ナポレオン・ボナパルトのあなたが知らない事実7選!英雄の一生とは

更新:2021.11.7

世界史で英雄を挙げよと言われた時に必ず名前が挙がる1人がナポレオンですが、英雄としての顔以外にも多くの魅力的な顔があるのです。今回は意外なエピソードと素顔に触れられる4冊の本をご紹介しましょう。

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近代ヨーロッパ最大の英雄、ナポレオン・ボナパルト

1769年、コルシカ島生まれのナポレオン・ボナパルトは砲兵として経験を積み、フランス革命の渦中から身を起こした風雲児です。革命の混乱を収拾してからは皇帝となりフランスを統治しました。

砲兵・騎兵・歩兵の連携による合理的な運用と、世界初の大規模な「国民軍」の創設、「補給」の重視、指揮官の養成などに加えて彼自身の天才的采配によってヨーロッパの大半が彼の勢力下となりました。彼の天才性は軍事のみならず内政にも発揮され、彼の手による法典は近代法の基礎とされて世界各国に影響を与え、現在もフランスで使われているほど完成度の高いものです。

空前の大帝国を築き上げましたが、1812年のモスクワ遠征の失敗がきっかけとなり帝国は崩壊へ向かってしまいます。ヨーロッパ中を敵に回しパリが陥落したことで失脚した彼は地中海の小島エルバ島へ流罪となりました。

彼の失脚によりフランスは元の王制に戻ったのですが、1815年に彼は島を脱出してパリに帰還し、皇帝に復位します。

新憲法を発布し、かつて争った国々と和睦しようとするのですが拒否され戦争になってしまいました。はじめは優勢だったのですがワーテルローの戦いでイギリス・プロイセンの連合軍に破れて、2回目の帝政は終わりを告げます。

今度は容易に戻ってこられないように大西洋に浮かぶ孤島セントヘレナ島に流されたのですからヨーロッパ中が彼をいかに恐れていたかが分かるでしょう。彼は1821年に島で生涯を閉じ、1840年にその遺体はフランスに帰還されました。遺体が戻ってきたことで崇拝感情が民衆の間で高まり、彼の甥による第二帝政を実現させるに至ります。

現代でもフランスの栄光の象徴として国民に親しまれており、イメージを損なわないように豚に「ナポレオン」と名づけるのが禁止されているほどです。

あなたの知らないナポレオン・ボナパルトの事実7選

1:彼は子ども時代、数学に大変優れていたが、社会的能力は傲慢でひどいものだった

ナポレオンは貴族の子弟が通う陸軍幼年学校で学びましたが、数学で抜群の成績を取ったそうです。その後、当時の大学者ラプラスに認められて、陸軍士官学校に入学しました。そこで数学が不可欠な砲兵科に進んだことが彼と世界史の運命を決めたのは興味深いことです。

しかし、数学に秀でていた一方で、彼には社会性に欠けるところがありました。「自分の欲しいものはみんな自分のものだ」という考えが幼い頃からあり、喧嘩っ早く自分よりも大きな子どもにも挑んでいくことからついたあだ名が「小悪党」です。

暴れん坊のナポレオンですが、フランス本土ではなくコルシカ生まれで国費で陸軍幼年学校に通っていたため、周囲の貴族階級の子弟とはトラブル続きでした。いじめの対象となったこともあり、いじめを避けるため学校内の農場に小屋を作りそこに閉じこもった事もあるそうです。しかしさすがは後の英雄、やがて彼は持ち前の才能を発揮し学校内のリーダー的存在となります。

2:猫恐怖症だった

ナポレオンという品種の猫がいますが、彼自身は猫恐怖症、猫嫌いであったというエピソードも残されています。軍隊時代に壁のタペストリーの裏にいた猫を剣で串刺しにしたなんていう逸話もあるのですから驚きですね(ただし一次史料ではない上に創作という説もあります)。

3:彼は低身長だと言われているが、その時代の平均身長である170㎝はあった

低身長だった、とよく語られますが医学的な研究によるとおそらく身長167cm程度であり、当時のフランス人の平均身長以上であったそうです。それなのになぜ低身長というイメージができたのかと言うと、彼の周りにいる軍人たちがみな高身長であったからだと思われます。特に彼の親衛隊の入隊基準は178cmでしたから、彼が小さく見えてもおかしくはありません。

4:彼は自分がどれほど人気があるのか把握するために、しばしば貧しい身なりをして街を散策し、市民に尋ねていた

変装し正体を隠して街角の声を聴く、という逸話がある統治者は洋の東西を問わず結構いるものですが、彼の場合は一味違います。彼は自分の人気を自らの足で調べていました。合理主義者、現実主義者の彼ゆえに他人を介さずに自分の耳で世評を分析したかったのでしょうか。

5:ナポレオン軍が初めて缶詰フードを使用した

現在、私たちが目にしている缶詰の原型はナポレオン軍が作り出したものです。遠征中の食糧補給の問題を解決するためのアイデアを募集した際に、瓶詰めのアイデアが出ました。この瓶詰めの「重くて割れやすい」という欠点がやがて改良され現在のような缶詰となったのです。

6:鋭い嗅覚を持っていたと言われている

ナポレオンには嗅覚にまつわるエピソードもいくつか残っています。最愛の女性ジョゼフィーヌに対して「今から帰るから、風呂にだけは入るな」という手紙を戦地から送った、彼女と離婚した原因は香りの好みの違いだった(ジョゼフィーヌが好んだムスク系の香りは、軽い柑橘系の香りが好みの彼には合わなかったようです)なんて話があります。

