小説『デスマーチからはじまる異世界狂想曲』の魅力を全巻ネタバレ紹介!

更新:2021.11.8

怒涛の仕事に追われ会社の床に倒れ伏した主人公は、目覚めると自分が開発中のゲームの世界にいました。美少女たちに慕われ群がられ、繰り出すは異世界観光。楽しくほのぼの、少しの戦闘とたまらなく美味しそうな料理シーンは必見です。

ブックカルテ リンク

小説『デスマーチからはじまる異世界狂想曲』の魅力をネタバレ紹介!

本作はオンライン小説として人気を博し、書籍化および漫画化されたライトノベルです。テレビアニメ化も決定しており、現在より一層注目を集めている作品と言えます。

「デスマーチ」とは、プログラマーやシステムエンジニアなどIT業界で働く人が使う業界用語。この言葉は、プロジェクトの納期・締め切りに追われ過酷な労働状況にあることを意味します。

デスマーチに陥ると会社に泊まるのは当たり前、徹夜続きでろくに食事をとらないこともザラ……そんな状況で仮眠をとった主人公は、異世界の荒野で目を覚ますのです。そこは、彼が開発していたゲームに良く似た世界でした。

時々戦いつつも、美少女や獣人の少女を仲間とし、ほのぼのとした異世界観光を楽しむする主人公。死の行進から始まった狂想曲がどのように展開してゆくのか、彼らの旅から目が離せません。

最強で最高な異世界生活の始まり『デスマーチからはじまる異世界狂想曲』第1巻

主人公は29歳、ゲームプログラマー・鈴木一郎です。彼は仕事での過酷な納期の中、なんとか一区切りをつけて会社の机の下で仮眠をとります。しかし気づけば、自分が開発していたゲームの世界にいました。

崖の上にいた彼は周りを見渡し、自分が「サトゥー」という名前でゲームプレイヤーとなっていることに気づきます。さらにその崖に向かって、「蜥蜴人族の精鋭」というレベル50前後の強力なモンスターが30名ほどの集団をつくって近づいてきていたのです。

手持ちの武器はなし、しかもレベル1という最弱の状態でモンスターに襲われた鈴木。そんな彼がすがったのは、仮眠直前にゲーム初心者用に設定した大魔法「流星雨」でした。藁にも縋る思い出発動した魔法、しかしその実態は、「流れ星」などという可愛らしいものではない、隕石の大量落下だったのです。

「視界の片隅にあるレーダーの点が、汚れを拭い去るように消えていく。ここからは窺い知れないが、落下地点では無数の命が消えているのだろう。」(『デスマーチからはじまる異世界狂想曲』1巻から引用)

著者
愛七 ひろ
出版日
2014-03-18

1巻は、自分が開発していたゲームの中に入りこんでしまった主人公・鈴木が、ゲームプレイヤー「サトゥー」としてその場を生きぬくことを決断し、自分がゲームに組み込んだ大魔法を発動することから始まります。

ゲームの世界では敵を倒すとレベルが上がり、体力や筋力が上昇し、敵が持っているアイテムを手に入れることが出来るなど、お得な現象が生じるのが通常です。しかしそれが実際にその身に起こったらどうなるのか……という仮想現実をゲームらしく、しかし現実味も持たせて描いたところに、本作の魅力があります。

まず結論として、遭遇してしまった「蜥蜴人族の精鋭」を全滅させた鈴木、もといサトゥーのレベルは一瞬にして1から310にまで上昇。能力値はゲーム上の最高値に達しました。おまけに、蜥蜴人たちが持っていた無限に水が出る袋や金銀財宝全てが彼の物となったのです。

異世界生活スタート直後で有り余るお金と能力を手に入れ、さらに現実では29歳なのに15歳ほどの外見を手に入れたサトゥー。しかし彼は、魔王として世界を征服したり、周りをかしずかせたりすることはしません。

