編集者とは何か考える5冊

更新:2021.12.6

編集者とは何だろうか。かくいう自分自身も、「編集者って何をする人か?」と聞かれると、端的には言い表せない。 ここでは、「編集者」というものを考えるのに必要な本を紹介したい。

ブックカルテ リンク

編集者の書いた本は数あれど…

著者
鷲尾 賢也
出版日
2004-03-06

世の中には様々な「本」があるのだから、「編集者」もいろいろな人がいる。
だからなのか編集者が書いた本は数多く存在する。

しかし、多くは担当した著者のエピソードや その当時の時代背景、出版論に焦点が置かれており、編集者がどういった仕事をしているのかということに正面から向き合っているものはあまり多くないのではないか。

本書は「編集者とはどんなことをナリワイとする人なのか」がまとめられており、実際に編集者として仕事する上で参考になる。 

著者の鷲尾賢也氏は講談社で現代新書の編集長を務め、「選書メチエ」の創刊や「日本の歴史」などの企画を生み出した。

この本では、企画の発想法から、原稿依頼、校正、タイトル・帯の作成などの編集術から著者との付き合い方にいたるまで、著者の豊富な経験を交えながら触れられている。

*『新版 編集とはどのような仕事なのか』がトランスビューから2014年に刊行されている。

アメリカで英文出版にチャレンジしていた講談社

著者
浅川 港
出版日
2007-05-16

編集者が自分の半生を振り返った本の中で読み応えがあるのが浅川港氏の『NYブックピープル物語』。著者は講談社アメリカで英文出版をしていた編集者。

日本の出版社がアメリカを拠点にして、プラハの春の指導者であるドプチェク氏の回想録などを世界一の出版市場ともいえるアメリカで堂々とオリジナルの新刊で勝負していたというのが驚きだ(残念ながら今は英文出版活動は行われていないのだが)。 

そのような著者のアメリカでの奮闘を見ると、編集者は純粋に、「この人を、この本を世の中に出したい」という志が大事だということが伝わってくる。

アメリカンドリームを描いたノンフィクションとしてだけではなく、日本とアメリカの出版事情の違いなども読み解くことができる一冊だ。
 

本の背後にはそれを生み出した著者と編集者がいる(はず)

著者
ハマザキカク
出版日
2014-09-09

続いてこれも編集者が著者の本。ただ、編集者が書いたといっても、若干異色なのではないだろうか。

著者のハマザキカク氏は、珍書プロデューサーと名乗っていることもあり、一風変わった本を生み出すことの多い編集者。

この本は、毎日、新刊された本をすべてチェックしている著者が100冊の珍書をまとめたセレクション。世の中にこんな本があるのかと驚かされる。

もちろん、その背後には、その本を書いた著者と、編集者がいる(すべてに編集者がいるわけではないのかもしれないが)。

さらに、 章の間に挟まれている珍書を探す秘訣や、どうやって毎日新刊情報をチェックしているかなどをまとめたコラムは編集者の情報収集術としても参考になる。
 

クセのある人とどう付き合うか

著者
鈴木 敏夫
出版日
2014-05-21

自分の好きなことを仕事にするのはなかなか大変だと言われているが、好きであるにはこしたことはない。

編集者の場合、いくら企画や情熱、志があったとしても、著者を見つけ、執筆してもらわないと本として生み出されない。

人に書いて貰うのも大変である。得てして有能な人にはクセがある。

特に本の著者になるような人の場合、物書きを本業にする人も、そうではなく研究や何かの事業の傍らで書く人も、個性的な人が多々あるのではないか。

クセのある人とどのように付き合いながら仕事をするか。その様子が生々しく描かれている。

実はジブリの番頭さんという印象が強い鈴木さんも、昔は徳間書店で編集者をしていた。ご存知でしたか?(結構有名な話?)
 

編集者が登場する小説を探してみると…

著者
恩田 陸
出版日
2001-07-13

編集者が書いた本ばかりここまで紹介してきたが、では作家からみた編集者とはどういったものか。

「本」にまつわる小説も世の中には多くあるが、この本は同題の作中小説「三月は深き紅の淵を」をめぐる連作集。

小説なので楽しみを削いでしまうのを避けるために内容紹介は控えるが、4つの短編の中の1つに二人の女性の編集者が登場する。そのなかの登場人物が語る「物語論」についての一節に、恩田氏の思う物語論や編集者像が伺える。
 

以上、正面から編集者について扱った本を1冊、ノンフィクション1冊、新書2冊、小説1冊の5冊を挙げてみた。この中のどれか一つでも気になったものがあれば、嬉しい限りだ。

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