「書く力」を養ってくれた2冊【平井拓郎】
文章を書くことが好きになった本。去年の一冊と今年の一冊。僕は文章を書くことがとても好きです。作詞はもちろんですが、諸々のネットサービスも大好きです。自身のブログは絶対に一日に一度は更新しますし、ツイッターも更新頻度は高いです。当然ですが、ここ『ホンシェルジュ』もいつも楽しく書かせていただいています。「じゃあ昔から文章を書くのが今ほど好きだったか?」と言われるとそうではありません。

去年の今頃に「文章を書く話」がたくさん舞い込んできました。

僕はこういう「波」みたいなものには乗っかるクセがあるので、すべての話を承諾しました。そのせいでヒィヒィ言いながら毎日何かしらを書くハメになるのですが一年経ち、思うことがあります。あの頃に比べると、書く速度が圧倒的に上がったということです。内容の質も上がり、量は増えました。「とにかく書きまくったから」も要因の一つだと思いますが、「書き方を知る」に手を伸ばしたのは大きかったと感じています。

分かったのは「文章を書く力」は誰でも伸ばせるということです。ヒィヒィ言ってた人間が言わなくなるのです。もちろん太宰や三島、川端のようないわゆる「天才」もいますが、誰でも今よりレベルを上げることはできます。

「文章を書くこと」は何もライターや編集者や作家だけの話ではありません。メールやLINEなど、どれだけテクノロジーが進化しても、「人に何かを書いて伝える」という行為の根本は変わりません。

先日、何故僕はこんなにも「書くこと」が好きになったのかなぁと考えていました。「書くこと」はれっきとしたコミュニケーションツールです。「伝達」という目的があったからこその発明です。

それなのに、「書く力」は人と関わらずに伸ばせます。ここが面白いからかもしれません。コミュニケーションなのに、一人でもできるのです。一人で自分と向き合った成果が、他者との関わりに活かされるのは痛快です。

今回は僕の「書く力」を養ってくれた2冊をご紹介します。一冊は一年前、一冊は今月読んだものです。

文章読本

著者
谷崎 潤一郎
出版日
1996-02-18
一年ぐらい前に知り合いのカメラマンに勧められて購入しました。
【「分からせるように」書くためには「記憶させるように」書くことが必要なのであります】という一節がとにかくかっこいい一冊です。そして、この一節はやはり記憶しています。

この概念は文章だけではありません。僕が作っているメロディもリフも歌詞も「聴く人に刻み込まれるか否か」がすべてだと思っています。

仕事や約束事も同様です。読む人の記憶に残らなければ、書かれた依頼事項などはすぐに忘れ去られてしまいます。忘れられたら、その文章は目的を果たせません。報告や依頼や提案など、文章によって人を動かすことが求められるシーンでは、「記憶させるように書く」意識があるとより良いケースが多いと思います。

必ず書ける「3つが基本」の文章術

著者
近藤 勝重
出版日
2015-11-28
こちらが最近買ったものです。Amazonがあまりに「買え買え」と広告を打ってくるので、根負けして買ってしまいました。数日後には「買ってよかったなぁ」と感じながら、新しいものを書きまくる自分がいました。よかったです。

様々なタイプの文章術の本を読んできましたが、この本はトップクラスのシンプルさです。めちゃくちゃ簡単に読めます。

『何を書くか』『どう書くか』『どう構成するか』に絞られて、それについて丁寧に紐解いてくれています。文章を書いていると、見逃しがちなことがきっちり書かれているので、読むだけで文章がうまくなる気がします。

ですが「スキルを知る本」というよりも、読み終わったあとに「実際に何か書いてみたくなる本」です。「何から手を伸ばしていいか分からないけど、今よりも文章がスラスラ書けるようになったらなぁ」と感じている人にとってベストの一冊です。何より、近藤先生の温かくて愛情のある文体が印象的でした。

この記事が含まれる特集

  • 本と音楽

    バンドマンやソロ・アーティスト、民族楽器奏者や音楽雑誌編集者など音楽に関連するひとびとが、本好きのコンシェルジュとして、おすすめの本を紹介します。小説に漫画、写真集にビジネス書、自然科学書やスピリチュアル本も。幅広い本と出会えます。インタビューも。

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