彼はただ、異世界を「観光」したいだけでした。もっとも、能力を手に入れた彼を世界が放っておくことはありません。後に金髪の美しい少女と出会ったり、猫耳や犬耳を生やした奴隷少女たちを救ったりする、彼の英雄譚は始まったばかりです。

戦闘あり、しかし本題はそこではない!第2巻

「寝苦しさに目を覚ますと、裸の幼女が腰の上に跨っていた。」(『デスマーチからはじまる異世界狂想曲』2巻から引用)

2巻は、そんな刺激的な文章で始まります。サトゥーの上に跨っていたのは紫色の髪をもつ11歳の少女・アリサ。しかし彼女は年齢に見合わない妖艶な表情で彼の剥き出しの胸にしなだれかかり、優しくキスをするのです。

その始まりは、サトゥーが奴隷となっていた少女たちを解放したことに端を発します。異世界文化に疎い彼に奴隷商人は、獣人である「亜人」は他の民族から奴隷以下の扱いを受けるということを説明します。

獣人の少女たちを含め、奴隷商人のもとにいた少女たちを自分の奴隷とすることで救い出したサトゥー。そんな善意で主人となったはずの彼は、なぜか少女たちから「夜の奉仕」の提案をされてしまいます。

著者
愛七 ひろ
出版日
2014-07-17

今作の魅力は、サトゥーの仲間として加わった奴隷の少女たちのかしましい様子や、なんとか彼を誘惑しようとする少女たちの報われない奮闘にあります。なぜ「報われない」かというと、サトゥーは年上好き、少なくとも成人女性でないと好ましく思えない性格だからです。

そんな少女たちのなかでも、取り立てて個性が光るのがアリサだと言えます。彼女は、今はなき王国の王女であり、異世界では忌避される紫色の髪と瞳を持つこともあって奴隷となっていました。

そんなアリサは実は前世の記憶をもっており、前世はサトゥーと同じく日本人だったという事実が明らかになります。前世ではオタク気質でコスプレ衣装を自作するなどしていた彼女ですが、モテないまま前世を終えたせいか、カップルに敵意を抱いたり、彼を独占しようとしたりするなど、かなりアグレッシブです。

獣耳の少女たちが幼い知能で舌足らずにサトゥーに好意を伝えるのとは異なり、積極的かつ直接的に彼を落としにかかります。そんなアリサが、旅の仲間たちを取りまとめつつ、異世界での世渡りが物騒で不器用な彼をサポートして旅を円滑にする様子は見ものです。

何を作らせても一流?!勇者サトゥーの物作りが見られる第3巻

「――イチロー君、忘れないで。私達、いつも一生よ。」(『デスマーチからはじまる異世界狂想曲』3巻から引用)

旅のさなか、サトゥーたちが休憩場所で見つけたのは倒れた石の鳥居でした。彼はその鳥居に見覚えがあると感じます。そして次の瞬間、視界が揺れ、フラッシュバックのように記憶が脳裏に浮かんだのです。

「生まれ変わりは存在する、しかし神と人では寿命が異なるため、一緒に居続けるために人は神格を得なければならない……。」

これまでのふわふわとおだやかな日常に、一つの波紋が生まれます。

著者
愛七 ひろ
出版日
2014-11-18

3巻のアリサも、2巻同様サトゥーを誘惑して失敗したり、夜のお店である娼館へ行こうとする彼を阻止したりと大奮闘します。特にサトゥーの夜の店への関心は高く、仲間の少女たちが彼に「夜の奉仕」を提案するたびに夜の店へ行こうと決意するのです。

彼らのいる異世界では14歳が成人のため、アリサの腹違いの姉である14歳のルルや、かつて奴隷をしていた橙鱗族(肌の一部にまとう鱗や、細い尻尾を持つ竜の種族)で18歳のリザと関係を持っても問題はないはず。しかし、彼が彼女たちに手を出すことはありません。

