ポエムコアアイドル・owtnが選ぶ「絵本における恋愛指南(?)」

ポエムコアアイドル・owtnが選ぶ「絵本における恋愛指南(?)」

更新:2021.12.6

アイドルに恋愛はタブー、とよく言われますが、時にはステキな恋愛に憧れることも…。そんな時にすてきな恋を空想させてくれるのは、マンガだったりドラマだったり、絵本だったり!今日はそんな「絵本の中の恋」について、大好きな3冊を通して紐解いていきたいと思います。 「おとぎ話のような恋」という言葉があるけど、絵本の中の恋はそんなに甘くない…かも?

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何億年もの時を超えた、恋愛の物語

著者
いもと ようこ
出版日
主人公のマンティスは乱暴者のカマキリ。彼が蘭の花に恋をしたことで全てが一変、殺生をやめ、結ばれたい一心で祈りを捧げるようになります。ただひたすらにかつての行いを恥じ、そしてかつての自分から変わることを望んだ彼の運命は…。

恋だけでなく自分の夢など、何かの目標に向かって「こうなりたい」という人に、ぜひ読んでもらいたい絵本です。祈り続け、命をかけて自分の想いを遂げるマンティスを、思わず応援…というよりは、見守りたくなるはず。

いもとようこ氏は絵本作家でありながら挿絵画家でもあり、ご自身の絵本の出版の他、NHKの教育テレビ番組や、小学生向けの学習ノートなどにもイラストを提供し、幅広く活動されています。彼女のかわいいイラストを見かける機会は多いですが、この絵本で、優しさやあたたかさにあふれた作品だけでなく、寂しさや焦燥感などマイナスの感情も避けることなく如実に描きだす、幅広い表現力を持った作家さんであると改めて感じました。

貫くことの強さをおしえてくれる、詩的で美しい絵本。昆虫と花というミクロの世界で、何億年という壮大なスケールで時が過ぎていきます。かといって大人だけの絵本ではなく、やさしい文章や絵柄のかわいらしさで、子どもにも読める作品なので、親子でも読める…かも?

蘭の花の、物言わずそっとマンティスを受け入れるラストシーンも好きです。

十字架だって斜めに見ればX字架。だから君と恋ができる

著者
["宇野亞喜良", "穂村弘"]
出版日
2014-10-17
新しいガールフレンドができた。やさしくてかわいい彼女との恋。だけど彼は何か大きなことを、彼女に隠しているみたい…?

一週間を通して二人の恋の行方を描いた、大人向けの絵本。宇野亞喜良氏の妖しく繊細なタッチの絵柄が、物語をよりミステリアスにリードしてくれます。

強い日差しにはサングラス。ペペロンチーノにはノーズクリップ。そして、十字架だって、斜めに見ればX字架。「苦手なものだって、うまくかわせば一緒にいられるよね?」という彼の声が聞こえてきそう。ほんの少しの問題でくよくよしてしまうわたしは、彼の飄々とした生き方を見習いたいな…と思うのです。

わたしが一週間の中で特にお気に入りなのは土曜日、「愛してる?」「もちろんさ」のページ。最高に甘美でせつなく、思わず次のページをめくるのを躊躇ってしまいます。…でもみなさんはぜひ、次に進んでみてくださいね!二人の恋は、そこからドラマチックに展開されていきます。

この先も君と、ずっと一緒にいられますように

著者
ガース・ウイリアムズ
出版日
1965-06-01
表紙を見るだけで、「あぁ、この絵本!」と思わず声をあげてしまうような、世界的にも有名なこの絵本。わたしの住んでいる街の病院の待合室には、小児科でも、眼科でも、内科でも、なぜか必ずと言っていいほどこの本があり(笑)、いつの時代も子どもから大人まで、たくさんの人が手にとっていました。

恋人との未来を憂う、黒うさぎの男の子。「僕はずっと、彼女と一緒にいられるのだろうか?」この先、困難に直面したり、環境が変わったり、もしかしたらどちらかが心変わりしたら…?「大好きな人とずっと一緒にいられるのか」というのは、友達同士でも恋人同士でも、そして家族の間でも、誰もが一度は不安に感じることではないでしょうか。そんな不安を拭うように、白うさぎの女の子は、彼に永遠の愛を誓います。突き抜けるほど晴れやかな、二匹の恋。この絵本の主なテーマはもちろん恋愛ですが、隠されたテーマとして、人種差別があるとも言われています。2015年の今では、教科書の中で見た遠い昔の出来事のように感じますが、初版当時の1965年は、まだ人々の心の中にそういった意識があったのかもしれません。

実際にそのメッセージが込められたかは定かではありませんが、前述の二冊も含めシンプルなストーリーからたくさんのメッセージを読み解くということは、大人ならではの絵本の楽しみ方ですよね。

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    アイドルが、本好きのコンシェルジュとして、おすすめの本を紹介します。小説に漫画、詩集に写真集に絵本。幅広い本と出会えます。インタビューも。

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