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特集!あの人の本棚
293.

小野雅裕×佐渡島庸平    ( NASA技術者/株式会社コルク代表取締役社長)


第3回:良いものをつくる……って、何ですか?

小野雅裕×佐渡島庸平
NASAジェット推進所の技術者・小野雅裕さんが執筆し、コルク代表の佐渡島庸平さんが編集に携わった『宇宙に命はあるのか 人類が旅した一千億分の八』。宇宙関連の専門的な内容が書かれているにも関わらず、2018年6月現在、5万部という異例の売り上げを叩き出した作品です。

一般的には難しいと思われがちな「宇宙の本」が、なぜ、ここまで売れたのか?
そんな疑問が、今回の小野さん、佐渡島さんとの対談のきっかけになりました。

多忙なNASAの技術者でありながらも、本を書き、世に広めることに全力を注いだ小野さんと、それを長い目で見て、売る体制を整えた佐渡島さん。おふたりの話を聞くと、この本が売れたことは偶然ではないことが見えてきました。

今回は、そんな対談連載の第3回目です。
第3回:良いものをつくる……って、何ですか?

作品のブレイクスルーポイントは、3つ?

―― 売るための仕組みについては第1回第2回で語っていただいたとおりだと思うのですが、やはりこの本の良さは、内容だと思うんです。この内容は、どのように練り上げていったのですか?

小野 多分この本の完成までには、3つのブレイクスルーがあって。2つめが「イマジネーション」っていう本全体のテーマを思いついた時で、3つめが、コミュニティを作れって佐渡島さんが言ってくれたこと。

そしてそれらの前、1つめに、佐渡島さんが連載の段階で「人間ドラマを書け」って言ってくれたのがあるんです。最初に。

僕の目線から見て、佐渡島さんが編集者としてすごいなと思う部分は、やっぱり「王道をいってる」ところだと思うんですよ。売り方に関して、コミュニティをうまく使ってとか、サイクルを回し始めるために頑張るとか、いろいろやり方はあると思うけど、やっぱり本質的なことは、それじゃないのかな、と思います。

―― 王道、とはどういうことでしょう。

小野 編集者の方って、ともすれば、いかに目を引くタイトルにするか、目を引く章立てにするか、という表層的な部分、初速を得るとこばかりにフォーカスされた指摘をしてしまう危険性もあると思うんです。けれど僕が佐渡島さんからもらったコメントって、先ほどのような、王道のコメント。「人間の気持ちをかけ」とか「人間ドラマをかけ」とか。

そもそもこの本の最初の原稿って、なかなか読めたものじゃなかったんですよ。どうしても自分の喋りたいことを詰め込んでしまって、情報の塊になっていたんです。そんな時に、佐渡島さんは「そうじゃない」と。「人間っていうのは、初めから情報自体に興味を持つわけじゃなくって、ストーリーとか、感情とかを通して情報を見るものなんだ」って言われて。

そういうことは、自分でも頭では分かっていたんです。大学教員をしていた時に学生にもそう言ったこともあるし(笑)。でも、やっぱり自分で書くと分からないもんなんですね。

―― 読者の気持ちに作家を導くコメントですね。

小野 それってめちゃくちゃ王道なコメントじゃないですか。そういう基本的なところを徹底的に言ってくれるっていうのはすごく助かりました。さっき言ったように、良いもの書けばかならず売れるっていうのは違うけど、ただ、良いもの書かないと売れないじゃないですか。良いものを書くっていうのは、十分条件じゃなくて必要条件なんですね。

ちょっと偉そうなこと言うと、出版業界ってものすごい数の本があって、粗造品がすごい多い気がするんですよ。そんななかで、例えば羽賀さん(編集部注:漫画家・羽賀翔一さん)の作品『君たちはどう生きるか』が何で売れたかっていうと、「君たちはどう生きるか」っていう普遍的なテーマを正面から書いたからじゃないかと。結局読まれる作品とか、残る作品って、普遍的なテーマを、王道の表現方法で書いたものだと思うんです。

だから、僕はまず普遍的なテーマを書こうと思ったし、人類が何千年追い求めてきたテーマを書こうと思ったんです。そこで佐渡島さんが王道の表現方法を引き出してくれたっていうのが、やっぱり一番大きかったんじゃないかなと思いますね。

佐渡島 引き出すことができたというのは、もともと小野さんがそういうテーマに興味があったという部分もあるんじゃないですか。「月に行けたのは、想像の力のおかげだ」というフレーズは、なかなか技術者側の書く文章で出てこないですからね。

小野 そうですかね。でもやっぱり僕は、それが本質だと思うんです。

佐渡島 いや、本当にそうですよね。人間はまず想像してからですよね。

ーー第4回に続きます!ーー

以前の記事は、以下からどうぞ

第1回:「売れない本を売ること」の難しさ……、って何ですか?【編集者編】
https://honcierge.jp/articles/interview/291

第2回:「売れない本を売ること」の難しさ……、って何ですか?【作家編】
https://honcierge.jp/articles/interview/292

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プロフィール

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佐渡島庸平
株式会社コルク代表取締役社長

中学時代を南アフリカ共和国で過ごし、その後灘高校から東京大学文学部に進学し、2002年に卒業。講談社に入社し、『ドラゴン桜』、『働きマン』、『宇宙兄弟』、『モダンタイムス』などの編集を務める。2012年に同社を退社してからは株式会社コルクを創業し、作家のエージェント会社として従来にはない、エンターテイメントのビジネスモデルを構築している。特技は、精神的にどんな状況であれ、眠れること。

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小野雅裕
NASA JPL 技術者、作家

大阪生まれ、東京育ち。2005年に東京大学工学部航空宇宙工学科を卒業し、2012年にマサチューセッツ工科大学に入学。慶應義塾大学理工学部助教を経て、2018年4月現在、NASAのJPL(ジェット推進研究所)に所属する。阪神ファンで、愛娘・ミーちゃんのパパ。

ライターについて

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十河有沙

1993年 北海道生まれ。琉球大学 観光学部卒業。
ホンシェルジュで編集部として働きながら、ライターとしても活動中。

<参考記事>

・「ぜんぶ、おっぱいだ」
http://tenro-in.com/mediagp/38952

・「心が叫びたがっているのならその場でとりあえず叫んでみたらいいのではないだろうか」
http://tenro-in.com/mediagp/39184

メールアドレス:a.sogo@honcierge.jp

プロフィール

佐渡島庸平
株式会社コルク代表取締役社長

中学時代を南アフリカ共和国で過ごし、その後灘高校から東京大学文学部に進学し、2002年に卒業。講談社に入社し、『ドラゴン桜』、『働きマン』、『宇宙兄弟』、『モダンタイムス』などの編集を務める。2012年に同社を退社してからは株式会社コルクを創業し、作家のエージェント会社として従来にはない、エンターテイメントのビジネスモデルを構築している。特技は、精神的にどんな状況であれ、眠れること。

小野雅裕
NASA JPL 技術者、作家

大阪生まれ、東京育ち。2005年に東京大学工学部航空宇宙工学科を卒業し、2012年にマサチューセッツ工科大学に入学。慶應義塾大学理工学部助教を経て、2018年4月現在、NASAのJPL(ジェット推進研究所)に所属する。阪神ファンで、愛娘・ミーちゃんのパパ。

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