圧倒的な身体的能力と財力をもち、奴隷という自分の自由にできる少女たちをはべらせる……。そんな男のロマンが手に入れてもなお、欲望のまま突き進むことはないサトゥーのいじらしい清潔さが彼の魅力だと言っても過言でもないでしょう。

そんな彼は今回、裁縫に取り組みアリサに玉結びの必要を教えられたり、ぬいぐるみを作って少女たちを感動させたり、薬草から薬を生み出したりと物作りに励みます。しかし彼は、能力を使いこなせないゆえにうまくいかない場面に遭遇するのです。

どんなに素晴らしい能力があったとしても使いこなせなければ意味がない。そんな実直な世界観が、サトゥーをただの最強の男とはせず、彼の個性に深みを持たせます。そして同時に、彼がいったい何者なのかが語られるのです。

巨乳ではない。「魔乳」現る『デスマーチからはじまる異世界狂想曲』第4巻

悪名高きムーノ男爵領。近年困窮をきわめたその領地では、魔物どころか盗賊や兵士、普通の村人までもが暴徒と化し、よそ者に襲い掛かるような危険地帯となっていました。しかしサトゥーたちは、そんな魔物や人を怖がったりしません。

行商人に扮した彼らはムーノ男爵領を抜けて旅を進めることを選び、実際に襲ってきた魔物を倒して進んでゆきます。しかし、それだけでムーノ男爵領を抜けられると思ったら大間違い。

荒れ果てる村があったかと思えば少年少女盗賊団に遭遇したり、巨人の森で倒れている美女を発見したりと、次から次へとトラブルが現れます。

著者
愛七 ひろ
出版日
2015-04-18

今作での新たなヒロインは森で倒れていた美女、カリナです。彼女は「魔乳」と呼ばれるようなナイスバディをもつ19歳で、ムーノ男爵の次女でもあります。彼女は特徴的な口調や金髪縦ロールで、いかにもな「お嬢様」としてサトゥーたちの前に現れるのです。

そんな彼女は、ただ森で倒れていたのではありませんでした。ムーノ男爵領を征服し我がものとしようとする魔族の悪巧みから父親と領地を救うため、巨人たちに助けを求めにやってきていたのです。

しかし、カリナは志半ばで空腹で倒れてしまっていたのでした。そんな今作の魅力は、サトゥーによる調理と食事シーンの描写にあります。空腹の美女の前で丁寧に肉を焼き、肉汁をとじこめ、つけあわせを香り豊かに仕上げてゆく様子は料理番組さながらです。

料理に関しては知識の少ないサトゥーが、異世界で得た能力により調理方法を参照しながら試行錯誤して美味しい食事を作り上げていく姿は、単に食欲をそそるだけではありません。1巻で急に最強になってしまった彼の成長が料理を通して感じられるという、ファンタジーのなかでも異質な構成となっているのです。

運命を変え、真の勇者となる『デスマーチからはじまる異世界狂想曲』第5巻

「サトゥーさんは……運命を変えられると思いますか?」(『デスマーチからはじまる異世界狂想曲』5巻から引用)

金色とも銀色ともとれるプラチナブロンドの髪を輝かせ、テニオン神殿の巫女のセーラは悲しげに笑いかけます。魔王の復活に際して命を落とすという神託がなされた彼女は、魔族たちに執拗に追われながらも、懸命に神託でなされた運命に抗おうとするのです。

果たしてサトゥーはセーラの運命を覆し、セーラに真の笑顔を取り戻すことが出来るのでしょうか?

