5分でわかるASEAN!目的、加盟国、日本との関係などをわかりやすく解説

更新:2021.11.15

第二次世界大戦後、経済や環境、安全保障などの分野で地域ごとにまとまり、協調や協力を強めようとする動きが進められてきました。その過程で設立されたASEAN。発足の目的や加盟国の情報、日本との関係などをわかりやすく解説していきます。あわせて関連本もご紹介するので、ぜひチェックしてみてください。

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ASEANとは。意味や概要をわかりやすく解説

 

冷戦の真っ最中である1967年に設立された国際機構です。正式名称は「東南アジア諸国連合(Association of Southeast Asian Nations)」で、ASEANはその頭文字をとった略称となります。

前身は、1961年にタイ、フィリピン、マレーシア(当時はマラヤ連邦)が設立した「東南アジア連合(ASA)」。これが発展してASEANへと変化していきました。

現在は東ティモールを除く東南アジアのすべての国家、計10ヶ国が加盟しています。事務局はインドネシアのジャカルタに置かれ、事務総長の任期は5年、加盟国内からアルファベット順に選出されることとなっています。

もともとは冷戦の影響を受け、東南アジアの「反共主義」諸国の結束を固めるために作られた枠組みですが、後述する「地域主義」の高まりを背景に、旧東側の国々も加盟するようになりました。さらに東アジアの日本や中国、韓国との提携も深まり、いまでは東南アジアや東アジアの経済、政治、安全保障の分野で大きな役割を果たしています。

 

ASEANが発足した目的は?

 

ASEANが発足した1960年代、東南アジアは冷戦の影響を受け、東西両陣営の対立が激化していました。

このような情勢下で、ソ連が支援する「ベトナム民主共和国(北ベトナム)」と、アメリカが支援する「ベトナム国(南ベトナム)」が衝突。ベトナム戦争が開戦します。アメリカが軍事介入をするようになると、戦いは激化の一途をたどりました。

さらにアメリカは、東側陣営を封じ込めるため、東南アジアの西側諸国に結束を呼びかけます。その結果、1967年にタイ、インドネシア、シンガポール、フィリピン、マレーシアの5ヶ国によってASEANが発足しました。

当初は、東側陣営に対抗する「反共主義」の同盟ともいうべき枠組みだったのです。

その一方で同年、西ヨーロッパでは統合を目指す動きが生じ、「ヨーロッパ共同体(EC)」が発足。これをきっかけに世界各地で地域ごとの統合を目指す動きが広まっていくこととなりました。このように、各地方の独自性を尊重する考え方を「地域主義」といいます。

1975年にベトナム戦争が終結し、その後冷戦も終結したことで、ASEANもしだいに「反共主義」よりも「地域主義」を重視するようになります。1995年から1999年にかけて、ベトナム、ミャンマー、ラオス、カンボジアという旧東側諸国が次々と加盟しました。

こうして、冷戦の終結にともないASEANはその役割を大きく変化させ、今日では加盟国間の統合と経済提携の推進に主眼が置かれています。2015年には「ASEAN経済共同体(AEC)」の発足が宣言され、加盟国間の貿易関税の撤廃、モノやサービスの自由化を進めています。

 

ASEANの加盟国一覧、人口、GDP

 

2019年現在、ASEANの加盟国は10ヶ国です。

  • インドネシア
  • カンボジア
  • シンガポール
  • タイ
  • フィリピン
  • ブルネイ・ダルサラーム
  • ベトナム
  • マレーシア
  • ミャンマー
  • ラオス (50音順)

アジア大洋州局地域政策課が発表した資料によると、2016年のASEANの人口は6億3862万人。そのうち約4割をインドネシアが占め、フィリピン、ベトナム、タイ、ミャンマーの順に続いています。

ちなみにEUの人口は約5億1000万人、NAFTAの人口が約4億9000万人で、ASEANの6億人超という数字は地域統合体としては最大のものです。

その一方でシンガポールやブルネイを除くと、2016年のひとり当たりのGDPは1万米ドルを下回り、名目GDPも2兆5547億米ドル。日本と比べるとおよそ半分で、EUやNAFTAと比べても大きく下回っています。

ただ見方を変えれば、これから経済発展する伸びしろがあるということ。そのためASEANは、巨大な投資先として近年大きな脚光を浴びているのです。

 

ASEANと日本の関係を解説!「+3」とは?

