浦島太郎にはその後があった!原作の物語と玉手箱の謎、学べる教訓を考察

更新:2021.11.16

誰しもが1度は読んだことがあるであろう昔話「浦島太郎」。実は原作を読んでみると、おじいさんになった後の続きがありました。この記事では、あらすじを紹介したうえで、なぜ乙姫が玉手箱を渡したのか、物語から学べる教訓とは何なのかを考察していきます。あわせておすすめの関連本も紹介するので、ぜひご覧ください。

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浦島太郎のあらすじを簡単に紹介

 

浦島太郎の物語の原作は、鎌倉時代末期から江戸時代にかけて成立した短編集『御伽草子』に収録されているものだとされています。

現在一般的に広まっているのは、明治時代に活躍した童話作家の巌谷小波(いわやさざなみ)が発表した『日本昔噺』がもとになっているものです。子ども向けにアレンジされて国定教科書に掲載され、浸透していくこととなりました。

ではあらすじを簡単に紹介していきましょう。


あるところに浦島太郎という人がいました。海辺で子どもたちが亀をいじめているのを見つけ、助けてやります。亀はお礼にと、太郎を背中に乗せて海底にある竜宮城へ連れていきました。

そこには美しい姿をした乙姫がいて、豪華な食事を出して手厚くもてなしてくれました。楽しい時間を過ごしていた浦島太郎ですが、そろそろ元来た場所へ帰ることを告げます。すると乙姫は、「絶対に開けてはいけない」と伝えたうえで玉手箱を手渡してくれました。

浦島太郎が地上へ帰ると、あるはずの場所に家はなく、知っている人も誰もいません。あたりを調べてみると、太郎が竜宮城へ行っている間に、とてつもなく長い時間が経過していたことがわかりました。

さらに浦島太郎は、乙姫からの忠告を忘れて玉手箱を開けてしまいます。中から白い煙が沸き上がり、浦島太郎は白髪と皺だらけのおじいさんの姿になってしまいました。

浦島太郎にはその後があった!原作の物語を紹介

 

では浦島太郎の原作だといわれている、『御伽草子』に収録されている物語のあらすじを紹介していきます。


あるところに浦島太郎という漁師がいました。ある日亀を釣り上げてしまい、かわいそうに思って逃がしてやります。

数日後、ひとりの女性が船で浜に現れ、漂着してしまったので自国に連れ帰ってくれとお願いしてきました。2人で船に乗り竜宮城に到着すると、女性は浦島太郎に夫婦になろうと言います。太郎はそのまま竜宮城で3年の時を過ごしました。

ある時浦島太郎は、残してきた両親のことが心配だとして、帰りたい意志を告げます。女性はそれを承諾し、自分があの時助けてもらった亀の化身だと明かしました。そして、絶対に開けてはならないと伝えたうえで、「かたみの筥(はこ)」を手渡します。

浦島太郎が地上に戻り、出会った老人に両親の居場所を尋ねますが、なんと700年も昔の人で、近くにお墓があると言われてしまいました。浦島太郎が竜宮城で3年を過ごしているうちに、地上では700年の歳月が過ぎていたのです。

絶望した浦島太郎がかたみの筥を開けると、紫の雲が立ちのぼり、太郎は老人の姿になってしまいました。さらにその後は鶴となり、「蓬莱山」という仙人が住むといわれている理想郷へ飛び立ちます。

同じ頃、竜宮城の女性も亀へと姿を変え、蓬莱山へと向かうのでした。


一説によると、ここから鶴と亀は縁起物であるという風習が広まったともいわれています。

また『御伽草子』以外にも、『丹後国風土記逸文』『日本書紀』『万葉集』などで「浦島子」の伝説が伝えられています。これらの文献では浦島太郎が鶴になる記述はありませんが、亀が女性に姿を変えて太郎と結婚するというストーリーは共通しています。

なぜ乙姫は、浦島太郎に開けてはいけない玉手箱を渡したのか

 

物語のなかで、乙姫は「絶対に開けてはいけない」玉手箱を浦島太郎に渡します。しかし、なぜ絶対に開けてはいけないものを渡す必要があったのでしょうか。いくつか理由を考えてみましょう。

