『ウッドストック』が面白い!隠れた名作バンド漫画の魅力をネタバレ紹介!

更新:2021.11.27

これまで『BECK』や『NANA』といったバンドをテーマにした漫画が世に出されてきました。しかし、電撃が走るほどのROCKとリアリティを追求した作品は、これらだけではありません。今回は、隠れた名作バンド漫画『ウッドストック』の魅力をご紹介します。

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漫画『ウッドストック』が面白い!魅力をネタバレ紹介!

ウッドストックとは、1960年代に開催されたロックンロールフェスティバルであり、4日間で40万人もの人々が音楽に乱舞したといわれています。主人公の楽は、そんな20世紀後半に栄えたROCKを愛しているバンドマンです。

作者の浅田有皆自身、音楽にかなり傾倒しており、作中に登場するアーティスト名や演奏術の知識は、現代のバンドマンのリアルを十二分に表現しています。

1度でも楽器に触れたことのある人や、そうでなくても音楽が好きな人なら、本作を読むことで何か曲を作りたい、伝えたい、バンドを組みたいという気持ちが生まれてくるでしょう。

ライブはアーティストと観客が一体となる世界ですが、バンド漫画もまた、主人公たちと読者の音楽に対する思いが重なる場です。作品の熱気にのめり込むやいなや『ウッドストック』の観客のひとりになってしまうでしょう。

著者
浅田 有皆
出版日
2008-07-09

一般の読者だけでなく、現在活動中の実在するアーティストもまた、本作から衝撃を受けています。

各巻の単行本の帯には、さまざまなアーティストからのコメントが掲載されています。たとえば、1巻の帯にはMONGOL800から「音を出すだけで満たされた。夢を語るだけ笑われた。バンドを始めたあの頃を思い出しました。」、11巻の帯には雅-MIYAVI-から「楽、ギターを壊せ。」などのコメントが寄せられているのです。

少しでも本作が気になって、単行本を買う前に試し読みがしてみたい!という方は、チェックしてみましょう。

漫画『ウッドストック』あらすじ

運送業者として働いている、内気な青年・成瀬楽。一見冴えない男ですが、彼には裏の顔がありました。

それは、世間を心酔させているバンド「チャーリー」の唯一のメンバーであること。チャーリーはネット上における架空のバンドであり、楽はあたかも本当にバンドが存在しているかのようにHP上で振る舞っていたのです。

とあるライブハウスのチーフが、楽がチャーリーのメンバーであると気づき、それをきっかけにメンバーを集めて、チャーリーは本物のバンドとなります。孤独だった楽のバンド活動は、仲間とともにリアルに音楽を届けられるものに変わっていったのでした。

魅力1:音楽に対する姿勢がみんなかっこいい

著者
浅田 有皆
出版日
2008-10-09

 

魅力の1つ目は、バンドメンバーが音楽と真剣に向きあうことで、おのおのの思いを表現しているところです。

本作の主人公でありチャーリーの創始者である成瀬楽は、なによりもバンドを楽しむことに重きを置いています。家庭の事情によりひとりで音楽を楽しんできた彼にとって、バンドメンバーと活動するというのは憧れ中の憧れでした。

ひとりで演奏することと複数人で演奏することのギャップに戸惑ったり、コンテスト当日に緊張しすぎてしまったりと、まだ未熟でブレやすい部分がたくさんあります。

しかし、音楽が好きだからこそ、バンド活動や他バンドの演奏をとおして、「メンバーの音を聴く」「よい音楽に触れる」「ライブを楽しむ」という自分の中にある根幹に気付くことができたのです。

彼の純粋な音楽を愛する気持ちは本物であり、その姿勢を感じ取ったバンドメンバーからも一目置かれています。

新たに加入してチャーリーのドラマーになった新山椎奈は、よい音楽はジャンル問わずに聴く、という姿勢からロックの世界に入ってきた元ジャズドラマーです。

実力派女性ドラマーであるシンディ・ブラックマンを連想させるパワフルな叩きっぷりで、チャーリーの曲を楽の前で披露しました。男性に劣らない迫力を見せながらも、彼女の気質を表しているかのような包容力のある音に、楽は魅了されます。

椎奈とバンドを組みたい、楽にそう思わせたことで、チャーリーは架空バンドからリアルなバンドになることができました。

他にも、チャーリーの曲を聴いたことで自分がやってきた音楽を改め、有名バンドを抜けてしまったベーシストの町田要や、嫌いだった音楽と向き合うことでバンドマネージャーを仕事としている父親とも和解できたボーカルの前田鈴音など、チャーリーをとおして、それぞれが理想とする音楽を実現させていきます。

魅力2:音が聞こえる!演奏シーンが熱い!

魅力2:音が聞こえる!演奏シーンが熱い!

2つ目は、演奏シーンにおける荒々しくもアツい作者の描写力です。

汗が飛び、髪の毛を乱しながら演奏するメンバーの動的な描写や、音楽と魂が共鳴して生まれるオーラのような迫力を放つメンバーの立ち姿に、まるで目の前で演奏がくり広げられているかのような生きた音楽を感じます。

楽器の音を表現した擬音文字は、ただサイズを大きくするだけでなく、形をゆがませることで、絵の中心から漫画の外に飛び出してくるような錯覚を覚えるほど、3Dチックに描き込まれています。

身体の動きと音の描き込みという2つの描写が合わさることで、本作は「音が聞こえてくる」漫画になっているのです。

魅力3:個性的なキャラクラーたちの化学反応で音楽がつくられていく!

3つ目は、登場人物たちの個性的な一面を、さまざまな場面で楽しめることです。

ベーシストの町田はいわゆるKYキャラであり、思ったことはすぐに口に出してしまいます。ボーカルの鈴音も同様に空気を読まない性格を徹底しており、2人が衝突することは1度や2度ではありません。互いに遠慮なしの発言がみられますが、だからこそ生まれる音楽もあります。

1番音楽歴の短い鈴音は、自分の実力不足によってチャーリーの足を引っ張ってしまっていると考え、落ち込むシーンが多々見られるのですが、そんな彼女に対し町田は、

「努力は嘘をつかない、下手は下手なりにマシになってる」(『ウッドストック』4巻から引用)

という言葉を投げかけるのです。嘘もお世辞もないその率直な言葉に、鈴音は勇気づけられるのでした。

また、バンド存続をかけた重要なライブにおいて、鈴音が歌いだしを間違えたり、楽のギター弦が切れて音の不調和が起こったりして、一時演奏が危うくなるシーンがあります。2人が動揺してしまっていた時、椎奈と町田は、こんなところで夢をあきらめてたまるかと、視線を送りあいます。

次の瞬間、ドラムとベースによる即興グルーヴによって演奏は保たれ、楽は町田の音を聴きながらチューニング、ギターソロを即興で演奏することで、チャーリーの音楽は音源とはまた異なったライブバージョンへと姿を変えていきました。

ピンチをチャンスに変え、新たな感動を作り出し、そして最後に鈴音が魅せたパフォーマンスとは……!?個性的な4人が互いを意識することで生み出した、観客を魅了する音楽に目が離せません。

音楽をテーマにした名作漫画を紹介した<おすすめ音楽漫画12選!胸が熱くなる青春!>もおすすめです。

著者
浅田 有皆
出版日
2014-10-09

以上、『ウッドストック』の魅力をご紹介してきました。音楽とは、バンドとはいかに魅力的で奥深いものなのかを実感できる作品です。最近、音楽による刺激が足りていないと感じてしまう方はぜひ本作を読むことで、その心に火を灯しなおしてみてくださいね。

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