『蒼い世界の中心で』の擬人化が面白いw 魅力をネタバレ紹介!

更新:2021.11.25

1980年代のゲーム大戦期をテーマに、ゲーム業界のシェア争いを描いた『蒼い世界の中心で』。ゲームソフト名およびゲームキャラなどを擬人化した作品です。セガを視点としながらも、各ゲーム業界の苦悩、ゲーム好きも惹かれる裏事情が垣間見れます。

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『蒼い世界の中心で』の魅力ネタバレ紹介!

著者
["クリムゾン", "アナスタシア・シェスタコワ"]
出版日
2010-05-28

『蒼い世界の中心で』は、アナスタシア・シェスタコワ原作による、各人気ゲームを擬人化したファンタジー漫画です。ゲーム好きな方には、一目瞭然だろうとは思いますが、この作品は各メーカーのゲーム自体が擬人化されているので、国やキャラの名前や容姿が微妙に変更されています。

たとえば、ニンテルド帝国は任天堂、セグア王国はセガ、スロヴィア王国はスクウェアといったものから、主人公ギアの通称は青い音速ということでソニックを、ハビド共和国のキチョウは、ハドソンの桃太郎伝説の桃太郎をモデルとしているのです。

所々にキャラクターの解説が挟まれているので、ゲームの元ネタを想像しながら読んでみるというのも、この作品の面白さでもあり、家庭用ゲーム機やソフトの歴史を垣間見ることも出来ます。

簡単に言ってしまえば、1980年代のゲーム機大戦を、そのまま漫画にしたということなんですね。もともとは、webマガジン「レッドロード」で掲載されていた漫画で、さらに加筆したものが単行本となり、2017年現在は、10巻まで刊行されています。

 

『蒼い世界の中心で』は1980年代のゲーム世代にはたまらない!【あらすじ】

『蒼い世界の中心で』は1980年代のゲーム世代にはたまらない!【あらすじ】
出典:『蒼い世界の中心で』1巻

蒼い瞳のセグア王国と、赤い瞳のニンテルド帝国との、争いが絶えないコンシューム大陸の戦乱。セグア国出身のギアは、父親と一緒に戦火を逃れ、小さな村に疎開していましたが、その村もニンテルド帝国に襲撃され、ギアと友人のティル、ネルの3人だけが生き残っていました。

しかし、再び村にニンテルド帝国の兵士がやってくると、捕らえられたネルを助けようと、ティルが対峙するも、剣で一突きされ殺害されてしまったのです。それを見たギアは、自分を奮いたたせて立ち向かい、超速で兵士を片付けてネルを救出しました。

この一件でギアは、ニンテルド帝国への復讐を決意し、ネルと共にセグア軍へ志願しようと王都へ向かったのです。

 

『蒼い世界の中心で』の魅力をネタバレ紹介!ゲーム機戦争時の苦労が物語として見える

まず、この作品の背景として見えてくるのは、1980年代のゲーム機大戦です。1975年に日本初の家庭用ゲーム機が登場してから、現在までのゲーム機争いの歴史を描いています。先ほど紹介したように、ニンテルド帝国は任天堂、セグア王国はセガと各ゲームメーカーがそれぞれの国に例えてられていますが、任天堂は、1980年代にファミリーコンピューターを発売させてから、ゲーム界の王者として君臨していました。

各王国を征服し支配しているのを帝国と呼ぶことから、ニンテルドが帝国となっているのはいうまでもありません。長い間、シェア争いをしてきたゲーム界ですが、登場するキャラの発言や、そのストーリーから当時の苦悩が垣間見ることができます。

この作品では、セグア王国(セガ)を中心に、主人公もセガのゲームに登場する、ソニックがモデルになっています。当時、セガという名前は知っているのに、なぜメジャーになれなかったのか、なぜ任天堂を超えられないのか、そんな苦悩がキャラの発言や戦況から、ひしひしと伝わってくるのです。

80年代は、ゲームを出せば売れるというまさに、ゲーム界にとって黄金時代でした。任天堂もスーパーファミコンを発売し、高額ながらも世間で人気を博し、まさに天下を築いていました。一方セガは、スーパーファミコンより先に、メガドライブで起死回生を狙うも惨敗。

コントローラーが使いにくいのにゲームは難しいという理由もあって、万人受けしなかったのです。しかし、海外および一部の「セガ信者」と呼ばれているユーザーもいたことから、セガはこの先も進み続けました。

