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特集!あの人の本棚
291.

小野雅裕×佐渡島庸平    ( NASA技術者/株式会社コルク代表取締役社長)


第1回:「売れない本を売ること」の難しさ……、って何ですか?【編集者編】

小野雅裕×佐渡島庸平
NASAジェット推進所の技術者・小野雅裕さんが執筆し、コルク代表の佐渡島庸平さんが編集に携わった『宇宙に命はあるのか 人類が旅した一千億分の八』。宇宙関連の専門的な内容が書かれているにも関わらず、2018年6月現在、5万部という異例の売り上げを叩き出した作品です。

一般的には難しいと思われがちな「宇宙の本」が、なぜ、ここまで売れたのか?
そんな疑問が、今回の小野さん、佐渡島さんとの対談のきっかけになりました。

多忙なNASAの技術者でありながらも、本を書き、世に広めることに全力を注いだ小野さんと、それを長い目で見て、売る体制を整えた佐渡島さん。おふたりの話を聞くと、この本が売れたことは偶然ではないことが見えてきました。

今回は、そんな対談連載の第1回目です。
第1回:「売れない本を売ること」の難しさ……、って何ですか?【編集者編】

ターゲットが本屋にいない?

―― 本日はお時間いただき、ありがとうございます。小野さんと、佐渡島さん、おふたりがタッグを組んで生まれた今回の本『宇宙に命はあるのか』ですが、当初とはずいぶん異なった内容になったと伺いました。一体どのように今の形に収まったのでしょうか。

佐渡島庸平(以下、佐渡島) 小野さんは最初、小説にも興味があって、書きたいと言っていたんですよね。けれど、内容が世間一般の小説とは少し違い、情報量的に「宇宙」の話が多かった。そのような作品は、普通に考えると、売れないんですよ。どうやっても。

小野雅裕(以下、小野) なるほど。

佐渡島 じゃあ、おもしろくないのかっていうと、そういう訳ではないんです。ここですごく重要なのが、本の内容がどんなにおもしろくても、その読者像である小野さんと同じ感覚の人たちというのが、本屋に行ってどんな本が出たか探す人たちじゃないってことなんですよ。

―― ターゲットが本屋にいないってことですね。

佐渡島 そう。つまり、この本を好む人たちが、本屋に日常的に行っている人たちではないんです。だから売れない。

小野 宇宙が好きな人たちは、日常的に本屋をぶらついて何かを探す人とは限らないということですね。

佐渡島 そう。むしろ、その割合があまりに低い。

小野 なるほど。

佐渡島 今って本を売り出して、1ヶ月以内にどれくらい本が動いたかで、その後の書店の中での置き場所がすべて決まってしまいます。だから、ただ良い本を作って売り出すだけでは、1000部とかで終わっちゃうタイプの本なんですよ。

―― その本がいまでは、5万部も売れているとは、何か秘密があるのでしょうか……。

売れない本は、ゆっくり育成する?

佐渡島 だから、小野さんの本をつくるのなら、初速で少なくとも2000〜3000人がすぐ動いてくれる状況をつくっとかないと絶対いけないな、と思っていました。そのためには2つすることがあって、1つは、小野さんの文章が上手くなること。もう1つは、ファンコミュニティをつくらなきゃいけないっていうこと。両方あったんですね。

前者は小野さんに努力していただくしかないのですが、後者については、宇宙兄弟のファンを小野さんのファンに移転させてしまうのが一番話が早いと思った。あと、宇宙好きだけではなくビジネスマンにもファンができそうな内容だったので、NewsPicksでもファンができると考えました。小野さんという人が、宇宙について詳しくて、この人の宇宙についての分かりやすい話を読みたいっていう雰囲気をつくった方がいいなと。

こうすることで、ビジネスの宇宙側と、コンテンツの宇宙側の人たちを、小野さんの固定ファンへと、本を出す前に移動させておこうとしたのです。小野さんには今はじめて言ったけれど(笑)。

