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特集!あの人の本棚
41.

キン・シオタニ   (イラストレーター、文筆家)


旅好きイラストレーター、キン・シオタニが巡ってきた“本の旅”とは?

キン・シオタニ
さまざまなプロフェッショナルの考え方・つくられ方を、その人の読書遍歴や本に対する考え方などからひもといていくインタビュー。ゲストはイベントにテレビに幅広く活躍中のイラストレーターの「キンシオ」ことキン・シオタニさんです。今回のインタビューは特別版。キンさんがブックカバーのデザインを手がけた吉祥寺の「ブックス・ルーエ」にてインタビューを収録し、インタビューに登場する本でご自身でフェア棚を作っていただきました。
旅好きイラストレーター、キン・シオタニが巡ってきた“本の旅”とは?

人気イラストレーターの原点とは? ~表現をはじめるまで~

―― キン・シオタニさんと言えば、音楽とともにストーリーやセリフを込めながらリアルタイムで絵を描く独特なライブ「ドローイングシアター」が話題です。また、吉祥寺の書店、ブックス・ルーエのブックカバーも有名ですよね。私もこのブックカバーでキンさんの魅力に惹かれたので、まずはそもそもキンさんがイラストレーターをになったきっかけをお聞きしたいです。

キン・シオタニ(以下、キンシオ) 僕は最初、大学生の頃ですが、詩人を目指していたんです。でも、それがあるキッカケで詩人をスッパリと諦めました。でも何か表現して生活がしたくて、大学卒業後もフラフラしていました。何もしないのはモヤモヤするので、ドーナツ屋で本を読みつつ、ずっとハガキの裏にイラストを描いていたんです。それを見た友達が「ポストカードにして売ろうよ」って言って僕に代わって営業してくれて、置いてくれる場所があって、お店の人が気に入ってくれて、って……。それでそのままイラストレーターになった感じです(笑)。

―― 最初からイラストレーターを目指していたわけではなかったんですね。それは意外です。しかもイラストレーターになったキッカケも「これだ」という明確なターニングポイントがあったわけではないんですね。

キンシオ そうなんです。だから僕ってすごくツイてるんですよ。タイミングよくいい本やいい人と出会ったり、出来事があったりって。小さいものはもちろんあったけど大きい挫折もなかったし。あと、意外と打算的な性格なんですよ。それもよかったのかなと思います。イラストレーターって紙とペンがあれば稼げますし(笑)。

―― 深くお話を聞いていけばきっとそんな平坦ではないと思いますが(笑)。最初に詩人を目指されていたなんて興味深いです。あと、詩人を諦めたキッカケや、人との出会いも気になるところですが、せっかくなので、遡って順番にそのときの本との出会いも含めてお聞かせください! 本は小さい頃からよく読まれていたんですか?

キンシオ 本を本格的に読み始めたのは高校生の頃からですね。中学生までは学校の課題図書ばかりで、本はむしろつまらないなという印象でした。

―― それがなぜ本を読むようになったんでしょう?

キンシオ キッカケは太宰治です。自分のことを分かってもらえない苦悩を説明する独白体の文章がリズムがよくて、引き込まれていきました。ほかの太宰治読者もそうであった人は多いと思うんですが、「僕だけが彼を理解している!」って(笑)。そのときに、分かってもらえない自分の心の言葉とかを説明するというのに共感を覚えました。特に太宰治の場合は、弱いものの美学というか、弱いものの心の言い訳みたいなものに惹かれたんだと思います。特に自分が弱かったわけではないのですが、そういうものがカッコいいと思っていたんです(笑)。

―― そのときに読んでいた太宰治の本というのは具体的には?

キンシオ 『人間失格』と『東京八景』『もの思う葦』とかですね。太宰治ってお父さんは議員をやっていたような青森県のお坊ちゃん育ちで、僕は武蔵野の団地住まいのという全然違う境遇なのに、「太宰、分かるよ」って心の自我に火をつけられたんです。だから太宰治がキッカケだったのは間違いないですね。

人間失格 走れメロス もの思う葦

―― 太宰治で読書に目覚めて、ほかに何か読むようになったわけですよね?

キンシオ 僕は音楽は中学生の頃から好きで、その頃から日本の音楽より海外の音楽を聴いていました。イギリスの音楽が特に好きで、「ザ・スミス」っていうバンドをよく聴いていたんです。そのボーカルで詩を書いているモリッシーという人がいるんですが、彼はミュージシャンを辞めて詩人になれ、と言われるほどの文才の持ち主なんですね。彼の音楽は普通のフォーキーな感じなんですけど詩は太宰と構造的には似ていて、弱いものの強さというか、ネガティブな暴力性という感じです。だからモリッシーにも夢中になりました。僕の中での2大デカダンス巨頭ですね。自分の弱さを昇華して強さにする、「マイナス×マイナス=プラス」というと分かりやすいですかね。

モリッシー詩集

―― それでその2大巨頭に影響されて、キンさんは文章を書いたりといった表現はされてたんでしょうか?

