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特集!あの人の本棚
67.

江口 晋太朗   (編集者/ジャーナリスト)


コーヒーを飲むときは、自分の時間を大切にするとき。そんなときに、読みたい本とは。

江口 晋太朗
さまざまなプロフェッショナルの読書遍歴、本に対する考え方などをうかがうインタビューシリーズ。10/31(土)に神田・神保町で開かれるイベント「COFFEE COLLECTION around KANDA NISHIKICHO 2015」 を控え、本日から連載企画「本とコーヒー」を立ち上げます。初回のゲストは、編集者の江口晋太朗さん。「コーヒーに関する本」というお題に、果たしてどんな選書で応えてくださったのでしょうか。
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目黒で出会ったSWITCH COFFEE TOKYO

―― 江口さんはコーヒーはお好きですか? 

江口 もちろん好きですよ。以前、目黒に住んでいたのですが、家のすぐ裏に「SWITCH COFFEE TOKYO」というコーヒー屋があって入り浸っていました。

―― 入り浸るほどとは!

BLENZブレンズラテアート選手権2009で優勝したバリスタの方がひっそりとやっているお店で、店主の大西正紘さんにスペシャリティーコーヒーの豆についていろいろと教えてもらったんです。元々コーヒーは好きだったのですが、あまりコダワリはなかった。でも、大西さんに教えてもらって、ちょっとずつコーヒーの種類や味の違いについて覚えるようになりました。

例えば、産地。ブラジル産だとかエルサルバドル産だとか産地ごとでいろいろ味見をしてみたりとかしましたね。

―― 出会いによって知らなかったことを知っていくのはとても楽しいですよね。どのくらい入り浸っていたのですか。

江口 多いときは1日2回とか行ってましたね。

―― たしか現在は清澄白河にお住まいですよね?

江口 清澄白河はブルーボトルコーヒーの1号店が出店してから有名になりましたが、ぼくはARISE COFFEEに行って店主の林大樹さんとよく世間話をします。通うのは週1で週末の午前中。この地域のハブになっているお店です。

―― ブルーボトルコーヒーのすぐ側にあるお店でしょうか。ぼくも訪れたことがありますが、やわらかな雰囲気でした。

江口 ブルーボトルコーヒーのすぐ側にあるのは、焙煎所になっている1号店ですね。実はカフェの2号店が清澄庭園のすぐ側にあって、気分に併せて店を変えたりしています。

―― さて、そんな通のコーヒー店を渡り歩く江口さんに、そろそろ選書についてお伺いしたいと思います。今回は「コーヒーに関する本」を選書いただきましたが、どのようなテーマで選ばれましたか?

コーヒーを飲みながら読みたいソウゾウ(想像・創造)力を養う本

江口 テーマはソウゾウ(想像・創造)力です。

テクノロジーが進歩して、物事を一分一秒でも早くとか、LINEだったら即レスが普通で既読スルーが問題になったりだとかスピードが第一になっている。こういう時代だからこそ、ゆったり物事を考えたり妄想したりすることが必要だと思いました。

コーヒーを飲むってパーソナルな行為じゃないですか。コーヒーを飲むってときこそ自分の時間を大切にするというか。例えば、妄想をしてみたり未来のことを考えてみたり。逆に過去をちょっと振り返ってみたりとか。作る創造と考える想像。この両方を兼ね備えた読書を提案できないかな、と思い選びました。

―― コーヒーを飲みながら、想像し、創造するための本ということですね。それぞれの本の魅力を教えてください。

クラフトエヴィング商會で「普段のものの見方を変える」

 

江口 1冊目と2冊目をまとめて紹介します。クラフトエヴィング商會の『星を賣る店』と『じつは、わたくしこういうものです』です。ほかにも取り上げたかったのですがちょうど手元にあったのでこの2冊を選びました。

―― クラフトエヴィング商會は、2014年の1~3月に展覧会が開催されていましたね。たしか場所は世田谷文学館で。

江口 『星を賣る店』はその展覧会の図録です。前半部分は展覧会の作品紹介で後半がクラフトエヴィング商會の著作や装幀を手がけた本の紹介。もう一冊の『じつは、わたくしこういうものです』は架空の職業紹介をしている本ですね。

クラフトエヴィング商會の本は独特のストーリーテリングで、空想上のものをつくったり考えたり、存在しない職業をあえて考えてみたりしています。この感じ方がクリエイティブなものだし、普段のものの見方を変える、ちょっと視点を変えるという感覚に触れられるんです。

―― 世界をずらして見るというイメージですよね。

赤瀬川原平で「世界をずらして見る」

江口 そう。その「世界をずらして見る」という流れから選んだのが3冊目の赤瀬川原平『妄想科学小説』です。これは赤瀬川原平が亡くなったあとに出たショートショート集で過去の文章からの選集になっています。さらっと読めるものばかりで、特に『マイホーム計画』はおもしろいですね。

―― 赤瀬川原平というと『超芸術トマソン』が有名な前衛芸術家ですよね。小説も書くのですね。

江口 そうなんですよ。現実を拡張していくような作品ばかりです。

―― SFとは違うのですか?