 

ASEANが位置する東南アジアは、かつて太平洋戦争の際に日本が占領した地域です。1951年に締結された「サンフランシスコ平和条約」で連合国は日本に対する賠償請求権を放棄することとなり、その代わり日本が被害を与えた東南アジア諸国に対しては、ODAなどを通じた経済支援がおこなわれてきました。

1977年、当時の総理大臣だった福田赳夫は、フィリピンで「福田ドクトリン」を発表。このなかで「日本とASEANは対等なパートナーであり、日本はASEAN諸国の平和と繁栄に寄与する」と表明しています。

その後2013年には、安倍晋三が「安倍ドクトリン」を発表。日米同盟を基軸としつつも、ASEANとの一層の関係強化を促進する方針が示されました。

このように日本とASEANは、関係の緊密化に取り組んできました。近年では経済上の提携に加えて、観光や留学など人的な交流も盛んとなり、その関係はさらに深まりをみせています。

またASEANは、中国や韓国とも経済提携を進めています。そのきっかけとなったのが、1997年に発生した「アジア通貨危機」です。タイを中心に急激な通貨下落が起き、各国の経済に大きな影響を与えました。

同年、ASEANの首脳会議に日中韓3ヶ国の首脳が招待され、東アジア全域で経済協力を進めるため「ASEAN+3」の枠組みができたのです。

年1回の首脳会談に加え、各種の実務協議を実施。近年では中国の南シナ海への進出をめぐり足並みが乱れることもありますが、さらなるアジア経済の統合が進められています。

 

東南アジアとは何か、内実を知るための入門書

著者
岩崎 育夫
出版日
2017-01-18

16世紀から現在に至る東南アジア各地の特徴を簡潔にまとめた作品。一口に東南アジアと言っても、地域ごとに文化的な基盤や政治制度はさまざま。本書ではその「多様性」に着目しつつ、今日のASEANによる地域統合がどのように実現したのかをまとめています。

筆者は、インドネシアが建国以来国是としている「多様性の中の統一」という言葉に注目。ASEANは、同じ地域統合体であるEUと比較すると政治的な拘束力は弱いとされていますが、このような「緩やかな統合」であるからこそ有効に機能し、東南アジア統合のシンボルとなりえたと指摘しているのです。
 

この視点は、今後の東南アジアを読み解く大きなヒントとなるでしょう。

そのほか華人の存在など重要な論点が手堅くまとめられていて、東南アジア地域の概要を知る最初の一冊にぴったりの作品です。
 

ASEANの経済発展の展望を描く

著者
西濱 徹
出版日
2014-05-08

 

ASEAN加盟各国の経済状況や政治状況をコンパクトにまとめた作品です。必要最低限のデータがわかりやすく掲載されているので、全体像をつかむための概説書として適しています。

本書の魅力として、「海のASEAN」と「陸のASEAN」の2つに分類していることが挙げられます。地域ごとにさらに分けてそれぞれの特徴を示すことで、より個々の在り方が理解しやすくなっているのです。

今後の経済発展に関する展望も記されているので、ASEANの概要を知りたい人だけでなく、新興国ビジネスに興味がある人にもおすすめの一冊です。

 

EUの結束が試練を迎える一方で、ASEANは地域統合の「成功例」として語られています。日本にとっても経済発展に不可欠のパートナーで、その動向に対する注目度は高まるばかり。紹介した本を手がかりに、理解を深めていただければと思います。

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