『嫌われる勇気』人間関係、仕事……幸せを掴むための8つのポイントを解説!

更新:2021.11.15

2013年に出版され、ベストセラーになった『嫌われる勇気』。舞台化やドラマ化もされ、聞いたことないなんて人は、もしかしていないのではないでしょうか。哲学者と若者の対話形式で「アドラー心理学」をわかりやすく解説したこの本は、多くの人に考え方の変化をもたらしました。 今回はそんな本作を、8つのポイントで解説していきます。ぜひご覧ください。

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『嫌われる勇気』を要約して解説!誤解されやすい内容!?

本作はアドラー心理学を学ぶ哲学者と、人生に悲観している青年との対話形式で進められていきます。

ある青年は、「人は今日からでも幸せになれる」と主張する哲人のもとを尋ねることに。それは彼自身が「そんなはずはない」と真っ向から否定するための訪問でした。

しかし哲人は、そんな彼にもこう伝えるのです。

「人は変われます。
のみならず、幸福になることもできます。」
(『嫌われる勇気』より引用)

そう主張する哲人と、あくまでもそんなのは嘘だと否定する青年。青年は仕事の悩み、感じたことから哲人に考えをぶつけます。納得し、感動して帰ったかと思えば、次の機会に怒りを携えて、また哲人のもとへ訪れます。

そんな風に、議論をくり返して進んでいく物語です。

著者
岸見 一郎 古賀 史健
出版日
2013-12-13

タイトルだけ見ると、まるで「他人から嫌われてもいい、嫌がらせをしてもいい」というような印象を受けますが、内容はそうではありません。アドラーの主張は「全ての悩みは対人関係の悩み」だということです。

人は人、自分は自分の人生を生きており、他人への承認欲求で生きるのではなく、あくまで評価は自分自身にあるという「自己実現」を達成するべき、というのがアドラーの主張。世の中に貢献しているという共同体感覚こそが、持つべき指針であるというわけなのです。

本作はベストセラーになっただけでなく、フジテレビにてドラマ化もされました。刑事ドラマとして放映されたこの番組は、アドラーの教えを守って行動する、香里奈演じる主人公と、それに振り回される、加藤シゲアキ演じる相棒、そして飯豊まりえ演じる心理学科の助手などのキャストが出演しました。

アドラー心理学の教えを貫く主人公が見事に事件を解決していき、周りの人々も変えていく。捉え方は人それぞれだったようですが、新しい考え方のドラマは話題となりました。

著者・岸見一郎、古賀史健とは?

さて、この著者のお2人はどんな方なのでしょうか?

岸見は哲学者で心理学者、古賀はフリーランスのライター。岸見のアドラー心理学の話を元に、古賀が物語形式にまとめたのが、この本なんですね。

岸見は高校生の頃から哲学を志し、大学で学びます。卒業後もたびたび教授の家に押しかけては、議論をしていたようです。作中の若者は、彼がモデルなのかもしれませんね。

専門は古代の哲学者・プラトンに関するものだったようです。幸福とは何か、を研究してきたものの、自分自身がどうしたら幸福になれるかは考えたことがなく、それをきっかけにアドラー心理学に興味を持ちます。

それからアドラー心理学を学び、講演会や本の執筆、また多くの「若者」と対峙してきました。

著者
岸見 一郎
出版日

一方、古賀はライターとして、ビジネス書やノンフィクションで数々のベストセラーを手がけています。聞き書きのスタイルで、その臨場感とリズム感あふれる文体が人気を博しているようです。

そんな彼が20代のころ、岸見の書いた『アドラー心理学入門』に出会います。それに衝撃を受けた彼は、アドラー心理学、とくに岸見の解釈したものに夢中になってしまいました。

まさに当時、本作に登場する「青年」のようであった彼は「いつか岸見先生とアドラー心理学の本を作りたい」と思うようになります。そして、その本との出会いから10年以上経って、本作がつくられたのでした。

なんだかちょっと、ドラマのような話でもありますよね。

『嫌われる勇気』のポイント1:怒りは捏造される!怒りっぽい人こそ読むべし

アドラー心理学では、怒りは捏造だと主張されます。

あくまで、「行動」は「目的」があってこそ。レストランの店員に飲み物をこぼされて怒り、「店員に対して怒鳴る」という行動は、「その店員を言い負かせ、言うことを聞かせる」ために怒っているのだというのがアドラーの考え方なのです。

