『戦国妖狐』が面白い!キャラの魅力を2部までネタバレ紹介!

更新:2021.11.27

人間のかたわらに魑魅魍魎が当たり前のように存在し、いがみ合う世界を描いた『戦国妖狐』。本作の魅力のひとつが、登場人物の奥深さです。そこで今回は、主要人物たちを掘り下げながらご紹介していきます。

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『戦国妖狐』が面白い!キャラの魅力をネタバレ紹介!

2007年から「月刊コミックブレイド」で連載を開始し、その後場所を移しつつ2011年に完結した水上悟志の『戦国妖狐』。自分よりも圧倒的な力をもつ敵と戦い、成長していく王道の少年漫画でありつつも、人が持つ心の闇や冷徹さにもしっかり焦点をあてている作品です。

最後には希望をみせてくれますが、ダークサイドに落ちていく人の業には心を揺さぶられずにはいられません。 

本作は大きく分けて2部構成となっていて、第1部は妖狐とともに旅をする仙道を主人公に、闇(かたわら)とよばれる妖怪のような存在と人間の関係が描かれます。第2部では千もの闇を宿した少年を主人公に、与えられた「力」に対してどう接していくのか、成長が求められる展開が待ち受けています。

この記事では、1・2部あわせた主要キャラクターの魅力をご紹介していきましょう。ネタバレを含むのでご注意ください。

水上悟志のおすすめ作品を紹介した<水上悟志おすすめ漫画ランキングベスト5!SFからファンタジーまで楽しめる>もあわせてご覧ください。

著者
水上 悟志
出版日
2008-08-09

『戦国妖狐』あらすじ

『戦国妖狐』あらすじ
出典:『戦国妖狐』1巻

時は永禄、将軍・足利義輝の時代を背景にしつつも、人間とは別に闇(かたわら)という存在が跋扈している世界が舞台です。闇とは魍魎・亡霊・変化・人外の総称のことで「傍らに在る者」という意味から「かたわら」と呼びます。妖怪や幽霊をイメージするとわかりやすいでしょうか。

また人間に害を及ぼす存在となると「障怪(さわり)」と呼ばれることもあります。

戦国の荒廃した空気がただよう世の中で、妖狐の少女・たまと、仙道の少年・迅火は世直しと称して旅をしています。その道中で出会った武芸者、兵頭真介を供に加え世の中の平和、ひいては人間と闇の共存を目指して戦いを続けるのが第1部のメインテーマです。

第2部では闇化してしまった迅火を本来の彼に戻すために、奮闘するたまや真介を描きながら、もうひとり、己を見失いかけている少年・千夜を軸に物語が進んでいきます。人間として生きるのか、闇として生きるのか、あるいは両者を超越した存在になるのか……彼が選択する道に要注目です。

『戦国妖狐』登場人物:迅火

第1部の主人公。「不死鳥殺し」の異名をもつ仙人に鍛えられ、登場時から高い戦闘能力を発揮しました。

彼の使う術は「精霊転化」と呼ばれるもので、たまから血と霊力を提供してもらい半闇状態となります。提供者によってその姿は変わり、迅火の場合は狐のような耳と尾が生え体から霊力を発しているような姿になります。もともとの棒術の腕に加えて、尾からくり出される技の数々は強力です。

幼いころから闇を友として育てられ、闇に対してはとても甘い対応をする反面、かつて友である闇が人間に殺されたことから異常なまでに人間を嫌っています。たまの存在もあって、ゆくゆくは人間をやめ完全な闇となりたいと願っているのですが……。

この願いの強さが破滅への始まりでもありました。

強敵との数多の戦闘を経るうちに、覚醒とも呼ぶべき進化を遂げていきます。最初は四本だった狐の尾もどんどん増えていき、ついに九尾に到達。その結果、迅火自身にも制御できない、際限なき霊力の暴走が生じてしまいました。

完全なる闇になり、地涸らしの神獣「千本妖狐」として最終戦でたまや真介、千夜たちの前に立ちはだかることとなるのです……。

『戦国妖狐』登場人物:たま

著者
水上 悟志
出版日
2009-02-10

 

第1部のヒロイン。見た目は幼女ですが、その正体は200年以上の時を生きる妖狐の女の子です。迅火とは反対に人間が好きで、彼が人間に対して毒を吐くのを止める役割も務めています。

人間と闇が共存していける世界を目指して世直しの旅をしており、人間であれ闇であれ、非道をおこなうものには容赦をしない正義感があります。
 

しかし生贄を必要とする場面では、犠牲を払うことも厭わない冷徹さも垣間見せ、 命に対する明確な線引きを持っている人物でしょう。

迅火が「精霊転化」をすると、彼女自身は人に近い存在となってしまうため、1部ではほとんど戦闘に参加することはありませんでした。しかし2部では新たに身につけた木の葉を使う幻術で、妖狐の名に恥じない戦いを見せてくれます。

