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特集!あの人の本棚
300.

西野精治   (スタンフォード大学医学部精神科教授、同大学睡眠生体リズム研究所(SCNラボ)所長)


日本は世界一「睡眠偏差値」の低い国ってホント? スタンフォード式、人生を変える究極の疲労回復法とは

西野精治
米ミシガン大学が発表した調査によると、日本人の睡眠時間はなんと100カ国中、最下位!そう、日本は「世界一寝不足の国」だったのです。さらに日本人は、たとえ充分な睡眠時間がとれていたとしても、「寝つきが悪い」「寝ても疲れがとれない」「朝、起きられない」など熟睡できずに悩む人も多いと聞きます。

そこで、スタンフォード大学睡眠研究所のトップであり、30万部のベストセラー『スタンフォード式最高の睡眠』の著者である西野精治教授に、究極の疲労回復方法を伺いました。
日本は世界一「睡眠偏差値」の低い国ってホント? スタンフォード式、人生を変える究極の疲労回復法とは

日本人の約40%は「睡眠不足症候群」

―― 「日本が世界一寝不足の国」というのは衝撃の結果だったのですが、日本人はどれくらいの人が寝不足なのでしょうか?

西野精治教授(以下、西野) アメリカの国際診断基準では、睡眠時間が6時間未満の人は「睡眠不足症候群」と診断されるのですが、日本では6時間未満の人が約40%いると言われています。

―― 40%も!? ということは、日本は約半数の人が寝不足なんですね……。

西野 しかも日本人は、男性より女性の方が睡眠時間が短いというデータも出ています。ということは、日本の女性が世界で最も寝不足と言えるかもしれませんね。

―― なぜ日本では、男性よりも女性の方が睡眠時間が短いのでしょうか?

西野 日本も女性の社会進出が進み、男性と同等に働く女性が増えたにもかかわらず、従来のように家事や育児をするのは主に女性。日本の女性は、様々なタスクを一人で抱え込んでしまう人が多いのかもしれません。

最適な睡眠時間がとれていない人は、死亡率が1.3倍高い

―― 睡眠がしっかり取れていないと、人はどうなってしまうのでしょうか?

西野 日中のパフォーマンスが下がるだけでなく、寿命を縮めてしまいます。2002年のサンディエゴ大学が行った100万人規模の調査によると、アメリカ人の平均睡眠時間は7.5時間でした。その6年後、同じ100万人を追跡調査したところ、死亡率が一番低かったのは7時間眠っている人たち。そして短時間睡眠の人は、6年後の死亡率が1.3倍高いことがわかりました。

―― 睡眠不足だとパフォーマンスは下がるし死亡率は上がるし、デメリットばかりですね。

西野 さらに同大学の調査によると、短時間睡眠の女性は肥満度を表すBMI値が高いという結果も出ています。なぜなら食べ過ぎを抑制する「レプチン」というホルモンが出ず、太りやすくなるからです。

―― これは女性としては大問題ですね。特に、世界一睡眠時間が少ないと言われる日本女性は、危機感を感じずにはいられないでしょう。

恐怖!眠りの借金地獄「睡眠負債」

西野 睡眠不足の恐ろしさは、それだけではありません。私は睡眠が足りていない状態を「睡眠不足」ではなく、「睡眠負債」という言葉を使って表現しています。

―― 「睡眠負債」というのは、どういう意味でしょうか?

西野 気づかないうちにたまる眠りの借金、それが睡眠負債です。睡眠不足がたまって返済が滞ると、しまいには脳も体も思うように動かない「眠りの自己破産」を引き起こすのです。

―― こ、怖い……。

西野 というのも、眠りの返済は難しいのです。たとえば、本当は睡眠に7時間必要な人が、平日は仕事で忙しくて毎日4時間しか寝られなかった場合、5日で睡眠負債は15時間ほどになりますよね。それを週末にたくさん寝て解消しようとしても、土日の2日間で15時間多く眠るのは難しいでしょう?

―― 確かに、「好きなだけ寝てください」と言われても、そんなには眠ることはできませんね。週末の寝だめは現実的ではないんですね。

西野 その通り! つまり、睡眠時間が少なくていいショートスリーパー以外の普通の人は、できれば毎日7時間、最低でも6時間以上寝るのがベストということになります。それより少ない場合は、睡眠負債が溜まって、眠りの借金を引き起こしてしまうのだから。

睡眠の質は、最初の90分で決まる!

―― とはいえ現代人は忙しいので、その6時間さえ確保するのが難しい場合もあると思います。たとえば仕事の締め切りが迫っている時期などは、どうしても睡眠時間を充分にとれない時もあります。そういう場合はどうすればいいのでしょう?

