ビル・ゲイツが選ぶ、2016年のお気に入りの5冊

更新:2021.12.1

「新しい話題について知るのに、私には読書が一番」。マイクロソフトの共同創業者、ビル・ゲイツが2016年のお気に入りの5冊を自身のサイト“Gates Notes”に掲載しています。 「本は、子どもの頃から平均して毎週1冊くらいのペースで読んでいる。どんなに忙しい時でも、読書の時間はしっかりと取るようにしている」

ブックカルテ リンク

「String Theory」デヴィッド・フォスター・ウォレス

String Theory: David Foster Wallace on Tennis: A Library of America Special Publication (英語)

2016年05月10日
David Foster Wallace
Library of America

「今はウォレスに夢中」というゲイツ。故人によるこのテニス・エッセイ集は、一見すると物理学の本だから(書名が物理学の理論/仮説“弦理論”または“ひも理論”と同じため)、電車や飛行機で読んでいると「超賢そうに見えるはず」と冗談を交えて絶賛しています。

「テニスへの洞察も最高なら、文体も同じくらい最高。みんながデヴィッド・フォスター・ウォレスのことを、テニス・ファンがロジャー・フェデラーやセリーナ・ウィリアムズに抱くのと同じ類の畏敬をもって語る理由がよくわかる。ウォレスの言葉を操る能力は衝撃的だ。過去の誰もが使っていたのとまったく同じ油絵の具を携えてカンバスに臨み、それをはっとするほど斬新かつ創造的に使う、そんな芸術家だ」

「Shoe Dog」フィル・ナイト

Shoe Dog: A Memoir by the Creator of Nike (英語)

2016年04月26日
Phil Knight
Simon & Schuster Ltd

ビジネス・スクールを卒業したばかりのナイト青年は、父親から50ドルを借り、のちにナイキとなる会社を始めました。その様子が詳しく綴られているのがこの本。ゲイツは本書を、ビジネスでの成功に欠かせない失敗を「正直にふり返る」一冊だと称し、自身の弱さを隠そうとしないナイトの勇気を讃えています。

「ナイトは、大半のCEOがまずやりたがらないやり方で自らをさらけ出している。自分や自分の失敗に信じられないくらい厳しい。大胆で勇ましい起業家という典型からかけ離れていて、シャイで、内気で、しばしば不安に駆られる。神経性のいわゆるチック的なことまでする。たとえば、ビジネスの交渉の場でストレスを受けると、ゴムのリストバンドをぱちぱちやったり、両腕を自分の体に回して縮こまったりだ」

「The Gene: An Intimate History 」シッダールタ・ムカジー

The Gene: An Intimate History (英語)

2016年06月02日
Siddhartha Mukherjee
Bodley Head

医師でありながらピューリッツァー賞作家でもあるムカジーの新刊。ゲノム編集の最新技術とそれが提起する倫理的疑問を知る手引きだとゲイツは評する。

「たとえば嚢胞性線維症など、たった一つの欠陥遺伝子のせいで起きる病気に悩む人々を救うのに、臨床医がゲノム編集を利用できる日は10年以内に来るだろう――そしてそれが、この新技術の倫理的な使い方であることに疑問の余地はない。けれど、卵子または精子細胞を修復することで、後年に発生するはずのそうした病気から人々を守るのはどうだろう?」

「この治療法は極めて効果的になりうる。でもそれは同時に、そうした精子や卵子から生まれた子どもたちが遺伝子操作されたゲノムを自身の子どもたちに渡すことを意味する――つまり、われわれは人類の生殖細胞系に手を加え、倫理のルビコン川を渡ることになる(後には引けない重大な決断を下す、の意)」

「The Myth of the Strong Leader」アーチー・ブラウン

The Myth of the Strong Leader: Political Leadership in the Modern Age (英語)

2015年04月16日
Archie Brown
Vintage

政治科学者アーチー・ブラウンは本書で、権力を持つべきは極めて支配的な物言いをするタイプとは正反対の、協調性に長けた者だと説く(2014年刊行)。もっとも、さすがのブラウンも自らの論旨が2016年にこれほど強く人々の心に響くものになるとは予想できなかったろうと、ゲイツは述べる。

「政治指導者(リーダー)に関する本は大半が年代記で、その盛衰を描くことに終始するが、これは分類書に近い。ブラウンはリーダーらが見せる性質や傾向を、そして彼らが属する部類を深く見つめる。世界に大いなる進歩を、さらに大いなる苦しみを生む原因となったそのエゴ、動機、言動を理解する一つの方法として、そうしている」

「現代社会が抱える諸問題について、そしてその解決を私たちが託す人々について、新たな考え方を読者に提示する1冊」

「The Grid: The Fraying Wires Between Americans and Our Energy Future」グレッチェン・バーク

The Grid: The Fraying Wires Between Americans and Our Energy Future (英語)

2016年07月26日
Gretchen Bakke
Bloomsbury Pub Plc USA

文化人類学者グレッチェン・バークが、新たなエネルギー源を念頭にアメリカの送電網を見つめ直した1冊。

「自分の部屋のコンセントに電気がどうやって来るのか、その仕組みについてまったく考えたことがない人でも、この本を読めば、送電網が現代社会でも有数の驚くべき技術だと確信すると思う。送電網の最新化がどれほど手間のかかることで、クリーン・エネルギーの未来を築くためにどれほど重要なことなのかも、理解できるはずだ」

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