著者
愛七 ひろ
出版日
2015-08-20

これまで行商人、すなわち平民として旅を続けてきたサトゥーでしたが、4巻でムーノ男爵に認められたことで、ムーノ男爵の家臣として、名誉士爵という貴族の地位を手に入れることとなります。これにより、サトゥーは行商人とは違い、貴族の屋敷や、地位の高い者しか入れない場所にも入れるようになるのです。

そんな、貴族とかかわりを持つようになったことで彼が出会ったのが、巫女のセーラでした。彼女はサトゥーなら自分の持つ「死の運命」を変えてくれるかもしれないと希望を抱きますが、彼女は叔父の手によって誘拐されてしまいます。

おまけにセーラは叔父の手によって「黄金の猪王」という、かつての魔王をその体に憑依させられてしまうのです。黄金の猪王は、死んでも復活する能力と、肉体を自由自在に変化させる能力をもっています。そしてその能力により、セーラの肉体を引き裂くことで復活を果たしてしまうのです。

サトゥーは魔王とその配下である魔族たちを倒し、セーラの死を食い止めることが出来るのでしょうか。途中に挟み込まれる美味しそうな天ぷらに目を奪われつつ、ハラハラがとまらない一冊です。

「本物」の勇者は主人公の敵たりうるか !?第6巻

魔王を倒し、各領地を襲っていた魔族や魔物を退治したサトゥーたちは、「オーユゴック公爵領蒼炎勲章」の授与を受けます。オーユゴック公爵領は、ムーノ男爵領よりも広く豊かで力を持っていることもあり、彼はさらに名誉を高めたことになります。

そんな彼に、貴族の世界で豪華な暮らしをする気はさらさらありません。その代わり、最近とくに磨きのかかっている料理技術をもって貴族たちの舌をうならせ、彼らの胃袋を掴むなどします。

そして現れる「王子」、そしてこのゲーム世界の「本物」の勇者であるハヤト。巻き込まれた戦場でサトゥーたちはどう動くのでしょうか。

著者
愛七 ひろ
出版日
2015-12-10

今回、セーラの姉であり22歳の「天破の魔女」、リーングランデが初登場します。これまで、セーラは姉のリーングランデのことを嫌うような、避けるようなそぶりを見せてきました。その理由も明らかになります。

巧みな剣の使い手で、勇者の従者をしているリーングランデは、実はその気高い強さに似合わず、ある特殊な性格をしていたのです。怖いキャラではなく、むしろ愛にあふれているがゆえに避けられてしまう不器用なお姉ちゃんといった姿は必見です。

そして、満を持して登場した「本物の」勇者ハヤト。彼は日本出身であり、高校2年生の春にこの異世界に召喚された25歳の青年です。ハヤトは聖剣と聖鎧をもち、有力者を従者とするなどかなりの能力を有しています。

こっそりと勇者ナナシとして人助けや魔族の殲滅を行ってきたサトゥーが、勇者ハヤトと出会い、どのように行動を変えていくのか、彼らの今後の展開が楽しみになるでしょう。

さて、今回は晩餐会があることで、アリサとハヤトのダンスシーンを見ることが出来ます。まるで少女漫画のようなロマンチックな状況は、テレビアニメでの映像化間違いなしのシーンだといえるでしょう。カラー挿絵をお見逃しなく!

新たな称号、竜殺し!『デスマーチからはじまる異世界狂想曲』第7巻

「我が国が送還の目処も無しに八人ものニッポン人を召喚し、そのうちの過半数が命を落としてしまったのは事実です」(『デスマーチからはじまる異世界狂想曲』7巻から引用)

貴族の一席をもつ者として各国の王女たちと面談する機会を得たサトゥーでしたが、そこには勇者ハヤトの姿もありました。ルモォーク王国のメネア王女はハヤトの姿に目を留めると、突然謝罪しその場に平伏します。

王女が頭を床に近づける土下座に近い姿を、ハヤトは顔を固くして見つめ、とめることもしません。それもそのはず、ハヤトはルモォーク王国の国王たちの手によって日本から突然この異世界へ召喚され、なんのサポートもなくいきなり勇者という戦闘員にさせられたという過去があったのです。