著者
["クリムゾン", "アナスタシア・シェスタコワ"]
出版日
2010-08-30

1巻でのギアとロルグ国の傭兵テジロフの会話のなかでは、その思いと戦況が表されています。テジロフが、ギアがどれだけの力を持っているのかを、試そうとしたときのシーンでのことです。

テジロフ「お前 オレをナメてるだろ?」(『蒼い世界の中心で』1巻から引用)

このセリフは、「出せば売れる」と、甘い考えで挑んだセガ側のことを示唆しているのでしょう。

テジロフ「見せてもらおうか 入隊1日目で特殊部隊に選ばれたという その力を…速い…!だけど…止まっちゃうんだよな…!これが・・・!」(『蒼い世界の中心で』1巻から引用)

売り出してすぐに勢いを見せたものの、伸び悩んだことを示しているセリフですね。ただセガは、ここで諦めたわけではないことが、この後のギアの言葉に現れています。

ギア「オレは最初からゴールにいるわけじゃない オレが誓ったのは ゴールまで「走り続ける」こと…! たとえ…何度つまづいたとしても・・・!」(『蒼い世界の中心で』1巻から引用)

最後まで、諦めないセガ側の苦悩と心情が、分かりやすく表現されています。どうやったらセグアはニンテルドを越えられるのかを試行錯誤することで、物づくりの大変さをキャラを通してうまく伝えています。

『蒼い世界の中心で』の魅力をネタバレ紹介!王道バトルと解説で当時を知らなくても面白い!

『蒼い世界の中心で』の魅力をネタバレ紹介!王道バトルと解説で当時を知らなくても面白い!
出典:『蒼い世界の中心で』1巻

『蒼い世界の中心で』は、ゲーム大戦当時を中心とした物語で構成されていますが、当時を知らない方には、わからないんじゃないかという不安もあるかと思います。しかし、ゲーム大戦が、というより、ひとつのストーリーとして成立している作品なので、特別な知識や歴史を知らなくても、まったく問題ありません。

主人公が、復讐のため敵に立ち向かい、圧倒的勢力を前に苦悩しながらも成長していくという王道ストーリーで、所々には、各キャラが紹介されていたり、これから何をしようとしているのか、戦況が今どうなっているかなどの、詳しい説明もされているので、読み進めていくうちに当時のゲーム業界がどうであったのかも、分かりやすく説明されているのです。

 

また、不定期で掲載されているコラム「蒼い世界の隅っこで!」では、キャラの裏情報を紹介したり、裏ネタも解説されているので、当時を知っている方はもちろん、知らない方にも楽しんでいただけるような小細工がギッシリ!

たとえば、キャラの年齢や特技、名場面ランキングだったり泣けた場面だったりと、アンケートによる読者からの質問回答、コミックスの情報や限定版、イラストなどの裏情報がお楽しみいただけるようになっており、ぜひチェックしてみてください!

 

 

 

『蒼い世界の中心で』の魅力をネタバレ紹介!セガ好き必見!帝国ニンテルドを倒せるか!?

『蒼い世界の中心で』の魅力をネタバレ紹介!セガ好き必見!帝国ニンテルドを倒せるか!?
出典:『蒼い世界の中心で』1巻

この作品は、セガ側を軸とした視点で描かれているので、セガ信者にはたまらない作品ではないでしょうか。王者として君臨している任天堂を、あえて帝国として描くことで、セガが置かれている立場との距離感や、帝国にどれだけの勢力があるのかを表現しています。

また、ニンテルド帝国が一方的に悪者として描かれているわけではなく、次第に群像劇に移行していきます。それぞれ独立した描写もあることから、一見バラバラなストーリーに見えるものでも、同一の世界観として描かれているので、全体を通してひとつのストーリーが成り立っているわけです。

また、セグア側の失敗やおごりなど、自らの失態も認めたうえで、どうやったら自分たちも勝ち越せるのか、どうしたらニンテルド帝国を打ち倒せるのか、セガファンからすると、その裏事情までが読み取れるのも嬉しい限りですね。

こういった「もがいている姿」が、セガファンの心掴んだのでしょう。任天堂が多くのゲームを発売する中、たとえ戦略ミスをしたとしても、諦めずに一歩ずつ前に進もうとするセガに、ファンは他のゲームを渇望したとしても、セガを手放すことが出来ませんでした。最後は、ニンテルドを倒してほしい!と、きっと多くのセガ信者がそう願っていたことでしょうね。

