『ブレーメンの音楽隊』はブレーメンに行っていない!あらすじや教訓を紹介

更新:2021.11.16

グリム童話『ブレーメンの音楽隊』に登場する動物たちは、実はブレーメンには行っていないし、音楽隊としても活躍していないってご存知でしたか?この記事では、あらためてあらすじを説明したうえで、動物たちが抱えていた苦難や、ブレーメンを目指していた理由、物語から学べる教訓を考察していきます。おすすめの絵本も紹介するので、ぜひ最後までご覧ください。

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『ブレーメンの音楽隊』のあらすじを簡単に紹介

 

グリム童話のひとつ『ブレーメンの音楽隊』。まずはあらすじを紹介していきます。


あるところに働き者のロバがいました。しかし歳を取って仕事ができなくなると、飼い主から虐待を受けるようになってしまいます。そんな日々に嫌気が差したロバは、ブレーメンに行って音楽隊に入ることを決意。脱走をします。

ブレーメンへ向かう道中で、同じような境遇に悩んでいる犬や猫、鶏に出会いました。彼らもロバの意見に賛同し、4匹は一緒にブレーメンを目指します。

日が暮れたのでそろそろ休もうとしたところ、森の中に灯りのついた家を見つけました。中を覗いてみると、なんと泥棒たちがごちそうを食べながら盗んだ金貨を分け合っています。

長旅でお腹がすいていたロバたちは、泥棒たちを追い出してごちそうを食べられないかと思案しました。

そして、ロバの上に犬、犬の上に猫、猫の上に鶏が乗り、窓の外に立って一斉に大きな声で鳴きはじめたのです。シルエットを見た泥棒たちは、お化けが出たと勘違い。家から飛び出していきました。

こうしてロバたちは無事にごちそうにありつくことができたのです。

しかし、やっぱりお化けが出るなんておかしいと思った泥棒たち。もう1度家に戻ることにします。灯りが消えて真っ暗な家に忍び込みました。

それに気付いたロバたちは、一斉に泥棒に襲い掛かります。ロバは蹴り、犬は噛みつき、猫は引っ掻き、鶏はくちばしで突っつきました。暗闇のなかで襲われた泥棒たちは、やっぱりお化けがいると信じ、家に戻ることを諦めました。

ロバたちはその家が気に入り、そこで音楽を演奏しながら楽しく暮らしたということです。

『ブレーメンの音楽隊』の動物たちが抱えていた苦難とは

 

『ブレーメンの音楽隊』に登場する動物たちは、それぞれに苦難を抱えていました。

皆人間に飼われていましたが、ロバをはじめ犬も猫も歳をとってしまったため、これまでできていた仕事ができなくなってしまったのです。その結果、飼い主から厄介者扱いをされたり、虐待を受けたりしていました。

また鶏は、オスだったため卵を産むことができず、ロバと出会う翌日にはスープにされて食べられてしまう運命だったのです。

どの動物たちも、「老い」や「性別」など、自分ではどうすることもできない悲しい運命を抱えていました。そんななかで「ブレーメンで音楽隊をやろう」という新たな夢を与えてくれたロバの言葉が、物語のスタートとなったのです。

『ブレーメンの音楽隊』はブレーメンに行ってない!なぜブレーメンを目指していたのか考察

 

動物たちがブレーメンを目指していた理由は、物語ができた中世にて、ブレーメンが「ハンザ同盟」の中心都市だったからです。

「ハンザ同盟」とは、バルト海沿岸の貿易を独占し、ヨーロッパ北部の経済を支配していた同盟のこと。ブレーメンをはじめリューベックやハンブルクなどの中心都市は「自由ハンザ都市」と呼ばれ、活気があるうえ、生まれや育ちに関係なく才能のある人が自分の力を発揮できる仕事に就くことができていました。

ロバは、このハンザ同盟であるブレーメンであれば、歳をとってしまった自分でも音楽隊になれるかもしれないと考えたのでしょう。そしてその想いに共鳴した犬や猫、鶏も行動を共にしたのです。

しかし結局彼らは、ブレーメンに到着する前に自由を手に入れました。泥棒たちがいた家で、仲間と一緒に幸せに暮らすことを選びます。

つまり本作は『ブレーメンの音楽隊』というタイトルですが、物語のなかではブレーメンに到着はしていないし、音楽隊にも加入していないのです。

『ブレーメンの音楽隊』から学べる教訓は?

 

本作は、物語を通じて読者にどのような教訓を伝えてくれているのでしょうか。

悪いことをした泥棒が、盗んだ金貨や家を失ってしまったことから、「悪いことをしてはいけない」という教訓は得られるかと思います。しかしそれだけではあまりにも浅はか。動物たちの境遇をふまえて、どのようなメッセージが込められているのかもう少し考えてみましょう。

それぞれの個性を生かして、力を合わせれば、自分よりも強い相手にも勝つことができる

ロバたちは窓の外から、4匹で重なってお化けに見せ、泥棒たちが驚かせました。また夜に泥棒たちが家に戻って来た際は、それぞれの特技を生かして攻撃を仕掛けます。その結果、これまでは飼われていた存在だった人間にも、勝つことができたのです。

このことから、困難な状況でもそれぞれのよいところを生かして協力しあえば、乗り越えることができると教えてくれているのではないでしょうか。

幸せを勝ち取るためには、主体的に行動しなければいけない

『ブレーメンの音楽隊』に登場する動物たちは、ロバをはじめ皆、人間のために働いていました。しかし飼い主たちは身勝手で、役に立たないとわかると邪魔者扱いをしてきます。

これまで人間のためだけに働いてきたロバは、「ブレーメンで音楽隊になる」という夢をもったことで、初めて自分の意思で行動をしました。逆境から立ち上がろうとしたロバには求心力があり、他の動物たちもついてきたのです。

これまで人に使われる側だったロバたちは、自分たちの力だけで泥棒を撃退することができ、その時に得られた達成感は大きかったのではないでしょうか。

物語のなかでブレーメンには行かず、そのまま家で暮らしたことから、彼らは「ブレーメンで音楽隊になる」ことを目指していたわけではなく、「自分の意思で行動し、やりたいことをやって暮らすこと」を求めていたのかもしれません。

人気絵本作家が描くあたたかみのある作品

著者
いもとようこ
出版日
2012-12-18

 

人気絵本作家のいもとようこが手掛けた作品です。

とにかく絵がかわいらしいのが魅力的。あたたかみがあり、ほんわかとした雰囲気の動物たちが描かれています。

また小さい子どもでも読めるよう、文章が短めでわかりやすいのも特徴。読み聞かせにもぴったりの一冊です。

おしゃれなイラストで『ブレーメンの音楽隊』を楽しめる絵本

著者
グリム
出版日
1964-04-15

 

スイスの絵本作家、ハンス・フィッシャーの作品です。かわいらしさよりも、芸術性を重視している絵本だといえるでしょう。独特なタッチとカラフルな色使いが美しいです。

特に、泥棒たちが住んでいた家などは鮮やかかつ細やかに書きこまれています。動物たちから見ると、キラキラして魅力的に見えたのだろうと想像が膨らむでしょう。

子どもだけでなく、大人へのプレゼントとしてもおすすめ の一冊です。

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