仰木彬にまつわる逸話6つ!野球に携わり続けた男の人生とは

更新:2021.11.10

2005年にこの世を去った日本野球界の偉人、選手としても監督としても名を遺した仰木彬。戦後の野球史にさまざまな記録を残し、21世紀に活躍する選手たちの育成にも力を注いだ彼の、人となりが垣間見える作品をご紹介します。

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仰木彬とは

仰木彬(おうぎあきら)は1935年生まれ、福岡県出身の野球選手です。

1950年代後半の西鉄ライオンズ黄金期といわれた時代に選手として活躍し、その後は監督として大阪近鉄バファローズ、オリックス・ブルーウェーブを率いて、後に活躍するイチローを2軍の中から発掘した名監督でした。

仰木のプロ野球人生は、1954年に西鉄ライオンズに投手として入団したことでスタートしましたが、不運にも初戦で多くのヒットを打たれてしまい、即二塁手へ転向させられました。そして、そこで守備の務めを果たし、西鉄黄金期の内野陣を支えたのです。

現役時代は西鉄一本に身を捧げ、1967年に引退。その後はコーチとして裏方に徹します。1987年に近鉄の監督に就任、1989年にはリーグ優勝を果たしました。

イチローとの運命的な出会いは、1994年にオリックス・ブルーウェーブの監督に就任した時のことです。当時2軍にいたイチローを1軍に抜擢して、スターにしました。1996年にはオリックスとして初のリーグ優勝に導くなど、チーム全体への貢献も語り継がれています。オリックス・ブルーウェーブの監督は2001年に引退しました。

その後、2005年に、かつて自らが活躍していた近鉄バファローズとオリックス・ブルーウェーブが合併したオリックス・バファローズの監督に招聘され、70歳にして現場復帰を果たします。

同年の終盤までは監督を務め、高齢を理由に引退。退任後は急激に体調が悪化し、2005年12月15日に死去しました。70歳でした。

仰木彬を知る6つのエピソード

1:酒豪だった

仰木は大変な酒豪だったといわれています。

亡くなる1年前でも、ゴルフコンペの際には前日の焼肉パーティーでビール・ワイン・焼酎をあびるように飲み、案の定当日はゴルフの開始前にトイレで吐いてしまいますが、戻るとすぐにビールを飲み、さらに酔いがさめる前に腕立て伏せを始める始末でした。

これには、コンペに同行していた他の野球界の偉人方も、驚愕したといいます。 

2:現役時代はかなりの遊び人だった

仰木が現役選手時代、西鉄の監督をしていた三原脩は「グラウンドの外ではハメを外してよい」という考えをもっていたにも関わらず、仰木に対しては「遊びに制限をかけるべき」とこぼすほどでした。

西鉄の島原キャンプの休日に離島に遊びに行き、天候不良でその日は戻ることができず、翌日に合流すると、怒られてひたすらバントの練習をさせられた、というエピソードもあります。 

3:現役引退後もかなりの遊び人だった

現役引退後も遊び人癖はおさまらず、テレビ出演時には女性アナウンサーにアタックするほどの健在っぷりでした。また監督時代には、ミーティングで「門限の設定」と「違反者への罰金」を導入する話がもちあがると、「自分が1番困る」という理由で反対したそうです。
 

4:普段の移動手段

自動車を運転する生活をしていなかったため、試合会場への移動手段は電車やタクシーが多かったといわれています。そのため電車内で声をかけられることも珍しくなく、1992年には近鉄系列の路線でイメージキャラクターを務めていました。  

5:攻撃における柔軟な戦術  

「スタメン」と選手を固定することはほとんどなく、仰木が監督をしている際は打順のパターンが無数にありました。

6:人前で見せた涙があった
 

仰木は「人前では泣かない」ことを自分自身に課していました。しかし1988年、リーグ優勝がかかっていた試合では敗北を喫してしまい、珍しく人目を忍んで泣いていたといわれています。

仰木彬率いる近鉄の「強さ」

「猛牛軍団」の名で、戦後の日本野球界に爪痕を残した「近鉄バファローズ」。チームに猛々しい異名を与えるきっかけを作った仰木彬の真実に迫ります。

著者
仰木 彬
出版日

決して連戦連勝ではなかった近鉄バファローズは、それでも観衆に感動を与え続けました。

仰木は1987年に監督就任。翌1988年は優勝こそ逃したものの、その存在感をしっかりと残し、1989年にチームを9年ぶりの優勝へと導きました。

その優勝を契機として、仰木は自叙伝として本書を出版。当時の「仰木にとっての勝利」が非常に生々しく書かれた、貴重な一冊です。

仰木彬の監督としての方向性を語る

仰木彬と、スポーツジャーナリスト二宮清純の対話形式で展開されている本書。仰木がイチローや野茂選手などの逸材を発掘し、スターとして開花させる過程がわかりやすくまとめられています。

著者
["仰木 彬", "二宮 清純"]
出版日

選手の人心掌握をどのようにしていたのか、「個」を活かすチームマネジメントをどのように体系化していたのか……仰木彬の指導方針が集約されています。

監督から組織力を学ぶ

近鉄やオリックスを、監督としてどのように強力なチームへと成長させていったかがわかる一冊です。

著者
仰木 彬
出版日

本書は一般的なスポーツチーム育成本とは異なり、チームの力が発揮できていない現状で、組織がどのようにして「改善」をするべきなのか、ヒントが載っています。

仰木彬の「力」の実像に迫る

スポーツライターの永谷脩による、取材形式で語られた一冊。先見力や采配力といった、仰木が持つさまざまな「力」が、どのように作用してチームを強化していったのかがわかります。

著者
永谷 脩
出版日

チームを強くする過程で、仰木が どのようなプロセスを経ていたのか……常識や正論にとらわれることのない、幾多の壁を乗り越えてきた記録が詰まっています。

仰木彬という「人間」に迫る

仰木彬人間像を描く本書は、2006年に一周忌を際して出版されました。

著者は、元野球選手の金村義明。「当事者目線」で仰木を見ることができる一冊です。

著者
金村 義明
出版日
2006-12-16

父のような優しさから、鬼のような怖さまで、さまざまな顔を選手たちに見せ続けた仰木が、選手との向き合うドキュメンタリーともいうべき作品となっています。彼と25年もの付き合いがあった金村ならではの作品でしょう。

テレビでは知ることができなかった仰木の人物像がリアルに描かれています。
 

日本野球界の偉人として、選手、コーチ、監督とさまざまな顔を見せてくれた仰木彬。そのチーム統率のメソッドは、野球人だけでなく、組織を束ねるすべての者たちへヒントを残してくれました。スポーツをしない人であっても、1度は読んでほしい本ばかりです。

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