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特集!あの人の本棚
72.

紀伊國屋書店新宿南店   (大手書店チェーン・紀伊國屋書店の新宿南店)


『セクシープロジェクトで差をつけろ!』は仕事のバイブル。国際協力NGO職員が選んだ本棚

紀伊國屋書店新宿南店
紀伊國屋書店 新宿南店と出版社7社による共同企画とで行われてきたフェア「ソーシャルデザインの本棚」。このフェアが行われた経緯を「前編」で語っていただいた。後編では、選書のポイントや、「ソーシャルデザインの本棚」の今後の展望について掲載していく。
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『走れ!移動図書館』の著者・鎌倉幸子さんによる選書の切り口とは

ーー 鎌倉さんはどういった基準で選書されたのでしょうか?

鎌倉幸子(以下、鎌倉と表記) 先ほど(前篇はこちら)岩田さんがおっしゃっていたように、必ずしも「ソーシャルデザインの本」というわけではなくて自分が読んで楽しかったり参考になったりした本を選んでいます。

岩田 鎌倉さんとの打合せの際に例として挙げたのは、2007年か2008年に、慶応SFCの学生と組んで社会起業家のフェアを行ったときの切り口です。「社会起業家っぽい本」だったんですね。選んだ本に書いてある言葉で「社会起業家っぽさ」を感じる本であればジャンルを問わず並べるというフェアでした。当時、慶応SFCで教えていた井上英之さんが音頭を取っていたものですね。

おもしろかったのが、このとき井上英之さん本人が選んだのがマンガの『ワンピース』だったことです。

ーー 社会起業家が『ワンピース』を選ぶ。意外な組み合わせですね!

岩田 選んだ理由を伺ったところ、『ワンピース』第8巻の「……全身に何百の武器を仕込んでも、 腹にくくった一本の槍〟にゃ、 敵わねェこともある…」という言葉が社会起業家の信念に通じる、と井上さんはおっしゃっていました。そういう切り口って良いですよね。

ーー ドン・クリーク篇で登場した赤足のゼフの台詞ですね。

岩田 この井上英之さんの例のように、「ソーシャルデザイン」に直接かかわらなくても各人が考える「ソーシャルデザインっぽい本」を選んでいただくと面白いのでは、と思って鎌倉さんと打合せをしていました。

鎌倉 わたしや鈴木奈央さん以外の「著者の本棚」も絵本だったりマンガだったり。その著者の「人となり」が表れているように思います。

ーー では、あらためて「著者の本棚」で選書された本の紹介をお願いします。

鎌倉 『宇宙船地球号操縦マニュアル』から紹介します。

「取扱説明書のついていない地球という乗り物を、全人類はどのように操作するべきか」という本です。わたしたちは、まずは目的地がどこかを、話し合うことからはじめなければいけないのかもしれないけれど、そういうスケールの大きな視点を教えてくれる本です。

ーー 地球社会をデザインするという視点でしょうか。興味深いです。

鎌倉 『セクシープロジェクトで差をつけろ! 』は、誰一人振り向きもしなかった仕事を、注目されるものすごいプロジェクトに変えるための方法論が書かれています。セクシープロジェクトという甘美な名前に思わず手をとってしまったあの日から、わたしの仕事のバイブルです。

ーー セクシープロジェクト(笑) すごい名前ですね。次の本は?

鎌倉 『ドキュメント 戦争広告代理店〜情報操作とボスニア紛争 』は、書き手として選んだ本です。

「ペンは剣よりも強し」ということわざがあります。文章で表現される思想は武力よりも強い力を持つというこの言葉。一筋の希望を見せてくれる好きな言葉です。でも、いま、ペンを握り、言葉を考え、世論を喚起する広告代理店の「情報操作」が戦争の勝敗を決めてしまうとしたら。8月の、日本で、読んでもらいたい1冊です。

ーー プロパガンダについての本なんですね。

鎌倉 次は『「あの日」からぼくが考えている「正しさ」について』です。

2010年に「無縁社会」ということばが生まれ、2011年の東日本大震災では、「絆」という正反対のことばが叫ばれました。この5年間で、原発の問題やテロなどが起き、それまでみんな同じ歩幅で歩いていたかに見えた社会が変わりつつあるように思います。 変化の只中にあるわたしの頭の中は、混乱していて、暗くて、足元が見えなくて。ともすれば、前に進むにも、どちらが前なのかがわからなくなってしまいます。そういうときだからこそ同調圧力のない、自分軸で「正しさ」について考えていきたい。そのための1冊です。

鎌倉 最後は、『図書館は、国境をこえる』。わたしが所属しているシャンティ国際ボランティア会の活動をまとめた本です。 わたしはシャンティのもとで、9年間、カンボジアで小学校に図書室を作る仕事をしていました。内戦が終わったばかりのカンボジアで、子どもたちの手にあるものが武器ではなく、本であってほしいと切に願いました。このカンボジアでの活動も含めたアジア諸国でゼロから図書館を30年もの間、作ってきた国際協力NGOの活動記録です。

ーー 「著者の本棚」に合わせて、イベントもされたのでしょうか?

