漫画『となりの外国人』があったけぇ。安心、安定の人情コメディ

更新:2021.11.11

日本かぶれのイタリア人マリオと、その隣に暮らす家族との交流を描いた『となりの外国人』。心温まるほっこりエピソードをご紹介しましょう。

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漫画『となりの外国人』の魅力をネタバレ紹介!

あなたの住む家の隣に外国の方が引っ越してきたら、どうしますか?文化や風習が異なるので、仲良くできるか心配になることもあるかもしれませんね。

そんな不安を吹き飛ばす、陽気でハートフルな近所づきあいを描いたのが『となりの外国人』です。

下町情緒あふれる日本家屋が立ち並ぶなかで、平凡に暮らす4人家族の吉田家の隣に、日本文化が大好きなイタリア人のマリオが引っ越してきました。

その日から、吉田家とマリオのご近所付き合いが始まります。マリオの時代劇で覚えた江戸っ子のような珍妙な話し方や、日本文化や風習を積極的に楽しもうとする姿勢に、吉田家の面々がしだいに巻き込まれていくのです。

著者
宮本福助
出版日
2012-12-13

作中では、若干強引で図々しい一面も見せるマリオですが、イタリア人特有の陽気さと軟派なイメージも手伝ってどこか憎めない魅力があります。

彼に振り回される吉田家の面々も、迷惑をかけられながらも交流を楽しんでいる様子にほっこりするでしょう。ご近所付き合いが廃れてしまった現代の日本で、まるで「サザエさん」のようなご近所付き合いが描かれ、心温まる人情エピソードが展開されます。

今回はそんな本作の見どころを、印象的なエピソードとともに紹介していきます。ネタバレを含むのでご注意ください。

『となりの外国人』あらすじ

『となりの外国人』あらすじ
出典:『となりの外国人』1巻

古い日本家屋が立ち並ぶ一角に、吉田家は父母姉弟の4人で暮らしていました。そんな彼らの隣にある日突然、江戸っ子のような日本語を流暢に話す、イタリア人のマリオが引っ越してきます。

マリオは日本文化が大好きで、日本で暮らすためにイタリアを飛び出してきたとのことでした。

吉田家の面々は、そんな彼の陽気さと甘え上手な一面を気に入り、家族ぐるみの近所付き合いをはじめるのですが、突飛な行動で迷惑をかけられることもしばしば。

それでも、日本の文化と風習を積極的に楽しもうとするマリオに、吉田家だけでなく近所の人々も好感を抱いていくのです。

『となりの外国人』名エピソード1「白い悪魔=MOCHI」

『となりの外国人』名エピソード1「白い悪魔=MOCHI」
出典:『となりの外国人』1巻

外国人が日本に来てもっとも衝撃を受けるのは、食事ではないでしょうか。本作でも、マリオが日本食に感激するエピソードがあります。

彼が心を奪われた食材は、「お餅」です。

マリオが餅に興味を抱いたのは、毎年何人もの老人が餅を喉に詰まらせて窒息死に至る、というニュースを見たのがきっかけでした。餅のことを「白い悪魔」と呼び、その恐ろしさを実際に食べて体験してみたいと感じたそうです。

彼を通じて、外国の人が日本に対して抱くある意味過剰な先入観や、憧れ、期待感、また食に対する考え方の違いをコミカルに描いていて、印象的なエピソードに仕上がっています。

吉田家で催されたマリオの引っ越し祝いでの席で、彼は餅と初めて対面することになります。そして、怪訝な表情を浮かべながらも、「南無三」と言って餅に食らいつくのです。

マリオは喉に詰まらせずに無事に食べることができるのか、それとも餅が「白い悪魔」として牙を向くのか。気になる実食の様子は、ぜひご自分の目で確かめてみてください。

著者
宮本福助
出版日
2013-12-12

『となりの外国人』名エピソード2「お化け屋敷で……」

日本に滞在する外国人あるあるのひとつとして、ジメっとした暑さで夏バテをしてしまうことがあげられるそうです。

マリオも例外ではなく、日本の夏の暑さに耐えきれず、元気がない様子。そんな彼を見かねた吉田家の父・真一は、一家全員とマリオを連れて、お化け屋敷に涼みに行くことにしました。

しかしマリオはすでに日本の怪談をいくつか知っていて、それらの怪談を聞いても恐くないと、入る前からナメています。一方そんな彼とは対照的に、吉田家の姉・桃は怖いものが苦手で、お化け屋敷に入るのを嫌がりました。

しかしマリオは桃に対し、2人で入ろうと強引に引きずって入場してしまうのです。紙で作った手錠をつけられたマリオと桃は、手錠を破ることなく2人一緒に脱出することができるのでしょうか?

 

暑さを紛わすために怖い話をしたり、お化け屋敷や心霊スポットの恐怖体験で涼むという発想は、日本独自のものなのかも気になりますね。
 

 

『となりの外国人』名エピソード3「お祭りで大和撫子」

『となりの外国人』名エピソード3「お祭りで大和撫子」
出典:『となりの外国人』1巻

 

日本の夏といえば、お祭りに花火!もちろんそれだけではなく、「ひと夏のアバンチュール」と言うくらいなので、恋に活発になる季節でもあります。日本かぶれのイタリア人であるマリオも、例外ではありませんでした。

彼は吉田一家と一緒に、花火大会に訪れます。みんなで浴衣を着て出店で賑わう会場を散策する描写は、まるで祭囃子や人混みの喧騒が聞こえてくるよう。マリオも子供のようにはしゃいでいました。

思わず駆け出そうとした瞬間、マリオが履いている草履の鼻緒が切れてしまいます。困っていると、そこに浴衣姿で凛とした佇まいの涼やかな美女が声をかけてきました。

慣れた手つきで草履を修理してくれる美女に、マリオの目は釘付け。顔も上気しています。なんだか時代物を描いた少女漫画にありそうな展開なだけに「乙女か!」とツッコみたくなりますが、これがまたいいのです。

完全に一目惚れしてしまったマリオは、あとを追って人混みの中を走り出しました。恋に夢中になって周りが見えなくなる情熱的なところは、さすがイタリア人と言わざるをえません。

そして辿りついたのは、あるイベント会場。先ほどの美女はステージの上にいます。

果たしてマリオは、偶然出会った理想の大和撫子とお近づきになれるのでしょうか?そして彼女の正体は……

淡いひと夏の恋の行方を、ぜひ確かめてみてください。

 

日本に滞在する外国の方の気持ちを知ることができるいい作品です。読後は、彼らにいつも以上に優しく接することができるのではないでしょうか?近所に外国の方がが住んでいる人には、ぜひ読んでいただきたいです。

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