江口 SFではなく現実世界のパロディです。

『妄想科学小説』では、人が衝動的にしてしまう動きとか行動とか癖、そういった行為を面白おかしく書いています。ぼくはそれが人間の行為の価値やおもしろさを浮き彫りにすると思っていて、例えば、『マイホーム計画』では「マイホームを持つ」という行為を面白おかしく書いています。

そういった人間が普段してしまうようなちょっとした非論理的な行為こそが創造力につながるんじゃないかと思っているんです。

―― ここまでは、「想像力を働かせるような本」という切り口での本でした。次はどんな本でしょうか?

あの日見た未来のおもしろさ

江口 想像力を働かせたあとは、自分たちを過去に置いて見てみようと考えました。そこで選んだのが『昭和ちびっこ未来画報』です。1970年頃に夢見た「未来はこうなっているかもしれない」という妄想を描いている本。いわゆるドラえもん的な発想ですよね。

―― 「あの日見た未来」ですね。

江口 読むと分かりますが、本当に実現されたものもあれば、いまから見ると面白おかしいものもあるわけじゃないですか。「2061年の東京」とか「空飛ぶバス」とかいま読むとおかしいですよね(笑)

―― 「チューブの中を車が通っている」とかですね(笑)

江口 1970年の万博のときに描いた未来像を、逆に現在、振り返ってみたときの面白さと当時の想像力の豊かさ。ぼくらが未来のことを考えたときにこの本に載っているような突拍子のないことは考えられないじゃないですか。

例えば、iPhoneがもっと小さくなるとか高性能になるとかウェアラブルでもっと便利になるとか。テクノロジーを調査していると未来像が見えすぎてしまって、そこにつまらなさを感じるんです。

(次回へ続く)

ホンシェルジュは、10/31(土)に神田・神保町で開かれるイベント「COFFEE COLLECTION around KANDA NISHIKICHO 2015」 を応援しています。このコーヒーイベントは、7種類のテイスティングやバリスタたちとのコミュニケーションを通して、味や香りの違いを楽しんだり、コーヒー豆が辿ってきた長い旅に思いをはせたり、“一杯のコーヒーに込められた物語”を感じてみることができます。もし興味がある方がいらっしゃいましたら、以下のバナーからサイトを見てみてください。

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プロフィール

江口 晋太朗
江口 晋太朗
編集者/ジャーナリスト

TOKYObeta Ltd. 代表取締役/ NPO法人スタンバイ理事

1984年生まれ。福岡県出身。編集者、ジャーナリスト。TOKYObeta Ltd.代表取締役。情報社会の未来やソーシャルイノベーション、参加型市民社会のあり方などをテーマに、領域を越境した企画制作やプロデュース活動、リサーチ、メディア運営を行う。コミュニティデザインマガジン「マチノコト」を運営するNPO法人スタンバイ理事、アートプロジェクトを推進するNPO法人inVisible理事、インディーズ作家を支援するNPO法人日本独立作家同盟理事などを務める。ネット選挙解禁に向けて活動したOne Voice Campaign発起人。Open Knowledge Foundation Japan、Code for Japanのメンバーとしてオープンガバメントを推進する活動も行う。著書に『ICTことば辞典』(三省堂)『パブリックシフト ネット選挙から始まる「私たち」の政治』(ミニッツブック)など。

ライターについて

和氣正幸
和氣正幸

リアル本屋開業を目指す本屋好き。ブログ「BOOKSHOP LOVER」を中心に活動。同名のネット古本屋も営み、「Cannes Lions 2013 Book Project」ではプロデューサーを務める。本をキーワードに様々な分野で活躍中。

プロフィール

江口 晋太朗
編集者/ジャーナリスト

TOKYObeta Ltd. 代表取締役/ NPO法人スタンバイ理事

1984年生まれ。福岡県出身。編集者、ジャーナリスト。TOKYObeta Ltd.代表取締役。情報社会の未来やソーシャルイノベーション、参加型市民社会のあり方などをテーマに、領域を越境した企画制作やプロデュース活動、リサーチ、メディア運営を行う。コミュニティデザインマガジン「マチノコト」を運営するNPO法人スタンバイ理事、アートプロジェクトを推進するNPO法人inVisible理事、インディーズ作家を支援するNPO法人日本独立作家同盟理事などを務める。ネット選挙解禁に向けて活動したOne Voice Campaign発起人。Open Knowledge Foundation Japan、Code for Japanのメンバーとしてオープンガバメントを推進する活動も行う。著書に『ICTことば辞典』(三省堂)『パブリックシフト ネット選挙から始まる「私たち」の政治』(ミニッツブック)など。

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