鎌倉 トークイベントを2回させていただきました。編集者とお話させていただいた8月6日のイベントと、「社会貢献を仕事にする」というテーマで話した8月23日のイベントです。

後者のテーマを「社会貢献を仕事にする」にしたのはなぜかというと、仕事としてNPOや社会起業家を志す人が最近多いからです。紀伊國屋書店さんのイベントではないですが、ほかの場所で「NGOではたらく」という切り口で話をさせていただいた際は約50名の方に参加していただけましたし、アドバイスを求められることも多いんです。

ーー 鎌倉さんのブログ「本を片手に、どこまでも」に「著者の本棚」の本で読書会をしたいと書かれていましたが……。

鎌倉 タイミングが合わなくて、まだできていません。本当は、著者の本棚にある5タイトルを1日ずつで全部で5日間の読書会をしたかったんですよ。ですが、ぜひ今後やってみたいですね。

ソーシャルデザインの敷居を下げたい

ーー 紀伊國屋書店新宿南店として、「ソーシャルデザインの本棚」を今後どうしていきたいか、というのはありますか?

瀧 「ソーシャルデザインの敷居を下げる」というテーマであたらしいことをやりたいです。なぜかというと、ソーシャルデザインに関わっている方というのは一部の能力の高い人がその才能を惜しげもなく社会のために使って頑張っているんですね。ただ、これが一般の方から見ると「すごいなー」とか「自分にはちょっと真似できない」という状況になってしまっている。

鎌倉さんもそうですが、実際に活動されている方というのは、当然、お金のためだけじゃない特別な思いがあると思うんです。ところが、いかんせん一般の方にとって現状では敷居が高い。経済的なことや能力のことだけじゃなく、活動されている方の特別な思いが伝わっていないんですね。そこで、「ソーシャルデザイン」という意味の枠を広げることで、一般のかたにとっての敷居を下げたいんです。

著者の本棚の第一回目に協力していただいたグリーンズの鈴木奈央さんが「料理やホームパーティーもソーシャルデザインだ」とおっしゃっていました。なら、「DIY」などほかのこともソーシャルデザインと言っていいんじゃないか。ただ、そのままDIYフェアを「ソーシャルデザインの本棚」でやっても面白くないと思うんです。

ーー DIYとソーシャルデザインをつなげる何かがないと、その本棚に来るお客さんはDIYに興味がある方だけになってしまうかもしれない。

瀧 そうです。それではお客さんと著者の距離は縮まらない。やりがいや熱意を持って、たのしくイキイキとしている著者の方々のことをそのまま棚に表現できればと思うのですが。そんな切り口を探しています。

あとは、なにかしら突き抜けたことをしたいですね。そうじゃないとネットでシェアされませんから。でも、炎上はしたくないですよ(笑)

ーー 炎上したいひとは少ないと思います(笑)

瀧 売れたフェアはどれも何かしらが突き抜けています。ただ、それが「何か」と言われると難しいのですが。それでもチャレンジはしていきたいです。

ーー 一般の方が「ソーシャルデザインの本棚」で、これをやりたい、と企画を持ち込むことはできるのですか?

瀧 「ソーシャルデザインに関わる活動をされている方を応援するため」ということであれば大歓迎です。企画を持ち込みする方が著者でなく応援している方でも構いません。とにかくソーシャルデザインに関わる活動をされている方が、この本棚をつかって自分の活動を啓蒙したいということであれば、それはぜひしていただきたい。

ーー 「ソーシャルデザインの本棚」という舞台で自身の活動を表現したり啓蒙して欲しいということですか?

瀧 その通りです。実は、その表現に本を一切使っていなくても構わないと思っています。

ーー 本屋なのに「本を一切使わないフェア」でも良いというのは凄いですね!

