ミステリー好き待望の第2弾!叙述トリックを用いた小説5冊

ミステリー好き待望の第2弾!叙述トリックを用いた小説5冊

更新:2021.11.30

2016年。新年一発目でございます。 今回ご紹介するのは、私の大好きな「叙述トリック」を用いた小説! 私の連載第一回目も同じテーマでしたが、載せ切れなかった作品が多々あるので「第2弾」として大放出!! どっかーん!!

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叙述トリックに関しては、第一回目の記事「読書にハマる起爆本!叙述トリック5冊」でもご説明しましたので、今回は割愛させて頂きます。

「叙述トリックとはなんぞやっ!?」って方は、ぜひそちらの記事もチェックしてみてくださいまし。小説でしか味わえないあの衝撃がたまらないのよね。これだから叙述トリックは止められない!!! ふぉおぉおおーっ!!!!

ってことで、ご紹介していきまーす。

ロートレック荘事件

著者
筒井 康隆
出版日
1995-01-30
筒井康隆さんの中編推理小説。舞台は、郊外にある瀟洒な洋館。ロートレックの作品に彩られた館内で、次々に美女が殺されていくという事件が起きます。一見すると古典的なミステリーのように感じますが、他に見たことのない驚きの仕掛けが施されています。

わたくし、完全に騙されました。
ネタバレ防止のために詳しくは書けませんが、トリックが非常に秀逸!! おったまげます。私も今作に叙述トリックが使われていることを知った上で読んだのですが、まったく見抜けず……。

でも、後々読み返してみると、確かにしっかりと伏線が敷かれているんですよねぇ。なんで読んでいる途中で気付かないんでしょーね。思い込みって恐いですわね、まったくもう。

まぁそれを狙ってるのが叙述トリックなんですけどね。あはは。

200ページ程の短い作品ではありますが、かなーり濃ゆいです。仕掛けのために、文章がかなり練り込まれております。ぜひ流し読みせずじっくり読んでください。後々の衝撃度が増しますわよ。

また、本文の後半にトリックの解説が詳しく書かれています。一読後、ぜひその解説部分と照らし合わせながらもう一度読んでみてください。まったく別の視点で物語を楽しむことが出来ます。

1冊で2度楽しめます。リバーシブルみたいですね(←え?)。

交換殺人には向かない夜

著者
東川 篤哉
出版日
2010-09-09
ユーモアな語り口で知られる、東川篤也さんの長編推理小説。「烏賊川市シリーズ」の第四弾にあたります。今作は、私立探偵の鵜飼杜夫、弟子の戸村流平、事件捜査中の刑事たちという三つの別々の舞台が、それぞれ同時進行する形で描かれています。

無関係に見える舞台の裏で、密かに交換殺人が……というストーリーです。

こちらも見事な叙述トリック !! 大掛かりで複雑な仕掛けが炸裂しています。散りばめられた伏線。巧妙に仕組まれたトリック。お見事すぎます!! 結末のドミノ倒し感がハンパなく気持ち良い!! 多少の見慣れたトリックではありますが、稀に見るスケールのデカさです。

予想のさらに上を行っていました。「そっちもかっ!!」って突っ込みたくなります。読んで頂ければこの意味が分かるはず……!!

そしてなんといってもこの作品、めちゃめちゃ面白いです。コメディ調の軽快な語り口でギャグが散りばめられており、笑えます。とても読みやすいテンポ感。

また、ノリやキャラ設定がかなりコミカルに描かれているため、漫画やアニメ好きな方にはピッタリな作品だと思います。逆に、シリアスで重い作品が好みの方は、少し抵抗を感じてしまうかもしれません。
が、ミステリーとしても読み応えのある内容ですので、ぜひとも読んで頂きたいです。

ちなみに私は、文庫版130ページ「善通寺春彦への電話」の冒頭が大好きです。要チェーック!!!
著者
加納 朋子
出版日
2006-07-12
ズバリ、人形に恋するお話でございます。連作短編の名手、加納朋子さん初の長編ミステリー。優しい雰囲気の作品が多い加納さんですが、今作は打って変わってダークな印象。不穏な空気が漂っています。

