萩尾望都のおすすめ漫画年代順!名言で読む名作5作品

更新:2021.11.23

数々の名作を生み出し、今もなお多くの人に愛され続けている萩尾望都。今回はそんな作者の、時代を越えた名作をご紹介いたします。

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1:永遠の14歳となった少年の物語『ポーの一族』

萩尾望都の代表作といっても良い本作。1972年の発表から時を経て、2016年には約40年ぶりとなる新作も発表されました。

物語は1744年、幼くして森に捨てられたエドガーとメリーベルの兄妹が老ハンナ・ポーに拾われた事から動き始めます。
2人を拾った老ハンナの一族は、人の血を吸い不老の時を生きる吸血鬼「バンパネラ」でした。その秘密を知ったエドガーは妹のメリーベルを逃がす代わりに、自分がハンバネラの一族に加わることを約束しますが……。

 

著者
萩尾 望都
出版日
2016-05-09


バンパネラ(吸血鬼)となり、普通の人間に戻りたいという葛藤を抱きながらも、永劫の時を生き続けることになった少年・エドガーの200年以上に渡る人生を綴った物語です。14歳の姿のまま老いることのない少年の、儚くも可憐な美しさは、多くの読者を魅了し続けています。

作者・萩尾望都の描く少年のあどけなさに加え、長い時を生き、人智を越えたカリスマ性と小悪魔的な部分を併せ持つ主人公・エドガーには魔性とも呼べる魅力を感じるのではないでしょうか。

大人になることが出来ず、長い年月を共にした大切な人達を失いながらも、なお生き続ける少年の長い長い人生譚『ポーの一族』。エドガーの駆け抜けた200年余りの人生、その結末は……。少女漫画史に語り継がれる色あせない名作です。

『ポーの一族』について紹介した<『ポーの一族』は永遠の名作。続編「春の夢」まで魅力を全巻ネタバレ紹介!>の記事もおすすめです。

2:青年達が描く無償の愛とは……。『トーマの心臓』

本作の舞台はドイツのギムナジウム(高等中学)。学園のアイドルであったトーマ・ヴェルナーが、突然の自殺により亡くなります。彼の死の翌日、高等部に通う生徒ユリスモール・バイハン(ユーリ)の元に、トーマの残した遺書が届きます。

「ユリスモールへ さいごに これがぼくの愛 これがぼくの心臓の音 きみにはわかっているはず」(『トーマの心臓』より引用)

品行方正で孤独な優等生・ユーリ。そんな彼を愛した、既にこの世には居ない「トーマ」という少年。『トーマの心臓』というタイトルでありながら、読者は「トーマ」という人物像をユーリやその他の登場人物達から読み取っていくことになります。

トーマの死にショックを受けたユーリの前に、ギムナジウムに転校してきた「トーマ」と瓜二つの転校生・エーリクが現れます。彼にトーマの面影を感じたユーリは、始めこそ怒りや憎しみをあらわにしますが、次第に打ち解け、心を通わせていきます。

 

著者
萩尾 望都
出版日


多感な思春期の少年たちの抱えた、劣等感、心の傷、そして「無償の愛」の物語です。作品のテーマの奥深さは少女漫画の域を越え、文学作品とも呼べるでしょう。宗教的な解釈も多く、初見の際には理解しがたい個所もあるかもしれません。

読者の価値観によって、読み返すごとに印象が変わっていく、そんな作品だと思います。読み込めば読み込むほど新たな発見がある本作。一つの作品をゆっくりと読み返し、物語に浸りたい方へおすすめしたい作品です。

3:居ないはずの「一人」は誰!?『11人いる!』

古典SFの傑作として名高い本作。宇宙屈指の名門校・宇宙大学の入学試験最終科目は、様々な星(作中では国と表記)から集められた10人の受験生が、外部との接触、補給、通信が不可能な宇宙船の中で過ごすという実技試験でした。しかし、10人しかいないはずの受験会場にはなぜが「11人」の受験生がいて……。

作中冒頭、たしかにページ内には「10人」の姿しか見えなかったはずなのに、試験会場となる宇宙船の中には『11人いる!』。そのストレートなタイトルは、読み進めながら、いったいこれから何が起こるのだろう、と読者の心を引き付けます。

 

著者
萩尾 望都
出版日


隔離された宇宙船の中で起こる様々なトラブル。緊急時には非常ボタンを押すことができますが、その時点で試験は中止されてしまうため、「11人」は疑心暗鬼を抱えつつも協力し合い、隔離された宇宙船の中で様々な問題を切り抜けていきます。

本来いないはずの11人目は一体誰なのか。スピード感のあるSFミステリーに目が離せません。SF好き、ミステリー好き、どちらの方にもお勧めしたい作品です。

4:本格SF入門におススメ!『スター・レッド』

舞台は2276年。ドーム都市・ニュー・トーキョー・シティ。 火星人ということを隠し地球で暮らしている主人公・星(セイ)は、過去に人間が順応できず打ち捨てられたと言われる火星に今も仲間がいると信じ、いつか故郷に帰りたいと夢見ていました。そんな星の前に「エルグ」という不思議な青年が現れます。

 

著者
萩尾 望都
出版日


SFの世界観を余すことなく盛り込んだ本作。主人公を含む火星人は強力な超能力を持ち、その力は人々に怖れられています。通常の人間には無い、未知の力への「恐れ」は迫害や差別につながっていく。それは現代でも存在する心理として本作のテーマの一つになっているでしょう。また、多くの謎を持つ青年・エルグの愛情と狂気の描写は必見です。

SF風の作品が好き、詳しくはないがSFに触れてみたい、そんな方にぴったりの本格SF入門作品『スター・レッド』。壮大な宇宙に広がる未知なる愛の物語をお楽しみください。

5:語りつくせないことこそが「魅力」『銀の三角』

萩尾望都が本格SF雑誌「SFマガジン」にて1980年から連載した作品。これまで多くのSF漫画を手掛けた作者ですが、「SF初心者にもわかりやすく」という枷を外した本作『銀の三角』では、複雑で難解な設定が描かれています。超科学文明となった未来世界を舞台に繰り広げられるストーリーは、本格ハードSFとして名高い作品です。

 

著者
萩尾 望都
出版日


3万年前に絶滅した「銀の三角人」を救うため、主人公・マーリーが時間移動能力で時を越える……。簡単なあらすじだけで語ればわかりやすい物語かもしれません。しかし、本作の魅力はまさしく、難解過ぎるとも感じるほど作り込まれた世界観や、複雑に張り巡らされた登場人物たちの関係性でしょう。

殺されてもクローンとして再度生み出される主人公。時空を超える謎の吟遊詩人。宇宙の崩壊をも左右する、絶滅したはずの「三角人」。それらが複雑に絡み合う物語を、一読で全て解釈することは難しいのではないでしょうか。

まずはSFという作品に触れ、雰囲気を味わい、何度も読み返すことによって新たな見解や考察が生まれる。SF通たちをも唸らせる圧巻のストーリーは是非ご自分の目で、頭で、感性で読み解いて頂きたい作品です。

いかがでしたでしょうか。萩尾望都おすすめ5作品をご紹介させていただきました。どの作品も読み手の数だけ解釈や考察が存在する、ファンタジー、SFの名作です。長年愛されてきた理由は読んでいただければ自ずと見えてくると思います。思わず何度も読み返してしまう名作をお探しの貴方におすすめです。

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