あくまで、その怒りは突発的に起こったものだと青年は主張しますが、哲人は「それなら、衝動的な殺人も同じ理由になる」と諭します。

たとえば、さっきまで猛烈な勢いで怒っていた母親も、その最中に鳴り出した電話を取った際には、すぐさま落ち着いて対応します。このことからアドラーは「怒りは出し入れ可能な道具」、「目的を達成するための手段」として使っていると主張するのです。

この怒りをコントロールするポイントとなるのが、「自己受容」。

行動や所有物によって自分や他人を評価するのでなく、今の自分をそのまま受け入れることが「自己受容」となります。

アドラーの心理学はあくまで、「目的」があっての「行動」です。この考え方でいくと、トラウマなどは存在しないということになります。過去のトラウマは、今の自分は「これでいい」「しょうがない」と思い込むための目的として使われているだけなのです。

結果として、怒り、トラウマなどといわれる「過去のことに対する感情」はすべて「自分がやりたいと思っている行動への理由づけ」でしかないという結論になります。なかなかそうは思えないかもしれませんが、それがアドラー心理学なのです。

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『嫌われる勇気』のポイント2:人生の嘘から逃げない!

 

アドラーは、「人生の嘘」から逃げないということを語っています。「人生の嘘」とはいったいなんなのでしょうか?

アドラー心理学でもっとも重要なのは「今、ここ」です。過去にとらわれるのでもなく、トラウマに苛まされるのでもなく、今ここをどう生きるか、どう行動するかがポイントになってくるのです。

今ここにある自分が何をすべきか、本当は自分自身でわかっています。ですが、トラウマやコンプレックスを理由に行動しない人はたくさんいます。その自分自身で作り出した「行動しない理由」こそがアドラーの言う「人生の嘘」です。

自分が置かれている状況の責任を、自分の過去や誰かに転嫁することで、人生のタスクから逃げているということ。そして、その状況を作っているのは紛れもなく、理由付けしている「自分自身」なのです。

善悪や道徳ではなく、自分自身がどう動くか。自分自身の「人生の嘘」に真っ向から立ち向かう勇気があるかどうかがポイントなのです。

 

『嫌われる勇気』のポイント3:課題の分離とは?他所は他所、ウチはウチの精神!

 

「課題の分離」とは、端的にいえば「今、直面しているこの問題は、誰の課題なのか?」を考えること。課題は「自分の課題」と「他者の課題」に分けられます。

自分がどうするのか、どうしたいのかは、もちろん自分の課題でしょう。しかし、その結果他者がどう思うのか、どう行動するのかは「他者の課題」です。それらは自分でコントロールすることができません。したがって、その他者によって自分の行動などが制限されてしまうことは、本意ではないのです。

他者の課題と自分の課題の線引きを、しっかりする。まさに「他所は他所、ウチはウチ」。他者の課題を、自分の課題であるという風に思い違いをしないのがポイントです。他者からの承認を得ることは、まさに「他者の課題を自分の課題とすり替えている」ことになります。

自分の課題を解決し、誰かに、何かに貢献しているという自己承認さえあれば、自分の価値を実感できるはずです。その行動は、時に誰かに疎まれるかもしれません。しかし、それは「他者の課題」。こういったことから、嫌われる勇気が必要であると、アドラーは説いているのです。

自分に対する劣等感は、それはそのまま「他者がどう自分を見ているか」、すなわち「他者の課題」です。「自分の課題」なのか、「他者の課題」なのか、不安になったら立ち止まって考えてみることが必要でしょう。

 

『嫌われる勇気』のポイント4:共同体感覚を得て、自分らしく生きる!

 

全ての悩みは対人関係であると説く哲人に、青年は「では、対人関係のゴールはどこにあるのか?」と問います。そして、ゴールとは「共同体感覚」であると、哲人に教えられるのです。

共同体感覚とは、一体なんなのでしょうか?

自分の課題を解決するのは、他者貢献です。仕事や趣味、子育て、ボランティアといった貢献活動を通じて、横の関係として他人を考えることが必要になってきます。

課題の分離をおこない、自分の課題を解決していくことがアドラーの教えですが、自分が世界の中心だと思うことは誤りです。自分という生命は、世界の一部であるということを理解することが重要なのです。

上司や親など、一般的には縦の関係だとされる他者とも「共同体である」という意識を持ち、フラットな横の関係を持つこと。これが共同体感覚です。

誰かに貢献し、それに対して感謝をされるかどうかは「他者の課題」の話。その感謝はめぐりめぐって、誰か違う人や物事で、自分へ返ってくるかもしれません。

共同体とは、過去や未来も含めて、そのなかの1人だと考えながら生きるということなのです。

 

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『嫌われる勇気』のポイント5:目的論は恋愛・結婚にも効果的!?

