島本和彦のおすすめ漫画ランキングベスト5!熱い名言が魅力!

更新:2021.12.18

島本和彦と言えば、熱血漫画を描かせれば右に出る者のいない熱血漫画家です。2014年には『アオイホノオ』がドラマ化されたことで、話題になりました。そんな島本の漫画は、とにかく熱い。なんたって本人が熱血なのだから、作る作品が熱くならないはずがありません。そして作品が熱いなら、名言が出ないわけがないのです!今回はそんな血潮沸き立つ、島本作品ベスト5をご紹介します。

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島本和彦は嵐を呼ぶ熱血漫画家!

 

1961年4月26日生まれ、北海道出身の漫画家。本名は手塚秀彦です。

小学校からギャグ漫画を描き始め、大阪芸術大学芸術学部映像計画学科に在学中の1982年、「週刊少年サンデー」誌上で『必殺の転校生』が掲載されてデビュー。大学を中退して上京、プロ漫画家となります。

『アオイホノオ』で、2014年に文化庁メディア芸術祭マンガ部門優秀賞、2015年に小学館漫画賞一般向け部門を受賞しました。

デビュー当時から荒唐無稽なギャグ漫画を得意としており、造詣が深いアニメ、特撮、漫画のパロディネタが作品作りに反映されています。

そして島本と言えば熱血。暑苦しいほどに熱い展開が持ち味です。初期は劇画に似た独特の画風でしたが、そのころからすでに熱血指向。『炎の転校生』及び原型となった『必殺の転校生』は、車田正美『リングにかけろ』の影響が感じられます。このことは自伝的作品『アオイホノオ』でも触れられました。また、『炎の転校生』は2017年にドラマ化が決定されました。

5位:平和を守る正義の使者(有料)!『ヒーローカンパニー』

 

幾多の不況を乗り越えて、着実に進歩し続けてきた人類社会。西暦2XXX年、栄枯盛衰の激しいビジネス界で、ある企業が注目を集めていました。

機関銃を搭載した凶悪な産業スパイロボが会社のオフィスを襲撃。1人の女子社員が逃げ出し、どこかへ連絡を入れます。彼女は上司から企業秘密を託されていました。スパイロボが女子社員を追い詰め、あわや大惨事!

そこへ絶妙なタイミングで現れたヒーローが、彼女を救出しました。ヒーローは書類を取り出してこう言います。

 

「ここにサインお願いします」(『ヒーローカンパニー』より引用)

著者
島本 和彦
出版日
2012-09-05

 

本作はヒーロー漫画専門誌「月刊ヒーローズ」連載中の作品です。本作を一言で表すなら、アニメ特撮に一家言ある島本による、変身ヒーローのパロディギャグ漫画といったところでしょうか。

劇中に登場する企業「ヒーローカンパニー」が主な舞台。同社に雇用された社員が、契約に従ってヒーロー活動を行います。企業テロを防ぐ、飛び降り自殺を救出するなどの様々な事件を解決するところから、事実上の何でも屋的な存在と言えるでしょう。

本作の面白みは、登場人物の言動が妙にリアルなところです。

例えば、ヒーローであっても勤務が終われば同僚と飲みに行くし、時間外に出くわした事件には基本的に不干渉。公私混同は避ける。逆にヒーロー活動中は極めてヒーロー的。あえてピンチを演出することも。指名があるらしいことから、ヒーローが人気商売であることが窺えます。

この手の職業ヒーローの先行作品としては、実在の企業にスポンサードされた『TIGER & BUNNY』が思い出されますが、本作に登場するヒーローはあくまで民間企業の社員。その点で言うと、民間企業のサラリーマンが巨大ロボットで怪獣と戦う『地球防衛企業ダイ・ガード』の方が近いかも知れません。

主人公のアマノ・ギンガは、ヒーローだった父親に憧れて、ヒーローカンパニーの入社試験に挑みます。正義大好きのギンガは、無事ヒーローカンパニーに就職出来るのでしょうか。そしてある意味過酷な現実にどう立ち向かっていくのでしょうか。

4位:島本和彦版ガンダムファイト!レディ・ゴー!『超級! 機動武闘伝Gガンダム』

 

時は未来世紀。F.C.60年、宇宙進出を果たした人類が、全面戦争を回避するために策定した国際大会。4年に1度、国家を代表する選手が地球に降下し、機動兵器モビルファイターに乗って勝者を競い合います。優勝国に向こう4年間の絶対的主導権が与えられる、その大会の名は――「ガンダムファイト」。

主人公は第13回大会におけるネオジャパン代表、ドモン・カッシュ。コロニー格闘技の覇者、キング・オブ・ハートの称号を持つ武闘家です。彼は愛機シャイニングガンダムに乗り込み、幾多のライバルと闘って、大会優勝の栄光「ガンダム・ザ・ガンダム」、すなわち「Gガンダム」を目指します。

著者
島本 和彦
出版日
2010-12-25

 

