奇妙で華麗なるドクター・ストレンジを知る5冊。アイアンマン+オカルト?

更新:2021.12.15

2017年1月に映画公開となる『ドクター・ストレンジ』。『アベンジャーズ』関連作が大ヒットしてきたことから、今度の映画への期待を高めている人も多いでしょう。今回はそんな皆様に、ドクター・ストレンジを理解するためにおすすめの5冊を紹介します。

ブックカルテ リンク

入門者向けに描かれた、若かりし日のドクター・ストレンジ

著者
グレッグ・パック
出版日
2016-12-14

ⓒ 2017 MARVEL

ドクター・ストレンジは、至高魔術師(ソーサラー・スプリーム)と呼ばれる世界最強の魔法使い。科学や超能力で戦うヒーローたちが多数派を占めるマーベルコミック世界において、神でもないのに意のままに超常現象を起こす彼は独特の尊敬を集めています。

しかし、そんな彼も若かりし頃は天才外科医としての名声に驕り、金しか信じない時代もあったり。けれどそんな過去があるからこそ、キャラクターに深みが出てくるというものです。そして沈着冷静なドクター・ストレンジの、若かりし頃のヤンチャっぷりを読めるのがこの『シーズンワン』。

長い歴史の中で錯綜してしまった各ヒーローのオリジンを、新しい読者向けに整理して再スタートする「シーズンワン」シリーズ。そのドクター・ストレンジ回というわけです。

直情径行型の兄弟子ウォンと、世を拗ねていた頃の若ストレンジの冒険。SF要素の強い他のスーパーヒーローものと違い、修行とか悟りで強くなっていく感じが、日本の少年漫画ぽくてどことなく懐かしい。

また、映画版で敵役になるもう1人の兄弟子モルドと、彼をそそのかす魔神ドゥーマムゥは、本作でもストレンジたちと対峙することになります。

劇場版『ドクター・ストレンジ』の予習復習はこの1冊から

著者
ウィル・コロナ・ピルグリム
出版日
2017-01-25

ⓒ 2017 MARVEL

映画版の直接の前日譚となる作品や、映画版に影響を与えていることが公式に認められてる旧作をまとめる「プレリュード」シリーズに、ドクター・ストレンジが登場!

今回あたらしく女性として描かれることになったストレンジの師匠「エンシェント・ワン」の姿や、ストレンジと助手ウォンの関係、最初期に描かれたエピソードなど、ファンになってからも重宝しそう。

以下に紹介する『ウェイ・オブ・ウィアード』の第1話も収録されていたり、他の作品を読むきっかけにもなっています。

アメコミ的なダイナマイトなボディではないのに、凛としたカッコよさと抑制されたセクシーさのある女性版「エンシェント・ワン」や、ストレンジの敵役のはずなのにバイキンマン的なヤラレキャラ感のある「モルド」の描かれ方、バットマンのアルフレッドやアイアンマンのジャーヴィスのような位置付けの「ウォン」との絶妙な関係は特に見所。

「プレリュード」シリーズでは、既刊の『ガーディアン・オブ・ギャラクシー:プレリュード』がオススメ。映画版で重要な役割を果たした樹木人グルートが、初出時は街を脅かす樹木のバケモノとして描かれていたことを知って、更に可愛く思えるようになりました。

渋めだけどキザな艶のある顔と奇妙な屋敷

著者
ジェイソン・アーロン
出版日
2016-12-28


本作のドクター・ストレンジは、顔こそ渋いが「オカルト版のアイアンマン」のような放埓さが魅力。世界の魔法の守護者であると同時に、(エクソシストやゴーストバスターズさながらに)子供に憑いた悪霊を祓ったりする「オカルト医師」としての日々を送っています。

「角のピザ屋の店員は魅力的だ。恋の魔法にかけられた以上、足を向けるしかあるまい」とか言います。キザ!