『蒼い世界の中心で』の魅力をネタバレ紹介!登場人物たちの癖が強すぎるw 下ネタ大魔王も

著者
["クリムゾン", "アナスタシア・シェスタコワ"]
出版日
2011-03-03

『蒼い世界の中心で』に登場するのは、個性的で癖の強いキャラクターが多いことで知られています。すべて、ゲームのキャラをもじったものですが、ここではその一部を元ネタとともに紹介していきます。

【ギア】

先ほども紹介したとおり、セガを代表するキャラクターであり、青い音速と呼ばれているソニックです。ソニックは世界最速のハリネズミですが、見た目でソニックの名残があるのは頭のチクチクだけ。ギアという名前は、ゲームギアからとったようですね。

【ネル】

ギアの妹のような存在であるネルは「ファンタシースター」に登場するネイが元ネタとなっています。耳が尖っているのも同じだし、主人公に拾われたという設定も同じ。また、ネイはセガファンにとっても、アイドル的な存在でもあったようです。

【テジロフ】

北の方の国から来たという傭兵テジロフは、テトリスが元ネタでテトリスの作者アレクセイ・パジトノフとテトリスをもじったようなネーミングで、かなり癖の強いキャラです。もはや作中の問題児という存在。テトリスは、落ちてくる長い棒をうまく穴に重ねるゲームですが、それがそのままキャラの性格として、エロ方面で使われているので、下ネタが満載なのです。登場時、いきなり下ネタ、そして指を使った解説にも下ネタ。

テジロフは、セグア王国からニンテルド帝国へと移っていくのですが、これもゲームのテトリスとおなじです。テトリスは当初、任天堂より先に、セガがアーケード版をリリースしましたが、翌年に任天堂がテトリスを一括管理していたELORGと、独占契約を結んでしまったので、セガは発売中止を余儀なくされたのです。テジロフも同じように、セグアからニンテルドへと移行しているんですね。実に細かい設定までされています。

【炎帝マルクス】

コンシューム最強の男との異名を持つ、ニンテルド帝国の帝王マルクス。額のM字から、すぐにおわかりになって頂けるでしょうが、あの「スーパーマリオ」が元ネタとなっています。配管工から一代で帝王成り上がった男で、ヨッシーに似たトカゲに乗っているのです。また、剣の柄にはマリオシリーズには欠かせない、スーパーキノコが使われています。もちろんマルクスの弟グリージは、額にL字があるルイージが元ネタで、特徴である髭も健在。

【ゼリグ】

ニンテルド側の主人公的存在のゼリグは、「ゼルダの伝説」が元ネタです。コンシューム大陸一の天才で、首から下げているペンダントがトライフォース。

このほかにも、ニンテルド城が、白と赤、黒の十字のコントラストになっているのはファミリー・コンピューターだったり、セグアの首都オウトリーはセガの本社がある大鳥居、ニンテルド軍の将軍カーヴァイは星のカーヴィなど、細かいところも想像しながら読んでいくのも面白いですね。

ほんの一部を紹介しましたが、とにかく個性豊かなキャラクターで溢れた作品です。中には、誰だこれ?って分かりにくいキャラもいると思いますが、作中での解説を元に楽しんでいただければと思います。

漫画『蒼い世界の中心で』を読んでみよう!

著者
["アナスタシア・シュスタコワ", "クリムゾン"]
出版日
2013-04-30

1980年代のゲーム機戦争が元ネタのバトル漫画の本作。知っているマニアにはたまらない、そしてその時代を知らない世代も裏話的な解説や王道のストーリーで誰しも楽しめる内容となっています。

また、作者曰く、この作品は戦争を描いた作品ではあるものの、もっと狭い人間ドラマを描いたものだそう。だからこそモデルはセガや任天堂などのゲーム業界のことであれど、誰しも感情移入して熱くなる作品に仕上がっているのでしょう。

ぜひその魅力を作品本編で味わってみてください!本作はウェブ上でも読むことができますが、加筆修正された単行本版の方が作者も言っているようによりきれいに、見やすくなっています。なので本で見る方が、より絵柄などを気にせずに作品に没頭できるかもしれません。

 


いかがでしたか?ゲーム大戦の歴史を反映したストーリーと、個性豊かなキャラクターたちが魅力な『蒼い世界の中心で』。知らなかった方はぜひ一度、その歴史に触れてみてはいかがでしょうか。

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