国民のために悪い竜を倒してほしい、と願い出るメネア王女に、ハヤトとサトゥーはどう答えるのでしょうか。

著者
愛七 ひろ
出版日
2016-04-09

今回は勇者ハヤトの過去が語られます。まず過去以前に、ハヤトは残念ながらロリコンです。それだけでなく、11歳のアリサを「マイ・ハニー」と呼んでアピールを繰り返すなど、かなり強い個性を持っています。

そんなお茶らけたキャラクターでもあるハヤトですが、彼にはサトゥーのように初心者向けのお助け魔法などもなく、突然この異世界に召喚されてしまったという事情があります。そのため、彼が強くなる過程にはたくさんの挫折や傷、痛みが伴っていたのです。

悲しみや苦しみとともにこの世界を生き抜いてきたハヤトは、サトゥーが日本人であることを見抜き、彼との間で情報を共有するなど友人関係を築くに至ります。もっとも、サトゥーは心底ハヤトを信用しているわけではなく、加えて自身が初心者用の大魔法で一気に強くなった負い目もあって、ハヤトに言えない情報も持っていました。

異世界にやってきてから、サトゥーが本心をさらけ出せる対等な存在が、まだこの世界には存在していない……。冒険ものにありがちな友情の存在が欠けていることを、ここであらためて読者が知ることになるのです。

また、ハヤトの過去とともに、サトゥーたちがいる異世界と、他の世界との関係性も明らかになりました。同じ異世界に来ていたとしても、「同じ日本」から来たとは限りません。この世界には複数の世界が並行して存在していて、それぞれ似た国や世界や時間軸があることで、話を聞く限り同じ場所と思えた世界が、微妙な誤差とともにまったくの違う世界と言うこともありうるのです。

そんな、異世界が単に一つの日本と一つの異世界で繋がっているのではなく、多数の世界が相互に繋がっていることがわかる7巻。サトゥーはまだまだ異世界「観光」を続けるようですが、彼もいつかは元の世界に戻るか否かの決断をすることになるのでしょうか。

この世界の初恋は実らない『デスマーチからはじまる異世界狂想曲』第8巻

「抜け駆け禁止ダァァァァイブ」(『デスマーチからはじまる異世界狂想曲』8巻から引用)

サトゥーの旅の仲間である少女ミーア。彼女はエルフであるがゆえに誘拐されたところをサトゥーによって助け出されており、彼はミーアを故郷へ送り届けるために彼女の故郷であるエルフの街へとやってきていました。

そんなエルフの街は来客歓迎用の自然豊かな地上の街と、本当の街と呼ばれる地下でハイテク機器に囲まれた居住区の二つが存在します。宴会を抜け出して本当の街へミーアに案内されたサトゥーはうっかりミーアと添い寝してしまい、アリサから冒頭の抜け駆け禁止ダイブというお仕置きをうけることになるのです。

著者
愛七 ひろ
出版日
2016-08-10

今回登場の美女は巫女姿で金髪のハイエルフ・アイアリーゼです。彼女はハイエルフというエルフのなかでも上級種族であり、巨乳なお姉さん好きのサトゥーの心をガッチリ掴む美女でもあります。

そんなアイアリーゼはミーアの実家のあるエルフの里における唯一のハイエルフということもあり、里では重要視され、里を離れられない存在です。しかし、サトゥーはアイアリーゼに恋をし、またアイアリーゼも、サトゥーに心惹かれてしまうのでした。

エルフの里の害獣発生など、様々な事件も起こりますが、この巻はとにかくサトゥーとアイアリーゼの恋模様が見どころ。これまでの恋愛力乏しい彼はどこへやら、積極的にアプローチを重ねる姿はまるでこれまでの彼とは別人のようです。

そんなストレートに頑張るサトゥーでしたが、アイアリーゼはエルフの事情を背負っているだけに、その恋を押し殺して彼にきっぱりと拒絶を伝えます。その行動からうかがえる内心からして明らかに両思いであるとわかるだけに、切ない展開です。

