5分でわかるイヌワシの生態!大きさや寿命、狩りの方法などを解説!

更新:2021.11.14

その猛々しい姿から石川県の県鳥やメキシコの国鳥にもなっている「イヌワシ」。かっこいいのは見た目だけではありません。この記事では、彼らの生態や生息地、狩りの方法、クマタカとの見分け方などをわかりやすく解説していきます。あわせておすすめの関連本もご紹介するので、ぜひご覧ください。

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イヌワシの生態は?大きさや鳴き声、寿命など

 

タカ目タカ科イヌワシ属に分類される、迫力のある鳥です。全長は70〜90cm、翼を広げると2m近くにもなり、平均的な成人男性よりも大きな姿。鋭い目つきは人間であれば「イケメン」に分類されるかもしれません。

基本的には人間の夫婦のようにペアで活動しています。その行動範囲にはある程度の規則性が見受けられ、縄張りを守っていると考えられているのです。地域や環境によって面積は異なりますが、だいたい60平方キロメートルほどがテリトリーだと推測されています。

オランダでは、イヌワシが自らの縄張りに侵入したドローンに襲いかかるという事例もあり、その勇猛果敢さが話題となりました。また空を見張るような姿から、石川県警のヘリコプターには「いぬわし」と名付けられています。

鳴き声は「ピィー」という遠くまで轟きわたるもの。一方で幼鳥の頃は子犬のような声で鳴くこともあり、名前の由来のひとつになっています。

寿命は野生下で10~30年、飼育下では40年以上生きることもあるそうです。

絶滅危惧種のイヌワシ。北海道で見れる?生息地を解説

 

彼らには天敵がほとんどいません。食物連鎖のなかでもトップの位置に君臨し、動物としての強さを誇っています。

にもかかわらず年々その数を減らしているという現状があり、日本に生息するイヌワシは絶滅危惧のレッドリストに登録されているのです。

イヌワシの生息分布は主に北半球。5の亜種が確認されていて、海外では地中海沿岸やヒマラヤ山脈の付近、北アメリカ、ロシアの森林限界付近で暮らしています。もっとも大型なものはヒマラヤにいるイヌワシです。

日本国内では北海道から東北にかけて多く見ることができますが、稀に九州地方で確認されることもあり、数は少ないものの全国に生息していると考えてよいでしょう。

ちなみに日本を含むアジアにいるイヌワシは、比較的小型な種類になります。

食物連鎖のトップにいるにも関わらず数を減らしている原因は、やはり人間による森林開発だといわれています。そのため人の手があまりかかっていない、原生林の残る北海道などで多く見られるのです。

イヌワシの狩りの方法は

 

彼らは肉食で、鳥のなかでも実にたくさんの動物を捕食します。リスやテン、モグラ、ヘビなどを食し、もっとも多いのがノウサギです。条件が整えば自分よりも大きな動物に挑むこともあり、ヤギやサル、アナグマ、タヌキなども標的になることがあります。

狩りの方法は実にスマート。むやみやたらに動き回ったりはしません。地上を見わたせる高い木や崖の上の岩にじっと止まり、獲物を探します。上空を飛びながら探す場合もありますが、その際も羽のはばたきはゆっくりとした動きです。決して焦らず、静かにチャンスを待つその姿は、まさに一流のハンターそのものだといえるでしょう。

そして、獲物を見つけるやいなや、広げた翼を瞬時にたたんで急降下します。獲物に触れる直前で脚を素早く突き出し、鋭い爪でがっちりと捕獲。捉えられた動物にしてみれば逃げる暇を与えられず、何が起きたのかわからないような状況でしょう。

狩りは基本的に単独でおこないますが、状況によっては2羽でチームプレーをおこなう場合もあります。1羽が獲物の視界に入るところを飛び回って注意を引き、もう1羽がその隙に死角から襲いかかるのです。見事な連携プレーだといえるでしょう。

イヌワシとクマタカ、特徴と見分け方

空の王者といわれているイヌワシ。天敵はいませんが、ライバルは存在します。それがクマタカです。

一見よく似た容姿をしていますが、行動や生息場所、身体のつくりが異なります。

まずクマタカの翼はイヌワシの約2mよりも少し短く、1.5mほどです。ところが幅はイヌワシ並みに40cmあります。つまり、細長い形状のイヌワシと比べると、クマタカは丸みを帯びているのです。

またイヌワシの翼は、グライダーのように滑空して獲物を捕まえるのに向いています。そのため生息地も、草原地帯などの開けた地形と相性がよいのです。

一方でクマタカは、森林地帯の木々が生い茂る場所を得意としています。入り組んだ森の中にどんどん入っていき、そこで小動物などを捕食するのです。このような特性から、地形的な相性でイヌワシは北半球に多く、クマタカは森林の多い東南アジアを中心に生息しています。

保護活動を追いかけたドキュメンタリー

著者
山崎 亨
出版日

 

動物と人間には相性というのがあります。犬好きの人もいれば、猫好きの人もいるでしょう。「好き」の度合いは人それぞれですが、相性がピッタリとハマれば恋人のようにとことん愛しあってしまいます。

本書は、そんなふうにイヌワシに惚れた著者が、その経緯と保護活動をドキュメンタリー調に解説している内容です。基本的な知識だけでなくそこに愛情が含まれているので、猛禽類に興味のない読者もぐいぐい世界観に惹きこまれていくでしょう。

イヌワシやクマタカの解説書ではありますが、読み進めるうちに「地球環境」についても考えさせられるようになります。希少生物となった彼らを追うのは、簡単なことではありません。著者の活動を知るとともに、決して他人事ではない課題があることをあらためて痛感させてくれます。

イヌワシの魅力を堪能できる写真集

著者
須藤 一成
出版日
1994-12-01

 

イヌワシの魅力はなんといってもその容姿ではないでしょうか。クールでありながら狩りは力強く、とにかくかっこいいのです。本書は、そんな彼らの魅力を臨場感たっぷりに感じられる写真集です。

動物園などに行けばその姿を見ることはできますが、それはあくまで檻の外から。間近で堪能できることはなかなかなく、「リアル」を堪能できる貴重な機会です。

写真集の舞台となっているのが日本であるところも共感が持てます。彼らのダイナミックさに惹きこまれつつ、美しい日本の自然を守らなければならないと感じます。

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