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特集!あの人の本棚
295.

小野雅裕×佐渡島庸平    ( NASA技術者/株式会社コルク代表取締役社長)


第5回:『君たちはどう生きるか』ヒットの理由……、って何ですか?

小野雅裕×佐渡島庸平
NASAジェット推進所の技術者・小野雅裕さんが執筆し、コルク代表の佐渡島庸平さんが編集に携わった『宇宙に命はあるのか 人類が旅した一千億分の八』。宇宙関連の専門的な内容が書かれているにも関わらず、2018年6月現在、5万部という異例の売り上げを叩き出した作品です。

一般的には難しいと思われがちな「宇宙の本」が、なぜ、ここまで売れたのか?
そんな疑問が、今回の小野さん、佐渡島さんとの対談のきっかけになりました。

多忙なNASAの技術者でありながらも、本を書き、世に広めることに全力を注いだ小野さんと、それを長い目で見て、売る体制を整えた佐渡島さん。おふたりの話を聞くと、この本が売れたことは偶然ではないことが見えてきました。

今回は、そんな対談連載の第5回目です。
第5回:『君たちはどう生きるか』ヒットの理由……、って何ですか?

佐渡島流、ヒットの作り方とは

―― ちなみに、漫画『君たちがどう生きるか』も佐渡島さんが編集に携わっていますが、初速が伸びた後はどう売れていったですか? テレビに取り上げられてからすごく跳ねたイメージがあるんですけれど……。

佐渡島 実はあの作品は、初速を出しにいってないんですよ。あれはもう、良い本として3万部売れればいいや、と思っていました。まったく売り上げも狙いにいってなかったです。

さっき言った初速のあとをどう伸ばすかという話ですが、例えば『宇宙に命はあるのか』の宣伝のために、小野さんがメディアにいっぱい露出できるとまた違ってきます。でもやっぱり、小野さんにはNASAっていう本業がしっかりあるじゃないですか。そうすると、時間の使いかたとして本業と本とで、どちらが優先順位上なんだっけっていう話になってくる。

それに対して『君たちがどう生きるか』は、羽賀くん(編集部注:漫画家・羽賀翔一さん)は出版が本業だし、けれどそのとき連載を持っていなくて、ちょうど時間があったんです。だから、PRやりたい放題だったっていう(笑)。

日本の本の状況として、出版社が書いたあと売ってくれないって言いますけど、著者も書いた後に売るための作業をする時間がないっていうケースがほとんどなんです。だから『宇宙に命はあるのか』のような本で、しっかり50冊追加で売るとかっていうのは、すごく大事。

例えば本屋さんの売り上げを毎日見るとするじゃないですか。すると、こういう本って中堅どころの本屋さんで1ヶ月に10冊くらいしか売れてないんですよ。それが1万店舗とかあるから結構な部数いってるように見えるのですが、1店舗で1冊売るって、実はすごく大変な行為なんですよね。だから、この1冊売るっていう努力をどれくらいやるかっていうのがすごく重要なんです。

―― なるほど。

佐渡島 そういえば、もう一冊じわじわ売り上げが伸びたのが『16歳の教科書』という本でした。小野さんがさっき話していた初めて出した本と一緒で、2年間1回も重版がかからなかったものなんですが、2年経った後に売れ始めて、そのまま50万部にいったんですよ。

この本のために僕が何をやっていたのかっていうと、「この本を毎日50冊ずつ売るぞ」って決めて、講演会を地方でガーッとずっとやるっていうこと。これ、最終的な宣伝方法として聞いたことがあった方法なんです。

『16歳の教科書』がずっと鳴かず飛ばずだった時、僕はちょうど『ドラゴン桜』が終わったあとだったんで、いろんな教育機関から講演会を頼まれて、2000人とか3000人の親御さんの前で講演会をしてたんですよ。どういう教育をすればいいか、などのテーマで。