さて、今回はエルフみんなの憧れカレーライスをサトゥーの能力による知識で作り上げるという楽しいシーンもあります。みんなで香辛料を集め、イチから作り上げるカレーはどんなカレーよりも美味しそうに見えること間違いありません。

魔力で年齢が変わる美少女が登場!第9巻

「珍しく上ずった声で答えたリザが、顔を真っ赤にしてオレの耳元に優しく口付ける。橙鱗族の風習なのか、キスの後にペロリと小さく耳たぶを舐められてくすぐったかった。」(『デスマーチからはじまる異世界狂想曲』9巻から引用)

冒頭から仲間の少女たちからキスをされるサトゥーで始まる今作。ミーアも、サトゥーとともに旅を続けることを決意し、一行は船に乗り込んで素敵な海の旅へと出航します。

……と、見せかけて。海の旅と言っても実際に海に接している時間はほんのわずか。外海に出れば激しく揺れ、今にも沈没しそうな小船で旅をするなんて無茶をサトゥーがするはずありません。船に仕込んだ空力機関を使えば、たちまち船は浮遊帆船と変わり、低空飛行で揺れ知らずの快適な海の旅が始まります。

著者
愛七 ひろ
出版日
2016-12-10

今回は海の旅がテーマとなっており、沈没船をサルベージ(引き上げる)してお宝を手に入れたり、深海探検をしたり、古代語を習得して古代文明のあれこれを手に入れるなど、海のロマンが詰まった一冊となっています。

サトゥーたちがサルベージした船の中には幽霊船もあり、そこには幽霊船長までいるということで、仲間の少女たちがおっかなびっくり海の世界に挑んでゆく姿を楽しむことが出来ます。

そして、もちろん今回もサトゥーのヒーローっぷりは変わりません。危機に瀕する少女を救い、護衛しながら送り届けるという、エルフのミーアとの一件を彷彿とさせるシーンもあります。そんな中、悪魔に騙された亡霊の手により、世界が滅亡の危機に瀕するのです。

今作の見所は、サトゥーが仲間の少女たちに強くなってもらうため、実戦での訓練をおこなうところにあります。これまで、何か面倒事があるとこっそり殲滅してきていたサトゥーでしたが、このままでは少女たちが一人になったときどうなるのかと真剣に考えるようになるのです。

もっとも、面倒見のよい彼が少女たちをいきなり危険な戦場に放り出すことはなく、こっそり敵の数を減らしておいたり、装備をきちんと準備して置いたり、本当に危険なときは代わりに倒すなど、しっかりと保護者を務めます。

水着姿で海を楽しむ少女たちや、美味しそうなマグロ料理、古代魔法文明にワクワクする一冊です。

荒ぶる迷宮へと、いざゆかん!第10巻

「ニクワキチーオドル本物のセンジョウなのです!」(『デスマーチからはじまる異世界狂想曲』10巻から引用)

冒険者の憧れ、迷宮。今回サトゥーたちは迷宮を中心に栄える迷宮都市に滞在し、迷宮探索へと向かいます。迷宮には危険な魔物が多くひそみ、また素敵な財宝があるという噂です。

血湧き肉躍る本物の迷宮を前に、獣耳の少女たちは不自由な言葉で興奮を露わにし、他の少女たちも目を輝かせます。

著者
愛七 ひろ
出版日
2017-04-10

危険区域である迷宮といえば、それに備える武器や防具は必須です。そんな特別装備のなかでも、特に見所なのがルルの装備。ルルはアリサの異母姉であり、普段の街歩きなどではメイド服を着用しています。

傾国の美少女ともいえるルルの迷宮探索用の装備は、メイド服を基調にした鎧であり、まさに戦うメイドさんといった様子です。彼女は普段はおっとりとしていて、自分に自信がないことも多いのですが、普段の姿と戦闘時のギャップが楽しみな存在の一人でしょう。

また、ルルはエルフの里で護身術を学んでいたこともあり、後衛の守護役にあたります。そのため、他の少女たちのものよりも服の防御力を上げてあるほか、服の中に「身体強化」の魔法が入れ込んであるなど工夫が凝らされているのです。

