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特集!あの人の本棚
301.

奥村知花   (本しゃべりすと、書籍PR)


なぜあの本は売れたのか?ベストセラーの舞台裏で活躍する、書籍PR奥村知花さんをインタビュー!

奥村知花
ベストセラーというと、その本を書いた著者に注目が集まりがち。しかしその裏には、本の魅力をより多くの読者に伝えるために奮闘している人たちがいます。

その一人が、書籍PRの仕事をしている奥村知花さん。奥村さんはこれまで、シリーズ累計100万部突破の10分で子供が寝てしまう絵本『おやすみロジャー』や、映画化もされた島田洋七さんの小説『佐賀のがばいばあちゃん』など、数々のベストセラーのPRを手がけてきました。

今回のインタビューでは、書籍PRとはどんな仕事なのか、より多くの人に本の魅力を知ってもらうためにどんなことをしているのか、について伺ってきました。
なぜあの本は売れたのか?ベストセラーの舞台裏で活躍する、書籍PR奥村知花さんをインタビュー!

書籍PRって、そもそもどんな仕事?

―― 奥村さんは、これまで多くの本のPRを手がけてきましたが、そもそも書籍PRとはどんなお仕事なのでしょうか?

奥村知花(以下、奥村) 一言でいうと、本の企画をテレビ、雑誌、新聞、ウェブ、ラジオなどのメディアに売り込むお仕事です。

テレビだったら番組の特集になるような企画、雑誌だったら記事になるような企画を各メディアに提案し、商品を紹介していただけるよう働きかけるのです。

―― たとえばダイエット本だったら、「最近、◯◯という新しいダイエット法が注目されています」というような企画を提案し、テレビ番組内で本を紹介いただいたり、著者に出演してもらったり……。そういったことでしょうか?

奥村 そうですね。テレビCMや新聞、雑誌などの広告枠を買うのではなく、視聴者や読者に喜んでいただけるような、メディア側も紹介したくなるような企画を提案しています。

―― メディアとしてはいい番組を作ることができて嬉しいし、その視聴者も新しい情報を得られて嬉しいし、出版社は本を紹介されて嬉しい。書籍PRはまさに三方よしのお仕事なんですね。

テレビのPRに向く本、向かない本の違いとは

―― 書籍PRはどのようなステップでお仕事を進めているんですか?

奥村 出版社さんから本のPRのご相談をいただいたら、まずはゲラを読んでPRできる要素がどれくらいあるかを確認します。

もしその本がメディアに露出する可能性が低く、PRに向かないと判断したら、出版社さんにその旨をしっかりお伝えし一度協議しますね。

―― PRに向く本、向かない本というのは、どのような点で判断するのです?

奥村 出版社さんからはテレビに出してほしいという要望が一番多いのですが、テレビだったら「絵になる要素がどれだけあるか」が重要です。

たとえば私がPRを担当した、子供が10分で寝る絵本『おやすみ、ロジャー 魔法のぐっすり絵本』(以下おやすみ、ロジャー)は、様々な情報番組に取り上げていただきました。

おやすみ、ロジャー 魔法のぐっすり絵本

『おやすみ、ロジャー 魔法のぐっすり絵本』 カール=ヨハン・エリーン

中には、複数回にもわたって特集してくださった番組もありました。それは、絵になる要素がたくさんある作品だったから、なんですよね。

―― どんな要素が、絵になりやすかったのでしょう?

奥村 たとえば、お母さんがこの絵本を朗読すると、それまで寝らなかった子供が目をこすったり、バタンバタンと体を動かしながらあくびをして、いつの間にか寝てしまう。その過程も可愛らしく撮れますし、保育園で保母さんが子供たちに朗読しているシーンや、スタジオでアナウンサーやタレントさんが朗読しているシーンも作れますよね。

―― なるほど!面白い絵がたくさん撮れますね。

奥村 あとは、テレビはビフォーとアフターの結果がとれるものが向いているのですが、そういう点でも『おやすみ、ロジャー』はテレビ向きだったと言えます。

そういう意味だと、ビジネス書や自己啓発書、エッセイというジャンルは、ビフォー・アフターの映像がなかなか作れなかったり、絵になる要素が少ないので、テレビのPRは難しいと言えます。

―― それらのジャンルの本だと、テレビ露出の可能性はゼロなのでしょうか?

