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特集!あの人の本棚
74.

小出祐介 (Base Ball Bear)   (ミュージシャン)


ギミックとエモーショナルの調和にめちゃくちゃ感動した(小出祐介インタビュー・前編)

小出祐介 (Base Ball Bear)
さまざまなプロフェッショナルの考え方・つくられ方を、その人の読書遍歴や本に対する考え方などからひもといていくインタビュー。今回は11月11日にアルバム『C2』を発売したBase Ball Bear・小出祐介さんにご登場いただきました。
ギミックとエモーショナルの調和にめちゃくちゃ感動した(小出祐介インタビュー・前編)

ギミックとエモーショナルの調和にめちゃくちゃ感動した

―― 小出さんの読書体験のルーツは?

小出祐介(以下、小出) もともと本が多い家だったんです。海外の小説集、分厚い図鑑サイズの本。親父のお姉さんが、とにかく本好きだったらしくて、その蔵書も結構置いてありました。それに親父もお袋もマンガ好きで、子供ながらに「なんかマンガ多いな」とは思ってましたね。だから、成長するにつれて自然とマンガは読むようになって。あと、我が家のお婆ちゃんの教育方針として、図書費はお小遣いに含まない……というルールがあって、お菓子やジュースは自分のお小遣いから捻出しなくちゃいけないんですけど、本の購入費用に関しては負担無しで済んだ。それもあって、マンガや本は買いたい放題でした。子供が育つ上で重要なことだからと、よく本屋にも連れて行ってくれましたね。自分は同じ本を何回も読むタイプなので、図書館で借りたりすると返却期限が気になって読めなくて。借りて、返すということが向いてないんです(笑)。だから、本屋で買ってもらったマンガや本をずっと読んでました。

―― 小説を読み始めるようになったのはいつ頃からなんですか?

小出 小学校高学年くらいですね。ホラー系から入りました。学校に置いてある『学校の怪談』みたいなのじゃ物足りなくなってきて、江戸川乱歩とかの古典的な作品を読み出すんです。でも、ゴシックなホラーっていうのがよくわからなくて、もっと実話怪談的なものが読みたくなって、のちの『新耳袋』みたいな実話系怪談集を好んで読み始めたのが、たぶん僕の最初の小説体験だと思います。

―― 怪談集っていうのが面白いですね。その後はどんな遍歴を?

小出 怪談の次はミステリー小説ですね。それも古典的なものから最初入ろうとして失敗するんですよ。『オリエント急行殺人事件』とか読み出すんですけど、なかなか情景が浮かばない。横溝正史の金田一耕助シリーズも読んでみたけど、1920〜1930年代の景色がわからないから、ぜんぜんピンとこなかった。当時、マンガの『金田一少年の事件簿』が流行っていて、同作のノベライズ版が出たんです。それがきっかけですね。これだったらキャラクターもわかるし、情景も浮かぶから楽しめると。その後はコンスタントに推理小説を読んでました。中学生、高校生くらいの時です。

―― 推理小説のどこに惹かれたのでしょう?

小出 推理小説っていうジャンルの面白さですかね。推理小説って「型」があるんですよ。例えば、いわゆる犯人探しは「フーダニット」っていうんですけど、どうやって犯罪を犯したのかは「ハウダニット」といって、その理由を「ホワイダニット」という……みたいな。その中にも細かい「型」があって、つまり「あるある」なんだと。「推理小説あるある」ですよね。このジャンルにはそういうところがあるんだと気づき始めた頃、ちょうど東野圭吾さんの名探偵の掟シリーズを読んでいて。普通の推理小説だったらアンフェアだと言われちゃうようなことを敢えて題材として扱って、「本格推理小説」っていうのをメタ的に扱った作品なんです。まあ、コメディ的なところもあるんですけど、それが面白いなと思って。推理小説というジャンルの構造がギミカルになればなるほど、音楽でいうと速弾きみたいだなと思ってたところがあったので……。

