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特集!あの人の本棚
297.

結城洋平×望月綾乃   (結城企画主宰/女優)


コメディ仕立ての舞台で伝えたい「家族」のあり方(結城洋平×望月綾乃 対談インタビュー)

結城洋平×望月綾乃
俳優の結城洋平さんが主宰する「結城企画」が、第三回公演となる『瞬間、今、おれ、わたし、やるっきゃない』を、6月27日から7月1日まで東京・下北沢の『小劇場B1』にて上演する。長女役を務める望月綾乃さんと結城さんはホンシェルジュ連載陣でも執筆中。おすすめの本とともに、今回はお二人にお話をうかがいました。
コメディ仕立ての舞台で伝えたい「家族」のあり方(結城洋平×望月綾乃 対談インタビュー)
左:結城洋平 / 右:望月綾乃

俳優の結城洋平が主宰する「結城企画」が、第三回公演となる『瞬間、今、おれ、わたし、やるっきゃない』を、6月27日から7月1日まで東京・下北沢の『小劇場B1』にて上演する。 奇想天外なプロットを基にした過去の二公演からは一転、「バトル手みやげロワイヤル、開催」というキャッチコピーのついた本公演のテーマは、ズバリ「家族」。この、誰もが避けて通れない関係性について、自身の結婚を機に改めて向き合うようになったという結城が、「手みやげ」を切り口に迫る。脚本・演出は、第一回公演でもタッグを組んだ大歳倫弘(ヨーロッパ企画)で、結城企画らしい笑いも随所に散りばめられている。 そこで今回ホンシェルジュでは、長女役を務める望月綾乃と結城の対談を敢行。本公演にちなみ、「家族」をテーマにおススメの本を3冊ずつ持ち寄ってもらい、舞台のことを中心に語り合ってもらった。

コントではなくコメディならではの滑稽さを大事に

―― もともとお二人は、どのような経緯で舞台の世界に入ったのでしょうか。

結城洋平(以下、結城) 僕は忍者になりたかったんですよ。

望月綾乃(以下、望月) え、ちょっとよく分からない(笑)。

結城 当時の事務所の人が、「うちに入ったら忍者になれるよ?」って言ったから「あ、そうなんだ!」と思って入ったんだけど、気づいたらお芝居のレッスンをしてた(笑)。

望月 (笑)。なんで忍者になりたかったの?

結城 物心ついた時から「カッコいいな」と思っていたんだよね。忍者って、全部自分のことをやるじゃない? お腹が空いたらイノシシ捕まえるし、病気になれば自分で薬を作る。お金がなくなったら大名の所へ行ってお金をもらって……という生活スタイルに憧れたのかも。

―― 自由であり、サバイバル精神もあると。

結城 もちろん、入口は「忍びの術」のかっこよさだったんですけどね。で、日光江戸村に行って忍者ショーを観た時に「あ、これだ」と思った。中三の時は、日光江戸村に直談判したんですよ。「僕、忍者になりたいんです」って。そしたら「18歳になってからね」って言われたので、やむなく高校へ進学して。それで事務所に所属し、気づいたら劇団所属の役者になってたんですよね。やっていくうちに、どんどんお芝居が面白いと思うようになっていました。もっちーは日芸だっけ?

望月 そう。演劇科を卒業しているんだけど、最初は「劇作コース」を選んだんだよね。しかもその理由は、「普通の4大に入るのはつまんなそう」「芸大とか変な人も多いだろうし、楽しそうな4年間になるんじゃないかな」というテキトーな理由(笑)。芝居が好きとかではなかった。だって、地元の北海道では、お芝居を観る機会なんてなかったし。だから、受験するにあたって付け焼き刃でケラリーノ・サンドロヴィッチさんや、松尾スズキさんの戯曲を読み始めたくらい。

―― そうだったんですか。

望月 大学に入ると、友達同士でお芝居をやる機会が多くて、持ち回りで脚本を書いたり演出をしたり、演じる側に回ったりしていたんです。それをずっとやっているうちに、出るほうが多くなってきて。劇作も、そんなに才能があるわけでもないことに気づき始め(笑)、同期と立ち上げた「ロロ」という劇団で役者をやるようになり、今に至ります。

―― じゃあ、お二人とも最初はそれほどお芝居に興味があったわけではなく、いろいろ経験していくうちに、「向いている」と気づいたわけですね。

望月 そうなんでしょうかね。まだ、自分でも向いているのかどうか分かってないんですけど(笑)。

結城 僕もそうだな。

―― お二人が出会ったのはいつ頃?