奥村 ゼロではありません。著者自身のキャラクターが立っていれば、そのジャンルでもテレビに出演できる可能性はあります。

著者の仕事内容がちょっと変わっていたり、その人ならではの特徴があったり。たとえば、とてもか弱くて可憐な女性が仕事になると鬼コーチに変貌するなど、インパクトのあるキャラクターだとテレビの企画になりやすいですよね。そういった絵になる要素があれば、PRに向かないジャンルの本でもメディア露出のチャンスは充分にあると思います。

メディアが取り上げたくなる企画の作り方

―― PRに向く本だと判断した場合、次に奥村さんがすることは何でしょうか?

奥村 本を紹介してほしいメディアを分析します。テレビ番組だったら、番組構成がどうなっているのか、どんな流れで商品やサービスが紹介されているのかを研究します。

たとえばある情報番組では、最初に司会者から「今、こんな食材が大流行中です!」という紹介があってから詳細のVTRが流れて、「ではスタジオでも試食してみましょう」というような流れで15分のコーナーができているな、とか。

月曜日から金曜日までの情報番組だったら、月曜日はこういう特性があるな、水曜日はこういう特性だなと分析して、PRしたい本が通りやすい曜日の企画を考えます。

―― 曜日ごとの分析までするんですね!すごい!

奥村 なぜかというと、企画を売り込みするにあたって、どのような構成で番組が作られているか分からなければ、その番組にマッチした提案はできません。

「前回、こんな特集をされていましたよね。今、◯◯ブームがきているので、次回はこういう特集を組むこともできますよ」と提案できると、メディア側もイメージしやすいので、企画が通りやすくなります。ですから、直近の放送は少なくとも2~3回は見て分析してから企画を作っていますね。

―― 企画はどういった方に提案するのでしょうか?

奥村 その媒体によって、番組によって、企画が決まっていく過程もキーパーソンも違うんですよ。同じ局でも、ある番組ではプロデューサーがトップダウンで決めていくけれど、別の番組では構成作家さんが会議に案を出して決まるパターンもあります。

だから、「どうやって企画は決まっていくんですか?」と先方に聞いています。そうするとキーパーソンが分かるので、その人が興味を持ちそうな内容を提案できますし、彼らが懸念しそうなことを事前にカバーできるからです。

―― 毎回相手によってアプローチを変えているんですね。

奥村 また私は、最初からカッチリとした企画書を作らなくてもいいと思っています。まずは担当者にお電話で企画の概要をお話して、そこで感触が良さそうだったら、簡単な企画書を作って、番組を実際に作っているスタッフさんとディスカッションをするんです。そうすると、より面白い企画が生まれるんですよね。

最初から私の方で企画をカッチリ固めすぎてしまうと、その企画がアリかナシかで終わってしまう。「こういうこともできるよね」「ああいうこともできるよね」と議論する余白があった方が、いい結果に繋がることが多いんです。

―― 番組スタッフとのディスカッションから生まれた企画には、どんなものがありますか?

奥村 2月22日ニャンニャンニャンの猫の日に、日本テレビの朝の情報番組「スッキリ!」にて、『必死すぎるネコ』という写真集を取り上げていただいたことがありました。

必死すぎるネコ

『写真集 必死すぎるネコ』沖 昌之

この本はタイトル通り、「よく撮ったなぁ、この写真」と思わせる必死すぎるポーズの猫たちがたくさん掲載されている写真集。どんな企画にしようかと、番組のスタッフとディスカッションをする中で「猫の写真もさることながら、その写真を撮ろうと悪戦苦闘している人間の姿も面白い絵になるよね」というアイディアが出ました。

そこで、この本の著者で「猫カメラマン」の沖さんにレクチャーいただき、男性アナウンサーが必死すぎるネコの撮影に挑戦! 予想通り面白い絵が撮れたので、なんと16分間という大特集をしていただけました。

チャンスを活かすも殺すも、チームワーク次第

奥村 でもメディアから取材のお話をいただいたのに、著者や出版社さんとの連携が上手くとれていなかったために、チャンスを逃してしまうことがあります。

たとえば、著者が「このメディアには出たくない」など媒体の好き嫌いがありすぎたり、せっかくメディアから取材依頼があったとしても忙しくて対応いただけなかったりすると、その分露出の機会が減ってしまいます。ですから著者が協力的だと、とてもありがたいですね。

―― 著者がメディア出演に協力的だったことで、PRがうまくいった事例はありますか?

