漫画『死にあるき』の魅力をネタバレ考察!存在だけで周囲を殺す少女とは?

更新:2021.11.24

ゾクッとする主人公の不気味さに惹かれてしまう『死にあるき』。彼女は何もしていないのに、周りでは次々と人が亡くなっていく……。一体誰が犯人なのか、人が死んで彼女が微笑む理由とは?心地よい気味悪さを一緒に覗いてみませんか?

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『死にあるき』の魅力をネタバレ考察!ミステリーホラー漫画にゾクリ

著者
了子
出版日
2017-07-12

裏サンデー「マンガワン」で連載中の、了子原作によるミステリーホラー『死にあるき』。単行本は2017年7月に待望の1巻が刊行されました。彼女が歩くと人が死ぬ……。それは殺人なのか、事故なのか、彼女の微笑みが意味するものとは、一体何なのでしょうか?

そんな本作においてもっとも読者の目を引くのは、主人公・朱鷺子(ときこ)がまとう不気味さです。血だらけの死体を前にしても眉ひとつ動かさず、独自の価値観を貫いて周囲を惑わす彼女から目が離せません。

今回は、物語の謎を考察すること同時に、作品の魅力も紹介していきます。

漫画『死にあるき』あらすじ

漫画『死にあるき』あらすじ
出典:『死にあるき』1巻

朱鷺子が学校から帰宅すると、養父の黒須時宗が額から血を流して亡くなっているのを発見しました。しかし朱鷺子は時宗の死体には目もくれず、側に落ちていた本を面白そうだと言いながら拾い、笑みを浮かべています。

時宗の訃報に身内らが病院の霊安室に集まり、その死を悼んでいました。しかし朱鷺子はただひとり、養父が亡くなったことに興味を示さず、椅子に座って本を読んでいます。

そこに古河と矢代というふたりの刑事が現れ、事件性を疑い事情聴取をすることに。しかし不思議なことに、ひとりまたひとりと、病院内で次々と黒須家の人間が命を落としていくのです……

あまりにもたび重なる事故に違和感を覚えた矢代は、朱鷺子が犯人という前提で、証拠を掴もうと捜査を始めます。

ネタバレ考察1:死に面しても冷静な少女。願いと対価の関係性?

黒須家の養女である黒須朱鷺子は、身内の死に直面しても取り乱すことなく、まるで他人のように冷静でいられる少女です。彼女は死に対し「人間はいつかは死ぬ」と思っているため、たとえ今死んだとしてもなんら不思議ではないという考え方をしています。

また、家族が死んで悲しいと思うのは残された家族の方で、亡くなった本人は悲しみを感じるわけではないとも言うのです。

刑事や身内のほとんどが朱鷺子のことを犯人だと疑っていましたが、事件としての証拠はまったく立証できず、さらにすべての死は朱鷺子がいない場所で起こっているため、事故としか断定できません。そんななか、姉の美雪だけは朱鷺子を本当の家族のように思い、疑いの目を向けていませんでした。

ひとり、またひとりと身内が事故死して、最後に残ったのはその美雪だけです。しかし彼女は死への恐怖で押しつぶされ、朱鷺子に「あなたのせいじゃない」というメモだけを残し、自殺してしまったのです。

これらの事件は警察だけでなく、研究機関の「未確定現象研究室」でも調査されることになりました。そして研究室側は、朱鷺子は「叶えたい願いのために、呪いを成立させたのではないか」と推測しはじめます。

「解っている中で 最低限呪いを成立させるために必要なものは願望と対価。その内最も強い効力を発揮する対価が生贄です。」
「しかし、あまりにも大きな願望を持っていた場合、生贄が一つでは足りない事もございます。」(『死にあるき』12話から引用)

朱鷺子はすでに願いを叶えられているため、身内の死は対価の回収に該当しているといいます。また身内の死が回収なのだとしたら、彼女の願いがか叶えられた時にも、すでに誰かの死があったはずだと推理されました。そこで思い出されたのが、物語から2年前にあった、朱鷺子の担任教師の死です。

しかしこれらの事件が本当に呪いによるもので、誰がいつ死ぬのかは分からないものだとすると、朱鷺子と仲のよかった姉が最後に残るのは都合のいい話です。また、他の身内が凄惨な事故死をしているのに対し、美雪は1度も危険な目に遭っていません。しかも彼女の死は自殺によるもので、対価とはまったく関係ない可能性もあるのです。