望月 2015年に劇団「ベッド&メイキングス」が、お台場の公園にテントを立てて野外劇『南の島に雪が降る』をやったんです。そのオーディションを2人とも受けて、それで共演したのがキッカケですね。

結城 もっちーとは芝居で絡むシーンはなかったんですけど、みんな飲みに行くのが好きな人たちで、しょっちゅう飲みに行ってたんですよね。で、ある時もっちーに「いや、酔ってるから言うけどさ」みたいな感じで話をしたら、「素面で言えないことを言うんじゃないよ!」って怒られて。

望月 あははは! 全然覚えてない。私もきっと酔っ払っていたんだね、すっごい恥ずかしい(笑)。

結城 でも、俺的にはそれで一気に距離が縮まった気がする。

望月 悪天候に見舞われるなど、テント設営の時から結構大変なお芝居だったから、その座組みは結束が固くなったんですよね。戦友みたいな感じで。

結城 僕が「結城企画」を立ち上げたのも、あの野外劇で一緒に組んだ人と、またやりたいなと言う思いが強くて、それがモチベーションになった部分は大きかったですね。もっちーも、前回出てもらった佐藤銀平さんもそう。ゆくゆくはコンプリートしたいと思っています(笑)。

―― 「結城企画」で今まで手がけてきたのはどんな作品ですか?

結城 第1回は、今回もやってもらっているヨーロッパ企画の大歳(倫弘)さんに脚本・演出をお願いした、『ブックセンターきけろ』という「記憶術」をテーマにしたお芝居でした。これは、「起源」がモチーフになっているんです。どういうことかというと、人類が今知っている「火・地・風・水」という4つのエレメント以外にも、まだ発見されていないエレメントがあるんじゃないかと。それを初めて発見した時のリアクションを、劇に出来たら面白いと思ったんです。

望月 なんか発想が忍者っぽいよね、エレメントとか(笑)。それは洋平くんが考えたの?

結城 そう。そこから大歳さんと話していく中で、「頭の中で記憶する」ということの起源についての芝居にしようと。それで「記憶術」がテーマになりました。

―― 第2回公演「くるみ割れない人間」は?

結城 これは単純に、「下北沢 OFF・OFFシアターでクラシックバレエをやりたい」というところから始まっています。脚本・演出は、劇団『犬と串』のモラルさんにお願いしました。

―― そして今回は、「家族」をテーマにした『瞬間、今、おれ、わたし、やるっきゃない』です。

結城 過去2公演はどちらもトリッキーなテーマだったので、今回はエッジの効いたものではなく、観に来た人たちがみんな共有できるお芝居がやりたいなと。それって何かなと考えたら「家族」だったんですよね。

―― これまで「結城企画」が手がけた作品は、どれもコメディ仕立てになっています。

結城 初めて芝居に触れる人の、間口になるような作品をコメディで作れたら……という思いがありますね。今回の芝居も、見えない主軸はシリアスなテーマなんですが、見せているところはその脇というか。「手みやげ」を巡っての兄弟喧嘩で、それを見せていくことで主軸が浮き上がってくるような、そんな作品を目指しています。

―― 望月さんは、コメディを演じるということについては?

望月 難しいですよね。作品を観て、それに対してどう反応するかに「正解」はないと思うんですけど、コメディだけは「笑ってくれたら正解」っていうことが明確じゃないですか。笑いを取りにいって、取れなかったら「失敗に」なるわけじゃないですか(笑)。私が芸人さんを素晴らしいと思っているのは、人を笑わせることが最も尊い行為だと思っているからなんです。私が演じるのはコントではなくコメディなので、「爆笑」を狙うわけではないんですけど、どこまで滑稽になれるか?というか。「こいつら、バカなことしてるなあ」って思ってもらえるように頑張りたいです。