1:玉手箱には浦島太郎が竜宮城で過ごした時間が入っていた

浦島太郎は地上に戻ってから、自分が竜宮城にいるうちにとんでもなく長い年月が過ぎていたことに気付きます。竜宮城にいる間、乙姫は太郎に気付かれないように彼の時間を奪っていたと考えることはできないでしょうか。

しかし浦島太郎から奪った時間なので、彼が竜宮城を離れる時は返さなければなりません。そこで乙姫は玉手箱に時間を押し込め、太郎に手渡したのです。「絶対に開けてはいけない」という言葉は、すべてを知っている乙姫からの忠告だったのではないでしょうか。

2:乙姫から浦島太郎への復讐だった

浦島太郎は竜宮城を訪れ、時を忘れるほどの楽しい時間を過ごしていたのに、急に我に返ったように地上へ帰ると言い出します。乙姫は結婚したいほど太郎のことを愛していたので、別れたくなかったのではないでしょうか。

それでもどうしても帰ると言い張る太郎に対し、怒った乙姫は、「絶対に開けてはいけない」と、かえって開けたくなる言葉を伝えて老人になってしまう玉手箱を渡したのかもしれません。

3:浦島太郎と再会するために渡した

原作である『御伽草子』の物語では、鶴となった浦島太郎と亀の乙姫が再会します。これは浦島太郎が鶴にならなければ成し得なかったことなので、乙姫は地上に帰ってしまった太郎といつの日か再会できるようにと玉手箱を渡したのではないでしょうか。

浦島太郎から学べる教訓は?

 

多くの童話は、物語を通じて何かのメッセージを伝えるという役割をもっています。しかし浦島太郎の場合、せっかく亀を助けたのに最終的にはおじいさんになってしまい、絶望するという結末。一見どんな教訓があるのかわかりづらいのではないでしょうか。

一般的には

・善いおこないをすれば自分に返ってくる・約束を破ってはいけない

この2つが教訓としてあげられます。浦島太郎はいじめられている亀を助けたことで、お礼に竜宮城でもてなしを受けたことから、善いおこないをすれば報われることは学ぶことができそうです。

しかしあらためて読み返してみると、次のような教訓も考えることができるのではないでしょうか。

・目先の快楽に心を奪われてはいけない

浦島太郎は、亀を助けたお礼ではあるものの、竜宮城の豪華なもてなしに我を忘れて没頭してしまいました。快楽におぼれると時間の感覚が麻痺し、両親や故郷など、本当に大切なことを忘れてしまうのです。

・本気で愛しあった人とはまた巡りあえる

原作の『御伽草子』では、鶴と亀に姿を変えた浦島太郎と乙姫が再会します。この物語をラブストーリーとして考えるのであれば、1度本気で愛しあった者どうしは、たとえ見た目が変わったとしてもまた巡りあえるものだというメッセージが込められていると考えることもできるのではないでしょうか。

物語の素朴な疑問に迫る!言霊学の視点から読み解いた一冊

龍宮の乙姫と浦島太郎

2017年10月13日
["小笠原 孝次", "七沢 賢治"]
和器出版株式会社

 

浦島太郎には、ここまで紹介してきた「なぜ乙姫は玉手箱を渡したのか」という疑問にはじまり、「なぜ浦島太郎は水中を亀に乗って移動できたのか」など、さまざまな疑問点があります。

本書は、このような謎の多い物語のなかに隠されているメッセージとは何かということに迫り、言霊学の視点から新しい解釈を提案している作品です。一般的な物語を読むだけじゃ物足りず、さらに深く読み解きたい人におすすめの一冊になっています。

子どもの頃から親しんできた浦島太郎の裏側を知ると、単なる子ども向けの物語ではなかったことに気づきます。資本主義や貨幣経済、さらには相対性理論まで、さまざまな角度から浦島太郎を考えられる作品です。

イラストと文章が美しい、浦島太郎の絵本

著者
時田 史郎
出版日
1974-03-25

 

一般的に広まっている童話だけでなく、『御伽草子』など古代の文献の内容を精査したうえで紡ぎ直した絵本です。浦島太郎や乙姫の言葉が考え直され、彼らの生き生きとした姿が印象的でしょう。

イラストが幻想的で美しいのも大きな魅力です。言葉だけでは伝わりきらない竜宮城の世界が目に見えてわかり、浦島太郎がなかなか帰る気になれなかったことにも共感できてしまうかもしれません。

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