ルイス・キャロルのおすすめ作品5選!不朽の名作『不思議の国のアリス』著者

更新:2021.12.19

有名な『不思議の国のアリス』の著者ルイス・キャロル。続編の『鏡の国のアリス』の他にも、独特のファンタジックな世界が魅力的な作品を書いています。少し不思議な物語の世界を旅してみませんか?

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知性と遊び心の作家ルイス・キャロル

『不思議の国のアリス』の作者として知られるルイス・キャロル(Lewis Carroll)。この名前はペンネームで、本名はチャールズ・ラトウィッジ・ドジソン(Charles Lutwidge Dodgson)です。

ペンネームの由来は、彼の本名です。まずCharles Lutwidgeという名前をラテン語の形で書き直してCarolus Ludovicusにし、次にそれを再び英語にして、姓と名の順序を入れかえるとLewis Carrollになります。

このようなペンネームの由来から、ルイス・キャロルの頭の良さとお茶目さを感じ取ることができます。実際、彼はイギリスの名門・オックスフォード大学を最優秀の成績で卒業し、作家としてだけではなく、数学者としても活躍しました。

知性と遊び心があったからこそ、アリスなどの独特の世界観が魅力的な作品を書けたのではないでしょうか。今回は、ルイス・キャロルの作品の中でもおすすめの5冊をご紹介します!

子供も大人も魅了する名作

ある日、少女アリスは読書をしている姉のそばで、退屈していました。そこに服を着て懐中時計を持った白ウサギが、なにやら急いだ様子で走りながら通り過ぎていったのです。

驚いたアリスは白ウサギの後を追って、ウサギ穴へと落ちてしまいます。それが幼いアリスの不思議な冒険の始まりだったのです……。

著者
ルイス・キャロル
出版日
2010-02-25

『不思議の国のアリス』のストーリーは、1862年にルイス・キャロルが親しんでいた少女アリス・リデルを楽しませるために、即興で語った物語が元になっているといわれています。アリスのモデルはこのアリス・リデルです。ルイス・キャロルはまず、アリス・リデルにプレゼントするために1864年に『地下の国のアリス』という手書きの本を書きあげ、さらに加筆修正を施して、1865年に『不思議の国のアリス』の出版に至りました。

以上の経緯で、愛する少女に教訓をたれるのではなく、純粋に楽しませようとして生まれた物語です。一方で、言葉遊びに富んでいたり、当時流行していた作品のパロディがあったりと、大人が思わず研究してみたくなるような点も多々あります。子供も大人も純粋に楽しめるからこそ、『不思議の国のアリス』は多くの人に受け入れられたのではないでしょうか。

アリスの世界に影響を受けた創られた作品は、小説からアクセサリー、ゲーム、アニメまで、世界中にたくさんあります。『不思議の国のアリス』は、それほど世界中で受容され、親しまれてきた作品です。『不思議の国のアリス』を読んだ後は、そういった作品に触れてみるのも面白いと思います。
 

計算された鏡の世界

暖炉の前で、アリスは子猫と一緒に空想遊びをしていました。空想を楽しんでいるうちに、鏡を通り抜けられる気がしたアリスは、暖炉の棚に乗り実際に鏡の中に入ります。たどり着いたのは、鏡の世界。また不思議な冒険が始まります……。

著者
ルイス・キャロル
出版日
2010-02-25

『不思議の国のアリス』の成功を経て、今度は一人の少女に語るのではなく、出版を前提としたつくられた続編が『鏡の国のアリス』です。

鏡の世界と現実の世界が対になっているように、この作品ではたくさんの対となるモチーフがあります。赤の女王と白の女王だったり、白い猫と黒い猫だったり。鏡の国の中では、アリスはチェスの駒の一つであるように行動するのですが、チェスというモチーフもまた、白と赤(黒)の駒があるので、対のモチーフだといえます。

こういった「鏡」というコンセプトに合うように、よく計算されてつくられたモチーフ、世界観が魅力の作品です。モチーフの一つ一つを紐解きながら読んでみるのも面白いのではないでしょうか。