―― さて、今回はお二人に、「家族」をテーマに本を3冊ずつ持ち寄ってもらいました。

結城 まずは僕から。こだまさんの『夫のちんぽが入らない』。ちなみに今回、お芝居のアフタートークでもこだまさんにゲストで来て頂くことが決まっています。この小説は夫婦の話なんですけど、いろんな形があるなというか、形すらないんだなということを教えてもらいました。夫婦や家族になったからには、次にこういうステップを踏まなければいけなくて、その次にこういうステップを踏んで……みたいなことは、別に必要ない。ステップを踏まなくても一緒にいられるんだよっていう。

『夫のちんぽが入らない』こだま

望月 確かにそうだよね。

結城 それと、自分が体験したことを私小説として書いているんですけど、その表現するパワーがすごいなと思いました。誰にも言えないし、知られたくない、でもみんなに分かって欲しいということを書いていて。それがこれだけ話題になるということは、多くの人が同じ思いを抱えているからだと思うんです。そこに切り込んでいく姿勢を、表現者として尊敬しますね。

望月 私は、海猫沢めろんさんの『キッズファイヤー・ドットコム』を。歌舞伎町のカリスマホストが、ある日赤ん坊を拾って。クラウドファンディングで子育てをする話(笑)。そのカリスマホストが立ち上げたサイト名が「キッズファイヤー・ドットコム」なんです。すごく面白いんですよ。赤ちゃんの命名権とか、1億円で将来介護してもらえるとか。「みんなの子ども」みたいにして資金を募るんですね。最初はメチャメチャ炎上するんですけど、カリスマホストだから、どんな時でもポジティヴなんです。「愛なしで子育てが出来れば、それは愛より尊いものだよね」みたいなセリフがあって。でも、赤ちゃんを拾って育てようと思う時点で、彼の中に「愛」はあると私は思うんですよね。

『キッズファイヤー・ドットコム』海猫沢 めろん

―― 確かに。「愛とは?」「家族とは?」という本質を突きつけられるような感じがしますね。

結城 続いて僕は、オードリー若林正恭さんの『表参道のセレブ犬とカバーニャ要塞の野良犬』をお薦めします。最初はキューバ旅行記のような始まりで、若林さん独特のシニカルなツッコミが入ったりしてメチャメチャ面白いんですけど、最後は「え、そのストーリーに繋がるの?」という展開が待っているんです。あまり詳しく話すとネタバレになるので控えますが「なぜキューバなの?」というこちらの疑問に対する納得のいく答えと、「父と息子」というテーマも描かれていて深く考えさせられました。

『表参道のセレブ犬とカバーニャ要塞の野良犬』若林 正恭

望月 じゃあ、私は「母と娘」をテーマにしたコミックを。『トクサツガガガ』という丹羽庭さんの作品。特撮オタク女子が主人公で、戦隊モノとかロボットものがすっごい好きで、部屋の中はフィギュアだらけなんだけど、周りの人にはそれを隠してOLをやっている子の話。彼女が一番バレたくないのはお母さんなんだけど、第12巻でとうとう「オタバレ」しちゃうんですね(笑)。その時の葛藤を描いているんです。漫画自体は1話完結になっていて、「母と娘」だけを扱っているわけではないんですけど、母親って良かれと思っていようがいまいが、娘に執着し「呪縛」を与えてしまうものじゃないですか。その葛藤をどう乗り越えていくのか。この作品は現在連載中で、今後の展開が楽しみなんですよね。

『トクサツガガガ 1 (ビッグコミックス) 』丹羽庭

結城 3冊目は、伊坂幸太郎『ゴールデンスランバー』を。全体が「家族の話」というわけではないんですけど、僕が一番グッと来たのは、主人公が「首相暗殺」の濡れ衣を着せられたときに、父親がレポーターからの取材に答えるシーン。「俺は息子を『信じたい』んじゃなくて、知ってるんだよ、あいつはやってないって」と言っていて、それを息子がテレビ越しに観るんですね。周りがなんと言おうと、自分は信じているっていう。無償の愛というか。そういうものに、僕は憧れているのかも知れないですね(笑)。

