仕事終わりの1杯がオトナの贅沢時間なのだ

更新:2021.12.2

“Bar”というオトナの世界に足を踏み入れたのは、まだ学生の頃。自由気ままな一人旅にすっかりハマってしまった私は、異国情緒漂うダイニングバーを次なるバイト先に選んだ。 料理長とバーテンダーの2人はお茶目なベトナム人男性で、ホールスタッフはカワイイ韓国人の女の子。つまり、店員で日本人なのは私だけという、日本にいながらにしてマイノリティーになれる特殊な環境だった。

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『Bar』は家でもなく、会社でもない、“第三の場所”

2週間もすると、スタッフや常連さんとも打ち解けて、途端に居心地のいい空間へと変わった。毎日仕事帰りにやってくるお客さんたちは、美味しいご飯とお酒、そしてそこに集まる世代も職業もバラバラの個性的な人たちとの交流を、心の底から楽しんでいる様子だった。
仕事終わりに店内で美味しい賄いをいただいていると、仲良しのお客さんからお酒をご馳走になるなんてことも度々あって、働いた後の1杯って特別なんだな〜なんて思ってみたりした。

そんな原体験もあって、社会人になってからは職場近くで仕事帰りにふらりと立ち寄れる自分だけの特別な場所を探そうと意気込んでいたのだが、これがなかなか見つからず…。
特に銀座なんかにある老舗のバーは、扉からしてわかりづらい上に物々しいし、店内が薄暗いと中の様子が全く見えないので、入るのにとても勇気がいる。
入ってみたいけど、とてつもなく場違いだったらどうしよう…とビビってしまい、最初の一歩がどうしても踏み出せないのだ。そんな迷える人たちにオススメなのが、こちらの本。

著者
沼 由美子
出版日

散歩の達人のグルメライターで、一人飲みが大好きな著者が書いた『スキマ飲み』についての指南書。バーのみならず、レトロ喫茶で飲むお酒やそば屋でいただく日本酒が書かれている。
お酒好きじゃないと知り得ないような隠れた名店が惜しみなく紹介されており、実際にそこで飲んでいるかのような高揚感を味わえる。
お店の様子やバーテンダーの人柄、そしてここへ行くならこの1杯といった情報が満載なので、初心者にとってまさに救世主。一気に一人飲みのハードルを下げてくれる。

こんなBarがあったらいいのに…

話が逸れるが、私が大好きな4部作の小説で「香菜里屋(かなりや)」というバーを舞台にした話がある。物静かで聡明なバーのマスターが、常連客たちからの身の上話を聞きながら、それに纏わる謎を鮮やかに解き明かしていく推理小説なのだが、そこに出てくる創作料理の数々が、美味しそうなことといったらもうっ!
料理に合うお酒、そして常連客が美味しそうに食べる様子など、読んでいるだけでヨダレが出てきそうなほどだ。

それもそのはず、著者の北森鴻氏は調理師免許を持っているのだとか。彼の紡ぎ出す作品をもっとたくさん読んでみたかったのに、若くして他界されてしまったのが残念でならない。

著者
北森 鴻
出版日
著者
北森 鴻
出版日
著者
北森 鴻
出版日
2004-09-22
著者
北森 鴻
出版日
2007-11-29

こんな風に訪れる人たちを感動させてくれる隠れ屋バーがあったら、私も常連になってしまうのに…、とずっと思っていたのだが、なんとこの話が大好きなマスターが香菜里屋をイメージして作ったバーが実在するという。詳しくは、先ほど紹介した『オンナひとり、ときどきふたり飲み』にて紹介されている。
マスターが腕を振るって作る絶品料理が100〜300円という破格で味わえるというから、これはもう行くしかない。
 

そしてレトロな雰囲気が味わえる洋館や喫茶店、文豪が通ったという老舗の酒場など、歴史のある場所が大好きな人にオススメなのがこの本。

著者
甲斐 みのり
出版日

その場所に潜むストーリーが美しい写真と共に綴られていて、その空気感を味わうために足を運んでみたくなる。

家飲みだって贅沢に!お酒がすすむ、絶品料理

お酒はバーだけで楽しむものじゃない。次は家飲みが楽しくなる本をご紹介。
美味しいビールや焼酎、日本酒なんかを飲みながら、ちびちびつまみたくなる季節ごとのメニューの数々。お家にいながらにして、居酒屋気分が味わえる。

著者
藤井 恵
出版日

いやいや、もっとオシャレにワインなんか飲みながら家飲みしたい!という人には、この1冊。
オシャレなライフスタイルで定評の伊藤まさこさんが書いたエッセイで、牡蠣のオイルマリネにキノコのソテーなど、美味しそうな料理とそれに合うお酒が、軽やかな文章で日常の出来事と共に紹介されている。

著者
伊藤 まさこ
出版日
2014-03-05

最後は私の大好きなマンガに関する本。新宿の花園界隈の路地裏にある、深夜0時から朝の7時頃までの深夜にしか営業しないお店が舞台の話である『深夜食堂』。ドラマ化もされているので、知っている人も多いはず。
一人で店を切り盛りする店主が作る、素朴だけど懐かしい料理の数々と、一風変わった常連客たちが織りなす人間ドラマ。料理を伏線にして話が進んでいくのだが、どの話も泣ける。

そして、漫画を楽しんだ後、そこに出てくる料理が食べたい!という人にオススメなのが、こちらのレシピ本。タイトルの通り、真夜中に読むと危険。ついつい夜食代わりに作って食べたくなってしまう。

著者
出版日
2011-11-30

適度なお酒と美味しい料理さえあれば、幸せな気分で1日を終えることができる。仕事のモヤモヤや日々の疲れをリセットするために、あなただけの特別な場所を探してみてはいかがでしょうか。

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