意外と知らないミノムシの生態!中身は何が入ってる?毛糸を使って蓑を作る!

更新:2021.12.12

自然のなかを散歩していると、小さなミノムシが木の枝に揺れているのを見たことがないでしょうか。ころっとして可愛らしく、その形には芸術性さえ感じますが、中身はどうなっているか知っていますか?この記事では、彼らの驚くべき生態や、巣作りについてわかりやすく解説していきます。あわせておすすめの関連本も紹介するので、ぜひチェックしてみてください。

ブックカルテ リンク

ミノムシの生態は?中身には何が入ってる?

松尾芭蕉の俳句や『枕草子』などにも登場し、古くから日本人に親しまれてきたミノムシ。実は「ミノガ」という蛾の幼虫です。なかでも日本産のオオミノガが、雨具の蓑で体を包んでいるように見える一般的なものです。

さて、ミノムシ自体は見たことはあるものの、その中身がどうなっているかまでは知らない方がほとんどではないでしょうか。蓑の中にはダンゴムシと芋虫を足して2で割ったような姿をしている幼虫がいて、割るとその姿を見ることができます。

また彼らは繊維のある素材であれば、どんなものでも寄せ集めて蓑にすることができます。その内側はまるでフェルト生地のような手触りをしていて、冬は保温効果もばっちりです。耐久性にも優れているそうです。

 

ミノムシの不思議な生態1:成虫のオスは口がないので餌を食べない!

ミノムシの生態の大きな特徴として、オスとメスにかなりの違いがあることが挙げられます。それぞれの役割に徹する体の仕組みになっていて、人間目線で考えるとなかなか切ない部分もあるのです。

まずオスですが、成虫になった彼らにはなんと口がありません。餌を食べることはなく、何か別の方法で栄養を補給することもないのです。オスは成虫になると蓑の下部にある穴から外に出ます。そしてメスが発する匂いを頼りに飛び回り、パートナーを見つけると交尾します。そしてそのまま息絶えてしまうのです。

栄養補給ができないので、メスのいるところまで辿りつくことができずに力尽きてしまうものもいます。なんと切ない運命なのでしょうか。

 

ミノムシの不思議な生態2:成虫のメスは足も羽もない!

ただ交尾をするためだけに生まれてきているように見えるオスですが、一方でメスはもっと容赦のない試練を与えられています。彼女たちは、一生を通して蓑の中から出ることがないのです。

その姿を見てみると、オスと異なり羽も足もありません。動くことのできない構造になっているのです。メスは成虫になると蓑の中からひたすら臭いを発して、オスが見つけてくれるのを待ちます。無事に交尾ができると、すぐに数千個もの卵を産んでそのまま力尽きるのです。

2~3週間が経ち、卵が孵化するころにメスの体はひからびて落下します。ここでようやく蓑の外に出ることになるのです。

 

ミノムシの蓑の作り方。毛糸や色紙でもできる?

ミノムシは繊維があるものであればなんでも巣作りに用いることができ、「小さな建築家」とも呼ばれています。

自然界においては木の枝や葉っぱと、体から出す粘り気のある糸を絡め、蓑を作っていきます。また色紙や毛糸などを近くに置いておくと、なんともカラフルな蓑が完成するのです。マニアのなかには、マッチ棒などを使って、ログハウス風の蓑を作らせる人もいるそうです。

自宅で観察をしたい場合は、ミノムシがいる木の枝ごと採集してきてください。透明のケースに入れ、枝は水分を含ませた綿などに刺しておきます。自分好みの素材で蓑を作ってもらえれば、愛着もわいてくるのではないでしょうか。

 

ミノムシは絶滅危惧種になっていた

ミノムシは現在、絶滅の危機にさらされています。彼らは木に巣作りをし、幼虫は植物を食べて生きています。そのため、数が増えすぎた場合は害虫として扱わざるをえませんでした。駆除活動おこなわれ、数を減らしてしまったのです。

また、「オオミノガヤドリバエ」の存在も大きなきっかけです。中国で駆除目的として導入されたこのハエが日本にも移入してきて、ミノムシの数を激減させてしまいました。

現在は特別に保護をされているわけではありませんが、もしも見かけた場合はそっとしておいてあげるか、自宅で蓑を観察する場合は確実に孵化させられるよう責任をもって対応してください。

 

もっと知りたい!ミノムシの秘密 オススメ本を紹介

巣から生態を学ぶ1冊

著者
小松 貴
出版日
2016-06-27

小さな虫でも、計り知れない能力をもっていることがあります。特に彼らの巣について学ぶと、その知恵に驚くことがたくさんあります。巣には、安全確保や子育ての効率化、環境の変化への対応、外敵への対策などさまざまな工夫が盛り込まれているのです。

本書は、ミノムシをはじめ生態の特徴が顕著に表れた巣について学び、昆虫の面白さを解説してくれている作品になっています。

どうしてそんなところに⁉と一見驚くような場所に巣作りをするものもいますが、エピソードを読み進めていくと納得できるでしょう。知的好奇心が刺激される1冊です。

 

ミノムシなど昆虫を等身大スケールで感じられる図鑑

著者
["小池 啓一", "小野 展嗣", "町田 龍一郎", "田辺 力"]
出版日
2014-06-18

昆虫を小さいと感じるのは、当たり前ですが人間が大きいからです。反対に、仮に我々が昆虫よりも小さければ、その迫力や細かな体のつくりに驚くのではないでしょうか。

本書は、まさに昆虫と同じスケールで彼らの生態を知ることができる図鑑です。写真やイラストが豊富で、ミノムシをはじめ彼らの繊細さをじっくりと観察することができます。

また昆虫の生態を知ることで、彼らが住んでいる森や植物についても学ぶことができるでしょう。小さな世界に目を向ければ大きな世界が見えてくる、子どもの学習にぴったりの1冊です。

  • twitter
  • facebook
  • line
  • hatena
もっと見る もっと見る