本作の元になった『Gガン』こと、『機動武闘伝Gガンダム』は1994年に放送されたTVアニメです。リアリティのある仮想戦争、そこで翻弄される人間ドラマを描いてきたガンダムシリーズにおいて、もっとも異色とされる作品。

島本和彦は元々キャラクターデザイン協力として『Gガン』本編に関わっていましたが、2010年に「月刊ガンダムエース」誌上で本作『超級!機動武闘伝Gガンダム』(以下、『超級』)の連載を開始しました。『Gガン』はガンダムシリーズ15周年の節目に作られた作品ですが、この『超級』も『Gガン』放送終了からちょうど15年後の漫画化なんです。

本作の物語の展開は基本的に『Gガン』をなぞります。

ドモンはネオジャパン代表ファイターとして闘うのと平行して、ある人物を捜索しています。母を殺し、父を永久冷凍刑の憂き目に遭わせた張本人。それは宇宙にあるネオジャパン本国の手を逃れて、秘密裏に地球へ降下した兄、キョウジです。そしてキョウジの乗る、恐るべき悪夢の兵器「デビルガンダム」。

『Gガン』というと、ガンダムが異種格闘技を行うイメージから、頓珍漢な作品と思われがちですが実はこんな暗い設定があります。しかし、そこは島本和彦。『Gガン』ファンにとっては賛否の分かれるところですが、お得意の熱血とくだらないギャグで暗さを払拭。

それと同時に『超級』では本編で描かれなかった部分、辻褄の合わなかった部分が独自解釈によって補完されてもいます。脚本で『Gガン』の今川泰宏監督が参加していることもあって、ここは注目すべき点です。

他にも、大河原邦男デザインによる主要登場人物の新たな乗機が登場。主人公ドモンが決勝大会用ガンダムに乗り換えたように、あのライバル達の新しいガンダムが出てきます。もう『Gガン』本編では決して見られない『超級』ならでは展開にご注目!

3位:島本和彦が男達に送る青春物語!『逆境ナイン』

 

全力学園野球部キャプテン、不屈闘志(ふくつとうし)はある日突然、校長から野球部廃部を言い渡されます。

成績の振るわない部活に意味はない、と有無を言わせない校長。これこそ逆境! 不屈の心にふつふつと闘志が沸き起こり、彼は宣言しました。10日以内に強豪・日の出商業野球部に打ち勝ち、必ず甲子園優勝を果たしてみせると。

そして野球部の猛特訓が始まります。弱小チームを戦いに駆り立てるのは気合いのみ。そんな彼らを襲う数々のピンチ。逆境をはね除けて、見事宣言通りに甲子園に辿り着けるのでしょうか!

著者
島本 和彦
出版日

 

本作は島本和彦最高傑作の呼び声もあるスポコンギャグ漫画です。熱血、パロディ、そして名言。およそ島本節の全てが詰まっています。野球がメインではありますが、基本的には技術云々よりもスポコンをパロった気合いとド根性、バトル漫画ばりの新技開発で逆境を乗り越える展開が続きます。

とにかくキャラの熱さが尋常ではありません。主人公の不屈闘志は、名は体を表すを地で行く男。逆境に立たされて諦めかけても、何度でも奮起する不屈の闘志の持ち主です。そして顧問のサカキバラ・ゴウも忘れられません。野球部顧問なのに野球を知らず、ほとんど人生訓だけで不屈をはじめとする部員を引っ張る剛胆な人物。

名言の多さも本作の特徴です。心に響く印象的な台詞の数々は、後に名言集『炎の言霊』としてまとめられるほど。

 

「『それはそれ』!!『これはこれ』!!」

「無理が通れば道理は引っ込む!!」

「こじつけでも、つじつまが合えばそれにこしたことはない!!」(いずれも『逆境ナイン』より引用)

 

この名言こそ読者の魂を振るわせる島本節の真骨頂でしょう。

2位:熱血漫画家の生き様とくと見よ!『吼えろペン』

 

東京近郊の某複合量販店2階に「炎プロダクション」がありました。熱血主人公、炎尾燃(ほのおもゆる)の製作事務所です。

月刊連載2本、隔週連載1本のありふれた漫画家ですが、お盆を前にしてスケジュールは遅延、完成原稿0枚という有様でした。進退窮まった炎尾は、以前に講師を務めたデザイン学校の有望な生徒を思い出し、彼を呼び出します。

彼の名は前杉英雄(まえすぎひろ)。炎尾に負けず劣らずの熱血アシスタントとなります。嵐を呼ぶ漫画家、炎尾燃と彼の強力なアシスタント達が、命を賭けて奇跡の漫画を描き出す!

