結局一番面白いラノベは高畑京一郎『タイム・リープ』【僕が小説を読む理由】

更新:2021.12.20

市井の物書き大場諒介が小説への偏愛を書き綴る不定期連載「僕が小説を読む理由」。第2回は天才ライトノベル作家高畑京一郎の『タイム・リープ』。10年以上新刊を出していない作家ですが、彼の作品には外れがありません。

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結局一番面白いライトノベルは高畑京一郎『タイム・リープ』だったという話

はじめにこれだけは書いておきます。この作品は、単純に面白さだけで考えたら、個人的にはこの世の小説で一番面白いと思っています。

電撃文庫というのはライトノベルのレーベルなのですが、ライトノベルだからといってバカにしないでください。大人が読むに耐える作品です。中学生から大人まで楽しめるだろうと思います。

主人公は高校2年生の鹿島翔香。ある日、翔香は昨日の記憶を喪失していることに気づきます。日記には、書いた覚えのない自分の筆跡で書かれた文章。

「あなたは今、混乱している。若松くんに相談なさい」

翔香の記憶喪失現象を同級生の天才若松がロジカルに解決していくというストーリーです。

1回目は主人公といっしょに翻弄されていただいて、2回目は話のネタがわかった状態で読んで伏線の張り方、回収の見事さに惚れ惚れしていただくという形で楽しんでいただきたいです。僕は少なくとも10回は読み返しています。上下巻ですが、上下巻にする必要がないくらい短い作品ですので、一晩で読めちゃうと思います。『タイム・リープ』を読んでつまらないと感じたら、もうライトノベル読まなくていいです笑

 

著者
高畑 京一郎
出版日


個人的にはライトノベルオールタイムベストワンの作品ですので、騙されたと思って読んでみてください笑

と、予備知識無しで読んでいただきたい、紹介したくないと言っていても何にもなりませんので、内容について少しだけ書きます。
 
タイトルからもわかる通り、タイムトラベルものです。タイムトラベルというと正確ではない気もしますが、ざっくりとしたイメージとしてはタイムトラベルものと考えていただいていいかと思います。

タイムトラベルものといえば、誰もが知っている有名な作品がいくつかあるかと思います。日本だと一番有名なのは『時をかける少女』でしょう。言うまでもなく傑作なのですが、ツッコミどころがないわけではありません。タイム・パラドックスというやつです。一言で言うと、過去に行って、自分の先祖を殺したらどうなるかということ。これはもうタイムトラベルものにはセットでついてくるものなので、ある程度はしょうがないものなのです。そこをどうごまかして話を面白くするかの勝負なのです。通常は。

そのタイム・パラドックスというものから解放されたのが本作『タイム・リープ』です。タイム・パラドックスから解放されたタイムトラベルものですよ? 読んでみたくありませんか? ご一読いただければ、僕の言っている意味がわかるかと思います。

僕は初めて読んだ時、この手があったかぁとうなりました。その大ネタの発想力も凄いのですが、高畑京一郎は作家としての地力が素晴らしいです。伏線の張り方及び回収、構成力、文章力、どれをとっても超一流です。これまで発表されている作品には外れがありません。どれもが5つ星で面白い作品です。しかし、作品のクォリティに比べると、高畑京一郎という名前は知られていないだろうと思います。

理由ははっきりしています。寡作だからです。2005年を最後に本が出ていません。しかもシリーズものが途中なのです。そのシリーズものというのもすこぶる面白いので紹介させていただきます。

高畑京一郎が描くもうひとつの傑作「Hyper Hybrid Organization」

シリーズ名は「Hyper Hybrid Organization」といいます。これは一言で言うと、仮面ライダーです。仮面ライダーのショッカー軍団の話です。仮面ライダーとかショッカーとか具体名はでてきませんが、読む人が読めばわかります。

ショッカーというのは聞いたことはあるけれど、実際どういうものかわからないという方もいるかもですので簡単に。

ショッカー軍団は悪の組織です。世界征服を企む謎の国際的秘密組織という設定です。改造手術を施して、肉体機能を強化した怪人によって犯罪や破壊工作を行います。で、その怪人から人類を守るのが仮面ライダーというわけです。

 

著者
高畑 京一郎
出版日


では、「Hyper Hybrid Organization」の主人公は仮面ライダーなのかというと違います。では、怪人か? それも違います。主人公は戦闘員です。一言で言うとザコキャラです。仮面ライダーに秒殺されてフレームアウトするあいつです。しかも1巻の段階では戦闘員ですらありません。1巻でショッカ―軍団に入り、2巻で苦しい戦闘訓練を経て、3巻でやっと戦闘員になります。その3巻でシリーズが中断しているのです。と、シリーズの流れを書いてしまったのですが、この作品に関しては問題ないと思います。過程を楽しむ作品だからです。

初期の仮面ライダーを観ていた方、ショッカー軍団って正直よくわからないじゃないですか。もちろん作り話なんで当たり前といえば当たり前なのですが、資金源はどうなのかとか人体改造技術ってなんやねんとか。疑問がたくさんあるだろうと思います。そういう疑問に説明をつけてくれるのが「Hyper Hybrid Organization」です。ホント、凄いですよこの作品は。

本編は3巻で止まってるんですけど、別に外伝がありまして、そちらは3巻で完結しています。外伝はどういう話かと申しますと、ショッカー軍団ができるまでです。先ほど書きました資金源だとか人体改造技術なんかにすべて説明をつけています。燃えます。萌え0%でひたすら燃えます。あぁ、もうホントに面白いんですよ。早く続きを書いてくれー。

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