また2部では姿形も成長しているので、ケモ耳好きの読者はご期待ください。

 

『戦国妖狐』登場人物:真介

著者
水上 悟志
出版日
2010-04-10

 

本作中でもっとも成長したといっても過言ではない少年です。威勢が良いにもかかわらず、実はビビりの臆病者。1話目にして夜盗相手に逃げ腰になり、母親に助けを求めるヘタレッぷりを発揮していました。

しかしその心根は曇りなく、弱者のために涙を流すことのできる、人間として称えられるべき一面を持っています。それには彼の出自も関係していました。

「虐げられるのは弱いからだ 弱い奴には生きてる価値なんてねえんだ だから強く偉くなりてえんだよ」(『戦国妖狐』1巻から引用)

「農民」の彼が涙を流しながら訴える姿に、どこか男らしさを感じます。

一方で、情に厚い彼だからこそ、憎悪という感情に囚われやすいのかもしれません。真介は作中一成長した男ですが、作中一ダークサイドに落ちた男でもあるのです。

大切な仲間を凶刃から守れなかったことで、剣士として一皮むけはしましたが、瞳には憎しみが宿り、まとう雰囲気は陰鬱に。初登場時のヘタレっぷりは鳴りを潜め、痛々しいまでの変わりようなのです。

ただ「弱者のため」という心根だけは変わらず、2部では闇の魂の本質に気付き、人間と同じように闇とも友好的な関係を築き上げていきます。また意思をもつ刀「霊刀」と語り合い、剣士としても一級の成長を遂げました。

たまが目指す人間と闇の共存を、真介なら叶えられるのではないかと期待できます。

 

『戦国妖狐』登場人物:千夜

著者
水上 悟志
出版日
2011-08-10

 

第2部の主人公。体に宿る千の闇たちを具現化させる戦闘スタイルで、こと霊力の強さにいたっては、力づくで彼らを支配下に置くことができるほどです。しかし彼にその意思はありません。

人間を捨て闇となることを求めた迅火とは異なり、千夜は力(闇)を捨て人間として生きる道を模索しています。しかしその過程で「千界の宝玉」と呼ばれるほどの霊力が己の身の内にあることに気付き、力を捨てるのではなく闇と和解する道を選びました。

その結果、迅火と同じく覚醒とも呼べる能力が開花します。そして迅火が為しえなかった力の制御に成功し、千本妖狐との戦いにおいては主人公の名にふさわしい活躍をとげました。

「力」というものにどう接するのか、読者に徹底的に訴えかけてくる存在です。

 

『戦国妖狐』登場人物:月湖

著者
水上 悟志
出版日
2013-06-10

 

第2部のヒロイン。なんと人と闇が普通に共存している村の出身で、剣術における天賦の才能があり、千夜や真介をも圧倒します。

それでもなお彼女は、千夜を守るための力を渇望するのです。

敵の襲撃から父親を守ることができなかった月湖は、真介の剣の腕を見込み、彼と千夜の旅に同行。「剣聖」とも呼ぶべき力を手にしましたが、それでも父を殺した敵にはかないませんでした。さらなる力を求め、仙術の修行にも乗り出します。

月湖がこんなにも力を欲するのは、すべて千夜のため。一途な気持ちをどこまでも真っ直ぐ持ち続けていて、読んでいるこちらが赤面してしまうほどです。その分恋のライバルには不穏な感情をのぞかせるところもあり、目を離せない人物でしょう。

 

『戦国妖狐』登場人物:灼岩

著者
水上 悟志
出版日
2009-11-10

 

第1部に登場し、迅火たちの旅路に同行する少女です。ただの村娘でしたが、霊力の素質と忌み嫌われる赤髪のために村に居場所がなく、闇との融合を試みる実験体として父親に売られてしまいます。

実験により火岩という闇をその身に宿しましたが、力が安定せず暴走。なんと故郷の村人たちを皆殺しにしてしまうのです。その後あてもなく彷徨っていたところを、迅火たちに救われました。

暴走後は火岩との対話を試み、お互いを尊重して力を存分に発揮できる仲となります。この経験は後に千夜が生かすことになるので注目です。

迅火や真介とともに旅をすることで居場所を見つけた彼女は、同時に命を懸けるに値する戦いを見出しました。新たに生まれる命のために、全身全霊で敵の術に対峙するのです。灼岩と火岩の覚悟の強さは第1部最大の見どころとなっています。

 


主要キャラクターたちでだけでも、その心に抱える覚悟や思いの強さに圧倒されます。そんな彼らを叱咤激励するような、あるいは読者の心にいつまでも残るような魅力あふれるキャラクターたちがまだまだ大勢いるので、ぜひ実際に読んでみてください。

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