 

アドラーの目的論は、恋愛や結婚の考え方にも使えます。

たとえば「彼氏がほしいのにできない」「結婚したいのにできない」というのを目的論から考えてみましょう。

「○○だから彼氏ができない/結婚できない」というのはいわゆる原因論です。これをアドラーの考え方に当てはめてみると、実は「彼氏/結婚ができない」というのは、自分がそれを無意識に選択しているということ。

彼氏がいなかったり、結婚しなかったりすることによってできるメリットは、なんでしょうか?自分の好きな時間を取られなくて済む。人に合わせなくて済む。好きな人に告白しないのは、フラれて悲しくなるのを避けているのかもしれません。

傷つきたくない、自分の生活を邪魔されたくないという目的があるから「彼氏ができない」「結婚できない」というのを自ら選択しているのです。

悩んでいる人は、実は本当は「ほしくない」「いらない」ということを自分で選んでいる、無意識の理由があります。今一度、自分が本当はどう思っているのか?その「目的」は本当に自分のためになるのか、その「目的」を果たしながら探す方法はないのか……自分の心を見つめ直してみるのもいいかもしれません。

 

『嫌われる勇気』のポイント6:子育てをしてる人必見!自立を促すという考え方

 

アドラーは、教育の面でも「課題の分離」が重要であると説いています。

そもそも親子といえど、まったく同じ人間ではありません。考え方も性格も、まったく異なる他人です。自分がその子に「こうなってもらいたい」というのは、「他者の課題」に介入しすぎています。

親は、子どもに「自立への援助」をすることが重要なのです。たとえば、生きていくうえで必ず必要な社会のルールを教えることは、「援助」の一貫。しかし「これをやりなさい」「勉強しなさい」と言うのは、援助ではなく「介入」です。

子どもたちの決断を尊重し、彼らがどうするかを見守りましょう。その後の人生をどう生きるのか、責任を取らされるのは子ども自身です。尊重し、そしていつでも援助ができるということを伝え、着かず離れずの距離で見守るのが、親の課題なのです。

また親も子どもに対して、尊敬の念を抱かねばなりません。子どもが興味あることに関心を寄せ、親から歩み寄る。選択した子ども自身を尊重するのです。あなたはあなたであるだけで、価値があるんだよときちんと伝えることが重要なのです。

子どもと親が平等であるという考え方から、叱ることもほめることも、アドラーは薦めません。子どもが叱られるようなことをしたときは、「悪いことだと知らない」「注意を引きたい」という理由があります。子どもの本当の目的を汲み取って対処する必要があります。

ほめるという行為も、そこで上下関係が生まれてしまいます。目上、目下など親子関係でも関係ありません。ただ、お互いがフラットな関係であることを忘れてはいけません。ほめられたりしかられたりすることで、その子どもはそれを判断基準にほめられようとするし、叱られないように行動してしまいます。

それは、すなわち子どもが親という他者の人生を生きてしまう、ということに他なりません。

 

『嫌われる勇気』のポイント7:コンプレックスは無くせる!

 

個人が抱えているコンプレックスも、アドラーの考え方で解決できます。

自分が○○できない、だから成長したい。こういう劣等感は誰しも持っているものですし、それ自体は成長への原動力になります。しかしアドラーが問題視するのは、その劣等感が「できない理由」になるときです。

「学歴が低いから出世できない」「主婦だから働けない」という、「AだからBできない」という言い訳には、実は因果関係がありません。

どれも、「出世したくない」もしくは「出世のための努力をしたくない」から「学歴」のせいにしたり、「働きたくない」もしくは「働くことによって自分が損をする」から「主婦である」ことのせいにしているのです。

そうやって、自分で選んだ目的を、誰か、すなわち「他者の課題」のようにすりかえて「自分にはどうしようもできないから」と納得させているのです。

あなたが抱えているコンプレックスは、実は「自分の目的を果たすため」に利用されているだけということ。「どうしてそう思っているのか」を深堀りしていくと、実は自分のコンプレックスはどんどんなくなっていくのです。

 

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『嫌われる勇気』のポイント8:見返りは求めるな!