7:最期の言葉は、”フランス、軍、軍の頭、ジョセフィーヌ”であった

最期の言葉には諸説あります。彼の主治医は「先頭、軍....」と証言していますが、「神よ....フランス国民!」や「フランス.....息子....軍...」と記録した人もいました。

「フランス、軍、軍の頭、ジョセフィーヌ」であったと記録したのはセントヘレナまで同行したモントロン将軍です。彼の記録から一般的にナポレオンは最期にフランスと軍と最愛の女性ジョゼフィーヌを呼んだとされていますが、それにしてもほとんどの証言・記録に「軍」が共通するあたり、彼が徹頭徹尾、軍人であったことが分かりますね。

豊富な図版でイメージしやすい

豊富な図版を用いてヴィジュアル的に充実していることで有名な「知の再発見」双書です。ナポレオンについてあまり知らない人も楽しく読める1冊です。
 

著者
ティエリー レンツ
出版日
1999-06-01

ほぼ全ページにナポレオンや当時の戦争・風俗に関する当時の絵画が挿入されているのが特徴。それらの絵画を通して彼が活躍した当時の息吹を感じることができるでしょう。

図版が多い分、どうしても中身が薄いと思われる方もいるでしょう。しかし、他のナポレオン本を読む際に傍らに置き、折に触れて参照することで情景のイメージがしやすくなります。そういった点では中高生向けの歴史の資料集的な役割を果たしてくれる本であると言えるでしょう。
 

ナポレオン・ボナパルトの伝記決定版

歴史的事実と虚構、心理分析を織り交ぜた伝記小説で名声を博したエミール・ルートヴィヒの代表作です。独特の素朴な文体で語られるナポレオンの快進撃がとてもリアルです。

著者
エミール・ルートヴィヒ
出版日
2004-05-11

原著は1924年に書かれたものですが、古臭さをまったく感じさせない魅力あふれる作品。「ナポレオン像を書くに当り、筆者は、国家との関係より、道義との関係に重きをおいた」と序文であるように、彼の業績を以って彼を語るのではなく、彼の心情に寄り添う形で話が進んでいきますので等身大の英雄を見て取ることができる作品です。

100年前の流行作家の人気作品が現代でも評価をされるというのは実は珍しいことです。本書はそれだけ、良書であるということでしょう。同時に、モチーフとなったナポレオンがそれだけ偉大な、人間性に富む英雄であったことの証拠ともいえるのです。
 

虚飾抜きにナポレオン・ボナパルトの実像に迫る

彼は、フランス革命で産声を上げた「国民意識」を育て上げました。それゆえに彼の実像は多くの虚飾、創作に包まれ神格化されました。本書は最新研究を元にそれらのベールを剥いで彼の実像に迫る1冊です。

論点が分かりやすくコンパクトにまとめてあり、彼の人物像を論じるにあたり社会背景の分析から入っているあたりも「ある程度知っている人」にもおすすめできる本です。

著者
上垣 豊
出版日
2013-11-01

世界史上の人物の中で彼ほど虚飾・創作あるいはプロパガンダで実像が覆われてしまっている人はいないのではないでしょうか?革命期は兵たちの信望を一身に集める将として活躍し、皇帝期はフランス及びヨーロッパの覇者として自国民には崇拝され、他国民には恐れられました。失脚後は王党派によりナポレオンは悪魔の如く語られ、現代ではフランスのかつての栄光の象徴です。

彼の実像を覆うベールの中には、彼自身が流したプロパガンダも敵が流したものも、国民が尊敬の念から生み出したものもあるでしょうし、後世の人間が神格化のあまり押し付けたものもあるでしょう。

ナポレオンに匹敵できる人物は後漢末期の曹操か第二次大戦期のヒトラーぐらいでしょうか。プラスにせよマイナスにせよ、あまりにも成し遂げたことが大きすぎるとその人の実像が見えなくなってしまう代表例であるのは間違いありません。本書はその問題を乗り越えて実像に迫るアプローチの仕方を教えてくれる良書です。

漫画から入りたいという人にオススメ

『ベルサイユのばら』の作者によるナポレオンの一代記です。彼の生涯についてマンガから入りたいという人におすすめです。

著者
池田 理代子
出版日
1997-05-01

史実の人物と『ベルサイユのばら』に出ていた架空の人物が上手く混ざり合って革命以降の人間ドラマが濃厚に描かれています。「ベルばら」の続編とも言えるかもしれません。ストーリーとは関係ありませんが、面白いのは第1巻では高身長ですらっとしたイケメンだった彼が、巻を追うごとに低身長、ぽっちゃりの肖像画に近い姿になっていくことです。
 

歴史をつくるのは時代の有力者同士の人間ドラマですから、そういった点をイメージしやすいのは断然、漫画です。偏ったイメージを持ってしまわない限りは、入門編として漫画を選択することも良いでしょう。その意味で、この漫画はうってつけの1冊といえます。

以上、ナポレオンに関する豆知識とおすすめの本4冊をご紹介しました。彼は魅力的な人物ですが、彼以外の革命期・帝政期の人物にも魅力的な人物はたくさんいますので、興味をもたれた方はぜひそちらも触れてみてください。

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