小野 ほー。そういうプランがあったんですか(笑)。

佐渡島 そうです。だからNewsPicksのプロピッカーに小野さんを入れるっていう話もしてきて。

小野 ねじ込んだんですね。知らなかった(笑)。

佐渡島 そう(笑)。頼む!って。

で、さらに小山宙哉さん(編集部注:マンガ『宇宙兄弟』の作者)のサイトで連載をする。ここで連載すると、小山さんのツイッターで小野さんのツイートとかを紹介できるんですよ。さらに、どーんと一挙連載しちゃうと1回しかツイートできないんだけど、毎月連載をやってると何回もツイートできる。これで、ゆっくりと小野さんのところにファンがついていく、というわけです。

こうして1年くらいかけていたら、当然最初はたいした人数がいないんだけど、次第にNewsPicksの方で小野さんがうまく目立っていった。そうして、NewsPicksもツイッターもフォロワーが増えていったじゃないですか。それで、これはコミュニティつくれるかもと思ってきたんです。そうなってくると、今度は単行本つくって大丈夫になるんです。

コミュニティができていれば単行本をつくる過程から、全部、コミュニティの人たちに公開していくという形をとれるので、そのような場をつくる時期がきたんですよね。

小野 そうだったんですか。

佐渡島 そう。そういう時間軸で考えていたんですよ。

小野 僕はもうひたすら書いていたっていうイメージでした。いやー。それはほんとありがとうございます(笑)。

―― 佐渡島さんが人と向き合う時間軸って、とても長いですよね。

佐渡島 うん、長い。

小野 それは書き手にとって、ありがたいです。出版社って、下手な鉄砲数打ちゃ当たるで、いっぱい本出して、で、当たったら利益を稼いで、外れたらさよならって、短期決戦が多いじゃないですか。だからそういう風に長期的視野で育ててくれるっていうのは、本当にありがたいですよね。作家としては。

ーー第2回に続きます!ーー

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プロフィール

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佐渡島庸平
株式会社コルク代表取締役社長

中学時代を南アフリカ共和国で過ごし、その後灘高校から東京大学文学部に進学し、2002年に卒業。講談社に入社し、『ドラゴン桜』、『働きマン』、『宇宙兄弟』、『モダンタイムス』などの編集を務める。2012年に同社を退社してからは株式会社コルクを創業し、作家のエージェント会社として従来にはない、エンターテイメントのビジネスモデルを構築している。特技は、精神的にどんな状況であれ、眠れること。

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小野雅裕
NASA JPL 技術者、作家

大阪生まれ、東京育ち。2005年に東京大学工学部航空宇宙工学科を卒業し、2012年にマサチューセッツ工科大学に入学。慶應義塾大学理工学部助教を経て、2018年4月現在、NASAのJPL(ジェット推進研究所)に所属する。阪神ファンで、愛娘・ミーちゃんのパパ。

ライターについて

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十河有沙

1993年 北海道生まれ。琉球大学 観光学部卒業。
ホンシェルジュで編集部として働きながら、ライターとしても活動中。

<参考記事>

・「ぜんぶ、おっぱいだ」
http://tenro-in.com/mediagp/38952

・「心が叫びたがっているのならその場でとりあえず叫んでみたらいいのではないだろうか」
http://tenro-in.com/mediagp/39184

メールアドレス:a.sogo@honcierge.jp

プロフィール

佐渡島庸平
株式会社コルク代表取締役社長

中学時代を南アフリカ共和国で過ごし、その後灘高校から東京大学文学部に進学し、2002年に卒業。講談社に入社し、『ドラゴン桜』、『働きマン』、『宇宙兄弟』、『モダンタイムス』などの編集を務める。2012年に同社を退社してからは株式会社コルクを創業し、作家のエージェント会社として従来にはない、エンターテイメントのビジネスモデルを構築している。特技は、精神的にどんな状況であれ、眠れること。

小野雅裕
NASA JPL 技術者、作家

大阪生まれ、東京育ち。2005年に東京大学工学部航空宇宙工学科を卒業し、2012年にマサチューセッツ工科大学に入学。慶應義塾大学理工学部助教を経て、2018年4月現在、NASAのJPL(ジェット推進研究所)に所属する。阪神ファンで、愛娘・ミーちゃんのパパ。

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