 

他者に貢献することが共同体感覚を育てる、とアドラーは説いています。

しかし、そこで重要なのは、あくまで「見返りは求めない」ということ。見返り、すなわち誰かがあなたに何かをするかどうかは「他者の課題」なのです。

見返りを求めていると、それが叶わなければ不満が出てしまいます。その不満が周りに伝わってしまうと、その繋がりにヒビが入ってしまうことにもなりかねません。

他者貢献はもちろん重要ですが、あくまで自分の課題を解決し、共同体感覚を養うためのもの。誰かに何かを返してもらうことが目的ではありません。

全てのことに通じますが、「これだけ尽くしたのだから、結婚してほしい」「これだけ教育したのだから、いい学校に行ってほしい」というのは本人のエゴでしかありません。そのときの目的は、「その人を自分の思いどおりにしたい」とか、「何かしてほしい」という他者への期待です。

あくまで、自分の自己実現が自らの行動原理。他者へ期待することは、アドラーの思うところではないのですね。

 

『嫌われる勇気』の名言ランキングベスト5!人生の役に立つ言葉たち

 

さて、最後に本作の名言をランキング形式でご紹介していきましょう。

第5位

何度でもくり返しましょう。
「人間の悩みは、すべて対人関係の悩みである」。
これはアドラー心理学の根底に流れる概念です。
もし、この世界から対人関係がなくなってしまえば、
それこそ宇宙のなかにただひとりで、
他者がいなくなってしまえば、あらゆる悩みも消え去ってしまうでしょう。
(『嫌われる勇気』より引用)

 

 

哲人が青年に諭す一幕です。悩みに種類などなく、全ては対人関係の悩みであると青年に伝えます。あらゆる悩みは、突き詰めれば「誰かによく見られたい」「誰かにほめられたい」という承認欲求が引き起こす悩みです。

多くのことの悩まされていた私たちですが、こんなにシンプルなことに気づかなかったのか、と思いますよね。

第4位

すなわち、「自由とは、他者から嫌われることである」と。
(『嫌われる勇気』より引用)

 

 

タイトルの由来です。少しストレートすぎる物言いですが、他者がわたしを嫌いになるかどうかは、他者の課題です。自分が何をしようと、実は他者には関係なく、その他者の反応を気にしてしまうから悩んでしまうのですよね。

他者から嫌われようと、自分の信じる行動を取ることが重要なのですね。

第3位

「この人はわたしに何を与えてくれるのか?」ではなく、
「わたしはこの人になにを与えられるか?」を考えなければならない。
それが共同体へのコミットです。
(『嫌われる勇気』より引用)

 

 

共同体感覚を持つ、ということが重要とアドラーは言っています。自分は世界の中心ではなく、共同体の一部であり、そしてそれを実感するために他人への貢献が必要なのです。他者を敵ではなく仲間とみなし、積極的に関与していくことこそが対人関係のゴールへの近道なのです。

第2位

もうあなたもお気づきですよね?
すなわち「幸福とは、貢献感である。」
それは幸福の定義です。
(『嫌われる勇気』より引用)

 

 

自分が幸せだと思ったときは、いつでしょうか?よくよく振りかえってみれば、幸福感を感じたのは「誰かの役に立った」という実感があったときではないでしょうか。「本当に貢献したかどうか」は他者が感じることですので、それは関係ありません。

あくまで、自分自身が共同体に対して「貢献できた」と実感したとき、それが幸福感を感じる瞬間なのです。

第1位

人生における最大の嘘、それは「いま、ここ」を生きないことです。
過去を見て、未来を見て、人生全体にうすらぼんやりとした光を当てて、
なにか見えたつもりになることです。
(『嫌われる勇気』より引用)

 

 

トラウマや目に見えない未来への不安に、とらわれていないでしょうか?そういう人は、何かしら理由をつけて今を生きていません。そういったものと言い訳として、今自分のできることを先延ばしにしたり、やらないことにしてませんか?

今を生きない人生の嘘にとらわれていては、いつまでも自分の人生を生きることはできないのです。

 

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いかがだったでしょうか?青年のように、すぐには信じられない考え方かもしれません。ですがアドラーの考え方は、今後の人生を考え直すよいきっかけになると思います。気になった方は読んでみてくださいね。

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