キンシオ 表現をはじめるのはもう少し先ですね。僕はその頃、同時に一人旅をよくしていて、休みがあればどっかに行っていたんです。そのときに太宰とかをよく読んでいたりしたんですけど、彼らは自分との対話で生まれる矛盾とかを文章にしている。世の中に受け入れられない自分を文章に書くことによってプラスにしていたと思うんですが、僕はバリバリのテニス部でしたし、旅好きですし、活発だったんです。

―― でも、その太宰やモリッシーを読むこととと、活発なのは両方とも素のキンさんで、ご自分の中では矛盾していないんですよね?

キンシオ はい。普通だったらいじめられっ子がそういう太宰みたいなのに共感すると思うじゃないですか。でも僕は全然そんなことはなく、かけ離れていたぐらいです。でもなぜかは自分でも分かりませんが、そういうものがカッコいいと思ってたんですよ。もしかしたらパンク好きの人がそうであるように、世の中に対する反抗だったのかもしれません。反体制的なものを活動まで行くと左翼的なことになっていくんでしょうが、僕はそこまでの思想もなくて、あくまで「憧れ」として、太宰やモリッシーのような社会に受け入れられない人たちの独白に共感した、という感じですね。

―― なるほど。では、繰り返しになってしまいますが、その反抗が形になった、表現になったのはいつ頃ですか?

キンシオ 日記は実は小学校5年生からずっと書いていたんです。でもそれは本当に普通の日記で、太宰を読むようになってから、人に言えないようなことを書く別の日記を書いていました。『心の扉』と題した日記です。人に言えないことを書くことによって、親や社会への反抗へのはけ口にしていたと思うんです。多くの人がストレスを吐き出すときに叫んだり、人にしゃべったりすると思うんですが、僕の場合は書くことによって心のストレスが発散されることが分かったんです。とにかく『心の扉』を書き留めることによって、太宰やモリッシーのように浄化・昇華されてると思ったんじゃないかな……当時はですが。でもちゃんとした文章を書き出したのは、もう少し後になります。

キン・シオタニさんが誰にも明かせない思いを綴った『心の扉』ノート

―― 前のめりになりながら熱く語っていただいたこのインタビュー。まだまだ続きますが、今回はひとまずここまで。キンシオさんのこの次の“本の旅”はどこに行くのでしょうか?

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プロフィール

キン・シオタニ
キン・シオタニ
イラストレーター、文筆家

イラストレーター、文筆家。1969年生。ポストカードをきっかけにイラストレーターの道に。以後、ドローイングシアターと呼ばれる独自の手法や、落語家の立川晴の輔さんとコラボレーションしたイベントなどで人気を呼ぶ。ブックス・ルーエのオリジナルペーパーカバーは人気となり、布バージョンが発売されている。
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【取材場所:ルーエについて】
ブックス・ルーエ
吉祥寺駅北口のメインストリート、サンロード内にある書店。キン・シオタニさんのオリジナルブックカバーで人気。今回のフェア本棚は店舗入ってすぐ左手にあります。ぜひご覧ください!
(HP)http://www.books-ruhe.co.jp/

ライターについて

Writer 3
朝倉尚

フリーの編集者、ライター。幼少から常に本とともに過ごす。特によく読むジャンルは、ミステリ、ノンフィクション、歴史もの、エッセイ、マンガ。翻訳小説が少し苦手なので克服するために集中的に読書中だが、積ん読本が増えがち……。雑誌が大好き。尊敬する作家は椎名誠。猫2匹と同居中。野球ジャンキー。趣味はカエルグッズの収集。

プロフィール

キン・シオタニ
イラストレーター、文筆家

イラストレーター、文筆家。1969年生。ポストカードをきっかけにイラストレーターの道に。以後、ドローイングシアターと呼ばれる独自の手法や、落語家の立川晴の輔さんとコラボレーションしたイベントなどで人気を呼ぶ。ブックス・ルーエのオリジナルペーパーカバーは人気となり、布バージョンが発売されている。
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【取材場所:ルーエについて】
ブックス・ルーエ
吉祥寺駅北口のメインストリート、サンロード内にある書店。キン・シオタニさんのオリジナルブックカバーで人気。今回のフェア本棚は店舗入ってすぐ左手にあります。ぜひご覧ください!
(HP)http://www.books-ruhe.co.jp/

キン・シオタニ さんの本棚

太宰を抜け出し、客観的で哲学的になった時代 (キン・シオタニの選書)

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キン・シオタニ
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世の中のおもしろさに気づいた今、薦めたい本 (キン・シオタニの選書)

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