―― 様式美的な。

小出 そう。だんだん様式美になってきて、速ければ速いほどいいみたいな。もともとの意味が薄れてきて、「型」だけがエクストリームなものになっていく。でも、その中でも東野圭吾さんは違ったんです。本格推理小説からスタートしてるんですけど、推理小説の可能性を作中でずっと検証している。いろんな「型」を使いつつ、どれだけ面白いことができるかってことを、「型」の幅を広げるようなアプローチでされてたと思うんですよ。で、すごくロジカルに形成されている一方で、今度はドラマの方に寄っていくんです。つまり、最初は記号的に人物を動かしていたんだけど、その登場人物の心理描写に傾いていった。技巧から入ったのに心理描写の方に興味が移っていく。それが『白夜行』みたいな人間ドラマになり、『殺人の門』のように「なぜ人は人を殺すのか?」ということに重きを置くようになっていった。それを追求していった後、『容疑者Xの献身』で直木賞を受賞するんです。東野さんが得意としてきたギミックを心理描写の中で展開してみせた推理小説で、めちゃくちゃ感動したんですよ。ギミックとエモーショナルの調和が取れているというか。しかも、その両方の歯車が作用しあって事件の解決に向かう。その構造美に感動して、号泣したんです。19〜20歳くらいの時だったと思います。

Photograph by Yoko Yamashita

(後編に続く)

Base Ball Bear『C2』とリンクする「視点」にまつわる本 Vol.1

SIREN Officlal Perfect Guide:サイレン公式パーフェクトガイド

SIREN Officlal Perfect Guide:サイレン公式パーフェクトガイド

SIREN MANIACS:サイレン公式完全解析本

SIREN MANIACS(サイレン マニアックス)

「SILEN」というホラーゲームにまつわる本です。「サイレン公式パーフェクトガイド」は、文字通りゲームを最後までクリアするためのガイドブック。このゲーム、時間軸が飛びに飛びまくるし、主人公が何人もいる。複数の人物を操作していくんですけど、ようやく最後までクリアした時、さっぱり何の話かわからなかったんです(笑)。羽生田村っていう舞台があって、そこでいろんな怪異が起きている。死人っていうゾンビが出てくるんですけど、ゲームの中では殺せない。だから、逃げに逃げてこの村が一体どうなっているのかを解明する……っていうのが、ゲームの大まかな話で。でも、断片的な情報はわかるんですけど、これは何が起きてるんだろう?って。

それを解析したのが「サイレン公式完全解析本」です。これを読んで、やっとこのゲームがどういうものなのかわかった。逆に言えば、これを読まなければ何のゲームかわからずに終わってしまう。時間軸を整理してくれているし、登場人物の説明もある。ゲーム中でたくさん資料を集めるんですよ。武器とかは少ないんですけど、資料とか小ネタ的なアイテムがたくさん取れるゲームなので。ただ、全部集めるのはめちゃくちゃ難しい。ほとんどのプレイヤーが集めきれずに終わる(笑)。だから、それらを集めなくともこの本に資料として掲載されているので、その全貌もわかると。

ゲームをクリアして、この2冊も読破して自分が抱いた「SIREN」の感想は、諸星大二郎が大好きなんだろうなってことでした(笑)。諸星大二郎的な世界観なんですよ。妖怪ハンター的というか。で、何でこんなクリアしにくいゲームを作ったんだろうと思って。これは一種の「覚えゲー」なんです。殺せないゾンビの視界をジャックする機能がゲーム中にあって、ゾンビがどういうルートを徘徊しているのか自分で考察して逃げ道を見つけて逃げる。極端な話、ロックマンとかと同じなんです。覚えて、クリアする。その積み重ねが淡々としているので、それで飽きてきてしまうこともあるけど、これらの本を読むことでバックボーンがわかるので、より楽しめますね。ただ、ゲームをやらなくても「サイレン公式解析本」を読めさえすれば、「SIREN」のことはわかります(笑)。

仮面ライダークウガ シナリオ集

仮面ライダークウガ シナリオ集

仮面ライダークウガ マテリアルブック

空我―仮面ライダークウガマテリアルブック

平成仮面ライダーシリーズ、『仮面ライダークウガ』関連の本です。「マテリアルブック」の方は各ストーリーの名シーンを追いつつ、なぜか最後は時系列の解説で終わるんです。要は現実の時系列を綴っていて。最初にこの本を読んだ時、仮面ライダーなのにどうして時系列が大事なんだろうって。僕がクウガをしっかり見たのは後追いなんですけど、この本も合わせてチェックすると平成仮面ライダーシリーズで一番凄かったのって、クウガなんじゃないかなと。

まず、設定が現実と地続きなんです。今の仮面ライダーはすべてフィクションじゃないですか。架空の舞台、架空の世界。でも、クウガは実在する場所がベースになっている。城南大学とか、クウガが発掘される遺跡の名前とかは架空ですけど、それ以外はほぼ現実にあるもの。新宿とか目黒とか。今の仮面ライダーって世界の設定が変わろうが何があろうが、さいたまスーパーアリーナ周辺でいろんな出来事が起きてるわけですよ(笑)。でも、クウガは必要なまでに現実世界とリンクさせている。

