絶対に見るべき!東京のクールな建物群を紹介

更新:2021.12.1

東京の街中に立つ最先端の建築物。日本の首都に並ぶブティックやベーカリーは、驚愕の建物ばかり。今回は英ブライトン出身のトラベルライター、Joe Minihaneから見た東京のクールな建物群を紹介します。

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青山エリアで体感する「東京の建築」

東京・青山では、世界最高峰のファッションブランドが激しいつばぜり合いをくり広げています。ミュウミュウやグッチ、ディオールといったトップ・ブランドが世界レベルのデザイナーたちとタッグを組み、この辺りをさながら生きた建築ミュージアムに変貌させています。そこには尋常ならざる模範を創り出す日本という国の特徴がはっきりと現れている、とも言えるでしょう。地震の影響もあり、この国の建物は平均で30年ごとに壊され、建て直されているのです。昔から新しいものに目がないとも言えます。

「ここには美しい建物が本当にたくさんあります」と、松田力先生は言います。「この辺りは毎年姿を変えます。ついていくのが大変ですよ」。土曜の午後、僕はパレスホテル東京が企画するプライベート・ツアーに参加し、先生に青山の中でもとりわけ有名な建物を案内してもらいました。松田先生は設計事務所を営み、東京の建物探訪ガイド本を書いています。

著者
松田 力
出版日
2015-12-23

松田先生がフロム・ファーストビルの前で足を止めます。レゴブロックふうの外観は、日本の首都と聞いて世界の人々が連想するプレハブ的高層ビルとは似ても似つかない。脱構築建築の傑作です。「ここがすべての始まりでした。ここにいると、外なのに中にいる気になりますね」。先生によれば、このビルの突飛な外観が火を付け、過去10年、青山・表参道界隈に同じく破天荒で奇天烈な建築物が次々に現れたそうです。

たとえば槇文彦のスパイラル。ギャラリーや雑貨店が入るスパイラルは、ニューヨークのグッゲンハイムを多分に意識しているでしょう。全面ガラス張りのディオールのビルは建築家ユニットSANAAが手がけたもので、天井高が階によって異なり、ガラス壁が白色光に充ち満ちています。

オリンピックのおかげで、日本では今、建築が熱いです。ザハ・ハディドが手がけたスタジアム設計案は2015年7月、物議をかもした末に破棄され、日本人建築家、隈研吾による、より伝統的な、木がテーマのデザインが選ばれました。

新スタジアムの建設はまだ始まっていませんが[2016年秋現在]、その代表が根津美術館です。2009年に新設された、前近代日本の美術作品を収蔵するここは、日本の伝統的な宿である“旅館”を現代的に解釈して設計されたとのこと。「日本の建物は、正面からじゃなく、脇から入るようにできています」。そう語る松木先生に付いて、入り口と日本庭園につながる、竹の立ち並ぶ通路を歩いて行きます。

ここに漂う静寂は、東京の繁華街ではなく、むしろ東北の山中で感じるものに近いです。隈氏が東京オリンピックのメイン・スタジアムをより伝統的かつスピリチュアルなイメージで建て直すことにした理由がよくわかります。

どこにでもありそうな裏通りを5分ほど歩くと、目の前にいきなり現れたのは、木片の塊。サニーヒルズです。世界一ぶっ飛んだケーキ店と言うしかありません。店の外と内を飾る木片で組まれた三角形は、この店の人気メニューである台湾のパイナップル・ケーキをイメージしています。

美味しいスイーツと淹れたての抹茶で元気を補給すると、松田先生は早足で案内を再開し、青山でも屈指のシュールで絢爛な建物が並ぶ通りを詳しく説明していきます。ヘルツォーク&ド・ムーロンが手がけたプラダは、斜めに走る大量の梁と強化ガラス群が見る者を圧倒します。先生によれば、東京では一般に、耐震対策として梁に強度の高いコンクリートを用いるが、ここはその慣例にあえて挑んでいるという。ひし形の強化ガラスを組み合わせた建物自体が大地の揺れに合わせて動くように設計されており、どんな余震にも耐えられるそうです。

続いて唯一無二のショッピング・モール、表参道ヒルズへ向かいます。高速道路の出入り口付近によくある、判で押したようなショッピング・センターとはまるで異なります。鋭く尖った角や、頭上を伸びる定規で引いたかのように真っ直ぐな通路は、独学の建築家、安藤忠雄の設計です。

松田先生が東京の建築をこよなく愛する理由は明快です。特異で卓抜、そして突飛。そこには間もなくオリンピック開催地となるこの街のすばらしさがすべて表れているのです。

Photo:C)The Independent / Zeta Image
Text:(C)The Independent / Zeta Image
Translation:Takatsugu Arai

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