心にも頭にも効く、ゆとりを持たせてくれる本【住岡梨奈】

仕事をしている時、友達と一緒にいる時、一人で本を読んでいる時ですら、人は様々な場面で仮面を被っている生き物だと思いませんか? 無意識に被っている人もいれば、意識的に被る人もいると思います。そういえば、前回も無意識と意識的の話しをしていましたね。どうやら人の言動について考える時、無意識か意識的かは付き物のようです。

さて、人は仮面を被ってしまうが故に「本当の自分とは何か?」と疑問を抱き、特に思春期に多くの人が迷走しているイメージがあります。人はいつも何かを求めて、探して、見つけて、の連続です。

考え方や感じ方に全員一致の答えは無いのかもしれませんが「迷走しているのは自分だけじゃなかった!」と少しでも安心させてくれる本を見つけたので、今回は心にも頭にも〈ゆとりを持たせてくれる本〉を紹介させていただきます。

今日の人生

著者
益田ミリ
出版日
2017-04-20

「今日はどんな日だった?」というざっくりとした質問に、作者の日常をゆっくりと丁寧に答えてくれているような本です。私自身の昨日、一昨日、一年前の今日は、どんな日だったかなぁと振り返ってみたのですが、プライベートの時間に限って考えてみると人に伝えるほど大した出来事はなかったように思えて、その時々の一瞬の感情や考えを自分の中だけに閉じ込めてしまうことがどちらかといえば多いことに気づきました。

けれどこの本のように、いいなと思ったことや渦巻いた感情を少しずつ書き出したり積み重ねたりしていくことで、自分の中にある本音と向き合っていけば、他人ともっと気楽に繋がることができるのではないかと思いました。

今日という日は人生の一部であり、たった1日分でも人生を語れるような出来事は常に起きているのかもしれません。読んでいるうちに、いつのまにか溜まっていた凝りがほぐれていきました。

舞台

著者
西 加奈子
出版日
2017-01-13

主人公の葉太は父親の死後、病室の引き出しから見つけた『地球の歩き方 ニューヨーク』という一冊の本をきっかけに29歳で初めて一人で海外旅行へ出かけます。

常に人前でフラットな自分を演じずにはいられない性格故に、他人との関わり方が下手で自意識過剰すぎる主人公。そんな彼のニューヨークでの望みはたった一つ、誰にも何にも邪魔されることなく、セントラルパークで大好きな小説家の新作を読むことでした。しかし、その望みは滞在初日に起こる事件によって叶えられず、彼自身の内面をも狂わせていきます。

今生きている世界をこの『舞台』と重ねて考えた時、常識を元に言葉や行動を選ぶという行為自体が、既に自分自身を演じていることになるのではないかと感じました。この主人公の場合、演じすぎてとんでもない事態になっていくのですが、物語のラストは現実に起こり得る度100%な展開でやさしさとユーモアに包まれていて、「いくつになっても子供だよ! 世話がやけるったら!」と母親に電話で叱られるシーンでは思わず笑ってしまいました(笑)。

一人で強がってみたり、誰も助けてくれないと思った時ほど、不意に誰かから受け取る思いやりは自分に余裕を持たせてくれます。中でも親という存在は子供にとって最高のゆとりかもしれないと思いました。

巻末には作者の西加奈子さんとタレントの早川真理恵さんの特別対談があります。こちらも非常に興味深いお話で読み応えがありました。

続・こころのふしぎ なぜ?どうして?

著者
出版日
2014-07-09

続!ということは……? そうです、前作もホンシェルジュで紹介しています!

この本は、落ち込んだ時、他人と気持ちがぶつかってしまった時、自分自身や相手の気持ちをきちんと理解したい時など「こういう時はどうしたらいいんだっけ?」と気軽に開けるレシピ本のような存在です。

<「がんばれ」って言われるけど、何をがんばったらいいの?>や、<人をしんじるにはどうすればいい?>など、大人になった今の自分でも心を揺さぶられる項目がいくつもあります。きっと本来なら、人間社会の中で身体を張って学ぶべき内容だと思うのですが、こうして本になっていると“心の疑問”と一対一で真剣に向き合う時間を作ることができます。この時間こそが心にゆとりを生み出してくれるのだと私は思うのです。

大人も子どもも一度はこの本を手に取ってみてほしいです。

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    バンドマンやソロ・アーティスト、民族楽器奏者や音楽雑誌編集者など音楽に関連するひとびとが、本好きのコンシェルジュとして、おすすめの本を紹介します。小説に漫画、写真集にビジネス書、自然科学書やスピリチュアル本も。幅広い本と出会えます。インタビューも。

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