えて投資するのがよいだろう。

とはいえ、掛け金が払えなくなったら金額を変更するなど、拠出時の救済策は既に準備されている。また、確定拠出年金先進国アメリカでは「ペナルティを払って受け取ることができる」などの救済策があるようだ。この辺りは、今後の進化を待ちたい。

その他のデメリットとしては、株式投資などで利用できる、投資損の3年繰り延べや、損益通算ができないことがある。NISAも同様であるが、確定拠出年金は、腰を据えて成長市場に長期で積み立てるスタイルが最適になろう。

一方、確定拠出年金のNISAにないメリットは、元本保証の定期預金型商品も選べること、積立額と期間が比べ物にならないほど大きいこと、商品の途中変更ができることだ。

隠れたメリット、障害給付金・死亡一時金

確定拠出年金を全員元気で60歳の満期で受け取れるのが理想だが、そうは行かない場合もある。その時、確定拠出年金の隠れたメリットが発揮される。

加入者が一定の障害状態になった場合は、障害給付金を受け取ることができるのだ。このとき、給付金は全額非課税になる。また、加入者が死亡した場合には、年金資産の全額が遺族に支払われる。ここでも税優遇があり、みなし相続財産として法定相続人の数×500万円までが非課税となる。この隠れたメリットも、一般の金融商品では太刀打ちできない優遇のひとつである。

なぜ今確定拠出年金が注目なのか

今回の改正で、加入対象者が3,700万人から一気に6,700万人に倍増した。そのうち公務員は税金リテラシーが高いと目され、有望顧客として金融機関が熱い視線を送っている。 加入資格者増に対応して、運用管理機関は、銀行、証券会社、生保等60社*以上で、続々と新規参入が続いている。それぞれの口座管理手数料、取扱商品はさまざまで、まさに玉石混交だ。

* 確定拠出年金ナビ:NPO法人確定拠出年金教育協会調べ、2016年4月12日現在

近年まれに見る顧客拡大チャンスに、各金融機関の競争もヒートアップしている。顧客に有利な新商品も続々投入されてきた。これから確定拠出年金を始め、投資の世界に踏み出す読者には、良い環境が整ってきたといえるだろう。

また、既に確定拠出年金の積み立てをスタートしていれば、同じような投資商品で手数料が半額の新商品が拡充された場合など、商品のスイッチングを無料で行うことができる。 サービス改善の一例として、確定拠出年金の月々の口座管理料の無料化の動きがある。

ネット証券で規模第2位の楽天証券は、確定拠出年金取り扱いを本年9月から開始すると発表した。確定拠出年金取り扱いで先行する、ネット証券1位のSBI証券が口座管理料を“積立金残高50万円以上で無料”にしているのをにらんで、楽天証券は、サービスで上を行く“積立残高20万円以上で月々の口座管理手数料無料”を打ちだしてきた(2017年12月まで、スタートキャンペーンで残高にかかわらず無料)。銀行系の取扱機関は、概ね月々500円前後が多いので、年間約6千円の差がつくかもしれない(他にも費用が掛かるので、全費用総合して比較したい)。40年積み立てると、24万円の差になる。

また、確定拠出年金だけで買える、運用手数料を低く抑えた商品も次々に発表されている。一例として、「DCニッセイ外国株式インデックス」を見てみよう。SBI証券がラインナップ刷新で投入してきた投信だ。同投信は、運用手数料に当たる“信託報酬”が0.2268%。運用成績の評価も高く、有名投信ブロガーが投資者目線で投票する「投信ブロガーが選ぶ! Fund of the Year 2014」で、ベスト投信に選ばれている。

ここで「手数料がアクティブ投信などの1%と0.3%と、何がそんなに違うのか」という疑問を持つ読者も多いことかと思う。簡略化してシュミレーションしてみよう。

確定拠出年金の残高は、積み立ての初期は、例えば年に25万円とすると、手数料は1年間で1%なら2500円、0.3%なら750円で、1750円の差に過ぎない。ところが、もし同じ条件で40年間積み立て続け(値上がりがないものと仮定し)、運用残高が1000万円になった時、年間手数料は1%なら10万円、0.3%なら3万円となり、1年で7万円も差がつく。40年間の手数料の累計は1%なら205万円、0.3%なら61万5000円で、実に143万5000円の差になってしまう。運用商品の手数料によって、コンパクトカー1台買えるほどの差がつくなら、手数料にはシビアになりたいものだ。

立ち止まって、人生に想いを馳せよう

山崎氏の『確定拠出年金の教科書』をひも解き、確定拠出年金のメリット・デメリットを紹介してきた。制度などは「変化」するものだ。この私的年金を検討する最大のメリットは、目先に追われる生活から一歩引いて立ち止まり、人生全体について思いを馳せることかと感じた。

このチャンスに、自分の人生のキャッシュフロー表をざっくり作ってみるとか*、今後必要な資金づくりを計画するなど、“お金の相談”を家族でする契機になればと思う。普段はなかなか改まって話したことがない、家族の「意外な夢」など、聞くことができるかもしれない。

確定拠出年金の教科書

『確定拠出年金の教科書』 山崎 元
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プロフィール

大倉 愛子
大倉 愛子
ライター、ファイナンシャルプランナー

投資歴30年。上場株・グリーンシート、国内外の投信・債券、商品先物に投資し、一時デイトレーダーも。本業は外資で精密機械バイヤーから主婦へ、外資ロジスティックス担当を経てライター、某省専門紙記者。“金融知識で、お金の不安から解放されよう!”をテーマに、有利な金融商品・税制などの紹介に励んでいる

ライターについて

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hontoビジネス書分析チーム

本と電子書籍のハイブリッド書店「honto」による、注目の書籍を見つけるための分析チーム。ビジネスパーソン向けの注目書籍を見つける本チームは、ビジネス書にとどまらず、社会課題、自然科学、人文科学、教養、スポーツ・芸術などの分野から、注目の書籍をご紹介します。

丸善・ジュンク堂も同グループであるため、この2書店の売れ筋(ランキング)から注目の書籍を見つけることも。小説などフィクションよりもノンフィクションを好むメンバーが揃っています。

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ライター、ファイナンシャルプランナー

投資歴30年。上場株・グリーンシート、国内外の投信・債券、商品先物に投資し、一時デイトレーダーも。本業は外資で精密機械バイヤーから主婦へ、外資ロジスティックス担当を経てライター、某省専門紙記者。“金融知識で、お金の不安から解放されよう!”をテーマに、有利な金融商品・税制などの紹介に励んでいる

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