しりあがり寿のおすすめ漫画ランキングベスト5!シュールな作風が魅力

更新:2021.12.18

しりあがり寿の名前を聞いて「ああ、あのヘタウマな漫画家?」と思う人は多いでしょう。そのDEEPな世界観を知ってなおそう言えるのか?彼のベスト5作品をご紹介させていただきましょう。

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シュールでリアリスト、むちゃくちゃで繊細なしりあがり寿とは

しりあがり寿は1958年生まれ、静岡県出身の漫画家です。1981年某ビール会社に入社後、マーケティング関係の仕事をしつつ、漫画を描き始めたそうです。1994年に同社を退社し、漫画業に専念。2000年には『時事おやじ2000』、『ゆるゆるオヤジ』が文藝春秋漫画賞を受賞します。

翌年の2001年には『弥次喜多 in DEEP』で手塚治虫文化賞「マンガ優秀賞」を受賞しました。一時期は横浜美術短期大学で漫画論の講師もしており、2006年に神戸芸術工科大学メディア表現学科特任教授に就任しています。2014年には春の叙勲で紫綬褒章受章されました。

5位:めでたしめでたし安らかに『おとぎの国のメメントモリ』

おとぎ話の最後はたいてい「めでたしめでたし」で終わります。しかししりあがり寿はその先にあるものを描いてしまいました。

和洋関係なく誰もが知っている様々なおとぎ話たちの、その後の死生を問うこの作品は、きっとあなたの視点を変えてくれる1冊となることでしょう。

著者
しりあがり 寿
出版日
2015-09-25

メメントモリというのはラテン語で「自分が必ず死ぬことを忘れるな」を意味する警句だそうです。

しりあがり寿はとにかくその辺をどの作品でもねちっこく描いていますが、きっと彼の中には常に「生と死」というものがへばりついているのでしょう。これはその生死に通じるしりあがり版おとぎ話という事になります。

白雪姫やシンデレラ、赤ずきんちゃんたちの、幸せの先で得た死とはどんなものだったのか、しりあがり風エスプリの効いた物語の続きが披露されます。

4位:明日もここであいましょう?『方舟』

「滅び」をテーマにしたしりあがり寿渾身の問題作です。非常に重苦しい内容になっています。

長雨が続き、水に沈んでいく世界に、人は人類の滅びの予感を感じ動揺と混乱おちいります。はたして人が人として生きていくことの意義とは?

著者
しりあがり 寿
出版日
2000-12-01

世界が終わる時がもうすぐそこまで来ていたら……。

もしももうすぐ世界が終わるとして、貴方はどうするでしょうか?人の食べ物を奪ってでも生き残ろうとするのでしょうか?それとも変わらず穏やかに暮らして、静かに絶えていくのでしょうか。

この作品は、常に死と生に向かい合うしりあがり寿のカラーが如実に表れた作品です。序章の丁寧な背景が、これから壊れ行く世界を予感させます。急に激しく暴れるのではなく、しとしとと絹糸のような雨に、世界が静かに閉じていくのです。

3位:二人いっしょにお伊勢参り『弥次喜多in DEEP』

『東海道中膝栗毛』を題材に描かれた作品。『真夜中の弥次さん喜多さん』の続編にあたります。

男気の弥次さんと美貌の喜多さんは、濃厚な恋人同士なのですが、弥次さんは妻帯者、喜多さんは重いヤク中でした。ある日弾みで嫁を死なせた弥次さんは、喜多さんを連れて参拝すれば色んな悩みや困りごとを昇華してくれる、お伊勢様を目指して出発するのです。

2001年には今作で手塚治虫文化賞「マンガ優秀賞」を受賞しました。

著者
しりあがり 寿
出版日
2005-03-25

しりあがり寿といえばこの作品が出てくる人も多いでしょう。余すことなく彼の哲学や死生観が、読み手についてこなくてもいいと言わんばかりに突っ走ります。シュールをここまで突き詰めるしりあがり寿の真骨頂をご覧ください。

バイオレンスでグロテスクで時々スウィート、宗教ちっくで荒唐無稽な弥次喜多ロードムービーです。

2位:私が欲しいんじゃない、脳みそが欲しがってるの『ア〇ス』

日々友達を求めてまわる女の子の妄想で話が進む不条理漫画です。『弥次喜多 in DEEP』の原型と言われているしりあがり寿の初期作品となります。
 

著者
しりあがり 寿
出版日

いつも以上にシンプルな絵で、とにかくむちゃくちゃに友達探しをする、とち狂った女の子のとんでも行動を笑う作品です。しかしその彼女の妄想の間でちょいちょい読み手を刺しに来る言葉があり、理論もへったくれもない主人公の気持ちが理解できるのです。

友達が欲しいけど、他人と関わるのが怖いという二面性を、奇行の激しい主人公を通して描いていて、読み終わった後に何故か寂しさがこみあげてくることでしょう。

1位ちゃんとここに書いとくね『あの日からのマンガ』

あの日、それは未曽有の大震災が起きた3月11日という日付を意味します。それまでの平和な価値観を引きはがされ、誰もが落ち着かず、迷い困惑しながら生きていた日を、漫画という形でしりあがり寿は描き記しました。

それもいつものように根深いところをグイグイと責め立てるような描き方ではなく、なんとも静かに優しく生と死を訴えてくれる描き方です。

著者
しりあがり寿
出版日
2011-07-25

震災を題材にして、こういう言い方はおかしいかもしれませんが、この作品は優しく明るくポジティブなんです。

もちろんしりあがり寿なりの皮肉もたくさん込められていますが、あの不安で不安で眠れなかった夜、この漫画を読んでいたら、きっと少し安心して眠れたでしょう。

あの日、不安なことしか伝えてこないテレビを、家族みんなで身を寄せ合って観て、つまらない冗談ちょっと口にして、ちょっと笑って、明日また同じこと言って笑おうと思う事がどれだけ大切なのか……。

あの日から教えられたのだと、しりあがり寿は読み手に伝えてくれました。

しりあがり寿の作品をすべて読みつくすのは、大変時間がかかることでしょう。何より1作ごとに体力と精神力をごっそり彼は持っていきます。読む前にはちゃんと体調を整えて、わりと気分のいい日に、鬱な物事も軽く流せる精神状態で挑んでいただきたいです。

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