新井満のおすすめ本4選!数々の傑作を手掛けた名翻訳者

更新:2021.11.9

作詞、作曲、写真など幅広い分野で活躍している新井満。そんな彼が手掛けたおすすめの翻訳本をご紹介します。

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あの名作の翻訳者・新井満

1946年に新潟で生まれた新井満は、高校生までを地元で過ごし、大学進学と共に上京しました。卒業後は電通に入社し、環境ビデオ映像の製作を行う傍ら、小説や歌などの創作活動を始めます。

その後、作詞や小説など多方面において頭角を現した新井は、1988年に『尋ね人の時間』で芥川賞を受賞。2001年には、自らが翻訳と作曲を手掛けた「千の風になって」が多くの歌手にカバーされ、100万枚を超える大ヒットを記録しました。

2006年に定年退職した後も、チャリティーのイベントなどを積極的に行うなど、精力的に活動を行っています。人々に力を与える言葉を発信し続けている、表現力に長けた翻訳家です。

新井満が訳し、多くの反響を呼んだ名作

『千の風になって』の原詩の作者は不明ですが、新井満はこの英文を自らの体験から日本語に訳し、さらに曲をつけて歌にしました。そんな彼が曲を作る際にこめた想いを、この詩に対する彼の見解を示しながら綴っています。

親友である川上耕の妻・桂子が乳ガンで帰らぬ人となり、新井は彼に励ましの手紙を送ろうとしました。しかし、最愛の伴侶を亡くし失意の底に沈む彼にかける言葉が見つからず、筆を進めることができません。

そんな悶々とした日々を送っていたある日、桂子の追悼文集の中に、「1000の風」という西洋の詩を見つけます。

著者
出版日
2003-11-06

「1000の風」を読んだ新井は、この詩が「死者からの手紙」のような内容であることに驚きを受けます。そして、この詩に曲をつけて人々に広めることを決意するのです。

懸命に、作者不明の詩に込められた思いを辿る彼の姿が、スケールの大きい世界観と共に記されているのが印象的です。大ヒットを記録した後も、原詩に作者が込めた想いについてはさまざまな説が飛び交っています。

新井が示した見解についても賛否両論ありますが、彼がこの詩と真剣に向き合っていたことが、この本からは伝わってきます。胸が熱くなる、大きなパワーを秘めた一冊です。

若者に訴えかける熱いメッセージ

本書は、19世紀から20世紀にかけて活躍したユダヤ系アメリカ人の詩人、サムエル・ウルマンの「Youth」を新井満が訳したものです。

マッカーサーが愛誦したこの詩は、後に岡田義夫によって和訳され、多くの人に影響を与えます。新井も例外ではなく、岡田の訳した「青春」に感銘を受けました。

そしてある日、新井は「青春」の詩に曲をつけるように頼まれます。彼はその依頼を引き受けましたが、その時ウルマンの書いた「Youth」は改変されており、マッカーサーが愛誦したそれとは似て非なるものだったことに衝撃を受けます。

著者
新井 満
出版日
2005-03-24

2つの「Youth」の違いについて考え始めた新井は、この詩が本来伝えたかったメッセージを探します。そして、日本で広まった岡田訳の「青春」についても再考するのです。果たして、彼はどのような訳をして曲を作るのでしょうか?本書を呼んだ読者は、きっと世界の広がりを感じることしょう。

多くの人に広まった詩の、不思議な運命を受け止めたこの本からは、力強いメッセージと熱い想いが伝わってきます。生き続ける勇気をくれる、エネルギーに溢れた一冊です。

新井満の経験から「空の哲学」を考える

大乗仏教の思想を説いた経典として有名な般若心経。世界的に知られるこの経典を、新井が自らの経験や考えをもとにして訳しています。難しい印象がある般若心経ですが、本書では分かりやすい言葉での解説も添えられ、非常に読みやすくなっています。なんとなく遠い所にあった世界が、一気に近づいてきたようです。

大学時代に初めて般若心経に出会った新井ですが、最初は深く納得することができませんでした。しかし、故郷新潟の母が亡くなった後、彼女が遺した文庫本の『般若心経』を読み、「空の哲学」についてある考えが浮かんできます。

悲しみと向き合ったことで、彼の心境に変化が現れていたのです。

著者
新井 満
出版日
2005-12-01

新井いわく「空の哲学」には、「色即是空」と「空即是色」の2つがあります。

この世に存在する全てのものはいつか滅びる運命です。人々はそれを受け入れることしかできず、また受け入れることで気持ちが楽になると新井は語っています。彼の経験も添えてありるため、説得力も大きいです。背中を押してもらえるような気持ちを味わうことができます。

一見難しく思える経典でも、実際は人々の生活と密接に関わっていることがあります。しかし、いきなり原文に挑戦するのは勇気がいることです。まずは、親しみやすい文章で書かれた本書から始めてみるのはいかがでしょうか?きっと、新しい世界があなたの前に広がっているはずです。

新井満が訳した、ヘミン僧侶のつぶやき

マサチューセッツ州のハンプシャー大学で宗教学を教えている、韓国人の僧侶ヘミンが、ツイッターに投稿していた格言をまとめ、それを新井満が翻訳した一冊です。

彼が発信した言葉たちは、人生に疲れた心を癒してくれると評判になり、韓国では大ベストセラーとなりました。 新井は、そんな彼が大切にしている人生に必要な休息についての考え方を、的確に読み取っています。

何かを勝ち取っていくのではなく、むしろ一時停止して自然に現れる単純な心理こそが、いまを生きる人々には必要だというのです。

著者
恵敏
出版日
2012-10-17

ツイッターの投稿から広がった格言ということもあり、多くの人に受け入れやすい内容となっています。韓国と日本で社会状況は少し異なりますが、新井がうまく言葉を変えて、日本人にも親しみやすくしているのです。きっと自分のお気に入りの言葉が見つかるでしょう。

忙しない世の中を生きる私たちに必要なエッセンスが詰まったこの本。立ち止まって自分と向き合いたいときに、いつでもあなたに生きるヒントを与えてくれます。手元に置いておきたい、一生の宝物になるであろう一冊です。

原作者の意図を読み取る努力を怠らない新井満が手掛けた作品たち。きっとあなたの心にも、まっすぐな想いが飛び込んでくることでしょう。ぜひ、手に取ってみてはいかがでしょうか?人生を変える欠片たちが眠っているかもしれません。

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