著者
島本 和彦
出版日

 

本作は1990年に連載された『燃えよペン』の続編です。一連のシリーズを時系列で並べると、炎尾の新人漫画家時代の『燃えよペン 第2部』、一線で活躍する『燃えよペン』、そして『吼えろペン』、『新吼えろペン』となっています。

『燃えよペン』は漫画家の生活を描いたある種のあるあるネタでしたが、『吼えろペン』はもう少し掘り下げて、漫画業界を風刺した作品です。とはいえ基本的には熱血成分過多のギャグ漫画。キャラも総じて濃く、特に炎尾燃の存在感が凄まじいです。

炎尾は何気ない一言が暑苦しく、迫力で押し切ります。モデルは島本和彦本人。漫画家仲間や業界人の島本評を見るに、島本は炎尾そっくりな人物のようです。しかし、完全に同一人物というわけではなく、島本曰く炎尾は「若い」とのこと。

 

「やればわかる!! やらなければ、一生わからん!!」(『吼えろペン』より引用)

 

他の人気キャラとしては、富士鷹ジュビロが挙げられます。島本と同郷で、友人の藤田和日郎がモデル。実在する漫画家をモデルにしたキャラは他にも多数登場しますが、友人同士の気安さからかジュビロの存在感と活躍は炎尾に勝るとも劣りません。奇抜な見た目のジュビロが、藤田作品の真髄を語る台詞は圧巻。

 

「世界中の子どもたちに愛と勇気をね! 与えてあげる前提で、――まず怖がらせるだけ怖がらせてあげちゃうよーん!! 一生残る恐怖と衝撃で、一生残る愛と勇気をね!!」(『吼えろペン』より引用)

 

本作を読めば、漫画家という職業への理解が深まるはず……!?

1位:島本和彦が漫画家人生の原点を描く!『アオイホノオ』

 

1980年代初頭、大阪府にある大作家(おおさっか)芸術大学が舞台。

主人公のホノオこと焔燃(ほのおもゆる)は、映像計画学科に所属する学生です。アニメ、漫画に一家言を持つ彼は、自分の才能を信じて近い将来の成功を疑っていません。しかし、ホノオは今のところ学生の身分に甘んじるだけで、具体的な行動には移っていませんでした。

ところが大作家芸術大学の同期生は強者揃い。ホノオが無根拠に自惚れている間に、途轍もない作品を発表してしまいます。

ホノオが、自分だけが知っている無名作家、と思い込んでいたあだち充、高橋留美子。彼らのような若手漫画家もプロの世界で躍進を遂げ、気づけば何事も成し遂げていないのはホノオだけという有様。

これは、まだ自分が何者になるかを知らない若者が、徐々に漫画家人生を歩み始める物語です。

著者
島本 和彦
出版日
2008-02-05

 

本作は『吼えろペン』の系譜にある漫画家漫画です。主人公が島本和彦本人を投影したキャラであるところまでは同じ。

本作は実在する大阪芸術大学で、島本自身が学生として過ごしていた時代を描く半自伝的な作品です。ただし、時系列が現実とは違ったり、実際には起こらなかった出来事なども話に含まれています。

まず気になる焔燃の名前。『吼えろペン』の主人公と同じ読み方です。最初は島本を投影したキャラを記号的に「ホノオモユル」と名づけているのかと思われました。後に島本がパーソナリティを務めるラジオ番組『島本和彦のマンガチックにいこう!』内で、焔燃と炎尾燃が同一人物であることが語られました。

本作の面白さは、ホノオの過剰なリアクションにあると言っても過言ではありません。ホノオはクリエイター志望にありがちな自信家で、自己肯定の塊。それが自分の許容量を越えた才能を目の当たりにした時、崩れ落ちるおかしさ。彼が優れた見識眼を持ち、作品の良し悪しを判断出来る能力があるからこその挫折。

そしてそこで、もう1つの面白いところに繋がります。それはホノオが決して諦めないこと。何度でも諦めずに立ち上がる鋼のメンタル。それは王道を行く少年漫画の主人公のようです。その姿に読者は胸打たれます。笑わせられてからの感動が本作の醍醐味。

主人公の前に立ち塞がる壁(とホノオ本人は思っている)、実名で登場する同期生の面々もまた凄い。

『新世紀エヴァンゲリオン』の監督で、2016年には『シン・ゴジラ』で特撮界に衝撃をもたらした庵野秀明。ゲーム『プリンセスメーカー』を世に送り出したイラストレーター、赤井孝美。自身では絵を描けないが、他人の才能を見出すプロデューサー気質の山賀博之。

この3人と、そして部外者の岡田斗司夫が組んで作った「DAICON3オープニングアニメ」は、今でも語り継がれる伝説的作品です。庵野、赤井、山賀、岡田の4人はこれがきっかけでアニメ製作会社ガイナックスを立ち上げました。

このエピソードはホノオ=島本とは無関係であるにも関わらず、同時代の代表的出来事として作中でも大々的に語られることになります。DAICON3の成功を見せつけられるホノオのオーバーアクションは必見。

倒れても倒れても、尚立ち上がるホノオ。熱血漫画家、島本和彦はこうして生まれた!そう思わされる『アオイホノオ』こそ、島本作品ランキングベスト1に相応しいでしょう。

いかがでしたか。くだらないギャグを熱血で突き通し、挙げ句の果てには名言・名場面にまで昇華させてしまう炎の漫画家、島本和彦。一読すれば日頃の憂鬱が吹き飛ぶこと請け合いです。

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