中村勘三郎の軌跡を探るおすすめの本5選!

更新:2021.12.5

言わずと知れた歌舞伎役者、中村勘三郎。彼は2012年に惜しまれつつこの世を去りました。ここでは多くの人たちから愛された名役者、十八代目 中村勘三郎について書かれた本を紹介していきます。

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中村勘三郎とは

1955年、東京生まれ。歌舞伎の名門中村屋の十八代目として、幼い頃から芸の道に励んできました。

子役時代は五代目中村勘九郎として、歌舞伎の舞台以外にも映画、テレビ、ラジオなどで子役として活躍。天真爛漫でのびのびとした演技は「天才少年」として多くの人たちから愛されました。

1980年、七代目中村芝翫の次女・好江と結婚。その後、2人の息子が生まれました。

国内だけでなく、海外でも歌舞伎の舞台を上演。2004年と2007年にはニューヨーク公演を行い、現地メディアも絶賛する大成功を収めています。

2011年には長男の中村勘太郎の六代目勘九郎襲名披露舞台を含む、平成中村座ロングラン公演をおこないました。その翌年、ロングラン公演の千秋楽を迎えた直後に、食道がんを患っていることが判明。入院、手術をし、快方に向かいます。

しかしその後、がん治療による免疫力低下の影響で肺疾患を患い、2012年に57歳という若さでこの世を去りました。

勘九郎から勘三郎へ

歌舞伎役者中村勘三郎の素顔について、ライターの小松成美が4年という歳月をかけて取材した一冊。

勘九郎としての激動のラスト4年間から、勘三郎襲名後の日々など、役者として懸命に励む彼の人となりが見えてくる本です。舞台の話はもちろん、大切な家族についての話も収録されています!

著者
小松 成美
出版日
2010-02-01

歌舞伎と聞くと、どんなイメージがありますか?堅苦しい、伝統的、敷居が高い……。

中村勘三郎はそんな歌舞伎界に新しい風を吹かせようと、いろいろなことに取り組み、親交が深かった野田秀樹、宮藤官九郎、渡辺えりらの才能を活かした新しい歌舞伎も作り出しました。

そんな彼の挑戦を、筆者が情熱的に追いかけて文章にしています。読んだ後は、きっと歌舞伎の世界に興味が湧いてくるはずです。

中村勘三郎闘病記

57歳という若さでこの世を去った中村勘三郎。この本は、そんな彼の闘病生活を1番近くで支え続けた妻、波野好江が綴ったものです。

勘三郎は2012年6月にがんの告知を受け、同年12月5日に亡くなっています。発見からわずか6ヶ月という短期間に、がんという病気の恐ろしさをあらためて考えさせられます。

著者
波野 好江
出版日
2013-12-05

夫婦の馴れ初めから結婚、出産、そして夫婦喧嘩の数々……。妻である波野好江が、結婚生活のよい思い出から悪い思い出まで、包み隠さず綴っています。

そして、2人に訪れるがん告知というショッキングな出来事。好江は、夫である前に歌舞伎役者である中村勘三郎が復活することを心から望み、日々献身的に看病します。

時には、大竹しのぶや野田秀樹などの大切な友人に助けを求めたり、舞台で活躍している息子たちに心配をかけまいと夫の病状悪化を気づかれないようにしたり……。がん患者を家族としてどう支えるか?という点においても、興味深い内容となっています。
 

新聞記事から見えてくる、十八代目勘三郎

本書は、朝日新聞の記事と中村勘三郎の公演記録をまとめた、彼の役者人生の記録です。

彼がいかに芸の道に日々邁進し、新しいことに挑戦し続けたかがよくわかります。終章では、勘三郎の訃報を伝える記事が収録されています。

新聞記事からという、新しい視点で中村勘三郎の活躍を記録した一冊です。

著者
中川右介
出版日
2013-11-20

中村勘三郎という人は歌舞伎界だけでなく多方面で知人が多く、さまざまな人とのつながりをきっかけにして、歌舞伎という伝統的な世界に新しい風を起こしました。

彼が亡くなった後、朝日新聞の追悼特集に掲載された野田秀樹のインタビューにはこう綴られてます。

「僕個人の喪失感はもちろんあるが、演劇界が彼を失ったことは、ただの喪失では済まない。災害に近い」(『十八代目中村勘三郎 全軌跡』から引用)

歌舞伎界だけでなく、演劇界でも活躍していた中村勘三郎。その早すぎる死は本当に残念でなりません。多くの人たちから愛された彼の活躍を、ぜひ本書で知ってください。

勘三郎、その素顔

長年、中村勘三郎と親交の深かったエッセイスト、関容子が綴る数々のエピソードです。

著者を信頼していたからこそ勘三郎が見せた素顔、ぜひあなたも知ってください。

著者
関 容子
出版日
2015-10-09

多くの人たちと親交があった中村勘三郎。この本では、恋人だった女優の太地喜和子、20歳以上年下の友人である市川海老蔵、作家の丸谷才一……そうそうたる人たちとのエピソードをたっぷり読むことができます。

ある時、中村勘三郎が著者に語ったことがあります。

「役者の仕事って、水の上に、砂の上にじゃなくて水の上に、指で字を書くようなものなんだよ。書いたそばから空しく消えてしまう。」(『勘三郎伝説』から引用)

彼はこう語りましたが、亡くなった後も多くのファンたちの心の中に「十八代目中村勘三郎」という役者は存在し続けているはずです。

浅草の友が語る

浅草仲見世に120年続く舞扇の老舗「荒井文扇堂」。この4代目店主である荒井修は、舞踏会、歌舞伎界、落語会に多くのご贔屓を持っています。

そんな彼は中村勘三郎と公私ともに交流があり、その40年の交友歴をまとめたエッセイです。
 

著者
荒井 修
出版日
2015-04-01

平成中村座の誕生、数々の交流、そして別れ……浅草を舞台に荒井文扇堂の店主が語る、中村勘三郎をはじめとする歌舞伎役者たちとの思い出が描かれています。

情緒あふれる浅草の風景写真や、勘三郎の初出写真なども収められているので、ファン必見の一冊です。きっと読み終わったあとは、浅草へ足を運びたくなるはず!
 

いかがでしたか?これらの本を読むと、あらためて十八代目中村勘三郎の早すぎる死が惜しまれてなりません。しかし、彼の意志は2人の息子たちが立派に継いでいってくれるでしょう。昔は庶民の娯楽だった歌舞伎。敷居が高い……なんて言わずに、日本人ならぜひ1度は鑑賞してみてください。

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