上掲の『シーズンワン』ほどのヤンチャ感はないものの、至高魔術師としての重みより、オカルト医師でもある自分の胡散臭さを楽しんでいる茶目っ気たっぷりな姿が描かれています。

なおドクター・ストレンジが本作で根城にしている館「サンクトム・サンクトラム」の住所は、ニューヨーク市ブリッカーストリート177A。ドクター・ストレンジの異名のひとつに「シャーロック」というのがありますが、シャーロック・ホームズの住所はロンドン市ベイカーストリート221B。

ブリッカーストリートに、ベイカーストリート。映画版で今回ストレンジを演じるベネディクト・カンバーバッチが、ドラマ『シャーロック』でホームズを演じていたことと併せて考えても、なかなか気になるトリビアです。

さらにちなみに、映画版『シャーロック・ホームズ』でホームズを演じたロバート・ダウニー・Jr.はご存知のとおり、アイアンマンことトニー・スタークを演じています。アイアンマン、ストレンジ、ホームズの3者は、けっこう似たイメージなのかも知れません。

本作でドクター・ストレンジ本人とともに「もう1人の主役」とも言える、彼の根城「サンクトム・サンクトラム」。この根城は、別のシリーズ『ニューアベンジャーズ トラスト』で、超人登録法に反対しお尋ね者になったアベンジャーズたちが身を隠す場所でもあります。(なお、この『トラスト』では力を暴走させるドクター・ストレンジを見ることができます。)
 

至高魔術師を辞し、後継者探しに奔走する

著者
ブライアン・マイケル・ベンディス
出版日
2014-08-30


映画版『アベンジャーズ』でも描かれた宇宙人スクラルとの戦いの結末は、原作ではちょっと異なっています。アイアンマン(トニー・スターク)は追放されることになり、アベンジャーズの新しいリーダーには、なんとスパイダーマンの元敵役のグリーンゴブリンだったノーマン・オズボーンが就任することに。

ノーマンのマスメディアを巧みに操作して世論の支持を集める大企業の総帥という姿は、スタークの闇の姿というか、なんだか現実とリンクしてる気がしますね。

本書では、アベンジャーズに加担して至高魔術師の役目を返上することになるドクター・ストレンジが、後継者を探す姿が描かれています。(後継者になる人物は、上掲の『ウェイ・オブ・ウィアード』にも登場しているので、併せて読むと楽しいはず。なお本書『ダークレイン』には、5ページにわたる、詳細なドクター・ストレンジ解説が巻末に掲載されているので、マニアックにドクター・ストレンジを知りたい人は迷わず本書をゲットしよう)

こちらも2018年日本公開予定の映画『マイティ・ソー』第3弾『ソー:ラグナロク(原題。邦題未定)』では、ソーの他にハルクとドクター・ストレンジが共演するとの情報がありますが。ハルクとドクター・ストレンジの組み合わせについては、実は本書の解説で一部触れられています。原作の展開を知った上で、劇場版のストーリーの予想をしてみるのも面白いでしょうね。

パラレルワールドのドクター・ストレンジ

著者
ジョン・レイマン
出版日
2015-08-26

ⓒ 2017 MARVEL

アメコミの世界ではもう並行世界はすっかり当たり前のことになっていて、主要キャラクターはいちいち驚かなかったりしますが、こちらは異世界のドクター・ストレンジが登場する作品。

ある事故によって、並行世界の1つに投げ込まれたデッドプールとハルクとスパイダーマン。その世界ではスパイダーマンが「アメイジング・スパイダー」として活躍しているなど、元々の世界とは設定が微妙に異なっています。この世界では何故か「ハルクに変身しない」ことがわかって深く安堵するバナー博士。

実はこの世界ではドクター・ストレンジはバナー博士を後継者に選んでおり、分離されたハルクは地獄で鬼神になっていたのでした。鬼神となってパワーアップしたハルクが地上を脅かすとき、バナー博士と至高魔術師はどのような決断をするのか……。

至高魔術師の役目をバナー博士に譲ったドクター・ストレンジは、本作では「より高次元の存在」へと自らを昇華させていました。

マーベル世界の全体においては挿話的な本作ですが、ドクター・ストレンジの「至高魔術師」という位置付けがどういうものなのかよくわかる作品でもあります。

どことなくバットマンみたいなアメイジング・スパイダーの隠れ家など、遊び心満載の楽しい作品。大人気のデッドプールも大活躍ですよ!


Photo:(C)2016 Marvel. All Rights Reserved.

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