西野 そんな方には、睡眠の質を高めることを勧めています。実は、最初の90分をしっかり眠ることができれば、質の高い睡眠をとることができるのです。

人間の睡眠は90分サイクルで、深い眠りのノンレム睡眠と浅い眠りのレム睡眠が交互に訪れます。そして最初の90分で一番深くて長く持続するノンレム睡眠が訪れるのですが、この時にもっとも多くの成長ホルモンが分泌されます。つまり、最初の90分の睡眠の質が悪いと、成長ホルモンは正常に分泌されないのです。

―― 成長ホルモンと聞くと、成長期の子供のみが出るホルモンと思いがちですが、大人も出るんですね!?

西野 そうです。成長ホルモンは、細胞の増殖や正常な代謝を促進させる働きがあるので、大人にとっても重要です。だから寝る時間がないのであれば、絶対にこの90分の質を下げてはいけません。

ぐっすり寝る人は、1日の過ごし方が違う

―― では、最初90分を深く眠るために、私たちは何をすればいいのでしょうか?質の高い睡眠をとるための1日の過ごし方があれば教えてください。

西野 まずは、朝起きたらカーテンを開けて太陽の光を浴びることが大切です。人間固有のリズムは1日24.2時間と言われています。ということは、1日12分長いので、少しずつ時間がずれ、何もしないといつの間にか入眠しやすいタイミングがずれてしまうんです。そこで朝ということを体に知らせるために、最も効果的なのが太陽の光を浴びることなのです。

―― たとえ曇りや雨の日でも効果はありますか?

西野 もちろん! 晴れの日以外も充分な効果があるので、毎日やっていただきたいですね。あとは目覚ましのアラームは2回予約するのがオススメです。1回目のアラームはごく微音で予約し、その約20分後に2回目のアラームを設定し起床するのです。

―― なぜ2回なのでしょうか?

西野 もし1回目の微音のアラームに気づく場合は、起きやすいタイミングということです。一方、もしこの1回目のアラームに気づかなければ、深いノンレム睡眠の状態なので、スルーしてしまってOK。なぜなら、2回目のアラームがなった時に、自然に起きやすいタイミングになっていることが多いからです。

そして、質の良い睡眠をとるためには、朝ごはんも欠かせません。人の体温は、朝から昼にかけて上がり、夕方以降に下がるようにできているので、朝に温かい飲み物を飲んだり朝食をとることで、より活動状態に入りやすくなるからです。

―― なるほど!では昼の過ごし方はどうでしょうか?

西野 睡眠負債が疑われる人には、昼寝を勧めています。30分未満の昼寝をすることでパフォーマンスが上がりますし、30分未満の昼寝をする人は、昼寝の習慣がない人に比べて、認知症発症率が1/7というデータもあります。そういった昼寝の効果を理解しているGoogleやNikeなどの西海岸の企業は、勤務中に昼寝を推奨しています。

でも、1つ注意が必要です。実は「1時間以上昼寝をする人」は「昼寝の習慣がない人」に比べて、認知症の発症率が2倍も高いという研究結果があります。ですから、もし昼寝をするなら30分程度がオススメです。

夜は体温と脳をコントロールしよう

―― 続いて夜の過ごし方ですが、意識しておくべきことはありますか?

西野 夜の過ごし方のポイントは2つ。1つ目は入浴です。先ほどもお話した通り、人間の体温は朝から昼にかけて上がり、夕方以降に下がるようにできています。夜に体温を下げることは、質の高い睡眠をとるために必須条件なのです。そこで、その体温コントロールで最も効果的なのが入浴。というのも、体温はひとたび上がると、その後より下がるようになっているから。入浴をすることで、効率良く体温を下げることができるのです。

―― お風呂に入るベストなタイミングはありますか?

西野 私達の調査によると、40度のお風呂に15分つかると、体温が元にもどるまで90分かかります。つまり入眠の90分前に入浴を済ませておけば、その後体温が下がっていき、90分後にスムーズに入眠できるというワケです。たとえばもし午前0時に寝たいのであれば、22時に入浴して15分湯船に浸かり、22時半には入浴を終えて、90分後の0時にベットに入ればいいんですね。

―― でも、その入浴の時間も、体温を下げるための90分も惜しいぐらい忙しい人もいらっしゃるかもしれません。そういう場合は、どうすればいいでしょうか?

