5分でわかるヒヨドリの生態!渡り鳥?留鳥?巣作りや雛の子育てなど

更新:2021.12.11

都市部でも比較的頻繁に姿を見ることができるヒヨドリ。平安時代には貴族が好んで飼育していたともいわれる、野鳥の一種です。また、自宅に巣が作られると縁起がよいともいわれています。この記事では、彼らの生態や種類ごとの特徴、巣作りや子育てについて解説していきます。あわせておすすめの関連本も紹介するので、ぜひチェックしてみてください。

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ヒヨドリの生態は?鳴き声やエサなど

スズメ目ヒヨドリ科に分類され、森林だけでなく市街地でも姿を見ることができます。人間の生活圏に近い場所でも生息している、身近な野鳥です。

全長は28cmほど、翼開長が40cmほどです。日本では全国に広く分布していますが、世界的に見ると朝鮮半島や台湾などの限られた地域にしか生息していません。

食性は雑食で、昆虫や果実、花の蜜などが好物です。羽ばたきと、翼を閉じた滑空をくり返す「波状飛行」という飛び方をし、長期間エネルギーを温存しながら飛び続けることができます。

名前の由来にもなっている「ヒーヨ、ヒーヨ」という鳴き声は、甲高く、都市部では騒音被害として報告されることもあります。また餌が少なくなると畑の作物を食い荒らすこともあるため、農村部では狩猟鳥に指定されています。

寿命は野生下で5年ほど、飼育下では長ければ10年ほど生きるそうです。

 

ヒヨドリは渡り鳥?留鳥?

かつてヒヨドリは、秋になると越冬のために朝鮮半島などから日本へ渡ってくる冬鳥でした。しかし近年は、時間をかけて日本の環境に適応したため、1年をとおして国内で姿を見られる「留鳥」となりました。

ただ、北海道や東北など寒冷地に生息している個体は、10~11月頃に群れを作って本州へ南下するため、地域によっては季節ごとに短距離の移動をする「漂鳥」としての性質をもっています。

本州以南に生息する個体に関しても、夏場は標高の高い山で過ごし、冬場は平地へ降りてくるものが多く見られましたが、1980年代頃からは1年をとおして平地で過ごす個体が増えてきました。

さまざまな環境に適応する能力が高い鳥だといえるでしょう。

 

ヒヨドリの種類ごとの特徴を紹介

日本には、ヒヨドリ科に分類されるシロガシラのほか、ヒヨドリ属のなかに8種の亜種が存在します。主なものの特徴を紹介しましょう。

シロガシラ

頭部に白い綿毛のような羽毛を冠した姿が特徴です。全長は20cm弱。

中国南部や朝鮮半島、台湾などに生息し、日本では八重山列島と沖縄本島で姿を見ることができます。なお沖縄に生息する個体は固有種ではなく、人為的に持ち込まれたものが繁殖したと考えられています。

リュウキュウヒヨドリ

琉球諸島や宮古諸島に生息する亜種です。全長は27cmほど。

一般的なヒヨドリと比べて全身が黒っぽい体色をしていて、頬から喉にかけて赤褐色の模様が入っているのが特徴です。

ハシブトヒヨドリ

小笠原諸島南部の火山列島に生息している亜種で、太いくちばしが特徴です。

同じく小笠原諸島に生息しているオガサワラヒヨドリは八重山諸島にルーツをもつのに対し、本種は伊豆諸島や本州にルーツをもつことがDNA分析の結果からわかっています。

タイワンヒヨドリ

沖縄県与那国島のみに生息している亜種です。全身が黒やグレーの羽毛で覆われています。

クロヒヨドリ

全長は25cmほど。全身が黒い羽毛で覆われているので、赤いくちばしがよく目立ちます。

台湾や中国南部、東南アジアに生息し、日本では1度だけ、与那国島で迷鳥が観察されたことがありました。

 

ヒヨドリの巣は縁起がいい?巣作りから産卵、雛の子育てなど

彼らの繁殖期は、4月下旬から9月にかけてです。木の枝の上に10~20cm程度のお椀型の巣を作ります。

営巣する樹木は2~6mほどの高さのものが多いですが、30cmほどしかない低木や10m以上の巨木にも作ることがあり、また常緑樹や広葉樹、針葉樹と種類もさまざまで、特別なこだわりはないようです。

巣が完成すると、メスは3~5個の卵を産み、2週間ほど抱卵をします。孵化した雛の世話はオスとメスで共同でおこない、わずか10日ほどで巣立ちの時を迎えます。巣作りから巣立ちまで、約1か月間しかないのです。

1回の子育てが早く終わることから、同じつがいで年に2~3回子作りをすることも珍しくありません。

またヒヨドリは、自分たちの力だけで巣を作りあげることから、繁栄や立身出世の象徴と考えられており、自宅に巣が作られると縁起がいいとされています。

 

鳥類学者は鳥たちのどこを見ているのか

著者
松原 始
出版日
2018-07-11

「カラス先生」という異名をもつ動物行動学者、松原始による作品です。カラスやスズメ、ウグイス、ヒヨドリなどをとりあげて、研究者はどのように身近な野鳥を観察しているのかを語っています。

野鳥愛に溢れており、学術的な知識以外にも、著者が自宅の庭にやってくる鳥たちを見て感じたことなども記しています。

ヒヨドリについても、食性を調べるために糞を解析した話や、野菜畑を荒らすのに植物の葉や茎は食べないのはなぜかといった話など、興味深く読める内容が満載です。

専門的な内容もわかりやすい言葉で語ってくれているので、少しでも鳥に興味のある人は楽しく読むことができるでしょう。

 

ヒヨドリなど身近な野鳥を網羅した図鑑

著者
柚木 修
出版日
2012-09-19

大人気の図鑑「NEO」シリーズの鳥版です。日本国内で姿が見られる野鳥を中心に、約480種が掲載されています。

バードウォッチングに役立ててほしいと作られているため、生態以外にも鳥を観察する際のコツや、シルエットでの見分け方など、情報が盛りだくさんです。

特に野鳥の姿が見当たらない場合はどのように足跡をたどれば発見できるかといったアドバイスや、市街地に暮らしている鳥の鳴き声の特徴などをまとめた特集は、身近な鳥を気軽に観察したい人にぴったりでしょう。

持ち運びがしやすいサイズなので、ぜひ本書を片手に出かけてみてください。

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