鬼畜小説おすすめ5選!トラウマ級の恐怖がじわじわ迫ってくる

更新:2021.12.20

殺人者やサイコパスに襲われる恐怖を描いた鬼畜小説。その異常性とグロテスクさに注目が集まりがちですが、意外に読ませる作品が多くあります。今回は鬼畜小説のおすすめ5選をご紹介します。

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表の殺人、裏の殺人『殺人勤務医』

主人公は、古河という堕胎が専門の産婦人科医。その甘いマスクと物腰の柔らかさで、周囲からは人格者として慕われる存在です。しかし、彼には裏の顔がありました。自分が死に値すると判断した人間を地下室に監禁、拷問の末に殺害していたのです。

著者
大石 圭
出版日

レストランで大量に料理を注文した挙句、残してしまった女性は餓死、幼い娘を虐待した母親は風呂場で溺死、犬を繋ぎっ放しにしている男には首に縄をかけて吊るし、立ちっぱなしにさせるなど、その手段は残虐極まりないものでした。堕胎医として、生まれる前の命を千人以上殺してきたとはいえ、古河は実際に殺人をおこなうことに何の躊躇も持ち合わせていません。そんな彼は、ある日ついに自分の理想とする獲物を見つけ、彼女を地下室に招くべく準備を始めるのですが……。

猟奇的な殺人を繰り返す古河の日常が淡々とした文章で描かれる様子は、鬱々として非常に不気味です。仕事では堕胎、そして自宅に戻ると殺人……古河の表と裏のそれぞれの「殺人」が描かれているのが面白いところ。中絶に関する数々の豆知識も添えられています。内容はかなりグロテスクですが、狂っているのになぜか入り込める、リアルな殺人者像を描いた作品です。

保険金殺人にまつわる狂気『黒い家』

主人公の若槻慎二は、大手生命保険会社「昭和生命」京都支社で保険金の査定業務を担当していました。ある日、保険加入者の菰田重徳から呼び出しを受けて自宅を訪問すると、菰田の息子・和也が首を吊って死亡している現場に遭遇。その後、重徳が執拗に保険金の支払いを求めることに疑問を抱いた若槻は、重徳の妻・幸子に匿名で注意を促す手紙を送るのですが、このことが恐怖の日々が始まる発端となります。

著者
貴志 祐介
出版日

調査を進めるほど、明らかとなっていく菰田夫妻の黒い過去。若槻の恋人・恵が勤務する大学病院の心理学助教授である金石は、プロファイリングの末彼らをサイコパスと診断。ところがその矢先、金石は何者かに惨殺されてしまいます。魔の手は若槻の周囲の人間や恋人の恵にまで迫り、やがて想像もできない悪夢の連鎖に繋がることになるのです。

ある家で発生する保険金殺人を題材にした作品。サイコパスに襲われる恐怖と犯人の異常性が疾走感をもって描かれます。目的を達成するため、狙った本人だけでなく周囲の人間をも利用する菰田夫妻の行動には、戦慄を覚えずにはいられません。幽霊や怪現象なしでここまで恐怖を演出できる貴志祐介の手腕に脱帽。本当に怖いのは生きている人間であると、心の底から感じさせられる作品です。

猟奇的殺人の応酬『殺人鬼-覚醒篇』

スプラッターミステリーの傑作と謳われた『殺人鬼』に加筆・修正を加え、文庫での再版時に改題されたもの。夏休み、双葉山に集まった親睦団体「TCメンバーズ」の面々。夏期の特別合宿をおこなう目的だったのですが、実は双葉山には、未解決事件の殺人鬼が身を潜めているという有名な噂がありました。

著者
綾辻 行人
出版日
2011-08-25

そして、楽しいはずの合宿は阿鼻叫喚の地獄と化すことに。突如現れた何者かにメンバーたちが次々と殺害されていきます。その手口は残虐極まりなく、目を覆うばかりの描写がされるのですが、殺人鬼の正体や目的は一切不明。しかし、実はそこに巧妙な伏線が張り巡らされ、ラストにかけて作者の仕掛けた壮大な罠が待っているのです。

