『ヒメゴト~十九歳の制服~』魅力を最終巻までネタバレ紹介!誰にもいえない彼女たちの秘密

更新:2021.11.28

WEB連載されていた、峰浪りょうの作品。これは男装、あるいは女装、同性愛などのセクシャルマイノリティと呼ばれる性癖を持った、3人の主人公の物語です。大学生でありながら、女子高生の格好をする彼らの「制服」がキーポイント。 今回は、この19歳という微妙な年齢の欲望と性癖を描ききった意欲作を、余すところなくご紹介しましょう。

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何もかもバラバラだった3人が運命的に出会う【1巻ネタバレ】

 

「ヨシキ」とあだ名で呼ばれる由樹(ゆき)は、小さい頃から男の子のような少女でした。周囲に流される形で男装してきましたが、本心では女性らしくありたいと思っています。

 

著者
峰浪 りょう
出版日
2011-04-28

 

未果子は普段、化粧気のない清楚な美少女でとおっています。しかし夜には、高校生と偽って売春をくり返していました。彼女は自分のなかにある「女」の価値観に縛られています。

そしてカイト。年上の彼女がおり多くの女性にモテる美男子ですが、密かに女装癖があります。

誰にも言えない秘密を抱えた3人が同じ大学に入り、運命的に巡り会いました。男のような女、倒錯した女、女のような男。19歳という大人ではない特別な世代同士、互いに欠けた部分を備えた3人の思惑が、絶妙に交差していきます。

 

秘密の関係、秘密の恋心【2巻ネタバレ】

 

これまでヨシキは、女子高生時代の制服で女らしさの欲求を満たしていました。それがカイトにコーディネートされ、思わず感動します。女友達として心身ともに打ち明けられる彼に、由樹は安らぎを覚えるのでした。

しかし同時に彼に親愛が湧き始め、戸惑うことに。

 

著者
峰浪 りょう
出版日
2011-08-30

 

彼もヨシキに対し、友人以上の感情が芽生えかけていましたが、しかし2人の関係を壊したくない一心で、気持ちを封印します。

一方未果子は、男装のヨシキに魅力を感じていました。彼女はヨシキを手に入れるため、ヨシキの幼馴染みの祥や周りの男を籠絡していきます。

3人は互いに好意を抱くものの、向きの方向がすれ違い、あるいは思い込みによって関係が複雑化。青春は知らず知らずのうちに、泥沼にはまり込んでいくのです。

 

肉体で繋がっても、心は……【3巻ネタバレ】

 

ヨシキはカイトへの恋心を自覚していきます。しかし、彼女には踏ん切れない理由がいくつかありました。その1つは、彼が女としての未果子に憧れて、彼女そっくりの変装をしていたこと。そのためヨシキは、彼が彼女へ片想いしていると勘違いしていました。

 

著者
峰浪 りょう
出版日
2012-03-30

そんなヨシキは、未果子に自分と同じ格好の人がいたら、という話をしてしまいます。彼女は彼女で、街で見かけた自分そっくりの女の子(カイト)をヨシキだと思い込んでいたので、肯定的な反応をしました。

思い込みと勘違いの果てに、ヨシキとカイトは口論のようになります。まさに売り言葉に買い言葉、2人は勢いで……。

心が通わないまま交わされる契り。その葛藤が、その経験が、どのように影響していくのか注目です。

本音と建前。気持ちが過熱して【4巻ネタバレ】

 

未果子は春を売る夜の姿、15歳の未果子に固執しています。彼女はそこで、肉欲に溺れる自分と、男のようで男でない汚れなきヨシキに惹かれる自分、相反する2つの気持ちに板挟みとなっていました。どちらも捨てられない歪んだ彼女は……。

 

著者
峰浪 りょう
出版日
2012-08-30

 

吹っ切れたヨシキは、ある行動に出ました。未果子に告白し、最近していた女の格好をやめて、男装に戻ると言うのです。未果子には願ってもないことでした。

未果子はヨシキとの甘い日常、男との売春という二重生活を始めました。それを知ったカイトは打ちのめされます。そして彼自身にも転機が……。

本音を隠した偽りの付き合い。秘密の青春が歪みを生み、その歪みから決定的な亀裂が出来てしまったのです。

 