『ゴールデンスランバー (新潮文庫) 』伊坂 幸太郎

望月 私が最後に紹介するのも、「信じる」がテーマの本です。今村夏子さんの『星の子』。主人公が中学3年生の女の子で、両親が新興宗教に入信していて。周りの人たちからも白い目で見られてる。でも、両親のことは好きで、ずっとドライなトーンで描かれてて、それがちょっと怖くなるというか。主人公の子が、その宗教のことをどう思っているのかは全く描かれていなくて。でも、少しずつ家族が崩壊していく中で、女の子の見える景色が変わっていくんです。それを、家族で星を一緒に見上げるシーンで象徴的に描いていて。

『星の子』今村夏子

―― こうやってお話を伺っていくと、やはり「家族」の問題って、誰も避けては通れないものだと思いますね。お二人にとって「家族」とはなんでしょう?

望月 うーん、難しい質問だな……(しばらく沈黙の後)私は、「家族ってチームみたいだな」と思うんですよ。劇団もそうですけど、長く続けていくうちに家族みたいになっていくというか。

結城 そうだね。だって10年もやっていたら、家族と一緒にいる時間よりも長くなるしね。

望月 そう。だから「血のつながり」というよりは、「一緒にいた時間」なのかなって思いますね。あと、家族っていうのは唯一「頑張らなくてもいい関係性」というか。恋人とか友人とかだと、「恋人であるための努力」、「友人であるための努力」をしてしまいがちじゃないですか。その頑張りがいらない関係になれれば、血のつながりがなくても家族になれるのかなと思いますね。

撮影:黒田隆憲

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プロフィール

Yuuki
結城洋平
結城企画主宰

東京都国立市生まれ。2004年10月、『3年B組金八先生』第7シリーズでデビュー。以後、10年ほど劇団に所属し現在は独立。日本体育大学卒業。高校進路決定時、忍者になりたいという夢を抱え、母親とともに日光江戸村に直談判に行くが、年齢制限のため断念。日本体育大学へ進学した理由も大学の中で一番忍者に近そうだから。現在は役者に専念。職業柄、役作りの際の参考書籍として本を読むことが多い。

結城企画第三回公演
「瞬間、今、おれ、わたし、 やるっきゃない」
【脚本・演出】大歳倫弘(ヨーロッパ企画)
【公演日程】2018年6月27日(水)~7月1日(日)
【会場】下北沢・小劇場B1
【URL】http://yuukiyohey.wixsite.com/yuukiyohei

Mochi
望月綾乃
女優

劇団ロロ所属。北海道出身。ロロには立ち上げより出演、2009年正式加入。

ライターについて

Unnamed
黒田隆憲

90年代後半にロックバンドCOKEBERRYでメジャー・デビュー。山下達郎の『サンデー・ソングブック』で紹介され話題に。ライターとしては、スタジオワークの経験を活かし、楽器や機材に精通した文章に定評がある。2013年には、世界で唯一の「マイ・ブラッディ・ヴァレンタイン公認カメラマン」として世界各地で撮影をおこなった。主な共著に『シューゲイザー・ディスクガイド』、著著に『プライベート・スタジオ作曲術』『マイ・ブラッディ・ヴァレンタインこそはすべて』『メロディがひらめくとき』など。

プロフィール

結城洋平
結城企画主宰

東京都国立市生まれ。2004年10月、『3年B組金八先生』第7シリーズでデビュー。以後、10年ほど劇団に所属し現在は独立。日本体育大学卒業。高校進路決定時、忍者になりたいという夢を抱え、母親とともに日光江戸村に直談判に行くが、年齢制限のため断念。日本体育大学へ進学した理由も大学の中で一番忍者に近そうだから。現在は役者に専念。職業柄、役作りの際の参考書籍として本を読むことが多い。

結城企画第三回公演
「瞬間、今、おれ、わたし、 やるっきゃない」
【脚本・演出】大歳倫弘(ヨーロッパ企画)
【公演日程】2018年6月27日(水)~7月1日(日)
【会場】下北沢・小劇場B1
【URL】http://yuukiyohey.wixsite.com/yuukiyohei

望月綾乃
女優

劇団ロロ所属。北海道出身。ロロには立ち上げより出演、2009年正式加入。

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