本作は、グロテスク描写もかなりハード。特にTCメンバーズたちが理不尽に殺害されていくシーンは、ここぞとばかりに念入りに描かれています。作者の綾辻行人は、本作に対して「ぶっ飛んだ猟奇的表現を使いたい」と意気込んで臨んだとか。もちろんそれだけでなく、質の高いミステリー作品としても読める作品ですので、グロテスク表現だけに惑わされず、その中にある秀逸なトリックをぜひ楽しんで欲しいと思います。

荒唐無稽な世界観の問題作『粘膜人間』

15歳の利一と14歳の祐二の弟で、父の再婚相手の連れ子の雷太は、身長195cm・体重105kgという恐ろしいまでの巨躯の持ち主。最初の頃こそ大人しかったのですが、ある日を境に兄たちをこき使うように。さらに、その横暴ぶりを注意した父親をも殴って怪我をさせる始末。業を煮やした利一と祐二は、雷太の殺害を計画します。

著者
飴村 行
出版日

計画を立てたものの、腕力では到底雷太に適いません。そこで、2人は蛇腹沼に棲んでいる河童に雷太の殺害を依頼することに。山に住む脱走兵の「べかやん」から河童との交渉のしかたを教わった利一と祐二は、いよいよ沼に入ります。そこには「モモ太」「ジッ太」「ズッ太」という河童の三兄弟がいました。2人は長男のモモ太に雷太殺しを頼むのですが、モモ太は何と見返りとして村の若い女を要求してきて……。

戦時中に近い雰囲気のホラーファンタジー。河童の他にも、得体の知れない存在や架空の生物が登場するなど、グロテスクながらユニークな世界観が魅力です。殺人や拷問などのシーンは丁寧ともいえる詳細な描写で描かれており、グロ・エロ・ユーモアが複雑に絡み合った作品となっています。一見突飛にも思える登場人物たちにも独特の味わいがあり、不気味でありながら妙な人間臭さも感じます。果たして利一と祐二は目的を達成することができるのでしょうか?今までに見たことのない、衝撃の問題作です。

ラストで謎は解けるのか?『メドゥサ、鏡をごらん』

作家・藤井陽造が自宅のガレージで死亡。まるで棺桶のような四角い箱にコンクリートを流し入れ、その中に全裸で身を沈めて絶命していました。石化したようなその遺体には小さなビンが添えられ、そのなかには「メドゥサを見た」という一文が。

何とも不可解な死。陽造の娘・菜名子とその婚約者である主人公は、メモを手掛かりに陽造の死の謎に迫っていきます。

著者
井上 夢人
出版日
2002-08-09

メドゥサとは、ギリシャ神話に登場する女性の怪物。蛇の髪を持ち、その姿を見た者は恐怖のあまり体が石になってしまうといいます。そのメドゥサが23年前、長野のある小さな町に存在した……主人公は、陽造が死の間際まで書いていた小説の存在を突き止め、彼の日記を頼りにその町に向かいます。「メドゥサ」と呼ばれ、23年前に死んだ新庄あずさという少女。主人公は、次第にある連続怪死事件の謎に巻き込まれることに。

ホラーともミステリーともSFとも捉えられ、またそのどれでもない不可思議な作品です。とにかく読者を引き込む力が強く、展開に対する趣向の凝らし方が非常に上手いので、ページを捲る手が止まりません。作品全体に張り巡らされた伏線、それがラストに向けて一気に回収される様は圧巻。あまりにも不可解な事件は、果たしてその結末で解決するのでしょうか。

一口に「鬼畜小説」といっても、そこには様々な手法と世界観があります。グロテスクさに囚われることなく、好みの作品を見つけてみてください。

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