なぜ朱鷺子の周りで事故が起こるのか、その原因は超常現象でも何でもなく、黒幕による連続殺人なのかもしれません。

出典:『死にあるき』1巻

ネタバレ考察2:真犯人は誰?絡まり合う人間関係

 

それでは、死亡事故と朱鷺子の関係性を考察してみましょう。

朱鷺子は事故があった際、その場から離れていたり、事故だったという目撃者もいたりしたため、犯人と疑われる要素はまったくありませんでした。しかし、刑事および身内の目は、朱鷺子を犯人だと疑ってやまなかったのです。それもこれも原因は、朱鷺子の話し方や人との接し方、感情の表し方によるものです。

これまでの死を呪いだとして、超常現象的なものであるとする声も上がりましたが、これらの死に人の手が加わっていないかというと、決してそうではありません。

エレベーターの事故は、リストラされた元社員が細工したことが原因ですし、テーブルの角に頭を強くぶつけた時宗の死も、転ぶ原因があったので、これらに「人の手が加わっている」と言われても否定できないのです。

そうなると、視野が広がってきます。誰かが目的を達成するために、「朱鷺子が怪しまれるような事故死」に見せかけて殺人を犯しているのではないでしょうか。

ここで、誰が1番怪しいのか考察してみましょう。

まず「未確定現象研究室」ですが、これまでの死を朱鷺子の呪いのための対価と考え、それを立証しようとしているので、わざわざか彼女を犯人に仕立てあげる必要があるとは考えられません。特に研究室の名を売るためなどといった印象もうけないので、ここにいる人物が殺人に関わっている可能性は低いでしょう。

もうひとり考えたいのが、この事件を追っている記者の青谷です。彼は、オカルトや超常現象というようなものを一切信じていません。また、事件を調査していると言う割には、美雪に不安を与えるような言動をし、結局はそれが彼女の自殺の引き金となりました。

また記者という立場を利用すれば警察から情報を得ることも可能なので、全体の動きを見るにはもっとも都合のいい立場にいます。

以上の理由から、現時点でもっとも犯人と疑わしいのは青谷なのではないでしょうか。

 

ネタバレ考察3:今までの殺人事件とその要因をおさらい!

著者
了子
出版日
2017-07-12

それでは、これまでの事件とその要因をおさらいしてみましょう。まず、最初に亡くなったのは、朱鷺子の養父時宗です。朱鷺子が第1発見者でしたが、時宗が亡くなったとき彼女はまだ学校にいました。

2人目は、時宗が亡くなって霊安室に親族が集まった後のこと。事件性を疑って事情徴収がおこなわれるとのことで、一族がエレベーターで移動しようとしていました。

なぜかエレベーターの箱が到着していない時点で扉が開き、時宗の孫、里奈が足を滑らせて落下。彼女を助けようとした父も落ちてしまいます。するとエレベーターが突然動き出し、娘は助かったものの父親は挟まれて死亡しました。

3人目は、あまりにも冷静な朱鷺子の態度に怒り手をあげてしまった春香が、朱鷺子に謝りにいった時のこと。自分で自分の靴紐を踏み、階段から落下して死亡しました。ここまで病院内で立て続けに2人亡くなっています。

4人目の黒須絹江は、ネジが外れて落下してきたエアコンの室外機の下敷きになって死亡。5人目の黒須彩子は電車に跳ねられて即死しました。

6人目は朱鷺子を刺し殺そうとした黒須貴仁です。朱鷺子の血に足を滑らせて転んだ際、上を向いた包丁の刃で自分を刺してしまい、死亡します。

そして7人目は黒須里奈。母の訃報を聞き、刺されて入院している朱鷺子のもとを訪れた後に行方がわからなくなっていました。しかし13話で、ある民家で発見された遺体とともに、里奈の遺体も発見されています。

最後は、里奈の死にショックを受けた美雪です。彼女は朱鷺子に「あなたのせいじゃない」というメッセージを残し、自宅で首を吊って自殺しました。遺書と朱鷺子への手紙があったこと、遺産相続の手続きの書類が同封されていたこと、手続きをした銀行員が美雪のこと覚えていたこともあって、すぐに自殺と断定されました。


朱鷺子を不気味だと思いつつも、なぜか惹かれていく『死にあるき』。スマホで読める漫画アプリ「マンガワン」で連載中なので、気になったらチェックしてみてくださいね。

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