森薫のおすすめ漫画ランキングベスト4!『乙嫁語り』で人気沸騰中!

更新:2021.12.17

もはや絵画のようなアート作品なのではないか、と錯覚を起こしそうになる美しく繊細で緻密な絵が魅力的な漫画家の森薫。自他ともに認めるメイド好きで性癖ともとれるマニアックな趣味全開の彼女のおすすめ漫画をランキング形式で4作品ご紹介します。

ブックカルテ リンク

緻密な絵とマニアックな趣味全開の作品を描く、森薫

県文緒(あがた ふみお)名義で高校生の頃から漫画を描き始め、同人誌活動を行っていた森薫。その後同人誌のイベントで漫画の編集者に声をかけられ、2002年に『エマ』で商業誌デビューしました。2005年にはこのデビュー作『エマ』がアニメ化され、それと同年に文化庁メディア芸術祭マンガ部門の最優秀賞も獲得しています。

同人誌活動を行っていた頃からメイドを主人公に起用することが多く、作品を読んでいけば、自他ともに認めるメイド好きであることが窺えます。自身のメイド好きの趣味を全開にした作品の傾向から、連載したコミックビーム編集部では「メイドの人」と呼ばれていたそう。

メイドと言うと、男性が好みそうな趣味というイメージからか、実際読者からも本当に女性なのかと疑惑がとびかったようですが、森薫は女性の漫画家です。アニメ化された作品の公式サイトの取材漫画によると、かわいらしい笑顔の素敵な女性のようですが、打って変わって担当に対する態度は恐怖系とのこと。

作品の特徴としては、背景や衣装などの書き込みに並々ならぬこだわりを持っており、普通はアシスタントが行う作業もできる限り自身で描くようにしているというほど。小学館のゲッサンの編集長に、今まで見てきた100人を超える漫画家の中でもぶっちぎりの作画スピードを持っていると言わしめています。

「メイド漫画家」、「描き込み魔」の異名を持つユニークな女性漫画家、森薫の趣味全開の作品は、思わずうっとり、憧れてしまう美しいキャラクター、こだわりぬかれた背景や装飾品、繊細なタッチが魅力的。男女問わず楽しんでみてほしい作品ばかりです。

4位:身分の差、切ない恋の物語。森薫の商業デビュー作!『エマ』

コミックビームにて2002年から連載スタートした森薫のデビュー作。2005年、2007年にはアニメ化もされました。ヴィクトリア朝時代のイギリスを舞台に、当時の時世の光と影を描き出したストーリーとなっています。

1980年代のイギリスには、階級社会と言われるものがありました。主人公のエマは、ロンドンで隠遁生活を送る老婦人ケリーの家のメイドとして暮らす少女。ある日ケリーの教え子であり、貿易商のジョーンズ家の跡取り息子ウィリアムが訪れ、ふたりは惹かれあっていきます。しかし、階級社会によって彼らの恋には大きな障壁が立ちふさがることに……。

 

著者
森 薫
出版日
2002-08-30


身分の差がありながらも本気で愛し合っているふたり、という切なく苦しいテーマを起用した作品は、多くの読者の胸をわしづかみにすることとなりました。つつましく、控えめな平民のエマと、上流階級に生きながらも権力や立場を笠に着るようなことはしないウィリアム。どうしたって応援したくなる素敵なカップルである彼らが悩み葛藤する姿には、ギュッと胸が締め付けられることでしょう。

このふたりの恋の物語を通して、ヴィクトリア朝時代のイギリスにおける階級社会の光と影が浮き彫りにされてゆきます。恋の物語でありながら、時世が背景に存在することで、より一層作品に深みがでており、そこがまたこの『エマ』の魅力なのです。

主人公のエマのキャラクター設定にもメイドに対する熱い思いが込められています。美人、無口、メガネ、照れ屋の4つの要素は、森薫曰く最強の四段設定。趣味全開でこだわり抜かれたキャラクターもこの作品の大きな魅力です。

階級社会に生きるふたりの恋の行方をドキドキしながら、そして時に胸をしめつけられながら、読んでみてください。

3位:趣味全開!凝縮された濃い世界観が見どころ『森薫拾遺集』

森薫の短編作品を約120ページ収録し、連載の間にこつこつ書き溜めていたというイラスト、サイン会のイベント情報ペーパーなどを約80ページも収録した森薫の魅力を凝縮したような1冊。デビュー10周年を迎えた「森薫の好きなもの」が詰まったファン必見の作品となっています。

 

著者
森 薫
出版日
2012-02-15


この作品には漫画家・森薫の好きなものが、むせ返るほどに詰まっています。メイド、バニー、メガネっ娘、とにかく美女に対する愛情がこれでもかというほどに。一種のフェティシズムをひしひしと感じさせるほどのこだわり、いや、執着と言っても良いくらいの愛情を感じさせます。

描き込み魔とも呼ばれる森薫の細部にまでこだわり描き込みに描き込んだ、作品の背景にあたる部分。人物が重視されてしまいがちですが、描き込まれたちょっとしたパーツでストーリーや主人公、森薫の好きなものがグッと引き立たつのです。

今回は「見えるようになったこと」という作品をご紹介します。

主人公の女の子は中学2年生。森薫の描くふっくらとしたセクシーな女性ではなく、こちらはまだまだ子どもらしい可愛さが全開です。そんな主人公、視力が落ちて黒板は見えない、成績は落ちる、やる気もなくなってしまいます。だからメガネをかけることに。すると世界が変わったようによく見える!遠くのものも、見えなかった黒板の字も、最近よく嶋田君と目があっていることも。……え!?