瀧 「自分の活動を世に知らしめたい方がソーシャルデザインの本棚をつかいたい」ということであれば、「本を売ること」にはこだわらなくても良いと思っています。企画を持ち込んでいただいたらどうすればいいのか、いっしょに考えていきたいですね。

ーー ソーシャルデザインの敷居を下げるために、ですね。

初代担当者である神矢さんがはじめた「ソーシャルデザインの本棚」ですが、ぼくの代ではもっと発展させたいんです。初代が作って、二代目が継承して、三代目であるぼくは発展させたい。もっとこの棚に動きを持たせたいです。そのためにも、なにか面白い企画があればどんどんいただきたいな、と。

ーー これからの「ソーシャルデザインの本棚」がたのしみです。本日はありがとうございました。

書店巡りの一覧 インタビューの一覧

プロフィール

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鎌倉 幸子
作家・ライター

■プロフィール
鎌倉幸子
公益社団法人シャンティ国際ボランティア会広報課長補佐兼東日本大震災図書館事業アドバイザー
青森県弘前市生まれ。アメリカ・ヴァーモント州にあるSchool for International Trainingで異文化経営学の修士号を取得。
1999年3月、シャンティ国際ボランティア会に入職。同年4月より、カンボジア事務所図書館事業課コーディネーターとして500を超える小学校に図書室を設置する。2007年より同団体の東京事務所に勤務。2011年より現職。東日本大震災発生後、津波で公共図書館が甚大な被害を受けた岩手県陸前高田市、大船渡市、大槌町、山田町で「いわてを走る移動図書館プロジェクト」を立ち上げを行なった。
著書に『走れ!移動図書館』(ちくまプリマー新書)、共著に『図書館は、国境をこえる』(教育史料出版会)がある。

公益社団法人シャンティ国際ボランティア会
Hp http://sva.or.jp/
Facebook https://www.facebook.com/ShantiVolunteerAssociation
Twitter https://twitter.com/sva_1981

鎌倉幸子
Blog http://kamakurasachiko.com/
Twitter https://twitter.com/1192_sachiko

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瀧 一馬
紀伊國屋書店新宿南店 5階人文書担当

書店員

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岩田 大志
英治出版株式会社 プロデューサー

英治出版プロデューサー。
神奈川県横浜市生まれ。
大学時代は有隣堂でアルバイト勤務。大学卒業後のブックファースト勤務を経て2006年12月から現職。主に書店、取次会社への販売促進を担当。
2011年の東日本大震災後、社内にて『災害時のこころのケア』小冊子制作を提案。ピースマインド・イープ株式会社の協力を得て10万部の小冊子を制作、主に被災地の書店店頭を中心に無料配布を実施。
2012年より朝日出版社、学芸出版社、春秋社、晶文社、羽鳥書店、フィルムアート社とともにソーシャルデザイン関連書を集めたブックフェアをプロデュース。3年間で全国80を超える書店でのブックフェア開催を実現。

英治出版株式会社
HP http://www.eijipress.co.jp/
Facebook https://www.facebook.com/eijipress/
Twitter https://twitter.com/eijipress

ライターについて

和氣正幸
和氣正幸

リアル本屋開業を目指す本屋好き。ブログ「BOOKSHOP LOVER」を中心に活動。同名のネット古本屋も営み、「Cannes Lions 2013 Book Project」ではプロデューサーを務める。本をキーワードに様々な分野で活躍中。

プロフィール

鎌倉 幸子
作家・ライター

■プロフィール
鎌倉幸子
公益社団法人シャンティ国際ボランティア会広報課長補佐兼東日本大震災図書館事業アドバイザー
青森県弘前市生まれ。アメリカ・ヴァーモント州にあるSchool for International Trainingで異文化経営学の修士号を取得。
1999年3月、シャンティ国際ボランティア会に入職。同年4月より、カンボジア事務所図書館事業課コーディネーターとして500を超える小学校に図書室を設置する。2007年より同団体の東京事務所に勤務。2011年より現職。東日本大震災発生後、津波で公共図書館が甚大な被害を受けた岩手県陸前高田市、大船渡市、大槌町、山田町で「いわてを走る移動図書館プロジェクト」を立ち上げを行なった。
著書に『走れ!移動図書館』(ちくまプリマー新書)、共著に『図書館は、国境をこえる』(教育史料出版会)がある。

公益社団法人シャンティ国際ボランティア会
Hp http://sva.or.jp/
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鎌倉幸子
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Twitter https://twitter.com/1192_sachiko

瀧 一馬
紀伊國屋書店新宿南店 5階人文書担当

書店員

岩田 大志
英治出版株式会社 プロデューサー

英治出版プロデューサー。
神奈川県横浜市生まれ。
大学時代は有隣堂でアルバイト勤務。大学卒業後のブックファースト勤務を経て2006年12月から現職。主に書店、取次会社への販売促進を担当。
2011年の東日本大震災後、社内にて『災害時のこころのケア』小冊子制作を提案。ピースマインド・イープ株式会社の協力を得て10万部の小冊子を制作、主に被災地の書店店頭を中心に無料配布を実施。
2012年より朝日出版社、学芸出版社、春秋社、晶文社、羽鳥書店、フィルムアート社とともにソーシャルデザイン関連書を集めたブックフェアをプロデュース。3年間で全国80を超える書店でのブックフェア開催を実現。

英治出版株式会社
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