林真理子おすすめエッセイ5選!

更新:2021.12.17

テレビドラマとなった『不機嫌な果実』の原作者で、自身の経験を元にしたエッセイを多く出していることで知られる作家、林真理子。今回はそのエッセイの中でおすすめの5作をご紹介します。

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林真理子とは

林真理子は、1954年、山梨県で生まれました。コピーライターを経て作家活動を始め、1982年に『ルンルンを買っておうちに帰ろう』で作家デビューを飾ります。

1986年に『最終便に間に合えば』『京都まで』で直木賞、1995年に『白蓮れんれん』で柴田錬三郎賞を受賞、1998年に『みんなの秘密』で吉川英治文学賞など数々の賞を受賞。そして週刊文春に連載された『不機嫌な果実』が、1997年と2016年にそれぞれ1回ずつテレビドラマ化されました。

また、思ったこと、感じたことをストレートに書く作風が特徴的です。物事や結果の良し悪しに関係なく、そしてそれが自分にとって隠しておきたい汚点であったとしても、一切お構い無しに書き上げます。

今回は、そんな作風で有名な林真理子の作品の中から、デビュー作も含めたおすすめの5作のエッセイを紹介していきます。

美女になるための54の短編エッセイ

1999年、林真理子が自身の経験を元に書いた『美女入門』。かつて雑誌「anan (アンアン)」に掲載された美や愛に関するコラムをまとめたエッセイです。

「マリコストリート・リターンズ」、「美人のつくり方」、「美人礼賛」の3つの大きなタイトルに分けられ、全部で54の短編が収録されています。寝巻きとしてくたくたになったTシャツなどを着ないという意識や、美しさのために費やす時間やお金をかければかけるほど良いこと……。それらについて語られた短編には、美女になるためにはどうすればいいのかが、林真理子自身の経験を踏まえる形で事細かに書かれています。

 

著者
林 真理子
出版日


女性は誰もが一度は見惚れる美しさ、周囲から羨まれる綺麗さを持った「美女」に憧れることがあるのではないでしょうか。美しく綺麗で、完璧なものになれば、みんな自分を褒めてくれる。自分を好きになって、自分を求めてくれる。すべてが自分の思うがままになる。そんな「美女」となることの満足感と優越感を味わいたいからこそ、林真理子にも「美女」になろうとした時期があったのです。

自分は「美女」になるため、何をしたのか。何をすれば良いと感じ、思ったのか。林真理子はその時期の中での自分の経験を多くの女性に伝え、参考にしてもらいたくてこの一冊を書いたのかもしれません。何より、題名が『美女入門』だからこそ、「美女」になることを憧れる女性の読者にとっては、興味をそそられる一冊であること間違いない内容になっています。

40代の女性に向けた美しさの論題

大人の女性のためのファッション&生活誌として有名な「STORY」に掲載されたトピックスをまとめた『出好き、ネコ好き、私好き』。

40代の女性にとってのファッションとは何かを主題とした「FASHION」、40代の身体と肌年齢、その手入れの方法について解説した「BEAUTY」、年を取るにつれて老けて、衰えていく自分の体を何とかしているうちに出てくる「中年の美しさ」というものを捉えた「AGING」。この著書にある3つのトピックはいずれも40代の女性を対象として絞っており、論点もはっきりしているために読みやすい内容となっています。

 

著者
林 真理子
出版日
2014-03-19


熟年の一歩手前となる40代となれば、シミ、シワ、たるみが出てくるなど、体だけではなく肌も衰えを見せ始めるようになります。それにほとんどの女性は「年を取っている」という実感に怖れや焦りを感じるようになるでしょう。では、そんな時どうすればいいのか? 同じ40代を迎えた女性のひとりとして、林真理子は肌の手入れや皮膚科での治療など、その時に自分が試した方法、得た知識や経験をありのままに書きまとめています。

体と肌の衰えに悩んでいる40代の女性の読者の皆さんも、興味が湧きましたら、『出好き、ネコ好き、私好き』を手に取ってみませんか? 40代を迎えた同じ女性の経験を元にしたこの一冊から、歳を重ねることについて何かヒントが掴めるかもしれませんよ。