奥村 島田洋七さんの『佐賀のがばいばあちゃん』は成功事例の1つですね。島田さんは、この本に対して並々ならない想いがあって、どんなに小さな媒体からの取材依頼であっても、すべてのオファーを受けてくださったんです。そのお陰で多くのメディアに露出することができ、沢山の方にこの本を知っていただくことができました。

なかには、「そんなに小さい媒体に出て効果があるんですか?」とオファーを断る著者さんもいらっしゃるのですが、その媒体に出たことで別の媒体の方が見ていて、もっと大きなチャンスが来るかもしれない。選り好みをしたことで、チャンスの芽を自ら摘んでしまうのは勿体無いですよね。

もちろん、それぞれのご事情もあると思うので、すべてのオファーを受ける必要はないのですが、島田さんのようにフットワーク軽くご協力いただけると、それだけチャンスが広がると思います。

佐賀のがばいばあちゃん

『佐賀のがばいばあちゃん』島田 洋七

また書籍PRは、出版社との連携も重要です。先ほどお話した『必死すぎるネコ』も、出版社に迅速な対応をしていただいたことで販促に繋がりました。

2月22日にスッキリに出ることが決まると、出版社の編集者さんや営業さんがすぐに動いてくださりました。「スッキリで紹介されました!」と書かれた店頭用のPOPを作って、「予定通りにテレビで紹介されたら、このPOPと本を店頭に置いてください」と書店さんに伝えてくださったんです。

テレビでどんなに大きく取り上げられたとしても、本屋さんで本を見つけてもらえなかったら意味がない。ですから出版社とのこういったチームワークはとても大切なのです。

―― 書籍PRの仕事は、著者、出版社、メディアと色々な方が関わっているので、それぞれの立場の人を尊重し力を合わせていかないと上手くいくものもいかなくなる。PRの仕事はチームワーク命なんですね。

書籍PRに一番大切なのは、本への愛

―― ここまで色んな角度から、書籍PRをする上で大切な要素をお話いただきました。最後に、奥村さんが考える一番重要な要素は何だと思いますか?

奥村 その本に対する愛、だと思います。「この本は、こんな所もいいんです、あんな所も素敵なんです!」と夢中になって話したら、その熱量はより多くの人に伝わります。

また仕事をしていると色々と大変なこともありますが、「この本はすごくいい本だから、もっと多くの人に知ってもらえるよう頑張ろう!」とチームの一人一人がそう思ったら、必然的にいいチームワークを作れる。著者から、出版社から、メディアの方から、みんなに愛された本は、そういう力があるのです。

本への強い愛があれば、「この本の魅力を伝えたい!」というパワーになるし、どんな困難だって乗り越えられるのではないかと思います。

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プロフィール

奥村知花
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本しゃべりすと、書籍PR

1973年、東京生まれ。成城大学文芸学部卒。総合アパレル商社、レストラン業界を経て、2003年より書籍専門のフリーランス広報として独立。以後、新刊書籍のパブリシティ活動のほか、「本しゃべりすと」という独自の肩書きのもと、雑誌の特集記事や書評エッセイの連載執筆、ラジオ番組などでの書籍紹介を担当している。

ライターについて

Writer 13
鮫川佳那子(さめこ)

NY在住ライター/ニューヨーク女子部♡主催。青山学院大学フランス文学科卒業後、サイバーエージェントに入社し広告制作・メディア編集・イベント企画運営に携わる。2015年より夫の海外転勤で渡米し、現在はニューヨークの新聞をはじめ様々な媒体でコラムや、海外で活躍する日本人のインタビュー記事を執筆。またNY在住の20~30代女性が約600名所属するコミュニティ「ニューヨーク女子部♡」を主催し、イベント企画運営も行っている。

プロフィール

奥村知花
本しゃべりすと、書籍PR

1973年、東京生まれ。成城大学文芸学部卒。総合アパレル商社、レストラン業界を経て、2003年より書籍専門のフリーランス広報として独立。以後、新刊書籍のパブリシティ活動のほか、「本しゃべりすと」という独自の肩書きのもと、雑誌の特集記事や書評エッセイの連載執筆、ラジオ番組などでの書籍紹介を担当している。

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