曽根富美子のおすすめ漫画ランキングベスト5!家族がテーマの作品多数

更新:2021.12.18

漫画家であり油絵作家でもある曽根富美子の漫画をランキング形式でご紹介!親子関係や家族の問題をテーマにしたものが多く、その中で傷つく女性や子供といった弱者に焦点をあてており社会派の漫画家として多くの読者に支持されています。

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曽根富美子とは

曽根富美子(そね ふみこ)は1958年生まれ、北海道室蘭市出身の漫画家。北乃咲喜名義で油絵作家としても活動しています。1975年『りぼん』の新人漫画賞で佳作第二席に選ばれ、北原智名義で同年末のお正月増刊号の『千聖子』でデビュー。1992年には『親なるもの 断崖』日本漫画家協会賞優秀賞を受賞しました。

曽根富美子の作品は家族の問題、中でも女性や子どもといった弱者にスポットを当てた作品が多く、自閉症者の手記を題材にとった『この星のぬくもり 自閉症児のみつめる世界』のように取材に基づいて書かれたルポ方式の漫画も多く執筆しており、社会派の呼び声も高い漫画家です。

5位:戦争の悲惨さを描く力作短編集

5つの短編からなる短編集で戦争によって傷ついた女性たちの群像がリアルな筆致で描かれています。戦禍を被った女、戦争によって心に傷を負った男に寄り添う女。それでも生きていく女たちの姿を曽根富美子が描き出します。

著者
曽根 富美子
出版日
2010-12-09

第1話「ヒロシマのおばちゃん」は結核患者の美佐子が主人公です。美佐子は23歳。「行き遅れ」「非国民」と患者仲間にも馬鹿にされている美佐子は、それでも家族の愛情に包まれて療養生活を送っていました。小さいころから病弱でしたが、食欲は旺盛で太っていたために「おばちゃん」というあだ名をつけられていた美佐子。戦況が悪化しても食欲が止まらずあらゆるものを食べ続けます。そんな中で原子爆弾が広島に投下され、美佐子は焼け跡となった病院を抜け出し、広島のまちをさまようことに。家族に出会ったのも束の間、失われたものの大きさに彼女は直面するのでした。

被害者と加害者の双方に深い爪痕を残す戦争の悲惨さ、女の性と生の哀しみとやるせない怒りが込められた作品集です。

4位:捧腹絶倒のお仕事体験レポート

曽根富美子の実体験に基づいたお仕事エッセイ漫画です。漫画家からレジ業務にチャレンジしたレジノさんのスーパーでの日々が描かれています。

著者
曽根 富美子
出版日
2015-02-23

主人公のレジノ星子のモデルはもちろん曽根富美子本人!初期の曽根作品とは画風も作風も一風変わった楽しい「汗(主に冷や汗)と涙の労働奮闘記」です。

50歳を過ぎてスーパーのレジ打ちのパートを始めたレジノ。はるかに年下の先輩たちの指導のもと毎日レジ業務に勤しみます。レジ打ちのコツや苦労話満載の楽しいエッセイ漫画についつい引き込まれてしまうのではないでしょうか。日頃買い物をしているだけでは分からない、知られざるレジ打ちの仕事の裏側や様々な工夫も興味深いです。そして、それ以上に失敗を重ねながら少しずつ成長していくレジノの姿に、応援したくなるだけではなく思わず励まされてしまう!そんな笑いと涙をさそう作品です。

3位:児童虐待 子どもたちの光と闇

児童養護施設・光学園の諸星園長(通称 園長アニキ)のもとには様々な問題を抱えた子どもたちが集まってきます。家庭で傷ついた子どもたちに向き合う園長アニキたちの奮闘記です。

著者
曽根 富美子
出版日
2010-08-10

第1話「少女が盗む理由」をここではご紹介。光学園に小学校四年生の野田ちえみがやってきます。母親に放置され三歳から様々な施設を転々としてきたちえみ。同じく光学園に暮らす同級生のジンコから見ても大人びた彼女がやってきてから、光学園にあらたな問題が起こり始めます。

一見明るい問題児のジンコも性的虐待、母親の育児放棄に合っています。彼女は弟のジンタを守って一生懸命に生きている……。大人たちに傷つけられた子どもたちが集まる光学園で、園長アニキは彼らの抱える闇に向かい合い、一緒に光を探しつづけます。作者である社会派漫画家・曽根富美子の入念な取材に基づく意欲作です。

2位:自閉症児の成長と葛藤

ベネッセ発行の『たまひよコミック SPECIAL』に掲載された作品です。実際に自閉症の当事者に取材したうえでの、自閉症児を育てる親の苦労、そして子どもが直面するいじめ問題を当事者の視点から描いています。

著者
曽根 富美子
出版日

生まれたときはただ手のかからない子どもだと思われていた愛里。自閉症への社会的認知が進んでいなかったため、高齢出産し懸命に子育てする母親は娘が「自分の内なる世界に広がる精神構造と現実社会とのギャップに恐怖し 激しい葛藤を繰り返していたこと」など知る由もなく悩み続けます。

やがて愛里が成長するにつれ、母親は彼女の感情表現とのすれ違いに苦しむことになります。愛里のお気に入りの「わたしの世界」が外部から侵害されてしまうことへの不快感から周囲との折り合いをつけられない愛里を、母は「全部ぶつけなさい」と抱きしめるのでした。

自閉症との診断を受けた後も外の社会との軋轢は消えず、愛里はいじめの対象になります。結果、高校も中退し引きこもることになりますが、いじめが社会問題化し、自閉症の研究も進む中で自らの意見を発信することによって社会と再び出会うことを選ぶのでした。自閉症児本人の、そして親の抱えるもどかしさや苦しさに正面から向き合った作品です。

1位:室蘭遊郭に生きた女たちの年代記

曽根富美子の出身地である北海道・室蘭市の遊郭を舞台にした作品。第1部では4人の娘たちが、そして第2部ではそのうちの一人の梅の娘・道生の半生が描かれています。1992年に日本漫画家協会賞を受賞、2010年代に電子書籍化されて再び話題を呼んだ大作です。

著者
曾根 富美子
出版日

昭和初期に青森の貧しい農村の4人の娘たち(松恵、梅、武子、道子)は鉄鋼の街、室蘭の葛西遊郭に売られます。道中、女衒の下田は地球岬を娘たちに見せ、「親である断崖」という意味だと教えます。その夜、客をとらされた松恵は自死し、娘たちの運命は時代の渦の中に投げ込まれるのでした。

葛西一の売れっ妓・夕湖となった梅、芸妓を目指して修行する武子、障害を抱えているために女郎になれず下働きのままの道子。夕湖は社会主義に傾倒する青年・中島聡一と出会い、自らのおかれた境遇と向き合うことになります。

足抜けに失敗し、地球岬で道子も命を落とし、梅は廓の隠し部屋へと連れ戻されるのですが「お前が今の時代そのものなのだ!」という中島の言葉は梅の奥深くに残ります。梅は日鉄社員の大河内に見受けされてもなお幸せとは程遠く、梅は懸命に時代を生き抜こうとしますが……。特に厳しく時にやさしい地球岬に見守られながら強かに生き抜く女たちの姿を描き出す人間賛歌です!

曽根富美子の作品は、社会問題に真っ向から向き合うものが多いといえますが、今回ご紹介した5作品はいずれも現代の私たちにとっても、深く考えさせられる問題を提示しています。親と子の問題、障害、いじめ、虐待。さらには労働環境や貧困、戦争について。女性や子どもという弱者の視点を通して曽根作品は私たちに大事なことを思い出させてくれるのではないでしょうか。

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