8ページほどの短編ですが、にやにやと笑みがこぼれる展開についついのめり込んでしまうことでしょう。森薫のメガネっ娘に対するこだわりも相当なものだとうかがえる画力と描き込み具合も必見です。どこを開いてみても森薫!濃厚で密な作品をぜひ一度読んでみてください。

2位:可愛すぎるメイドの穏やかで優しい日常『シャーリー』

エドワード朝時代のイギリスを舞台に、メイドのシャーリー・メディスンの日常を描いたもの。森薫が商業誌デビューを果たす以前に初めて本格的に描いていた作品です。

ベネット・クランリーの営むカフェモナ・リザに訪ねてきたシャーリーは、メイドとしての働き口をさがしていました。13歳という若さから働かせることを躊躇するベネットでしたが、料理の心得があるシャーリーを住み込みで雇うことに。年の割にしっかりと仕事をこなすシャーリーの日常と、カフェで接客するベネットの毎日、なぜかあまり素性を明かさないシャーリーが徐々に家族として打ち解けてゆく様子が描かれています。

 

著者
森 薫
出版日
2003-02-24


黒髪ショートヘアの13歳の少女、シャーリーのビジュアルにも、森薫の趣味が全開であることがうかがえます。確実に作品の魅力の1つと言えるでしょう。このキャラクター像と画力、センス、ストーリーそして並々ならぬ愛情があってこそ出来上がる作品です。

メイドやバニーガール、メガネっ娘と聞くといやらしいものが増えたせいかそういった認識をされてしまいがちですが、森薫の描くキャラクターはセクシーで妖艶でも、いやらしさを感じさせない、独特の魅力を持ったもの。この作品の登場するシャーリーも、子どもらしいあどけなさや可愛らしさ、清楚な本来のメイドの姿で描かれます。それでいて惹きつけられ、ハマる、森薫のマニアックなこだわりも詰まっているから不思議なのです。

派手な展開や事件が勃発するようなストーリーではなく、シャーリーや主人のベネットとの日常を描いた作品ですが、飽きさせることなく最後まで読ませてしまう力があります。ほっこりとした穏やかな読了感が待っていることでしょう。ぜひ、シャーリーの可愛さに酔いしれながら、彼女の日常に触れてみてください。

1位:美しいお嫁さんたちの物語。森薫の大ヒット作!『乙嫁語り』

2008年より連載を開始した漫画雑誌ハルタの看板作品。19世紀後半の中央アジアやカスピ海周辺を舞台にし、自然の中で生きる人々の生活、それぞれの文化と言ったものを森薫ならではの繊細で緻密なタッチで描いています。

 

著者
森 薫
出版日
2009-10-15


タイトルの乙嫁とは、もとは弟の嫁、年少の嫁、という意味の古語ですが、出版元の公式サイトでは美しいお嫁さんと定義されています。その通りの、非常に美しい女性が数多く登場する作品です。しっかりとストーリーがあり、その中で乙嫁たちの結婚や、日常、時にはシビアな問題が順に展開してゆきます。

同じ作品でありながら、それぞれの乙嫁によって全然違った展開を見せるのも変化があって飽きさせないポイント。それでいてストーリーは繋がっているから面白い。登場するキャラクターたち自身もですが、民族衣装も繊細で美しく、装飾品から背景に小物まで、ディテールにこだわりぬかれた描写は、さすが森薫作品といった表情を見せます。

これでもか!というほどに美しく、細かく緻密に書き込まれた人物、衣装、装飾品、背景、小物。漫画でありながら、もはや1ページ1ページがアート作品のような雰囲気を醸し出すのは、森薫の卓越した画力とセンスがあってこそ。思わず驚嘆させられます。

親が結婚をすべて決めてしまう時代背景の中で、それでも相手と理解しあい愛し合ってゆくような展開や、現代日本でも存在しそうな等身大の乙女の素直になれない恋と言った、乙嫁たちの周囲で起こるすべてに胸キュン必至。にやにや必至です。支えあって生きている登場人物たちに、ほっこりとした気持ちになれる作品です。

2014年のマンガ大賞で大賞を受賞しているほどの人気作品でもあるので、ぜひ楽しんでみてください。

一見本当に女性なのかと疑いそうになるほどの女性へのこだわり、愛情を感じさせる森薫。彼女の描く美女だらけの素敵な作品の数々をぜひお手に取ってみてください!


『乙嫁語り』について紹介した<漫画『乙嫁語り』の魅力をネタバレ紹介!面白さの理由を徹底考察!>の記事もおすすめです。

  • twitter
  • facebook
  • line
  • hatena
もっと見る もっと見る