『不思議の国のアリス』と比べると、よりシュールなギャグのような場面が増えていたり、よりナンセンスな言葉遊びを楽しむところがあったりと、少し大人向けになっているように思います。

謎めいた狩りに参加しよう

スナークという架空の生物を求めて、冒険をする一行のことを描いた、8章構成の詩です。探索隊のメンバーはベルマン、ブーツ、ボンネット及びフード製造業者、バリスター、ビリヤード・マーカー、バンカー、ビーバー専門のブッチャー、粗忽者のベイカー、ブローカー、ビーバーの10人です。

著者
ルイス・キャロル
出版日
2007-07-24

「スナーク狩り」というタイトルを見た瞬間に、スナークって何だろう?と思われた方は多いと思うのですが、読めば読むほどたくさんの「?」が頭の中に浮かんでくるような詩です。1876年に出版されて以来、この詩をどう解釈するか、この詩に散りばめられた謎をどのように解くか、ということで、たくさんの議論が重ねられてきました。

たとえば、探索隊のメンバーのブーツはとても謎めいています。ささやかな言及は出てくるものの、他のメンバーと違ってヘンリー・ホリデイの挿絵にも登場せず、どんな人物なのかつかむことができません。そして、スナークという生き物はいったい何なのか、ということも、この詩を一通り読んでも明確に説明することは不可能だと思います。

「スナークとは何なのか?」などを追う読者の私たちも、ある意味スナーク狩りの参加者なのかもしれません。ルイス・キャロルという天才の仕掛けた謎めいた狩りに挑戦してみませんか?

ルイス・キャロルの少女への思いにあふれた一冊

『不思議の国のアリス』の出版経緯からも想像できるように、少女を愛した作家ルイス・キャロル。彼が少女たちに送った手紙を収録した本です。そして、彼自身が撮影した少女たちの写真も載せられています。

著者
ルイス キャロル
出版日
2014-11-10

それぞれの手紙には、『不思議の国のアリス』にもあったようなルイス・キャロル独特の知性と遊び心に満ちた言葉遊びを見出せます。少女を楽しませようと、自身も楽しみながら言葉を綴っている姿が浮かんでくるかのような読み心地です。思わず口元に笑みが浮かんできます。

ルイス・キャロルは1856年~1880年の間、写真を趣味としていました。風景の写真なども撮影していますが、半数以上が少女を撮影したものだったそうです。その中から、現存しているいくつかの少女の写真が、この本に載っています。表紙に使われている写真のように、どこかノスタルジックな美しさを感じる写真が多いです。

『不思議の国のアリス』が一人の少女への愛から生まれたように、少女への思いがルイス・キャロルの創作の源にあったように思います。『少女への手紙』は、その思いをたどることのできる本です。
 

2つの世界が1つの世界に

シルヴィーとブルーノの妖精姉弟を主人公としたの陰謀渦巻く妖精の世界の話と、ヴィクトリア朝での恋愛という現実の話が、混じり合いながら進んでいきます。妖精の世界と現実世界が混合した、不思議な物語です。

著者
ルイス・キャロル
出版日

ルイス・キャロルの最後の小説作品です。まさにおとぎ話のような妖精の世界と、大人たちが数学や哲学の話をしている現実の世界が融合している様子に、読者は少しとまどいを覚えるかもしれません。大人たちの議論の内容は難解ですし、ルイス・キャロルの言葉遊びも相変わらずなので、読み終えるのに時間がかかってしまうと思います。

途中で読むのをやめてしまいたくなることもあるかもしれませんが、ここはぐっとこらえて、豊富な註の助けも借りながら、ぜひ最後までたどりついていただきたいです。2つの世界の隔たりがどんどん消えて、あたかも1つの世界での1つの物語になっていく様子に、不思議な心地よさとルイス・キャロルの巧みな語りに対する感心を覚えます。
 

独特の世界が魅力のルイス・キャロルの作品たち。世界中で愛される作家の作品を、時には童心に返ったような気持ちで、時には頭をひねらせて楽しんでみてください!

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