米澤穂信おすすめ文庫ランキングトップ5!読みやすいミステリー作家代表!

更新:2021.12.13

推理小説やミステリーというと小難しいイメージもありますが、米澤穂信作品のその読みやすさには定評があります。そんな彼の珠玉の「青春ミステリー」をランキング形式でご紹介いたします。

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ライトなミステリーから本格ミステリーまで鮮やかに描く米澤穂信

米澤穂信は1978年生まれ、岐阜県出身の小説家です。

2001年に『氷菓』で角川学園小説大賞ヤングミステリー&ホラー部門奨励賞を受賞してデビュー。同作を含む「古典部シリーズ」は京都アニメーションによってアニメ化され、アニメファンの間でも人気になりました。

「古典部」シリーズ、「小市民」シリーズといった、ライトなミステリーを手掛ける一方、本格ミステリーにも挑戦。2010年発表の『折れた竜骨』で日本推理作家協会賞を受賞、2014年発表の『満願』では山本周五郎賞を受賞するなど高い評価を得ています。

5位:米澤穂信が描く無関心な殺人

本作は5つの物語から成る短編集です。どの物語にも、「バベルの会」というお嬢様たちが集う読書サークルが出てきます。それぞれの物語に話のつながりはなく、一話ずつテンポよく読み進められます。

物語の語り手はすべて女性、そして「殺人」が絡んでいます。それは狂気を伴った殺人や憎悪の絡んだ殺人ではなく、無関心な殺人です。
 

著者
米澤 穂信
出版日
2011-06-26


中でもおすすめしたいのが「山荘秘聞」という一篇。別荘の管理人である女が別荘に人がこないことを不満に思う最中、遭難した青年を見つけ、彼を地下室に幽閉します。そして彼の救助隊を歓迎しますが、肝心の遭難者は見つからず、彼らは引き返して行きます。

その後、青年の存在に気付いた別の女に対して「煉瓦のような塊」を持ちだして口を塞ぐのですが、その表現の意味するところがなんとも深いです。

ひねりが効いていて、ホラーも楽しめ、異質な世界をのぞいてみたい方におすすめの1冊です。

4位:ミステリー初心者におすすめ!学園を舞台にサクサク謎解き

文化系の部活動が盛んなことで有名な進学校、神山高校で「古典部」という部に入部した男女4人が、学校生活の日常の謎に挑むシリーズです。主人公であり探偵役でもある折木奉太郎が本シリーズの語り手となります。
 

著者
米澤 穂信
出版日
2001-10-31


シリーズ第一作の「氷菓」では、折木と共に入部した千反田えるの叔父であり、かつての古典部部長が残した古典部の文集「氷菓」にまつわる謎を解き明かしていきます。

33年前、神山高校で当時の校長の方針により、文化祭を縮小しようとする動きに生徒達が反発し、そのリーダーとして反対運動を展開したのが、「える」の叔父である関谷純だったのです。結果として文化祭は縮小されずに済んだのですが、文化祭の後に関谷純は退学になります。それが文集のタイトル「氷菓」の真の意味「I scream(アイスクリーム)」に繋がっていきます。

分量も少な目で、内容もわかりやすく、推理の説明はとても丁寧。普段ミステリーを読まない人でも気軽に手を出せる作品だと思います。

3位:甘くて癒される、女性におすすめの軽やかミステリー

登場するのは小鳩君と小左内さんという、どうってことのない一般市民「小市民」を目指す二人の高校生です。二人は恋愛関係や依存関係ではなく、互恵関係「戦略的なパートナー」を目指しています。本作はそんな二人の日常に起こる些細な謎を解決する青春ミステリーです。

シリーズのタイトルには「いちごタルト」「トロピカルパフェ」といったスイーツの名前がついており、そのタイトル通り、小左内さんが小鳩君をスイーツの食べ歩きに誘うなど甘い一面もあり、軽いタッチで描かれています。
 

著者
米澤 穂信
出版日
2004-12-18


シリーズ第一弾の「春季限定いちごタルト」は5作の短編で構成されており、それぞれが独立したストーリーのように見えますが、読み進めると連なった長編として解決編へと繋がっていきます。

収録作品のひとつ、「おいしいココアの作り方」では友人健吾から一手間かけたおいしいココアが振る舞われるのですが、ココアを作ったキッチンのシンクが乾いており、ココアを溶くのに使ったスプーンしかなく、健吾が如何にして「おいしいココア」を作ったのかが謎解きのテーマとなります。

何とも日常感漂う事件の数々、肩肘はらずに読めるのですが、そこここに張り巡らされている伏線とその回収の方法は見事です。

始まりから最後まで、可愛く柔らかい空気を楽しみつつ、テンポのよい謎解きが繋がっていく心地よさを味わって下さい。

2位:どんな時代でも共感を得られる、チクッと胸が痛くなる異色の青春小説

ユーゴスラビアから来た少女と高校生たちの交流を描いた青春小説です。

ある雨の朝、主人公の守屋は外国人の少女マーヤと出会います。行くあてのない彼女は同級生の家が営む旅館に住むことになり、そこから彼女との交流が始まります。

外国人が見せる大人びた言動や母国に対する考え方は、平和慣れしてしまっている日本の高校生にはとても新鮮で、彼女を通して守屋たちの心の変化を感じることができます。
 

著者
米澤 穂信
出版日
2006-06-10


マーヤはやがて、紛争の起こる母国ユーゴスラビアに帰国するのですが、そこからこの物語の謎解きが始まります。内紛によりユーゴスラビアは分裂しており、マーヤがどの国に帰ったのかがわからないのです。最終的にマーヤとの会話をヒントに彼女の居場所を探し出すのですが、そこでマーヤの故郷から手紙が届いていた事実が判明し……。

最後に訪れる、何ともやりきれない、胸がギュッと締め付けられる真実。物語を通して散りばめられた伏線の張り方や、それを解決する様も非常によくできていて完成度の高さを楽しめると同時に、心に響く甘く切ない小説です。

1位:米澤穂信の最高傑作!外れのない短編集!

山本周五郎賞受賞作である本作は米澤穂信作品の最高峰とも言えるでしょう。

「夜警」「死人病」「柘榴」「万灯」「関守」「満願」の6篇から成る本作は、交番勤務の警官やサラリーマン、中学生姉妹、フリーライターなど、日常に生きる人々に起こる奇妙な出来事が描かれています。
 

著者
米澤 穂信
出版日
2017-07-28


表題作「満願」は、主人公である弁護士・藤井が学生時代に下宿していた大家の妻・妙子が殺人罪で問われ、その事件の弁護を引き受け、真相を追うというサスペンスストーリーです。

妙子が殺したのは借金を抱え派手に遊び歩く夫・英司。正当防衛による殺害であると主張し妙子の弁護を行う藤井でしたが、裁判所からは夫の借金から逃れるための犯行と判断され、実刑を免れることはできませんでした。

しかし、その殺人に隠されていた本当の意味は全く別のところにあったのです。

どの作品も表向きの出来事とは異なる真相が隠されており、その意外性や、何気ないヒントから真実にたどり着く過程が非常によくできています。

青春小説から出発した米澤穂信ですが、本作では大人の心理や思考がしっかり描かれており、深みのある大人も満足の作品に仕上がっていると言えるでしょう。

以上、5作品を紹介いたしました。今の気分にハマるミステリー作品があったのではないでしょうか?気軽に読める米澤穂信作品、是非読んでみてください!

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