西野 そんな方には足湯を勧めています。足湯で血行を良くして熱放射を促せば、入浴と同様の効果があります。入浴ほど体内部の温度の上昇が大きくはないため、その分深部体温を下げるのも短時間で済みますよ。

―― 忙しい時は、足湯を試してみようと思います。そして、夜の過ごし方のもう1つのポイントは何でしょうか?

西野 2つ目のポイントは、できるだけ脳を使わないようリラックスすることです。脳は興奮すると、交感神経が活発になり、体温が下がりにくく寝つきが悪くなってしまいます。ですから寝る直前に感情的になるような映画、テレビ、ゲームを楽しんだり、SNSやメールをチェックすることはあまり推奨できません。脳を興奮させないよう、むしろつまらない本を読むなど退屈なことをするのが眠るコツなのです。

また緊張したり考え事をすることも、脳を興奮させてしまうので、夜遅くまで仕事をしたり、悩み事を悶々と考えてしまうのもよくありません。寝る前は部屋を暗くして、音は消すかボリュームを落とすなど環境を静かに整えリラックスしましょう。

睡眠を犠牲にして働くのは、もうやめよう!

―― 最後に、睡眠に悩む読者にメッセージをお願いします。

西野 日本人の睡眠時間が足りないのも、すぐに寝つけなかったり熟睡できないのも、長時間労働によるところが大きいと思います。働いている時間が長ければ、その分緊張している時間も長くなり、脳が覚醒し眠れなくなってしまうからです。

私がみなさんに一番伝えたいのは、「睡眠を犠牲にして働くのは、もうやめよう」ということです。上司がまだ残っているから先に帰れない、付き合いで飲みに行かなければならないなど、様々な理由で長時間労働を強いられている人がいますが、それによって仕事のパフォーマンスも下がりますし、健康面での悪影響も引き起こします。睡眠に関する知識を学ぶことも大事ですが、それと同じぐらい自分の時間の使い方を見直すことも重要だと思います。

『スタンフォード式 最高の睡眠』 西野精治

スタンフォード式 最高の睡眠

『スタンフォード式 最高の睡眠』は各種メディアで大きく取り上げられ、睡眠本としては異例のシリーズ30万部を超えるベストセラーとなっています。また、韓国、台湾、中国をはじめ、トルコ、ブラジルなど世界各国で翻訳が決定しました。

『マンガでぐっすり! スタンフォード式 最高の睡眠』 西野精治

マンガでぐっすり!スタンフォード式 最高の睡眠

8/27に発売された西野教授の最新刊!睡眠について、マンガで楽しく学べる本です。

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プロフィール

西野精治
西野精治
スタンフォード大学医学部精神科教授、同大学睡眠生体リズム研究所(SCNラボ)所長

にしの・せいじ/医師、医学博士。大阪医科大学卒業後、1987年にスタンフォード大学医学部精神科睡眠研究所に留学。突然眠りに落ちてしまう過眠症「ナルコレプシー」の原因究明に全力を注ぐ。

1999年にイヌの家族性ナルコレプシーにおける原因遺伝子を発見し、翌2000年にはグループの中心としてヒトのナルコレプシーの主たる発生メカニズムを突き止めた。

2005年にSCNラボの所長に就任。睡眠・覚醒のメカニズムを、分子・遺伝子レベルから個体レベルまでの幅広い視野で研究している。

ライターについて

Writer 13
鮫川佳那子(さめこ)

NY在住ライター/ニューヨーク女子部♡主催。青山学院大学フランス文学科卒業後、サイバーエージェントに入社し広告制作・メディア編集・イベント企画運営に携わる。2015年より夫の海外転勤で渡米し、現在はニューヨークの新聞をはじめ様々な媒体でコラムや、海外で活躍する日本人のインタビュー記事を執筆。またNY在住の20~30代女性が約600名所属するコミュニティ「ニューヨーク女子部♡」を主催し、イベント企画運営も行っている。

プロフィール

西野精治
スタンフォード大学医学部精神科教授、同大学睡眠生体リズム研究所(SCNラボ)所長

にしの・せいじ/医師、医学博士。大阪医科大学卒業後、1987年にスタンフォード大学医学部精神科睡眠研究所に留学。突然眠りに落ちてしまう過眠症「ナルコレプシー」の原因究明に全力を注ぐ。

1999年にイヌの家族性ナルコレプシーにおける原因遺伝子を発見し、翌2000年にはグループの中心としてヒトのナルコレプシーの主たる発生メカニズムを突き止めた。

2005年にSCNラボの所長に就任。睡眠・覚醒のメカニズムを、分子・遺伝子レベルから個体レベルまでの幅広い視野で研究している。

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