林真理子が世に出るきっかけとなった一作

林真理子が1980年代に刊行した『ルンルンを買っておうちに帰ろう』。彼女がまだコピーライターとして活動していた頃に出版された最初のエッセイで、彼女が作家としてデビューした作品として有名です。

この本の内容は、一言で言えば、自分も含めた女性の「内面」の暴露。この記事で紹介する5作の中でも、林真理子の人物像が全面的に強く醸し出されているのが特徴となっています。

 

著者
林 真理子
出版日


「友人のことはなるべく悪くいいたくないのだが、わたしの女友だちというのはかなり性格が良くないのが多い。おまけに嫉妬深いので、群を抜いてお金持ちの私は、いろいろと苦労が絶えないのだ。」(『ルンルンを買っておうちに帰ろう』から引用)

例として挙げたこの一文のように、読んでいてどこか気まずくなるほど、辛口評論家並みに遠慮というものがありません。しかし、同時に自分のありのままに、個人的に思ったことを話す。たとえ良いことでも悪いことでも、そして嫌なことでも、一切飾ることなくそれをここまで書き立てるほど、林真理子がかなりの気概の持ち主であることが感じられます。

普通ならば他人には見せず、日記のように自分の中にまとめるだけに留まる、ドロドロとした感情と、自分と自分の周りの人間への見方。それらをこの『ルンルンを買っておうちに帰ろう』という一冊の形にまとめあげた、林真理子という作家の人物像が気になる方は、是非読んでみるのもいいでしょう。

林真理子が見てきた日本での365日間

『不機嫌な果実』原作の連載の後に刊行された、林真理子の『踊って歌って大合戦』。

お洒落に目覚めて、美人編集者に勧められた流行のサンダル。履いてみようとしたら、足に合わなくて痛いばかり。美人を目指してダイエットを始めても、美味しい料理やスイーツに目がいき、ついつい手が伸びてしまってなかなか進まない。そんな人生において誰もが経験するような日常の中の出来事が、ユーモラスな文章で面白おかしく描かれています。

 

著者
林 真理子
出版日


他にも、たまごっちやプリクラ、キムタクや松田聖子、はてはダイアナ元妃の訃報など……。政治から流行まで、林真理子が365日、即ち1年の間に見てきた日本での出来事。それらを見た感想が面白い、楽しいは勿論、つまらない、無意味だと思ったことだとしても、この本書にこれでもかとばかりに詰め込まれています。

誰もが生きて過ごしていくことになる、365日という長い時間。この時間の中でその見たものや出来事の全てをありのままにまとめ、その上で人に読ませる文章に仕立て、一冊の本という形にまとめあげた才能。皆さんも是非、林真理子と共に日本における365日間をのぞきに行ってはみませんか?

成功と失敗、両方をネタにした減量奮闘記

これまでに紹介してきた4作と同じく、林真理子が自身の体験を元にして生み出した『美女の七光り』。

この作品の中での、当時の林真理子はいろいろなダイエットを試していましたが、どれをやってもうまくいかず、頭を抱える日々を送っていました。そんな中、最後に活路として見出したのが、専門クリニックでした。そこで徹底的な食事指導とサプリメントの服用による診療を受けることになり、しかもその効果はてきめん。診療を受けるごとに体重は面白いように減っていき、さらに美容面も改善されていき、真理子は天にも昇る心地でいました。

 

著者
林 真理子
出版日
2015-02-26


しかし、その天にも昇る心地は長続きせず、ある一件を境にまたリバウンドしてしまう真理子。そんな専門クリニックの診療による減量の大成功による自慢と、リバウンドで元の体重に戻ってしまうことへの自虐。このように、自分の中だけに留めておきたい失敗談ですら、林真理子は何の躊躇いもなしに、先述の成功談と同じく堂々と書き立てているのです。

そのダイエットの成功談と失敗談、どちらの描写も面白おかしい文体となっているため、読めば一度は笑いと興味を誘われ、ページがスラスラ進むことは間違いないでしょう。そんな自分が苦杯を味わった経験ですら、ネタとして堂々と扱う林真理子の才能が、この『美女の七光り』からも、ありありと感じさせてくれます。

林真理子の、自身の経験を元にしたエッセイの中からおすすめの5作をご紹介しました。独特の作風と雰囲気が感じられる作品ばかりですから、美しさに興味がある方もそうでない方も、是非読んでみてくださいね。

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