すれ違う気持ちに変化が…【5巻ネタバレ】

 

未果子のおこないを知ったカイトは、詳細を避けつつも、彼女との関係を断つようにヨシキにアドバイスします。ヨシキ、カイト、未果子はまるで三竦みの関係となっていまいました。

拮抗状態を崩したのは未果子です。彼女は自身を真似たカイトの女装癖を逆手に取り、うまく操っていくのです。

 

著者
峰浪 りょう
出版日
2013-02-28

 

未果子はカイトの女装癖を受け入れる代わりに、自分が買春していることも受け入れてほしいと言いました。彼は、それを了承します。

しかし、カイトの女装癖が2人の間だけの秘密でなくなったことを知ったヨシキは、苛立ちを募らせていくのです。そのことが、彼女を欲求解消へ駆り立てていくのでした。

お互いの本当の思惑とは裏腹に、3人の気持ちだけが通じません。治まらない気持ちのやり場は1つ。3人の明暗が、いよいよくっきりしてきます。

 

制服を着る19歳の男女【6巻ネタバレ】

 

未果子はカイトに女装を強要します。それは彼女が売春の際に着用していた、女子校の制服と同じものでした。彼は憧れの女性を汚い世界から救いたい気持ち、彼女をヨシキから引き離したい気持ち、その両方の気持ちから従ってしまいます。

 

著者
峰浪 りょう
出版日
2013-10-30

未果子は女装カイトを同行させ、売春現場にまで連れ出すようになりました。その行動が、かつて深く傷付いた2人の過去を掘り返していきます。

やがて彼女は、彼と組んで美人局することにのめり込んでいくのですが……。

罪悪感と快楽。その2つがスパイスとなって、3人の19歳は引き返せないところまで足を踏み出してしまったのです。

秘密はついに共有され、思わぬ展開に【7巻ネタバレ】

 

ヨシキのストレス発散。それは未果子との約束で捨てずにいた女物の服、女子校制服を着て夜の街にくり出すことでした。

 

著者
峰浪 りょう
出版日
2014-04-30

 

3人は偶然にも鉢合わせしてしまいます。ヨシキと未果子は混乱し、取り乱します。カイトは嘘に嘘を重ねて、事態の収拾に奔走しますが、それが予想外の結果に繋がりました。

未果子は急場に便乗して、3人での同居を提案したのです。

傍目には女3人、実質的には男1人女2人の奇妙な関係。3人の勘違い、裏切り、そして変化は束の間の平穏生活に取って代わります。しかし、それはもちろん、嵐の前の静けさに過ぎないのです。

 

クライマックス!ひと夏のヒメゴト【8巻ネタバレ】

 

仮初めの共同生活は心にしこりを残すものの、ヨシキとカイト、未果子の3者にとって楽しいものでした。彼女達は全員、お互いの秘密を知るかけがえのない存在です。それがたとえ上辺だけのものであったとしても。

3人の生活には、どうしても欠けているものがありました。それも当然です。3人は、秘密の欲求の共有はしていても、それを解消していたわけではないのですから。共同生活は、子供の優しいごっこ遊びに過ぎません。

積もり積もった欲求は彼らを再び、互いに欺いて大人の行為へと走らせていくのです。その結果がどういう結末を呼ぶのか、考えることもなく。

 

著者
峰浪 りょう
出版日
2014-11-28

『ヒメゴト~十九歳の制服~』は文字通りに、隠したい「秘めごと」に焦点を当てた物語です。男装のヨシキは女性コンプレックス、カイトは女装癖と嗜好、未果子は歪んだ性癖と同性愛。男と女、体と心、本音と衝動が一致しないフラストレーションが、そこにはありました。

そんな、それぞれが密かに抱えるトラウマが、彼らを秘密の関係に結びつけたのです。

19歳という大人と子供の間で葛藤する彼らの悩みは、社会の尺度から見れば非常にマイノリティなもの。しかし、そこで描かれる3人の決着は、ある種の普遍性のある成長譚でもあります。

最後にはここまで読んできて、3人の本音と建前を知り尽くした読者ですら――いや、そんな読者だからこその驚きの結末を迎えます。

秘密の青春のラストは、ぜひ実際にご覧ください。

 


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いかがでしたか?性的描写も多い本作。「秘めごと」の如くお楽しみください。

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