今回はノロォーク王国の第六王女である、13歳のミーティアが登場します。彼女はお付きの目をかいくぐって自由行動をするお転婆娘です。そんな彼女は中途半端にエルフや迷宮都市の情報に詳しいことで騒動を巻き起こします。

ミーティアの冒険は無事に終わるのか。そして、サトゥーの周辺をうかがう怪しい人物の正体とは。サトゥーたちの迷宮探検が始まります。

迷宮の深部に隠された本当の黒幕『デスマーチからはじまる異世界狂想曲』第11巻

前巻に続き迷宮都市滞在中のサトゥーたち。彼は迷宮都市の貧困事情に目を向け、毎日一度の炊き出しをおこなう以外に、清掃などのボランティア活動をした子にはおやつをあげるなどして職業訓練のようなことも行っていきます。

浮浪児たちのための児童福祉施設である、ペンドラゴン養護院を設立するなど社会貢献もして順風満帆……。と思いきや、迷宮内で魔人薬の密造が行われていることが明らかになります。

街中を暴走する燃えるスライムに、焼けただれた少女たち。サトゥーは迷宮の盗賊である迷賊を倒し、迷宮都市に平和を取り戻すことができるのか……?

著者
愛七 ひろ
出版日
2017-08-10

今回、サトゥーは魔物素材を使用した工作だけでなく、治療から一歩進んだ外科の領域に手を出します。それは治らない火傷で死にかけている少女たちを助けるためであり、また、そのための設備や知識が身近にあったこともサトゥーが外科に手を出す契機となりました。

彼は少女たちを助けるため、皮膚を全ていったん溶かして再生するという荒業に出ます。それを可能としたのが「蔦の館」の地下研究室の装置でした。「蔦の館」は彼らが滞在したこともあるエルフ御用達の迷宮都市の別荘で、ミーアの母方の祖父であり、エルフの賢者とも呼ばれるトラザユーヤが建てた屋敷です。

その「蔦の館」の地下研究室には人が入れるだけの大きさの培養槽がありました。サトゥーにとって幸いだったのは、その培養槽に満たす薬液を作るだけの原料や知識を、これまでの冒険で手に入れていたことにあります。

そうして、また一つ新たな能力を高めたサトゥーは、迷宮内で行われている禁断の術の真相へと踏み込んでいくことになるのです。普段は使わないものの、圧倒的な強度と威力をもつ妖精剣を使いこなす彼の姿や、強靭な装備に身を包んだ少女たちが戦いに乗り込む姿は必見です。

11巻では、10巻で読者に魔族だと思わせていたとある人物の正体が明らかになります。人を疑わずに後手にまわっているサトゥーも案外間違いではなかったのかも……と思わせる描写トリックは、10巻と照らし合わせながら読むのがおすすめです。

迷宮都市攻略のため修行開始『デスマーチからはじまる異世界狂想曲』第12巻

迷宮都市の陰に潜み、街を混乱させていた黒幕を突き止めて撃破したサトゥーは、ようやく本来の目的である迷宮攻略に挑むことになりました。迷宮では「階層の主」を倒すことが目標になりますが、その前に「区画の主」との戦いに挑むことになります。

しかし、サトゥーたちは、この戦いに大苦戦!力不足を痛感したサトゥーが取った行動とは……!?

