東田直樹の本おすすめ5選!自閉症を抱えながら、言葉を世界に発信する作家

更新:2021.11.8

自閉症についての執筆活動で有名な東田直樹。自閉症はどんな症状なのかをわかりやすく問答形式で説明した本をはじめ、彼の豊かな表現力を感じる詩集や絵本など5点を選びました。

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豊かな表現力で自閉症の世界を伝える東田直樹

 

東田直樹が一躍有名になったのが、『自閉症の僕が跳びはねる理由』ではないでしょうか。一番古い著書は2000年、東田が小学生の時に出版された『自閉というぼくの世界』でした。

この本以降にも数冊、自閉症に関する本が出版されています。それぞれ同じ年ごろのお子さんを持つ大人にはもちろん、当時の筆者の年齢に近い学生の方などにも読みやすい内容で、自閉症という症状がわかりやすく書かれている良書です。

東田が執筆活動をはじめてからまだ10年余り。この間に出版された本を読むと、将来について不安を感じていた彼が、成人してある程度自分の居場所を見つけるまでの軌跡も読み取れます。

著書を読破するならエッセイはもちろん、豊かな表現力で描かれた詩集や絵本もぜひ一緒にお読みください。

東田直樹の代表作『自閉症の僕が跳びはねる理由』

2007年に初版が販売され、イギリスなど数か国でも翻訳されている『自閉症の僕が跳びはねる理由』は、東田直樹が中学校の時に執筆した作品です。

本を読んだり歌ったりすることはできるのに、会話になると言葉がでない。不安な気持ちになるとその場から逃げてしまう自分に困る東田。しかし、彼は母親とサポーターにより筆談でコミュニケーションが取れるようになりました。

この本では自閉症について一般の方が感じる疑問が問答形式で書かれており、行動や症状についてわかりやすく書かれています。

著者
東田 直樹
出版日
2016-06-18

この本には自閉症特有の行動も東田の言葉で一つ一つ丁寧に説明されています。大きな声を出してしまったり、体が勝手に動いてしまったりする自分に困っている、ということなど。一見、無意識のように感じるこれらの行動ですがそれぞれ理由があるようです。

本書は、身近に自閉症の方がおられる方だけでなく、「子どもに落ち着きがない。うまくコミュニケーションが取れない。」と悩んでいる方にもヒントになるような内容がちりばめられているおすすめの一冊。

「自閉症について、一般の方の生活で表現するならこんな感じだよ。」という彼からのメッセ―ジが伝わってくる短編小説も、巻末におさめられています。

東田直樹の豊かな表現に触れる『跳びはねる思考 会話のできない自閉症の僕が考えていること』

『跳びはねる思考 会話のできない自閉症の僕が考えていること』は、電子メディア媒体「cakes」で連載された東田直樹の連載を書籍化したものです。この本は5章37のエッセイで編成されており、間にはインタビューの様子も織り込まれています。

第1章の内容は、初めて東田直樹の作品と出会う方にもわかりやすいよう、自己紹介と自分を取り巻く環境について。第2章以降は自閉症ならではの感覚、物事のとらえ方が豊かな表現力で書かれています。

著者
東田直樹
出版日
2014-09-05

人と会話をすることができず、時には奇声を上げてしまったり勝手に体が動いてしまったりする自閉症。しかし、何も考えずに生活しているわけではないのです。周りの視線を普通の人よりも敏感に感じてしまうために体が動くこともあるということを、この本によって知ることができます。

また「定型発達であれば違った自分だったかもしれない」と言う東田直樹ですが、彼だからこそ見つけられたのではないかと感じる、素敵な自然の風景の描写などもエッセイで書かれています。

もしこの本が東田と初めて出会う一冊であれば、彼の人物像も感じられるインタビュー記事をまとめて先に読む方法もおすすめですよ。

わかりやすい言葉で心に残る詩集『ありがとうは僕の耳にこだまする』

物語やエッセイを多く手掛けてきた東田直樹初の詩集『ありがとうは僕の耳にこだまする』。この本は彼が20歳の時に出版されました。一冊の本の中に、彼が10年分書き溜めた詩が収められています。

