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松下省伍(バンド「モノブライト」Gt)

著者を読むーー作品の向こう側を楽しむエッセイ集6選

著者を読むーー作品の向こう側を楽しむエッセイ集6選

二度目まして、モノブライトのギター、松下省伍です。

気に入った作品(本でも音楽でも)と出会うと、いつの間にか作品から著者自身へと興味が移り、その方の他の作品を探してたり、本以外の作品を探したりと、そんな楽しいループを経験しているのは僕だけではないと思います。

僕の場合、自分だけの区切りが来るまで他の著者に移れなくなることも往々にしてあります。新しい感覚を収集するスピードが遅いとも言えますが……もう性分ですね。そんな自分がハマっている状態でよく手に取るのがエッセイというジャンルです。
2016.02.26

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著者を読むーー作品の向こう側を楽しむエッセイ集6選
一口にエッセイと言っても幅広い書き方がありますよね。そのせいか、本人のいつもと違う文体や表現を見られるのも嬉しいですし、その後に最初に出会った作品に再び触れる時も勝手な優越感と深みが増してちょっぴり得した気分にもなります。

最近はウィキペディアで簡単に人物を知った気になれてしまいますが、エッセイを読むという形でその人物を考えて想像するとさらに作品が染み込んでいく。作品を読んだら、“人”を読みに行く。それはきっと特別な実感のある楽しい時間だと思います。

少し変な例かもしれませんが、初めから美味いに決まっている値段の書かれていない寿司屋さんが何軒もあったとして、どこを選ぶかの基準はおそらく自然に技術やサービス含め、きっとそのように店を「食べ」に行くことなのだと思いますし、銀座の会員制のバーにはジントニックを頼んでもバーテンダーの作る味が、一人一人違うジントニックがあると勤める知り合いから聞いたことがあります。

つまり、お客さんはバーテンダー個人のすべてを「飲み」に行っているのですね。話がそれましたが、そんな人物像ごと楽しむ贅沢な寄り道もあるのではないでしょうか。と、とあるエッセイ風な文章に勝手に挑戦した冒頭文、失礼いたしました。

泣く大人

泣く大人 (角川文庫)
泣く大人 (角川文庫)
作者 江國 香織
出版社 角川書店
出版日 情報なし
このエッセイは、日記のような文体で書かれています。毎日の記録から著者の目になれたような気になるほど、風景が想像できるような滑らかな文体で、感動しました。

それから個人的な感想ですが、色彩に富む言葉が飛び交っているのにどこか圧倒的なドライさと冷静さが混ざり合っている、というのがひどく女性的に感じます。特有のミステリアスさにも引き込まれてしまいます。また、果物や植物を漢字で書かれていると艶かしい感覚になる気もします。

たぶん最後の御挨拶

たぶん最後の御挨拶
たぶん最後の御挨拶
作者 東野 圭吾
出版社 文藝春秋
出版日 情報なし
タイトルからあるように現時点でのエッセイはこれ以降書かれていません。東野圭吾さんといえば作品数の多さでも有名で、ほぼ毎年新作が出ています。僕は時系列で読む必要はないのに作品の変化も楽しみたいという七面倒くさいクセを持っているので、ぜんぜん追いつけてないです。

このエッセイを読むと、なぜ東野圭吾さんは作品数が多いのか、なぜ時系列で読む必要がないのか、なぜこのエッセイが最後とされているのか、その理由がわかります。前職での科学の経験が今に生きている話、敢えて通勤をするようにしている話など、仕事の裏話も多く、楽しく書かれていますが、読者と作家のルールという項目で、自分の中で作品の答えはある、ただし読み手と答え合わせをしてはいけない、と言ったことも書かれています。

きっとこのエッセイも修正等に時間をかけて答え合わせにならないように発売したはずですし、ユーモアの奥に徹底した仕事への姿勢と揺るぎない志が描かれているように感じます。

ポンポンしてる?

ポンポンしてる? (幻冬舎文庫)
ポンポンしてる? (幻冬舎文庫)
作者 大石 静
出版社 幻冬舎
出版日 情報なし
実はこの本はイレギュラーでテレビドラマから逆にエッセイを見つける、という流れで読みました。著作でもある『四つの嘘』のどろどろした人間関係をどろどろ描かないテイストで綴られる自分の周りの恋愛話、業界の仕事話、そしてそれを取り巻く家族や生活の話が大きく3つに分けられて書かれています。

豪快で真面目で生命エネルギーに満ちた、人生を楽しんでいるのが文字から感じられます。働く女性には特におすすめしたいエッセイです。ちょっとしたエッチな話も含めサバサバしていて、読んでいて心地いいと思います。

ちなみに、これを機に調べたら著者は「Days」というドラマの脚本もされており、ドラマには奥田民生さんの「さすらい」が使われていて当時リアルタイムで見ていた記憶があったのでびっくりしました。

そして生活は続く

そして生活はつづく (文春文庫)
そして生活はつづく (文春文庫)
作者 星野 源
出版社 文藝春秋
出版日 2013年01月04日
俳優・音楽家・文筆家など様々なジャンルで活動する星野源さんご自身のエッセイ集です。終始飾らないテンポの良い言葉で幼少期のドタバタ話、舞台での話、バンドの話とまさに生活のデコボコした珍事件が並んでいます。

みんなで歩いていると、なぜか一人になる人はきっと昔からそうだし、飲み物をこぼす癖のある人もきっと昔からそうだし、大人にはなるが本質はあまり変わらない。毎日はきっと意識できないほど緩やかな波を打ちながら続いていく。切り取ってみて初めて感じるそこの楽しさと内包されている少しの寂しさが見え隠れする。そんな人間らしさが詰まったエッセイだと思います。

いまなんつった?

いまなんつった? (文春文庫)
いまなんつった? (文春文庫)
作者 宮藤 官九郎
出版社 文藝春秋
出版日 2013年05月10日
テレビドラマや映画、舞台など幅広い分野で活躍する脚本家・宮藤官九郎さんのエッセイ集です。その多岐に及ぶ活動から経験し聞いた名言集111選。普通に生活していても飲み屋にいても「それ名言だね!」といった瞬間がありますよね?

バイト先のバンドマンの先輩が呟いたセリフ「まるでラモーンズみたいな弁当だね!」という字面を見ただけでにやけてしまうものから、「ごめんなさい」という一見なんで?という言葉が名言として書かれている時もあります。

言葉自体の突発的な面白さから、普段なんでもない言葉でもその時の状況や言った人の表情とか声のトーンとか間とかで偶発する面白さまで様々書かれています。目線の置き所を自由に動き回れる人って憧れます。

職業としての小説家

職業としての小説家 (Switch library)
職業としての小説家 (Switch library)
作者 村上春樹
出版社 スイッチパブリッシング
出版日 2015年09月10日
村上春樹さんの特徴的な文章ではなく敢えて口語っぽく書かれているこのエッセイは、そう描かれていると言った方が適切かもしれません。

どちらにしても村上春樹さんのことが少しだけですが、理解できたような気もしました。何かを成し遂げる時や、(僕がこの言葉を使うのはいささか恐縮ですが)生みの苦しみとされるものは、大筋から細部まで何度も修正を試みる終わりのない興味と情熱なのだと思いました。

その多くは評価されないであろう作業過程によって、この本の言葉を拝借するなら家庭での入浴後と温泉での入浴後の違いのような、人の何かが人に伝わる時の本物のどこかあたたかい貫通力が宿るのでしょう。
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著者を読むーー作品の向こう側を楽しむエッセイ集5選

松下省伍
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