しかし、結末は意外にも爽やかなので、心地よい読後感が味わえます。恋愛要素も強く、普段ミステリーを読まない方にもおすすめな一冊。

主な登場人物は、人形師の如月まゆら。そして、彼女が作った人形に恋をした青年。そしてそして、その人形と瓜二つな容姿の女性。この三人を含む登場人物たちの複雑な関係が、物語を格段に面白くしています。 今作は、そのうち二人による一人称パートが、交互に描かれていくというトリッキーな構成。ここ重要です。テストに出ます。

そしてもちろん、叙述トリックが使われております!! 気持ちの良いどんでん返し。この爽快感がたまらないんです!! いやはや、小説って素晴らしい。

読み慣れている方は、途中でトリックに気付いてしまうかもしれませんが、ストーリー自体も面白いのでぜひ読んで頂きたい!! 今回ご紹介する5冊の中でも、特に読みやすい作品だと思います。非常におすすめです!!!

神のロジック 人間のマジック

著者
西澤 保彦
出版日
最初に言っておきますが、こちらは厳密に言うと叙述トリックではありません(ふぁ!?)。じゃ何で紹介すんねんっ!!って感じですが、実はこの作品、オチがとても叙述トリックっぽいんです。

タネの明かし方といい、重要ポイントの伏せ方といい、全体を通してほぼ叙述トリックなんです。なので紹介しちゃいます。だって面白いんだもの。自分でこの記事のタイトルを「叙述トリックを用いた小説」にしたのに、華麗に無視します。

この本は、私の大好きな作家、西澤保彦さんのミステリー小説。物語の舞台は、荒野に建つ謎の「学校」。六人の子供たちが幽閉されており、何も知らないまま共同生活を送っています。やがて、一人の新入生が来たことによって悲劇が起き、驚愕の真実が明かされるという物語です。

今回ご紹介する5冊の中で、最も不気味な作品です。舞台や設定など、奇妙で謎めいた事が多すぎて気味が悪い。正直、読んでいてゾクッとしました。ホラーやグロテスクとは一味違います。

得体の知れないモノと対峙したときのような、何とも形容し難い恐怖に襲われます。簡単に言えば、ブラックボックスの中に手を突っ込んで「いやぁーん。今なに触ってるのこれぇー。なんか気持ち悪いぃーん」的な感じです。

初めにも言いましたが、今作の仕掛けは叙述トリックではありません。叙述トリックとは、作者が読者を騙すものであって、登場人物が騙されていてはダメなのです。

とかなんとか言ってるとネタバレになってしまうので、これ以上は控えます。読んで頂ければわかりますって!! ね!!

片眼の猿―One-eyed monkeys

著者
道尾 秀介
出版日
2009-06-27
道尾秀介さんの長編ミステリー。
主人公は、盗聴専門の私立探偵、三梨幸一郎。彼の持つ特異な「耳」を生かし、産業スパイとして調査をしている最中、冬絵という女性と知り合います。冬絵はいつも大きなサングラスをかけており、彼女を同類だと感じた三梨は、すぐさま探偵事務所にスカウト。後に起きた殺人事件がきっかけとなり、波乱の展開を迎えます。

この小説は、他の叙述トリック作品とは一風変わったオチが待っています。大抵の場合、最後の種明かしのところで「えぇぇええーっ!? マジかぁあぁああ!!!」という衝撃をくらうのですが、今作は一味違います。どんでん返しという点では同じなのですが、他作品とは少し違った意味で面食らいます。衝撃度は若干低めですが、騙された人はかなり多いのではないでしょうか。

ちなみに私も騙されました。とても新鮮なオチです。「そっちかいっ!」って突っ込みたくなります。

叙述トリックを読み慣れてる方でも楽しめる作品だと思います。映像化できないとは、まさにこの作品のことですね。ふふふ。

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