簡潔でやさしい言葉こそ誰にでも愛され、生きている言葉だという彼が表現する詩はとても読みやすく、心の中にすっとしみ込んでいくよう。10代の頃は自分がどう成長していくのか、どうなっているのかを不安に感じていた彼が20歳になり、少しづつ自分の道を見いだし始めたように感じる詩も掲載されています。

著者
東田 直樹
出版日
2014-11-20

丁寧に表現された詩の数々は、自閉症に見られる特有の行動、社会の中で感じる居心地の悪さを彼の感性で表現されています。自閉症の方の心の中を映し出しているような透明感あふれる詩には、美しさと哀しみが混じりあっているようです。

日々、忙しく過ごしていると心にゆとりがなく、周りの風景さえも視界に入っていないという方も少なからずおられると思います。本書の一遍一遍の詩は短く、電車など移動の合間や休憩にも読める内容です。この詩集を読むことで最近目に見えていなかった周りの風景の感じ方も変わるかもしれません。
 

会話ができない、ということについて、「言葉を深く考えているから言葉を紡ぐのに時間がかかっているのでは。」と感じさせてくれる一冊です。

子育てのヒントにもおすすめ『あるがままに自閉症です』

この本は東田直樹が18歳の時に書いたブログの記事を抜粋したものです。はじめは日記のように書いていたブログですが、東田は書くことにより日々感じた事、考えた事も書き留めるようになりました。

小さい頃から混とんとした世界の中で生きていたという彼。小さい頃に知的障害と診断されながら、朗読CDを聴いて日本文学を読んだり、英語にも興味を持ったりと、学ぶ事を楽しんでいます。診断名で諦めてしまうのではなく、彼の興味のありそうなことをフォローする家族の姿勢も垣間見えるエッセイです。

著者
東田 直樹
出版日
2017-06-17

本書には、自閉症だからという観点よりも、言葉がまだ思うように話せない子どもへの対応の参考になることも書かれています。

東田は自分が欲しいと思っていたプレゼントを、本当の自分の気持ちに反して「いらない」と言ってしまうそうです。これは小さい頃、言葉の出なかった彼に「いるの?いらないの?」と大人たちが聞いてきて、後半の言葉しか残らなかったことによるものだそう。 

もちろん大人たちも悪意があったわけではないのですが、子どもの性格や個性も色々あります。こういった時に「好きそうなのだね」、「ぴったりだと思ったから」など少しニュアンスを変えるだけで、思っていることや、本当の気持ちを引き出してあげられるのかもしれません。

また自閉症の方の、衝動的に見える行動の理由も、「自分を変えよう」としている胸の内も綴られています。本書を読み、自閉症の方への理解を深めることで、優しい考えと「どう接したら良いか」を知ることができるはずです。

自己肯定感を育むおすすめする、東田直樹の絵本『ヘンテコリン』

エッセイを多く出版している東田直樹ですが、小学生の時に書いた童話で2回、グリム童話賞小学生部で大賞を受賞しています。

絵本『ヘンテコリン』は、絵本を読むことが大好きな東田が16歳の時に執筆した物語であり、挿絵も手掛けています。

ひょろひょろでミミズのようだけどちゃんと足もついていて、ぴょんぴょん跳ねる『ヘンテコリン』が、なんとも可愛らしいです。

著者
東田 直樹
出版日
2008-11-26

周りと少し違って、同じ行動ができないヘンテコリンは、いつも恐竜たちにいじめられています。ある日、ヘンテコリンと恐竜たちが住む世界に雪が降り始め……。

一見、とても弱そうなヘンテコリンですが、たくさんの困難を乗り越えて成長していきます。みんなと同じに出来なかったり、周りと少し違ったりしても良いというメッセージとともに、自己肯定感をはぐくむ大切さも教えてくれる物語です。

小学校の読み聞かせなどにも使われており、自閉症である彼と切り離しても十分に楽しめる作品となっています。

東田直樹のおすすめ5作品の特集はいかがだったでしょうか。今回紹介した本は、自閉症という症状を知るきっかけになると思います。また彼独特の素敵な描写は一読の価値あり!詩集や絵本もぜひ読んでみてくださいね。

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