著者
愛七 ひろ
出版日
2017-12-10

迷宮都市で慈善事業をしたり、街を混乱させている黒幕を突き止めたりしていたサトゥーですが、そもそも迷宮都市を訪れた目的は、迷宮都市の攻略。

諸々の問題が片付いたところで、早速その目的を果たそうと動き出すのですが、最初の戦いで思いがけず大苦戦を強いられ、自分たちの力不足を痛感してしまいます。これでは攻略なんてとても無理ということで、サトゥーはエルフの里での修行を提案したのでした。

本巻は修行回で、基本的にはほのぼのとした内容になっています。WEB版にも同様のエピソードはあるのですが、書籍化に伴いかなり書き下ろしているようで、WEB版をすでに読んだという方にも楽しんでいただけるでしょう。

サトゥーたちが魔法薬を作ったり、特訓をしたりするのがメインなので、ストーリー自体はあまり大きく動かないように感じるかもしれませんが、注目ポイントとしては、ナナ姉妹やゼナの活躍。彼女たちの活躍は久しぶりなので、ぜひチェックしてみてください。

サトゥーの無双っぷりには魔王も……『デスマーチからはじまる異世界狂想曲』第13巻

エルフの里でのほのぼの修行をして力を付けたサトゥーたちは、装備も強化して準備万端。迷宮攻略に向けて動き出す……と思いきや、道中で温泉を見つけては温泉旅館を作ってみたり、王都で商会を設立してみたりと、相変わらずのマイペースぶりです。

寄り道ばかりの活動を経て、ようやく挑んだ迷宮攻略。しかし、そこに待ち受けていたのは予想もしなかった敵の姿で……!?

著者
愛七 ひろ
出版日
2018-03-10

修行回を経て、迷宮の「階層の主」へと挑むべく「試練の間」へとやってきたサトゥーたち。修行をするきっかけとなった「区画の主」との闘いでは苦戦を強いられていたので、今回はどんなふうになるのかなとドキドキしていた読者も多いかもしれません。

しかし、「試練の魔」へと赴いた彼らの前に現れたのは、なんと魔王「狗頭の古王」でした。魔王相手にどんな戦いが……と思うところですが、修行の成果なのか、サトゥーは魔王相手にもそれほど苦しまずに戦えていたようでした。

彼の無双っぷりを楽しみたい読者にとっては、ウキウキしながら読むことができるでしょう。仲間たちの戦いはサトゥーよりも苦戦しているので、こちらはドキドキしながら読むことができます。

他にも、迷宮都市にゼナが到着したこともあり、ようやくサトゥーとの再会も期待できる展開となっています。2人の再会が次巻で叶うのでしょうか……。

ゼナとの再開もつかの間……?『デスマーチからはじまる異世界狂想曲』第14巻

無事に「階層の主」も倒し、迷宮を攻略したサトゥーたち。攻略を祝う凱旋パーティーが開かれるなか、街へやってきたゼナはとうとうサトゥーと再会を果たします。

久しぶりの再会に喜ぶ2人は、仲間たちとともにのんびりと平和なひと時を過ごすのですが、そんな折、ゼナが行方不明となる事件が起きて……!?

著者
愛七 ひろ
出版日
2018-07-10

前巻でサトゥーたちが「階層の主」を倒している一方、ゼナも街を訪れていました。いよいよ2人は再会するのだろうかという読者の期待通り、彼らは再会を果たします。本巻はゼナがメインヒロインとなっており、全編をとおして活躍しているので、彼女の活躍を読みたい方にとってはうれしい一冊。

凱旋パーティーに街の観光と、前半では相変わらずのマイペースでほのぼのとしたエピソードがありますが、後半になると一転。ゼナが迷宮に潜って行方不明になってしまう事件が起きるのです。

下層へと潜っても相変わらずのサトゥーたちではありますが、次巻以降に重要になりそうな情報が明らかになるなど、これからの展開に期待がかかるような部分もあるので、ぜひチェックしてみてください。

また、貴族としてサトゥーが王都へ行かなくてはならなくなるので、迷宮でのエピソードは本巻がラストであると思われます。新しい章の始まりに期待です。

ゲームのような異世界でのほのぼの冒険旅を描く『デスマーチからはじまる異世界狂想曲』。Web版とは異なる展開や描き下ろしも多く、これからも楽しみな作品です。

  • twitter
  • facebook
  • line
  • hatena
もっと見る もっと見る