ストーリー的には、主人公のクウガが警察官とバディを組んで、グロンギっていう敵を倒すってお話で。オダギリジョーさんがクウガに変身するんですけど、最初は変身の仕方がよくわからない。それを解析するために考古学者の人が出てきたりして、そもそもクウガっていうのは何なのかを謎解きする。その一方で、グロンギっていうのが大量虐殺しているわけです。何で虐殺しているのかよくわからないんだけど、このままだったらみんな殺されるから倒さなきゃならないって、仮面ライダーと警察がタッグを組んでグロンギを倒すわけです。

敵のグロンギはグロンギの言語で劇中では話しているので、何を言っているのかわからない。字幕も入らないから、グロンギが何の目的で人を殺しているのかが不明。わからないままストーリーが進んでいく。でも、「シナリオ集」を読むとわかるんです。この本に載っているグロンギ語のセリフにはルビが振ってあって、それによると、グロンギが行っていたことって殺人ゲームなんですよ。ソロバンみたいのを弾いて「ツギ、ナンニンコロス」とか。でも、映像とストーリーを追っていると何か目的があるように見える。そうじゃなくて、娯楽で人を殺してるんです。本編ではちゃんと描写されてなくて、ストーリーの終盤あたりになると、そんなことをほのめかすシーンもあるんですけど、結局最後までグロンギの生態っていうのはよくわからない。

ただ、このシナリオ集を読むと「ただの殺人ゲームだった」ということが理解できるので、主人公の五代雄介は「正義」なんだなってことが改めてわかる。よくあるじゃないですか。悪にも悪の理由があるみたいな。そんなのじゃなくて、グロンギはただの悪いヤツだった。だから、「絶対悪」に対する「絶対正義」っていうのが、仮面ライダークウガだったわけです。その戦いに巻き込まれてしまったのが人間。今読んでもこの2冊は面白いですね。

本と音楽の一覧 インタビューの一覧

プロフィール

小出祐介 (Base Ball Bear)
小出祐介 (Base Ball Bear)
ミュージシャン

Base Ball Bearのギター&ヴォーカルを担当。2001年、関根史織(B/Cho)、湯浅将平(Gt)、堀之内大介(Dr/Cho)とともにバンド結成。2006年、東芝EMI(現 EMI Records)よりメジャーデビュー。2012年1月3日、2度目となる日本武道館での結成10周年ワンマンライブを大成功させる。2015年8月より、シリーズ「三十一」と題し、CD+CDの2DISCSからなる「エクストリーム・シングル」を3カ月連続でリリース。11月11日には通算6枚目のフルアルバム『C2』を発表した。また、12月4日(金)には東京・豊洲PITにて、全25公演に及ぶツアー「三十一歳」のファイナルが開催される。http://www.baseballbear.com/

ライターについて

ホンシェルジュ編集部・芸術/芸能班
ホンシェルジュ編集部・芸術/芸能班

音楽、映画、アイドル、その他の芸術/芸能に詳しいライターによる班。もちろん皆が本好きだが、そのレベルや守備範囲はさまざま。日本のエンタテイメントのトップランナーを通じて、本/読書の楽しみへの入り口をつくりたい。あるいは本/読書という切り口を通じて、トップランナーの新たな一面を引きだしたい。

プロフィール

小出祐介 (Base Ball Bear)
ミュージシャン

Base Ball Bearのギター&ヴォーカルを担当。2001年、関根史織(B/Cho)、湯浅将平(Gt)、堀之内大介(Dr/Cho)とともにバンド結成。2006年、東芝EMI(現 EMI Records)よりメジャーデビュー。2012年1月3日、2度目となる日本武道館での結成10周年ワンマンライブを大成功させる。2015年8月より、シリーズ「三十一」と題し、CD+CDの2DISCSからなる「エクストリーム・シングル」を3カ月連続でリリース。11月11日には通算6枚目のフルアルバム『C2』を発表した。また、12月4日(金)には東京・豊洲PITにて、全25公演に及ぶツアー「三十一歳」のファイナルが開催される。http://www.baseballbear.com/

小出祐介 (Base Ball Bear) さんの本棚

Base Ball Bear『C2』とリンクする「視点」にまつわる本

Base Ball Bear『C2』とリンクする「視点」にまつわる本

小出祐介
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