そういう時に『ドラゴン桜』は読んでる人が既にたくさんいたから、この『16歳の教科書』が『ドラゴン桜』の副読本です、と言っていたんです。併せて読むと良いですよ、中にはこんなこと書いてありますよ、って。それを2年間かけてすごい人数の前でずーっと話してたんですよ。そのおかげでじわじわじわじわ売れてて。

その中で1店舗、鳥取の書店さんに「これは良い」と惚れ込んでくれた書店員さんがいて、その人がもう、ブワーッと、信じられないくらいの面展開をしてくれたんです。2年経った時くらいですね。そしたら、鳥取の書店なんだけど、毎月恐ろしく、まぁ100冊くらいですけど、売れていて。

そこで、その情報を僕が全国の書店員さんに流したんですよ。そしたら全国の書店員さんが、そんなに1店舗で売れるならやってみようと思ったようで。やり始めたら、内容は良かったから、アレヨアレヨという間に50万部になりました。

―― 地道な活動が、大きな結果に繋がるんですね。

ーー第6回、最終回に続きます!ーー

以前の記事は、以下からどうぞ

第1回:「売れない本を売ること」の難しさ……、って何ですか?【編集者編】
https://honcierge.jp/articles/interview/291

第2回:「売れない本を売ること」の難しさ……、って何ですか?【作家編】
https://honcierge.jp/articles/interview/292

第3回:良いものをつくる……って、何ですか?
https://honcierge.jp/articles/interview/293

第4回:『宇宙兄弟』ヒットの理由……、って何ですか?
https://honcierge.jp/articles/interview/294

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プロフィール

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佐渡島庸平
株式会社コルク代表取締役社長

中学時代を南アフリカ共和国で過ごし、その後灘高校から東京大学文学部に進学し、2002年に卒業。講談社に入社し、『ドラゴン桜』、『働きマン』、『宇宙兄弟』、『モダンタイムス』などの編集を務める。2012年に同社を退社してからは株式会社コルクを創業し、作家のエージェント会社として従来にはない、エンターテイメントのビジネスモデルを構築している。特技は、精神的にどんな状況であれ、眠れること。

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小野雅裕
NASA JPL 技術者、作家

大阪生まれ、東京育ち。2005年に東京大学工学部航空宇宙工学科を卒業し、2012年にマサチューセッツ工科大学に入学。慶應義塾大学理工学部助教を経て、2018年4月現在、NASAのJPL(ジェット推進研究所)に所属する。阪神ファンで、愛娘・ミーちゃんのパパ。

ライターについて

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十河有沙

1993年 北海道生まれ。琉球大学 観光学部卒業。
ホンシェルジュで編集部として働きながら、ライターとしても活動中。

<参考記事>

・「ぜんぶ、おっぱいだ」
http://tenro-in.com/mediagp/38952

・「心が叫びたがっているのならその場でとりあえず叫んでみたらいいのではないだろうか」
http://tenro-in.com/mediagp/39184

メールアドレス:a.sogo@honcierge.jp

プロフィール

佐渡島庸平
株式会社コルク代表取締役社長

中学時代を南アフリカ共和国で過ごし、その後灘高校から東京大学文学部に進学し、2002年に卒業。講談社に入社し、『ドラゴン桜』、『働きマン』、『宇宙兄弟』、『モダンタイムス』などの編集を務める。2012年に同社を退社してからは株式会社コルクを創業し、作家のエージェント会社として従来にはない、エンターテイメントのビジネスモデルを構築している。特技は、精神的にどんな状況であれ、眠れること。

小野雅裕
NASA JPL 技術者、作家

大阪生まれ、東京育ち。2005年に東京大学工学部航空宇宙工学科を卒業し、2012年にマサチューセッツ工科大学に入学。慶應義塾大学理工学部助教を経て、2018年4月現在、NASAのJPL(ジェット推進研究所)に所属する。阪神ファンで、愛娘・ミーちゃんのパパ。

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